「カイユボット展」 記者発表会

10月10日(木)からブリヂストン美術館で始まる「カイユボット展ー都市の印象派」の記者発表会に参加してきました。


「カイユボット展ー都市の印象派」@ブリヂストン美術館(10/10~12/29)

追記:「カイユボット展」@ブリヂストン美術館(プレビュー記事)

知られざる印象派の画家、ギュスターヴ・カイユボット(1848-1894)。モネやルノワールらとともに印象派展に参加するなどして活動しながらも、画家としての注目度は今ひとつ。よく知られた画家とは決して言えません。

では何故にカイユボットは知られていないのか。その一つとして彼の境遇が。カイユボットは非常に裕福な家に生まれたため、作品を売却する必要がなく、残されたものの多くが遺族の元に。そのまま美術館へ渡ることもなく秘蔵されます。つまり人目に触れる機会自体が少なかったのです。

また45歳で亡くなったカイユボットはどちらかと言えば寡作。素描などをあわせてもレゾネ1冊分、約500点ほど作品を残したに過ぎません。


「ピアノを弾く若い男」1876年 ブリヂストン美術館
 
しかしながら近年、特に西欧では再評価が進展。また日本でも2012年にブリヂストン美術館が「ピアノを弾く若い男」を収蔵。コレクション展などに出品されることで、僅かながらも認知が高まりました。

というわけで、まさにこの機会、この場所、ブリヂストン美術館だからこその展覧会です。カイユボットの日本初の回顧展が10月10日より始まります。

少し前置きが長くなりました。ではカイユボットは何者なのか。その辺を少しだけ追いかけましょう。


「自画像」1889年頃 オルセー美術館

生まれはパリの裕福な実業家。アカデミズムの画家のアトリエで学んだ後、パリ国立美術学校に入学。画家の道へ。印象派の画家らと知り合います。


第3回印象派展、カイユボット出品作品

印象派展に参加したのは2回目から。おそらくはルノワールの誘いだといわれています。その後、全部で8回あった印象派展のうち、3、4、5回に出品。「都市の印象派」のサブタイトルならぬ、パリの都市生活や風俗をテーマとした作品を描き続けました。

また印象派展では経済的にもメンバーを支援。仲間の画家の作品を購入していきます。

実はカイユボットが初めに評価されたのはこのコレクターとしての活動。彼の死後、手元に残った70点弱の印象派作品はどれも傑作ばかり。その中には今でこそオルセーの誇るドガの「エトワール」やルノワールの「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」など、画家を代表する作品も少なくありません。

カイユボットの遺言によりそれらは国立美術館へ寄贈されることになりましたが、ここで一悶着が。当時の印象派絵画は言わば前衛。美術館へ収められることへの反発も強く、寄贈は難航を極めます。結局、死の2年後に40点が受け入れられましたが、これが「カイユボット遺贈事件」としてかなり話題になったのだそうです。


「ヨーロッパ橋」1876年 ジュネーヴ・プティ・パレ美術館

さてそれでは今回の展覧会のポイントをまず4つ。

1 知られざる画家の全貌を紹介する日本初の回顧展
2 「印象派展」出品作など代表作を展示
3 世界各地の美術館に加え、個人所有の秘蔵コレクションから出品
4 弟マルシャル・カイユボットの撮影による貴重な写真作品もあわせて展観


興味深いのは4つ目の弟マルシャル撮影の写真。このマルシャル、「ピアノを弾く若い男」でピアノを弾いている人物そのもの。音楽を学びつつ、写真にも深い関心を寄せ、パリや近郊を捉えた風景写真を多く残しました。


ヨーロッパ橋を撮影した写真作品

印象派の画家たちが活躍した19世紀後半はまさに写真が急速に普及した時代。弟マルシャルの写真の構図は兄ギュスターヴの絵画に影響を与えたという指摘も。マルシャルの写真を見ながら、印象派絵画と写真表現の影響関係にも注目していくそうです。


カイユボット展出品作品数(予定)

なおマルシャルの写真の出品は全80点。そして兄ギュスターブ・カイユボットの作品は油彩44、パルテル1、素描8、版画4点ほどが出品予定。当然ながらこれほどカイユボットの作品が集まるのは日本で初めてです。(ちなみに国内にはカイユボットの作品がブリヂストン美術館蔵の「ピアノを弾く若い男」を含めても3点しかありません。)

展覧会ではカイユボットの作品を以下のジャンル別に紹介。

1.自画像、2.室内の風景、3.窓辺の風景、4.近代都市の風景、5.水辺の風景、6.庭園と田園風景、7.静物、8.素描、9.弟マルシャル・カイユボットの写真

変わりゆく近代都市パリの姿や風俗を光あふれる画面で捉え、時に写真を感じさせる技法を駆使して絵画を描いたカイユボット。また印象派の画家たちがあまり描かなかった静物画にも取り組んでいます。


「建物のペンキ塗り」1877年 個人蔵

カイユボットの描く都市風景。同じく印象派ではドガも都市を得意としましたが、例えば「建物のペンキ塗り」など、それこそモダン・アメリカンを思わせるようなファッショナブルな構図も。新しい感覚を呼び起こします。


「イエール川のカヌー漕ぎ」1877年 ワシントン・ナショナル・ギャラリー

ボート遊びを描いた「イエール川のカヌー漕ぎ」でもスポーツに打ち込む男性の姿を思い切ってクローズアップ。どことなく写真的です。


「読み物をする女性」1880年 個人蔵

また「読み物をする女性」。前の女性の大きさからするとソファの上の男性はあまりにも小さい。この前景と後景の大胆な対比は何なのか。カイユボットの眼差しは実はかなり斬新でかつ個性的です。

特設サイトもオープン。写真家Mがカイユボットの魅力を随時紹介するという公認ブログ「写真家Mのカイユボット展ブログ」もスタートしました。

「カイユボット展 特設サイト」 「写真家Mのカイユボット展ブログ」


カイユボット展会場に導入される電子端末・展示イメージ(予定)

早割ペア割引券は8月10日から発売予定。また会場ではDNPの協力の元、電子端末を使って、カイユボットの作品と写真、そしてパリの街を相互に行き交うような仕掛けも導入されるとか。こうした試みはブリヂストン美術館で初めてです。期待しましょう!


記者発表会でパネルを前に解説するブリヂストン美術館の島田館長

「カイユボット展ー都市の印象派」はブリヂストン美術館で10月10日から開催されます。

「カイユボット展ー都市の印象派」 ブリヂストン美術館
会期:10月10日(木)~12月29日(日)
時間:10:00~18:00(毎週金曜日は20:00まで)*入館は閉館の30分前まで
休館:月曜日(ただし12/16、祝日は開館)
主催:オルセー美術館、オランジュリー美術館、石橋財団ブリヂストン美術館、日本経済新聞社
会場:石橋財団ブリヂストン美術館(東京都中央区京橋1-10-1
料金:一般1500円(1300円)、65歳以上シニア1300円(1100円)、大・高生1000円(800円)
 *( )内は前売及び15名以上団体料金。
 *早割ペア券2000円を販売。販売期間は8/10~9/9限定。
交通 :JR線東京駅八重洲中央口徒歩5分。東京メトロ銀座線京橋駅6番出口徒歩5分。東京メトロ銀座線・東西線、都営浅草線日本橋駅B1出口徒歩5分。
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