奈良県立美術館で「大古事記展」が開催されます

今から1300年前に編纂された日本最古の歴史書でもある古事記。その名前はもちろん、「因幡の白兎」に「海幸彦と山幸彦」の物語、はたまた「草薙の剣」等々、数々の神話やエピソードも良く知られているところかもしれません。



「語り継ぐココロとコトバ 大古事記展」@奈良県立美術館 10月18日(土)~12月14日(日)

古事記を多方面から読み解く展覧会です。10月18日(土)より奈良県立美術館で「語り継ぐココロとコトバ 大古事記展」が開催されます。


重要文化財「禽獣葡萄鏡」中国・唐時代(8世紀) 春日大社

さて古事記、いわゆる原本なはく、写本が伝わるのみ。いわゆる考古資料は必ずしも多いとは言えません。

だからこその多方面です。公式サイトにもあるように「バラエティ豊かな展示物」で古事記の世界を紹介します。美術のみならず、国文学や民俗学の見地からも検証も行う。中には現代アーティストが古事記をテーマに制作した作品の展示まであります。

[大古事記展 展示構成]
1.古代の人々が紡いだ物語
2.古事記の1300年
3.古事記に登場するアイテムたち
4.身近に今も息づく古事記
5.未来へ語り継ぐ古事記

まずコンセプトとして重要なのが「五感で味わう」。例えば冒頭の序章です。編纂者の太安萬侶の神座像とともに投影されるのは映像のインスタレーション。さらには古事記と世界の神話を比較するCGグラフィックも披露されます。ともに映像で古事記を分かりやすく理解するための工夫とも言えるでしょう。

古事記を読み解くにあたって設定されたテーマは「創」、「旅」、「愛」の3つ。例えば最初の「創」では天岩屋戸神話や神武天皇の物語を取り上げます。ここでは絹谷幸二の「天の岩戸 曙光」(個人蔵)の絵画などが展示されるそうです。


青木繁「黄泉比良坂」 東京藝術大学大学美術館

そして「愛」では青木繁の「黄泉比良坂」(東京藝術大学大学美術館)や堂本印象の「木華開耶媛」(堂本印象美術館)が引用される。会場は奈良県立美術館ですが、何も同県内所蔵の絵画だけが出展されるわけではありません。


重要文化財「太安萬侶墓誌」 文化庁、奈良県立橿原考古学研究所付属博物館

第2章の「古事記の1300年」では文字通り古代から現代における古事記受容の変遷を辿ります。太安萬侶の実在が判明した1979年出土の「太安萬侶墓誌」(奈良市太安萬侶墓出土)のほか、近代において古事記を再発見した本居宣長の「自画自賛像」(本居宣長記念館)、さらには江戸期の「古事記寛永版本」(本居宣長記念館)なども目を引くのではないでしょうか。


国宝「七支刀」古墳時代(4世紀) 石上神宮 *展示期間:10/25~11/24

もちろん古事記ゆかりの考古資料もあわせて紹介。とりわけ注目したいのは国宝の「七支刀」(石上神宮)や重要文化財の「禽獣葡萄鏡」(春日大社)などの神宝です。そのほかには美術館初公開となる「女神坐像」(丹生川上神社)などといった貴重な品々も少なくありません。

ラストは「未来へ語り継ぐ古事記」。ずばり現代アートの登場です。


山口藍「けぬる」(参考作品)2009年

出展は山口藍、exonemo(エキソニモ)、TOCHIKA(トーチカ)の3組。うち山口はスパイラルやミヅマアートギャラリーでの個展などでもお馴染みのアーティスト。古事記からインスピレーションを受けて作った新作を展示します。


「竪櫛」弥生時代 大阪府文化財センター

かつてない古事記を体感的にも楽しめる「大古事記展」。さらに会期中は講演や講座なども多数開催。トーチカによるワークショップも予定されているそうです。

「大古事記展 関連イベント」 *イベントは事前申込不要。無料(ただし要観覧券)。10/25の「高千穂の夜神楽」を除き先着順にて受付。

また奈良県では現在、古事記完成1300年から日本書紀完成1300年の間(2012~2020年)に因んで「なら記紀・万葉」プロジェクトを展開中。「大古事記展」もその一貫の展覧会でもあります。

「なら記紀・万葉プロジェクト」公式サイト

さらに大古事記展期間は最寄の奈良国立博物館にて正倉院展が開催中です。その期間中、「奈良トライアングルミュージアムズ」と題し、入館料が相互に割引となるサービスも行われます。

[奈良トライアングルミュージアムズの取り組みによる割引]

奈良国立博物館「正倉院展 10/24~11/12」 100円引
奈良県立美術館「大古事記展 10/18~12/14」 200円引
入江泰吉記念奈良市写真美術館「入江泰吉と杉岡華邨 10/4~1/12」 2割引

*「大古事記展」の会期中、奈良国立博物館、奈良県立美術館、入江泰吉記念奈良市写真美術館のいずれかの入館券の半券を提示すると、上記の割引を適用。


「大古事記展」懇談会で挨拶する荒井正吾奈良県知事。(有楽町朝日ホールにて。少しだけお邪魔しました。)

この時期は奈良界隈の社寺で秘宝や秘仏の特別公開が多い季節でもあります。晩秋の奈良、古事記ゆかりの地を巡りながら、万葉の時代に思いを馳せるのも良いかもしれません。

「古事記/角川ソフィア文庫」

パスポートを提示すると外国人観光客が無料になるそうです。キャプションなど数カ国語での対応もあるのでしょうか。興味深い試みだと思いました。

「大古事記展」は奈良県立美術館で10月18日から始まります。

「語り継ぐココロとコトバ 大古事記展」 奈良県立美術館
会期:10月18日(土)~12月14日(日)
休館:10月20日(月)、11月17日(月)、25日(火)、12月1日(月)、8日(月)
時間:9:00~17:00 *毎週金・土曜日は19時まで開館。入場は閉場の30分前まで。
料金:一般800(600)円、大学・高校生600(400)円、中学・小学生400(200)円。
 *( )は20名以上の団体料金。
 *外国人観光客はパスポート提示により無料。
住所:奈良市登大路町10-6
交通:近鉄奈良駅1番出口より徒歩5分。JR奈良駅より奈良交通バスにて「県庁前」下車。
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