「見つめて、シェイクスピア!展」 練馬区立美術館

練馬区立美術館
「見つめて、シェイクスピア!展 美しき装丁本と絵で見る愛の世界」
9/28-11/30



練馬区立美術館で開催中の「見つめて、シェイクスピア! 美しき装丁本と絵で見る愛の世界」を見て来ました。

今年生誕450年を迎えたウィリアム・シェイクスピア(1564~1616)。その作品世界を装丁本や挿絵で楽しめる展覧会です。

館内の撮影の許可を特別にいただきました。

さてチラシには「本展には2つの主役が存在」とありますが、実のところ構成自体も2部制。エントランスに連なるフロアと、もう一つの階段上の展示室で完全に分かれています。


「見つめて、シェイクスピア!展」会場風景

先に階段上の展示室からご紹介しましょう。こちらは挿絵で辿るシェイクスピアの物語。全90点です。冒頭は四大悲劇こと「ハムレット」、「オセロー」、「リア王」、「マクベス」。それをドラクロワやテオドール・シャセリオー、またヘンリー・フューズリらの作品で見ていきます。


ウジェーヌ・ドラクロワ「シェイクスピア『ハムレット』」1834-43年 栃木県立美術館

絵画でも数多く取り上げられた「オフィーリアの死」はどうでしょうか。写真はドラクロワのリトグラフ連作によるもの。オフィーリアが溺死する姿、右手にはブーケを持ち、左手で木の枝につかまっている。口元はうっすらと開いている。上半身も露となっています。

ちなみにキャプションには各戯曲のあらすじが記載されています。いずれも有名な物語ではありますが、挿絵のイメージを借りて見るシェイクスピアの世界。改めてテキストで追いかけたくなりました。


左:ジョン・シモンズ「真夏の夜の夢ーパックや妖精たちに囲まれたハーミア」1861年 うつのみや妖精ミュージアム

展示は殆ど挿絵ですが、ごく一部に絵画もあります。例えば「真夏の夜の夢ーパックや妖精たちに囲まれたハーミア」です。19世紀イギリスのジョン・シモンズの水彩、この時期に流行ったいわゆる妖精画です。「真夏の夜の夢」をモチーフにした連作が出ていました。


アーサー・ラッカム(挿絵)「シェイクスピア『テンペスト』」1926年 早稲田大学坪内博士記念演劇博物館

またお馴染みラッカムによる挿絵も僅かながら出品されています。うち「テンペスト」の二枚、緻密な線描が目を引きました。


マルク・シャガール(挿絵)「シェイクスピア『テンペスト』」1975年 大川美術館

ハイライトと言えるかもしれません。同じ「テンペスト」に付けたシャガールの連作です。作家が晩年になって描いた作品、その数50点、かなり細かく場面を分けて描いています。もちろんいずれもテンペストから取材していますが、恋愛の場面が多いのが特徴と言えるかもしれません。


「見つめて、シェイクスピア!展」会場風景

階下へと戻り、初めのフロアへと戻りましょう。もう一つの主役である装丁本展です。シェイクスピアをテーマに制作された装丁本がずらりと並ぶ。2013年に開催された「第二回デザイナー・ブックバインダーズ国際製本コンペティション」の入賞作品展でもあります。


奥:アンドレス・ペレス=シエラ・ロドリゲス「マクベス」1983年

そしてこの展示が思いの外に面白い。戯曲のイメージを装丁に反映させたものですが、意匠が自在で凝っています。時代は2010年以降の近年から1945年以前の戦前の作品と多様、しかしながらどちらかと言えば現代的な作品が多い。ゆえにデザインは抽象的なものも少なくありません。


エミリー・マーティン「ロミオとジュリエットの悲劇」2012年

アンドレス・ペレス=シエラ・ロドリゲスの「マクベス」、スリットで表されたのはバーナムの森のイメージなのでしょうか。そのほかにも舞台装置のような装丁本もある。たとえ元になるシェイクスピア作品を知らずとも、それ自体のデザインで楽しめるものばかりでした。

図録が良く出来ていました。一点一点の図版に比較的細かい解説がついています。

[見つめて、シェイクスピア!展 巡回予定]
滋賀県立美術館:2015年2月7日~4月5日

派手さはありませんが、シェイクスピア好きはもちろん、装丁本やデザイン好きにも楽しめる展示ではないでしょうか。

「名画で見る シェイクスピアの世界/平松洋/中経出版」

11月30日まで開催されています。

「見つめて、シェイクスピア!展 美しき装丁本と絵で見る愛の世界」 練馬区立美術館
会期:9月28日(日)~11月30日(日) 
休館:月曜日。*但し10月13日、11月3日、24日(月・祝)は開館、翌日休館。
時間:10:00~18:00 *入館は閉館の30分前まで
料金:大人500(300)円、大・高校生・65~74歳300(200)円、中学生以下・75歳以上無料
 *( )は20名以上の団体料金。
住所:練馬区貫井1-36-16
交通:西武池袋線中村橋駅より徒歩3分。

注)写真は美術館の特別な許可を得て撮影したものです。
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