都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「円空・木喰展」 そごう美術館
そごう美術館
「微笑みに込められた祈り 円空・木喰展」
2/7-3/22
そごう美術館で開催中の「微笑みに込められた祈り 円空・木喰展」を見てきました。
江戸の異なる時代、ともに全国を渡り歩いて仏像や神像を彫り続けた円空(1632-1695)、そして木喰(1718-1810)。意外にも首都圏では初めて両者の彫像をまとめて紹介する展覧会です。
作品は円空仏90体、木喰80体ほど。初出の像のほか資料も含みます。かなりのボリュームがありました。(出品リスト)
円空「普賢菩薩」 円空美術館 岐阜県岐阜市
冒頭は円空です。三体の「十一面観音菩薩」が並びます。背の高い仏様、いずれも笑みを浮かべています。身体は平べったい。うち特に大きな菩薩像(津市真教寺)は飛鳥仏に似ているとの指摘もあるそうです。確かに笑みは神秘的でもある。十一面観音で天衣を垂らす唯一の作例と言われているそうです。
さて時に荒い鑿や鉈の跡を残す円空仏、中でも一際異彩を放つ作品がありました。それが「護法神」(志摩市少林寺)です。
キャプションに「抽象性」との言葉がありましたが、もはやそれすら超越しているのではないかと思うほどに謎めいてもいます。切り出した木の幹をそのまま立てたような姿は、もはや一体どのような像が彫られているのかすら分かりません。
「薬師如来/阿弥陀如来」(三重郡菰野町明福寺)も目を引きました。二つの如来が像の表と裏に彫られています。薬師は現世、阿弥陀は来世を示します。つまり両面仏です。すくっと立っていました。
円空「不動明王」 個人蔵 岐阜県関市
「不動三尊」から「不動明王」(日光市清瀧寺)も力強いのではないでしょうか。特に光背の火焔に迫力があります。朽木をそのまま利用して立体感を出しています。
円空は32歳頃に造像をはじめ、約30年間で12万体もの像を作ったと考えられています。現存するのは5386体ですが、北海道から四国、九州まで分布するものの、うち愛知に3000体、そして円空の生まれた岐阜に1600体余が残されているそうです。
木喰「十二神将」 西光寺 新潟県柏崎市
一方で60歳を過ぎてから仏像を制作したのが木喰です。93歳で亡くなるまで2000体余の像を作ります。うち約720体が今も残っています。(新潟282体、山梨89体の順。)
確認される唯一の普賢様です。それが「普賢菩薩」(諏訪郡富士見町法隆寺)。象の上にはまるでもみ手をするように手をあわす菩薩の姿が象られています。彫の跡でしょうか。木目のようなうねりが全身に刻まれています。
円空同様、地域の人々に信仰されてきた仏像、色々な意味で民衆に近しい存在であったことを伺い知れる作品がありました。例えば「秩父三十四所観音菩薩」と「自身像」(長岡市金毘羅堂)です。
というのも特に「自身像」の身体や顔の部分が相当に摩耗していますが、これは昔、何と子どもたちがお堂から出してソリとして遊んでいたからだとか。顔がすり減って完全にのっぺらぼうになっています。
また「薬師如来」(柏崎市個人蔵)のお堂にはたくさん小石が置かれていることで知られています。と言うのもその石で病気の患部を擦ると治癒するという謂れがあり、その後に礼として年齢分の小石を供える風習があるからだそうです。
最晩年、現存する最後の像である「阿弥陀如来」(諏訪郡下諏訪町慈雲寺)も胸を打ちます。いつもの笑みをたたえながらも、どこか達観した様を見せているかのような仏様。記録によればこの翌年、木喰は91歳まで仏像を彫っていたとも伝えられています。
木喰「子安観音菩薩(立木仏)」(部分) 光明寺 愛媛県四国中央市
円空と木喰、造形は時に対比的で、時代も異なり、木喰が円空仏を見たという確かな証拠も残されていません。
しかしながら両者の仏像や神像に見られる何とも言い難い親密さ。ともに市井の人々に親しまれた仏像です。愛おしいという言葉は相応しくないかもしれませんが、彼らの「微笑み」に囲まれていると、こちらも思わず笑みをこぼしてしまう。そのような展示でもありました。
立派な図録が販売されていました。図版はもちろん、論考や解説も充実しています。保存版になりそうです。
[円空・木喰展 巡回予定]
山梨県立博物館:3月28日(土)~5月18日(月)
松坂屋美術館:6月13日(土)~7月12日(日)
岡山県立美術館:7月17日(金)~8月23日(日)
作品の何割かは露出展示です。まさに目と鼻の先で仏像の魅力を味わうことが出来ました。
「円空と木喰ー微笑みの仏たち/ToBi selection/東京美術」
3月22日まで開催されています。
「微笑みに込められた祈り 円空・木喰展」 そごう美術館
会期:2月7日(土)~3月22日(日)
休館:そごう横浜店の休日に準じる。
時間:10:00~20:00 *入館は閉館の30分前まで。
料金:大人1000(800)円、大学・高校生800(600)円、中学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
住所:横浜市西区高島2-18-1 そごう横浜店6階
交通:JR線横浜駅東口よりポルタ地下街通路にて徒歩5分。
「微笑みに込められた祈り 円空・木喰展」
2/7-3/22
そごう美術館で開催中の「微笑みに込められた祈り 円空・木喰展」を見てきました。
江戸の異なる時代、ともに全国を渡り歩いて仏像や神像を彫り続けた円空(1632-1695)、そして木喰(1718-1810)。意外にも首都圏では初めて両者の彫像をまとめて紹介する展覧会です。
作品は円空仏90体、木喰80体ほど。初出の像のほか資料も含みます。かなりのボリュームがありました。(出品リスト)
円空「普賢菩薩」 円空美術館 岐阜県岐阜市
冒頭は円空です。三体の「十一面観音菩薩」が並びます。背の高い仏様、いずれも笑みを浮かべています。身体は平べったい。うち特に大きな菩薩像(津市真教寺)は飛鳥仏に似ているとの指摘もあるそうです。確かに笑みは神秘的でもある。十一面観音で天衣を垂らす唯一の作例と言われているそうです。
さて時に荒い鑿や鉈の跡を残す円空仏、中でも一際異彩を放つ作品がありました。それが「護法神」(志摩市少林寺)です。
キャプションに「抽象性」との言葉がありましたが、もはやそれすら超越しているのではないかと思うほどに謎めいてもいます。切り出した木の幹をそのまま立てたような姿は、もはや一体どのような像が彫られているのかすら分かりません。
「薬師如来/阿弥陀如来」(三重郡菰野町明福寺)も目を引きました。二つの如来が像の表と裏に彫られています。薬師は現世、阿弥陀は来世を示します。つまり両面仏です。すくっと立っていました。
円空「不動明王」 個人蔵 岐阜県関市
「不動三尊」から「不動明王」(日光市清瀧寺)も力強いのではないでしょうか。特に光背の火焔に迫力があります。朽木をそのまま利用して立体感を出しています。
円空は32歳頃に造像をはじめ、約30年間で12万体もの像を作ったと考えられています。現存するのは5386体ですが、北海道から四国、九州まで分布するものの、うち愛知に3000体、そして円空の生まれた岐阜に1600体余が残されているそうです。
木喰「十二神将」 西光寺 新潟県柏崎市
一方で60歳を過ぎてから仏像を制作したのが木喰です。93歳で亡くなるまで2000体余の像を作ります。うち約720体が今も残っています。(新潟282体、山梨89体の順。)
確認される唯一の普賢様です。それが「普賢菩薩」(諏訪郡富士見町法隆寺)。象の上にはまるでもみ手をするように手をあわす菩薩の姿が象られています。彫の跡でしょうか。木目のようなうねりが全身に刻まれています。
円空同様、地域の人々に信仰されてきた仏像、色々な意味で民衆に近しい存在であったことを伺い知れる作品がありました。例えば「秩父三十四所観音菩薩」と「自身像」(長岡市金毘羅堂)です。
というのも特に「自身像」の身体や顔の部分が相当に摩耗していますが、これは昔、何と子どもたちがお堂から出してソリとして遊んでいたからだとか。顔がすり減って完全にのっぺらぼうになっています。
また「薬師如来」(柏崎市個人蔵)のお堂にはたくさん小石が置かれていることで知られています。と言うのもその石で病気の患部を擦ると治癒するという謂れがあり、その後に礼として年齢分の小石を供える風習があるからだそうです。
最晩年、現存する最後の像である「阿弥陀如来」(諏訪郡下諏訪町慈雲寺)も胸を打ちます。いつもの笑みをたたえながらも、どこか達観した様を見せているかのような仏様。記録によればこの翌年、木喰は91歳まで仏像を彫っていたとも伝えられています。
木喰「子安観音菩薩(立木仏)」(部分) 光明寺 愛媛県四国中央市
円空と木喰、造形は時に対比的で、時代も異なり、木喰が円空仏を見たという確かな証拠も残されていません。
しかしながら両者の仏像や神像に見られる何とも言い難い親密さ。ともに市井の人々に親しまれた仏像です。愛おしいという言葉は相応しくないかもしれませんが、彼らの「微笑み」に囲まれていると、こちらも思わず笑みをこぼしてしまう。そのような展示でもありました。
立派な図録が販売されていました。図版はもちろん、論考や解説も充実しています。保存版になりそうです。
[円空・木喰展 巡回予定]
山梨県立博物館:3月28日(土)~5月18日(月)
松坂屋美術館:6月13日(土)~7月12日(日)
岡山県立美術館:7月17日(金)~8月23日(日)
作品の何割かは露出展示です。まさに目と鼻の先で仏像の魅力を味わうことが出来ました。
「円空と木喰ー微笑みの仏たち/ToBi selection/東京美術」
3月22日まで開催されています。
「微笑みに込められた祈り 円空・木喰展」 そごう美術館
会期:2月7日(土)~3月22日(日)
休館:そごう横浜店の休日に準じる。
時間:10:00~20:00 *入館は閉館の30分前まで。
料金:大人1000(800)円、大学・高校生800(600)円、中学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
住所:横浜市西区高島2-18-1 そごう横浜店6階
交通:JR線横浜駅東口よりポルタ地下街通路にて徒歩5分。
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