都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「1462days~アートするジャーナリズム」 河北ビル5~9F(銀座)
河北ビル5~9F(銀座)
「河北新報 東日本大震災 特別企画展 1462days~アートするジャーナリズム」
3/10~22

銀座河北ビルで開催中の「河北新報 東日本大震災 特別企画展 1462days ~アートするジャーナリズム~」を見てきました。
2011年3月11日に発生した東日本大震災。河北新報社のある宮城県も甚大な被害を受けました。地震、ないし津波によって多くの方々が亡くなられ、深い傷を負われました。
あれから4年。「河北新報も伝え続けてきた被災地の1462日を、アートはどう捉えたのか。」(チラシより)東北で活動する9組の現代アーティストらによる様々な表現、取り組みを紹介しています。
さて会場は銀座8丁目。かつて河北新報の東京支社として使われていたオフィスビルの5~9階です。受付は5階。まずは1階からエレベーターであがりました。

すると目の前に飛び込んできたのが、巨大な新聞のパネル。地震のあった日の翌日、津波の惨状を伝える河北新報の記事です。M8.8。まだ地震の規模すら確かでありません。死者・不明者多数、そして「原子力緊急事態を宣言」の文字。あの日から起こった一連の災害が否応無しに思い起こされます。
タイトルに「1462days」とあるのもポイントです。と言うのも、キャプションに「day1」や「day365」などと記されていますが、それは震災から数えた日数を指しています。つまり新聞の記事の日を「day1」、そして4年目を「day1462」と捉え、被災地がどのように変化してきたのか、またアーティストらがどのような活動をしていたのかを、日を追う形で見ることが出来るのです。(但し展示の順はその限りではありません。)

佐藤香「私の故郷、福島」 day365
「day365」、佐藤香の「私の故郷、福島」です。天井から垂れ下がるのは壁画、何メートルあるのでしょうか。大きい。表面には凹凸があります。素材は土です。元々、作家は国内各地で採取した土で絵を描いていたそうですが、今回は故郷の福島県田村町で集めたもの。いずれも実家から200メートル圏内です。サンプルには腐葉土や地層の中から採られた土もあります。質感は様々です。

佐藤香「私の故郷、福島」 day365
田村市は福島第一原子力発電所から40キロ。原発事故により放射線物質の検査や除染を余儀なくされた地域でもあります。ただ必ずしも「原発問題」を意識したものではなく、「故郷自慢のようなもの」(キャプションより)を志向したとか。見た目では変わらぬ土。もちろん汚染の問題は今もなお重要ですが、作家の故郷、あるいは自然を改めて讃えるようなメッセージも感じられました。

木村剛士「関係なく、ずっと歩く」 day2
部屋が無数の緩衝材によって満たされています。「day2」、木村剛士の「関係なく、ずっと歩く」。中に立ち入ることが出来ます。細かな緩衝材、天井にも繭のようにびっしり貼り付く。前へ進むと足や身体にまとわりつきます。ちょうど水の中を歩く感覚に近いかもしれません。

木村剛士「関係なく、ずっと歩く」 day2
ざっざっとかき分けては進む。白一色、一見、美しいインスタレーションですが、おそらくは瓦礫で埋め尽くされた泥流を意識したのでしょう。「できることは、無力さを胸に歩きつづけることだけだった。」とは作家の言葉です。重くのりかかります。

森田梢「太陽をつくる夢」 day302
「day302」、津波で被害を受けても伸びるヨシを描くのは森田梢、「太陽をつくる夢」です。

尾崎森平「林檎の木」 day2
尾崎森平は被災地の農園に佇む一本のリンゴを表しました。ずばり「林檎の木」です。実は全て落ち、木は殆ど朽ち果てています。背景に広がるのは薄暗がりのグレーです。不穏な気配が漂います。

作品と関連した震災記事の展示も重要です。アートの表現だけでなく、ジャーナリズムは何を伝えたのか。その両面から震災を問い直しています。

アートユニットうわばみによる壁画(会場内階段部分)
会場内、各階を行き来する階段の壁の部分に絵が描かれていました。制作したのはアートユニットのうわばみです。
5階から9階、はじめはかの大津波です。青く黒い波が船がのみ、地上を襲います。建物の屋上に避難しては途方に暮れる人々の姿もありました。

アートユニットうわばみによる壁画(会場内階段部分)
その後はいわゆる「復興」のプロセスです。重機が入り、整地し、新たな建物を造る。地域のお祭りでしょうか。楽器を鳴らしては踊る人たちがいる。再び賑わいが生まれました。

佐藤俊一×伊興田千恵「こぼれていく記憶」 day1
「記憶の風化は、アートが止める。」と訴える「1462days~アートするジャーナリズム」展。ずばり風化をテーマとした砂の新聞、「おぼれていく記憶」も胸に迫ります。砂は吹き飛ばされても記憶は飛ばされません。そもそも何も災害は終わったわけではないのです。

「1462days~アートするジャーナリズム」会場入口
ご紹介が遅れました。明日、3月22日(日)まで開催されています。入場は無料でした。
「1462days~アートするジャーナリズム~」 河北ビル5~9F(銀座)
会期:3月10日(火)~3月22日(日)
休館:3月20日(金)、21日(土)。
時間:13:00~20:00
*土日は11時から。
料金:無料。
住所:中央区銀座8-6-25 河北ビル5~9F
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A2、B6出口から徒歩5分。東京メトロ銀座線新橋駅3番出口から徒歩5分。
「河北新報 東日本大震災 特別企画展 1462days~アートするジャーナリズム」
3/10~22

銀座河北ビルで開催中の「河北新報 東日本大震災 特別企画展 1462days ~アートするジャーナリズム~」を見てきました。
2011年3月11日に発生した東日本大震災。河北新報社のある宮城県も甚大な被害を受けました。地震、ないし津波によって多くの方々が亡くなられ、深い傷を負われました。
あれから4年。「河北新報も伝え続けてきた被災地の1462日を、アートはどう捉えたのか。」(チラシより)東北で活動する9組の現代アーティストらによる様々な表現、取り組みを紹介しています。
さて会場は銀座8丁目。かつて河北新報の東京支社として使われていたオフィスビルの5~9階です。受付は5階。まずは1階からエレベーターであがりました。

すると目の前に飛び込んできたのが、巨大な新聞のパネル。地震のあった日の翌日、津波の惨状を伝える河北新報の記事です。M8.8。まだ地震の規模すら確かでありません。死者・不明者多数、そして「原子力緊急事態を宣言」の文字。あの日から起こった一連の災害が否応無しに思い起こされます。
タイトルに「1462days」とあるのもポイントです。と言うのも、キャプションに「day1」や「day365」などと記されていますが、それは震災から数えた日数を指しています。つまり新聞の記事の日を「day1」、そして4年目を「day1462」と捉え、被災地がどのように変化してきたのか、またアーティストらがどのような活動をしていたのかを、日を追う形で見ることが出来るのです。(但し展示の順はその限りではありません。)

佐藤香「私の故郷、福島」 day365
「day365」、佐藤香の「私の故郷、福島」です。天井から垂れ下がるのは壁画、何メートルあるのでしょうか。大きい。表面には凹凸があります。素材は土です。元々、作家は国内各地で採取した土で絵を描いていたそうですが、今回は故郷の福島県田村町で集めたもの。いずれも実家から200メートル圏内です。サンプルには腐葉土や地層の中から採られた土もあります。質感は様々です。

佐藤香「私の故郷、福島」 day365
田村市は福島第一原子力発電所から40キロ。原発事故により放射線物質の検査や除染を余儀なくされた地域でもあります。ただ必ずしも「原発問題」を意識したものではなく、「故郷自慢のようなもの」(キャプションより)を志向したとか。見た目では変わらぬ土。もちろん汚染の問題は今もなお重要ですが、作家の故郷、あるいは自然を改めて讃えるようなメッセージも感じられました。

木村剛士「関係なく、ずっと歩く」 day2
部屋が無数の緩衝材によって満たされています。「day2」、木村剛士の「関係なく、ずっと歩く」。中に立ち入ることが出来ます。細かな緩衝材、天井にも繭のようにびっしり貼り付く。前へ進むと足や身体にまとわりつきます。ちょうど水の中を歩く感覚に近いかもしれません。

木村剛士「関係なく、ずっと歩く」 day2
ざっざっとかき分けては進む。白一色、一見、美しいインスタレーションですが、おそらくは瓦礫で埋め尽くされた泥流を意識したのでしょう。「できることは、無力さを胸に歩きつづけることだけだった。」とは作家の言葉です。重くのりかかります。

森田梢「太陽をつくる夢」 day302
「day302」、津波で被害を受けても伸びるヨシを描くのは森田梢、「太陽をつくる夢」です。

尾崎森平「林檎の木」 day2
尾崎森平は被災地の農園に佇む一本のリンゴを表しました。ずばり「林檎の木」です。実は全て落ち、木は殆ど朽ち果てています。背景に広がるのは薄暗がりのグレーです。不穏な気配が漂います。

作品と関連した震災記事の展示も重要です。アートの表現だけでなく、ジャーナリズムは何を伝えたのか。その両面から震災を問い直しています。

アートユニットうわばみによる壁画(会場内階段部分)
会場内、各階を行き来する階段の壁の部分に絵が描かれていました。制作したのはアートユニットのうわばみです。
5階から9階、はじめはかの大津波です。青く黒い波が船がのみ、地上を襲います。建物の屋上に避難しては途方に暮れる人々の姿もありました。

アートユニットうわばみによる壁画(会場内階段部分)
その後はいわゆる「復興」のプロセスです。重機が入り、整地し、新たな建物を造る。地域のお祭りでしょうか。楽器を鳴らしては踊る人たちがいる。再び賑わいが生まれました。

佐藤俊一×伊興田千恵「こぼれていく記憶」 day1
「記憶の風化は、アートが止める。」と訴える「1462days~アートするジャーナリズム」展。ずばり風化をテーマとした砂の新聞、「おぼれていく記憶」も胸に迫ります。砂は吹き飛ばされても記憶は飛ばされません。そもそも何も災害は終わったわけではないのです。

「1462days~アートするジャーナリズム」会場入口
ご紹介が遅れました。明日、3月22日(日)まで開催されています。入場は無料でした。
「1462days~アートするジャーナリズム~」 河北ビル5~9F(銀座)
会期:3月10日(火)~3月22日(日)
休館:3月20日(金)、21日(土)。
時間:13:00~20:00
*土日は11時から。
料金:無料。
住所:中央区銀座8-6-25 河北ビル5~9F
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A2、B6出口から徒歩5分。東京メトロ銀座線新橋駅3番出口から徒歩5分。
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