都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「北斎の帰還」 すみだ北斎美術館
すみだ北斎美術館
「開館記念展 北斎の帰還ー幻の絵巻と名品コレクション」
2016/11/22〜2017/1/15
約100年ぶりに発見された葛飾北斎の「隅田川両岸景色図巻」が、新しくオープンしたすみだ北斎美術館にて公開されています。
「隅田川両岸景色図巻」は全長7メートル。北斎作品で最長です。言うまでもなくモチーフは隅田川です。両国橋あたりにはじまり、柳橋から日本堤、そして吉原へと至る隅田川の光景を描いています。
ともかく描写は精緻、さらに作品自体の状態も良好です。人々の表情は豊かで、さも会話する声が聞こえるかのようです。水面の色遣いも繊細でした。淡い水色が滲み出しています。面白いのは吉原の部分でした。とするのも、街はやや遠景、引きの構図で示されていて賑わいは見られません。静まり返っています。
葛飾北斎「隅田川両岸景色図巻」(部分) 文化2(1805)年
その先に進むと一変しました。吉原での宴の様子が突如、大きく描かれているのです。旦那衆は楽しげです。幾分、着物も乱れているようにも見えます。宴もたけなわといったところでした。
ちなみに同図巻は長らく所在不明ながらもフランスで発見。昨年に墨田区がオークションで取得しました。日本で展示されるのは初めてのことです。嬉しいことに7メートル全て開いています。専用の覗き込みケースで細部までじっくり見られました。
葛飾北斎「桜に鷹」 天保5(1834)年頃 展示期間:11/22〜12/18
「隅田川両岸景色図巻」のほかは「名品コレクション」。墨田区の所有する北斎画です。その数は全120点。実際のところは入れ替えのため、約半数ほどが展示されています。
ご当地、墨田に因む作品が目立つのも特徴です。例えば「風流隅田川八景」や「すみだがわ」。また先立つこと晩年の北斎を描いた「葛飾北斎像」も興味深い一枚です。作者は幽霊画などでも知られる伊藤晴雨。北斎が草庵で子どもに絵を渡しています。晴雨は北斎門下の北俊に手習いを受けていたそうです。子どもの姿に自身を重ねているのかもしれません。
葛飾北斎「冨嶽三十六景 隅田川関屋の里」 天保2(1831)年頃 展示期間:12/20〜1/15
ほか有名どころでは「冨嶽三十六景」や「諸国瀧巡り」なども出展。「百物語 さらやしき」の発色も鮮やかです。ラストは肉筆です。「千鳥の玉川図」や「鮟鱇図」、さらに「貴人と官人図」などが目を引きました。
さてすみだ北斎美術館もオープンしてから約1ヶ月を経過しました。私もやや出遅れましたが、先週、ようやく見に行くことが出来ました。
場所は墨田区の亀沢2丁目。北斎の生誕地です。最寄は大江戸線の両国駅でした。エレベーターのA3出口を出て、清澄通りを横断。そのまま北斎通りを直進すると、5分もかからないうちに到達します。
一方でJRの両国駅から少し距離があります。東口を出て、総武線の南側を迂回して進む必要があります。10分近くはかかります。
美術館を設計したのは建築家の妹島和世です。外壁に淡い鏡面のアルミパネルを使用しています。地域に溶け込むとありますが、むしろ周囲とは明らかに異質。非常に目立ちます。個性的な建物でした。
手前は公園です。スリット部分が入場口です。右手がロビーでした。建物は地下1階、地上4階の5層。1階がチケットブースとミュージアムショップです。地下は授乳室とロッカー。2階は事務室のため立ち入り出来ません。展示室は3階と4階です。常設は4階、企画展示室は4階と3階に分かれています。
動線が複雑です。と言うのも、1階から展示室のある3、4階へはエレベーターでしか上がることが出来ません。エレベーターは2機。地下と1階、3階と4階こそ階段で移動可能ですが、ともかく必ずエレベーターに乗らなくては展示室に辿り着けません。
トイレは3階と1階、及び地下にありましたが、3階と1階はかなり手狭です。比較的広い地下のトイレの利用をおすすめします。
常設展示室は一部を除いて撮影が可能でした。
展示室は一室のみ。暗室です。7つのエリアに習作、錦絵、肉筆画などが並んでいます。基本的に北斎の画業を時間軸で追うことが出来ます。
注意が必要なのは常設はレプリカということです。ですが、出来自体はかなり良い。本物と見間違うかもしれません。
次世代の美術館ということでしょうか。キャプションがいずれもタッチパネルでした。日本語、英語、中国語、ハングル対応です。作品画像をタッチすると素早く解説を読むことが出来ます。
また同じくタッチパネルには「北斎漫画パズル」や「北斎漫画コマアニメ」などのコンテンツも用意されています。触れて遊びながら、北斎について親しめるのではないでしょうか。
アトリエの再現模型が秀逸でした。時は北斎が84歳。娘の阿栄とともに住んでいたそうです。その様子を等身大模型で再現。写真ではわかりませんが、実にリアルに動きます。
美術館には図書室、及び講座室もあります。こちらは入館料不要です。講座室では例の「隅田川両岸図巻」の解説映像が上映されていました。
建物自体は全般的に手狭です。そもそも多くの方が来館することを想定していないのかもしれません。私はタイミング良く、平日の午後に出かけたため、スムーズに観覧出来ましたが、それでもエレベーター前には僅かな行列も発生。トイレに並んでいる方もいました。土日をはじめ、団体などの多客時には、すぐにキャパシティを超えてしまうのではないでしょうか。ロッカーの台数も多くありません。
実際、入場者数は予想を上回るペースで推移し、一部時間帯においてチケット購入待ちの列も出来ているそうです。現状ではコンビニなどでの事前購入も叶いません。公式ツイッターなどのSNSでのリアルタイムの混雑情報の発信もありません。
年明けは相当な混雑も予想されます。時間に余裕をもってお出かけください。
2017年1月15日まで開催されています。
「開館記念展 北斎の帰還ー幻の絵巻と名品コレクション」 すみだ北斎美術館(@HokusaiMuseum)
会期:2016年11月22日(火)〜2017年1月15日(日)
休館:月曜日。年末年始(12月29日〜1月1日)。
時間:9:30~17:30(入場は17:00まで)
料金:一般1200(960)円、大学・高校生・65歳以上900(720)円、中学生400(320)円。小学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
*観覧日当日に限り、常設展も観覧可。
住所:墨田区亀沢2-7-2
交通:都営地下鉄大江戸線両国駅A3出口より徒歩5分。JR線両国駅東口より徒歩10分。
「開館記念展 北斎の帰還ー幻の絵巻と名品コレクション」
2016/11/22〜2017/1/15
約100年ぶりに発見された葛飾北斎の「隅田川両岸景色図巻」が、新しくオープンしたすみだ北斎美術館にて公開されています。
「隅田川両岸景色図巻」は全長7メートル。北斎作品で最長です。言うまでもなくモチーフは隅田川です。両国橋あたりにはじまり、柳橋から日本堤、そして吉原へと至る隅田川の光景を描いています。
ともかく描写は精緻、さらに作品自体の状態も良好です。人々の表情は豊かで、さも会話する声が聞こえるかのようです。水面の色遣いも繊細でした。淡い水色が滲み出しています。面白いのは吉原の部分でした。とするのも、街はやや遠景、引きの構図で示されていて賑わいは見られません。静まり返っています。
葛飾北斎「隅田川両岸景色図巻」(部分) 文化2(1805)年
その先に進むと一変しました。吉原での宴の様子が突如、大きく描かれているのです。旦那衆は楽しげです。幾分、着物も乱れているようにも見えます。宴もたけなわといったところでした。
ちなみに同図巻は長らく所在不明ながらもフランスで発見。昨年に墨田区がオークションで取得しました。日本で展示されるのは初めてのことです。嬉しいことに7メートル全て開いています。専用の覗き込みケースで細部までじっくり見られました。
葛飾北斎「桜に鷹」 天保5(1834)年頃 展示期間:11/22〜12/18
「隅田川両岸景色図巻」のほかは「名品コレクション」。墨田区の所有する北斎画です。その数は全120点。実際のところは入れ替えのため、約半数ほどが展示されています。
ご当地、墨田に因む作品が目立つのも特徴です。例えば「風流隅田川八景」や「すみだがわ」。また先立つこと晩年の北斎を描いた「葛飾北斎像」も興味深い一枚です。作者は幽霊画などでも知られる伊藤晴雨。北斎が草庵で子どもに絵を渡しています。晴雨は北斎門下の北俊に手習いを受けていたそうです。子どもの姿に自身を重ねているのかもしれません。
葛飾北斎「冨嶽三十六景 隅田川関屋の里」 天保2(1831)年頃 展示期間:12/20〜1/15
ほか有名どころでは「冨嶽三十六景」や「諸国瀧巡り」なども出展。「百物語 さらやしき」の発色も鮮やかです。ラストは肉筆です。「千鳥の玉川図」や「鮟鱇図」、さらに「貴人と官人図」などが目を引きました。
さてすみだ北斎美術館もオープンしてから約1ヶ月を経過しました。私もやや出遅れましたが、先週、ようやく見に行くことが出来ました。
場所は墨田区の亀沢2丁目。北斎の生誕地です。最寄は大江戸線の両国駅でした。エレベーターのA3出口を出て、清澄通りを横断。そのまま北斎通りを直進すると、5分もかからないうちに到達します。
一方でJRの両国駅から少し距離があります。東口を出て、総武線の南側を迂回して進む必要があります。10分近くはかかります。
美術館を設計したのは建築家の妹島和世です。外壁に淡い鏡面のアルミパネルを使用しています。地域に溶け込むとありますが、むしろ周囲とは明らかに異質。非常に目立ちます。個性的な建物でした。
手前は公園です。スリット部分が入場口です。右手がロビーでした。建物は地下1階、地上4階の5層。1階がチケットブースとミュージアムショップです。地下は授乳室とロッカー。2階は事務室のため立ち入り出来ません。展示室は3階と4階です。常設は4階、企画展示室は4階と3階に分かれています。
動線が複雑です。と言うのも、1階から展示室のある3、4階へはエレベーターでしか上がることが出来ません。エレベーターは2機。地下と1階、3階と4階こそ階段で移動可能ですが、ともかく必ずエレベーターに乗らなくては展示室に辿り着けません。
トイレは3階と1階、及び地下にありましたが、3階と1階はかなり手狭です。比較的広い地下のトイレの利用をおすすめします。
常設展示室は一部を除いて撮影が可能でした。
展示室は一室のみ。暗室です。7つのエリアに習作、錦絵、肉筆画などが並んでいます。基本的に北斎の画業を時間軸で追うことが出来ます。
注意が必要なのは常設はレプリカということです。ですが、出来自体はかなり良い。本物と見間違うかもしれません。
次世代の美術館ということでしょうか。キャプションがいずれもタッチパネルでした。日本語、英語、中国語、ハングル対応です。作品画像をタッチすると素早く解説を読むことが出来ます。
また同じくタッチパネルには「北斎漫画パズル」や「北斎漫画コマアニメ」などのコンテンツも用意されています。触れて遊びながら、北斎について親しめるのではないでしょうか。
アトリエの再現模型が秀逸でした。時は北斎が84歳。娘の阿栄とともに住んでいたそうです。その様子を等身大模型で再現。写真ではわかりませんが、実にリアルに動きます。
美術館には図書室、及び講座室もあります。こちらは入館料不要です。講座室では例の「隅田川両岸図巻」の解説映像が上映されていました。
建物自体は全般的に手狭です。そもそも多くの方が来館することを想定していないのかもしれません。私はタイミング良く、平日の午後に出かけたため、スムーズに観覧出来ましたが、それでもエレベーター前には僅かな行列も発生。トイレに並んでいる方もいました。土日をはじめ、団体などの多客時には、すぐにキャパシティを超えてしまうのではないでしょうか。ロッカーの台数も多くありません。
実際、入場者数は予想を上回るペースで推移し、一部時間帯においてチケット購入待ちの列も出来ているそうです。現状ではコンビニなどでの事前購入も叶いません。公式ツイッターなどのSNSでのリアルタイムの混雑情報の発信もありません。
年明けは相当な混雑も予想されます。時間に余裕をもってお出かけください。
12月27日・28日、開館します多くのお客さまにご来館いただいていることから、27日と28日を通常どおり開館します。(旧年末年始休館)2016年12月26日(月)~2017年1月1日(日)(新年末年始休館)2016年12月29日(木)~2017年1月1日(日)
— すみだ北斎美術館 (@HokusaiMuseum) 2016年12月10日
2017年1月15日まで開催されています。
「開館記念展 北斎の帰還ー幻の絵巻と名品コレクション」 すみだ北斎美術館(@HokusaiMuseum)
会期:2016年11月22日(火)〜2017年1月15日(日)
休館:月曜日。年末年始(12月29日〜1月1日)。
時間:9:30~17:30(入場は17:00まで)
料金:一般1200(960)円、大学・高校生・65歳以上900(720)円、中学生400(320)円。小学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
*観覧日当日に限り、常設展も観覧可。
住所:墨田区亀沢2-7-2
交通:都営地下鉄大江戸線両国駅A3出口より徒歩5分。JR線両国駅東口より徒歩10分。
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