「貴婦人と一角獣ナイト」 6次元

6次元で行われた「貴婦人と一角獣ナイト」に参加してきました。


「貴婦人と一角獣」@国立新美術館(プレビュー記事)

国立新美で開催中の「貴婦人と一角獣展」。中世美術の至宝とまで呼ばれるフランスのタピスリーが来日中。既に展示をご覧になった方も多いかもしれません。

会場で作品を見れば一目瞭然。その魅力は十分に伝わりますが、「我が唯一の望み」しかり、どこか謎解き的な要素があるのもポイント。そこを中世美術専門で美術史家の金沢百枝先生が解き明かしていく。題して「貴婦人と一角獣ナイト」。そうしたイベントが荻窪6次元で行われました。


トーク前の金沢先生。貴婦人ヘアスタイルでのご登場でした!

さて金沢先生のトークは多くのスライドを使っての分かりやすいもの。タピスリー「貴婦人と一角獣」の注文主の問題からスタート。これが旧説と新説の2つあり、最近では紋章学の研究により新説が広く支持されているとか。かつてはルイ・ヴィスト家のジャン4世が注文したとされていましたが、現在では同家のアントワーヌ2世であることが確認されているのだそうです。



さらにトークはタピスリーのテーマについて。5感の触覚、味覚、嗅覚、聴覚、視覚という並び。これはいわゆる精神性との距離。初めの触覚が最も動物的だとされています。



では最後の「我が唯一の望み」は何なのか。ここで金沢先生は幕屋の涙模様に注目。涙は愛のモチーフ。男性の流す涙には女性に対しての愛の意味があったとか。涙の川から女性に救われることで愛を成就する。そうしたモチーフの絵画も残されています。

「涙と眼の文化史ー中世ヨーロッパの標章と恋愛思想/徳井淑子/東信堂」

また「愛の嘆きには大量の涙がながされなくてはならない。」という言葉も。これについては金沢先生が一冊の本をご紹介。それが徳井淑子さんの「涙と眼の文化史ー中世ヨーロッパの標章と恋愛思想」。会場でも本が回されました。



一角獣とライオンが貴婦人を幕屋へ誘っている「我が唯一の望み」。また多くの動物が首輪をつけていることにも着目。動物をつなぐ鍵、錠前も愛のモチーフだとか。私はあなたに囚われたい。そうした意味もあるのだそうです。



ちなみに幕屋上部に飛ぶ鳥にも一羽が繋がれています。これも狩る狩られるを意味し、愛とも関係するのではないかという指摘でした。



またタピスリーの中の動物や植物についても細かに分析。同じ植物でも色を変えて別の植物として表現したり、同じ動物を向きを変えて何度も描いています。これについてはおそらく型を利用しているそうです。

そしてこれらの植物や動物は同定がほぼ終わっているものの、単に分類学的に植物なりを精査するだけでなく、何故この植物がこの作品に描かれているのか。そうした思考が美術史には重要との指摘がありました。


タピスリー「貴婦人と一角獣『我が唯一の望み』」1500年頃 羊毛、絹
フランス国立クリュニー中世美術館
RMN-Grand Palais / Franck Raux / Michel Urtado / distributed by AMF-DNPartcom


質疑応答をあわせて2時間ほどの充実のトーク。とてもここで追いかけられません。幸いにも当日のツイッターの流れを6次元の道前さんがまとめて下さいました。是非ともご覧ください。

貴婦人と一角獣ナイト - Togetter

6/27(木)「貴婦人と一角獣ナイト」
時間:19:00開場 19:30開始
参加費:1500円(国立新美術館「貴婦人と一角獣展」観覧チケット+特製コースター付き)
会場:6次元
*美術史家 金沢百枝先生による「貴婦人と一角獣」の愉しい見方(スライド講座)。「貴婦人と一角獣」にちなんだアイテム(アクセサリー、グッズ、髪型)を持参してトークを聴くだけでなく積極的に「参加」しましょう。

展覧会もいよいよ佳境。あと半月ほどです。私もこの日のトークを参考に、再度見納めに行きたいと思います。


「貴婦人と一角獣展」会場風景

「フランス国立クリュニー中世美術館所蔵 貴婦人と一角獣展」 国立新美術館
会期:4月24日(水)~7月15日(月・祝)
休館:火曜日。但し4月30日は開館。
時間:10:00~18:00 *金曜日は20時まで開館。
料金:一般1500(1300)円、 大学生1200(1000)円、高校生800(600)円。中学生以下無料。
 *( )内は団体料金。4月27日(土)、28日(日)、29日(月・祝)は高校生無料観覧日。(要学生証)
住所:港区六本木7-22-2
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅出口6より直結。都営大江戸線六本木駅7出口から徒歩4分。東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩5分。

注)展覧会風景については報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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