都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
2016年 私が観た展覧会 ベスト10
年末恒例、独断と偏見による私的ベスト企画です。私が今年観た展覧会のベスト10をあげてみました。
2016年 私が観た展覧会 ベスト10
1.「恩地孝四郎展」 東京国立近代美術館
恩地孝四郎について何も知らなかったことを思い知らされました。一口に木版といえども、表現は驚くほどに多様です。まるで油画のような「氷島の著者(萩原朔太郎)」の質感も素晴らしい。時に音楽や詩作と交差しては常に新しい地平を切り開きます。そのいわば挑戦的な姿勢にも惹かれました。20年ぶりの回顧展、海外からも作品が多数やって来ました。また思索の有り様を追うような会場構成も効果的だったのではないでしょうか。ひたすら版画の魅力にとりつかれ、今年一番、時間を忘れて見入った展覧会でした。
2.「鈴木其一 江戸琳派の旗手」 サントリー美術館
其一単独の大規模な回顧展がようやく開催されました。何よりは「朝顔図屏風」です。2004年のRIMPA展以来の里帰り。そして私自身、かの展覧会で本作と抱一の「夏秋草図屏風」を見て、琳派を好きになったものでした。それからおおよそ12年。再会の喜びもひとしおです。ほか全国各地からも作品を網羅。質だけでなく量も不足ありませんでした。まさしく史上初、そして史上最高の其一展でした。
3.「カラヴァッジョ展」 国立西洋美術館
絵画そのものの熱気に包まれ、心奪われた展覧会でした。カラヴァッジョ作だけで国内最多の11点。もちろん作品の同定については議論あることでしょう。ただそれでも「果物籠を持つ少年」はあまりにも艶やかで、「法悦のマグダラのマリア」はあまりにも劇的でした。絵に痺れるという感覚は久々です。元々、好きだったバロック絵画、ないしカラヴァッジョをこれまでにない規模で見られて満足でした。
4.「吉田博展」 千葉市美術館
吉田博は木版の画家と思っていた先入観が見事に覆されました。木版はもとより、油彩、水彩のいずれのジャンルおいても成果を残しています。油画の戦争画も異様なまでに迫力がありました。また自らを売り込むために渡米。各地を練り歩いては自作を売り、資金を獲得していったエピソードも凄い。とても行動的でかつ研究熱心、さらに情熱的な人物です。黒田清輝を殴ったというのも無理はなかったのかもしれません。
5.「ジョルジョ・モランディ展」 東京ステーションギャラリー
国内では17年ぶりの大規模なモランディ展でした。「すこし、ちがう。すごく、ちがう。」とありましたが、チラシに確かに似たような構図、ないしモチーフにおいても、それぞれは異なっていることが見て取れます。有名な一連の静物画はもちろん、風景画にも大いに惹かれました。そしてざわめく筆触。実に繊細です。初めてその魅力に気がつきました。
6.「ルノワール展」 国立新美術館
「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」がまさかあれほどに素晴らしい作品だとは思いませんでした。図版では度々目にした有名作ではありますが、実物の色彩の躍動感と言ったら比類がありません。光が全て色で表現されています。まるで白昼夢です。それこそ夢見心地で見入ってしまいました。またほかのルノワール作も粒揃い。これまで見てきたルノワール展の中で圧倒的に充実していました。
7.「柳幸典 ワンダリング・ポジション」 BankArt Studio NYK
柳幸典の表現がBankArtの空間を見事なまでに支配していました。中でも驚いたのは3階での展開です。太陽に追われ、光に導かれたと思いきや、突如、リトルボーイが現れます。そしてその先に放射性廃棄物と瓦礫をまとったゴジラが鳴りを潜めていました。日本の近代史を回顧した目はあまりにも凶暴で恐ろしい。黙示的です。これほど戦慄なまでの体験をした展覧会もありませんでした。
8.「旅するルイ・ヴィトン」 紀尾井町ルイ・ヴィトン特設会場
ヴィトンの歴史と世界観を見事に伝えていたのではないでしょうか。いわゆる美術展というジャンルではないかもしれませんが、フランスよりやってきた貴重な歴史資料も多数。構成自体も良く練られていました。そして何よりは展示空間です。これが素晴らしい。部屋を移動するごとに新たな発見があります。気がつけば1時間半、夢中で見ていました。
9.「ジャック=アンリ・ラルティーグ 幸せの瞬間をつかまえて」 埼玉県立近代美術館
フランスの大富豪の家に生まれ、自由気ままに写真を撮り続けたラルティーグ。確かにどの写真からも幸福感、ないし愉悦感が伝わってきます。2度の大戦があった時代ながらも、その気配は微塵も感じられません。日本初公開となった戦後のカラー写真がまるでInstagramのように見えたのも面白いところでした。作品よりもラルティーグという人物に強く興味を覚えました。
10.「若冲展」 東京都美術館
今年、最も話題となり、事実上、最も多くの人を集めたのが若冲展でした。動植綵絵と釈迦三尊像の揃い踏み展示は圧巻の一言。東京では初めての邂逅でした。ほか菜蟲譜、鹿苑寺の襖絵など代表作もずらり。確かに動植綵絵を含めた展示としては空前絶後のスケールでした。ただし人気は沸騰し、会期途中には最大で5時間待ちもの行列が発生。物議を醸しました。大規模展の開催や運営のあり方について色々と考えさせられました。
次点.「ロバート・フランク展」 東京藝術大学大学美術館・陳列館
いかがでしょうか。ロバート・フランクについては、教育的プログラムと、作品をあえて安価な新聞用紙に印刷する手法に、写真展の新たな方向性も垣間見えたことから、次点にしました。またベスト10以外で特に印象に残った展覧会は以下の通りです。(順不同)
「小田野直武と秋田蘭画」 サントリー美術館
「日本におけるキュビスムーピカソ・インパクト」 埼玉県立近代美術館
「マリー・アントワネット展」 森アーツセンターギャラリー
「デトロイト美術館展」 上野の森美術館
「ゴッホとゴーギャン展」 東京都美術館
「浦上玉堂と春琴・秋琴 父子の芸術」 千葉市美術館
「柳根澤 召喚される絵画の全量」 多摩美術大学美術館
「禅ー心をかたちに」 東京国立博物館
「円山応挙 『写生』を超えて」 根津美術館
「ラスコー展」 国立科学博物館
「クラーナハ展」 国立西洋美術館
「さいたまトリエンナーレ2016」 さいたま市内各会場
「速水御舟の全貌ー日本画の破壊と創造」 山種美術館
「大仙厓展ー禅の心、ここに集う」 出光美術館
「ダリ展」 国立新美術館
「小川信治ーあなた以外の世界のすべて」 千葉市美術館
「トーマス・ルフ展」 東京国立近代美術館
「驚きの明治工藝」 東京藝術大学大学美術館
「宇宙と芸術展」 森美術館
「伊藤晴雨 幽霊画展」 江戸東京博物館
「燃える東京・多摩 画家・新海覚雄の軌跡」 府中市美術館
「メアリー・カサット展」 横浜美術館
「木々との対話」 東京都美術館
「ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち」 国立新美術館
「古代ギリシャ展」 東京国立博物館
「よみがえれ!シーボルトの日本博物館」 国立歴史民俗博物館
「大妖怪展」 江戸東京博物館
「観音の里の祈りとくらし展2」 東京藝術大学大学美術館
「ポンピドゥー・センター傑作展」 東京都美術館
「ほほえみの御仏ー二つの半跏思惟像」 東京国立博物館
「いま、被災地からー岩手・宮城・福島の美術と震災復興」 東京藝術大学大学美術館
「国吉康雄展」 そごう美術館
「ポンペイの壁画展」 森アーツセンターギャラリー
「高島野十郎展ー光と闇、魂の軌跡」 目黒区美術館
「原安三郎コレクション 広重ビビッド」 サントリー美術館
「黄金のアフガニスタン」 東京国立博物館
「開館50周年記念 美の祝典1~3」 出光美術館
「六本木クロッシング2016」 森美術館
「安田靫彦展」 東京国立近代美術館
「俺たちの国芳 わたしの国貞」 Bunkamura ザ・ミュージアム
「馬鑑 山口晃展」 馬の博物館
「村上隆のスーパーフラット・コレクション」 横浜美術館
「没後100年 宮川香山」 サントリー美術館
「原田直次郎展」 埼玉県立近代美術館
「国芳イズム」 練馬区立美術館
「気仙沼と、東日本大震災の記憶」 目黒区美術館
「佐藤雅晴ー東京尾行」 原美術館
「夷酋列像ー蝦夷地イメージをめぐる人・物・世界」 国立歴史民俗博物館
「ボッティチェリ展」 東京都美術館
「英国の夢 ラファエル前派展」 Bunkamura ザ・ミュージアム
「初期浮世絵展」 千葉市美術館
毎年のことながらかなり多くなってしまいました。ここからあえてピックアップするなら、「東雲篩雪図」の美しさに驚いた「浦上玉堂と春琴・秋琴」。写真表現の多様性を見せつけられた「トーマス・ルフ」。まさにタイトルに偽りなし、状態の良い壁画ばかりが揃った「ポンペイの壁画展」。過剰なまでに膨大で、館内を覆う熱気にものまれた「村上隆のスーパーフラット・コレクション」。ボッティチェリのみならず、リッピ親子の3人の関係を優品ばかりで辿った「ボッティチェリ展」。そして浮世絵の成立史を極めて綿密に検証した「初期浮世絵展」なども深く印象に残りました。
日本、西洋、そして現代美術と分け隔てなく見ているつもりですが、何となしに日本美術に心に留まる展覧会が多かったような気がします。露出の多い国芳、国貞を、言わばキャッチーな切り口で見せた「俺たちの国芳 わたしの国貞」も面白かったのではないでしょうか。妖怪ウォッチ云々だけでなく、さりげなく貴重で珍しい作品も多かった「大妖怪展」もワクワクしながら見入りました。
近代の洋画家に充実した回顧展が目立ちました。約100年ぶりという「原田直次郎展」をはじめ、福武コレクションが一堂に会した「国吉康雄展」、そして初期から晩年までの画業を総覧した「高島野十郎展」も大変に見応えがありました。特に高島はかつて三鷹での個展で知って以来、より多く作品を見たいと思っていただけに、またとない機会となりました。
「燃える東京・多摩 画家・新海覚雄の軌跡」も好企画ではなかったでしょうか。作品はもとより、社会運動と深く関わった画家の生き様が伝わるような内容でした。無料のリーフレットも理解を深めるのに役立ちました。
震災から5年。被災と復興について踏み込んだ企画も行われました。それが「気仙沼と、東日本大震災の記憶」と「いま、被災地からー岩手・宮城・福島の美術と震災復興」の2つの展覧会です。
前者では気仙沼のリアス・アーク美術館の被害状況を丹念に紹介。学芸員らが実際に収集した被災物にレポートをつけていたのが殊更に印象的でした。後者では復興の様子だけでなく、東北全般の美術に目を向けた構成が特徴的でした。戦前、戦後の展開のみならず、まさしく今、震災後の現代美術についての言及もありました。
皆さんは今年一年、どのような美術との出会いがありましたでしょうか。心に残った展示などについてコメントかTBをいただければ嬉しいです。
このエントリをもって年内の更新を終わります。今年も「はろるど」とお付き合い下さりどうもありがとうございました。それではどうか良いお年をお迎え下さい。
*過去の展覧会ベスト10
2015年、2014年、2013年、2012年、2011年、2010年、2009年、2008年、2007年、2006年、2005年、2004年(その2。2003年も含む。)
2016年 私が観た展覧会 ベスト10
1.「恩地孝四郎展」 東京国立近代美術館
恩地孝四郎について何も知らなかったことを思い知らされました。一口に木版といえども、表現は驚くほどに多様です。まるで油画のような「氷島の著者(萩原朔太郎)」の質感も素晴らしい。時に音楽や詩作と交差しては常に新しい地平を切り開きます。そのいわば挑戦的な姿勢にも惹かれました。20年ぶりの回顧展、海外からも作品が多数やって来ました。また思索の有り様を追うような会場構成も効果的だったのではないでしょうか。ひたすら版画の魅力にとりつかれ、今年一番、時間を忘れて見入った展覧会でした。
2.「鈴木其一 江戸琳派の旗手」 サントリー美術館
其一単独の大規模な回顧展がようやく開催されました。何よりは「朝顔図屏風」です。2004年のRIMPA展以来の里帰り。そして私自身、かの展覧会で本作と抱一の「夏秋草図屏風」を見て、琳派を好きになったものでした。それからおおよそ12年。再会の喜びもひとしおです。ほか全国各地からも作品を網羅。質だけでなく量も不足ありませんでした。まさしく史上初、そして史上最高の其一展でした。
3.「カラヴァッジョ展」 国立西洋美術館
絵画そのものの熱気に包まれ、心奪われた展覧会でした。カラヴァッジョ作だけで国内最多の11点。もちろん作品の同定については議論あることでしょう。ただそれでも「果物籠を持つ少年」はあまりにも艶やかで、「法悦のマグダラのマリア」はあまりにも劇的でした。絵に痺れるという感覚は久々です。元々、好きだったバロック絵画、ないしカラヴァッジョをこれまでにない規模で見られて満足でした。
4.「吉田博展」 千葉市美術館
吉田博は木版の画家と思っていた先入観が見事に覆されました。木版はもとより、油彩、水彩のいずれのジャンルおいても成果を残しています。油画の戦争画も異様なまでに迫力がありました。また自らを売り込むために渡米。各地を練り歩いては自作を売り、資金を獲得していったエピソードも凄い。とても行動的でかつ研究熱心、さらに情熱的な人物です。黒田清輝を殴ったというのも無理はなかったのかもしれません。
5.「ジョルジョ・モランディ展」 東京ステーションギャラリー
国内では17年ぶりの大規模なモランディ展でした。「すこし、ちがう。すごく、ちがう。」とありましたが、チラシに確かに似たような構図、ないしモチーフにおいても、それぞれは異なっていることが見て取れます。有名な一連の静物画はもちろん、風景画にも大いに惹かれました。そしてざわめく筆触。実に繊細です。初めてその魅力に気がつきました。
6.「ルノワール展」 国立新美術館
「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」がまさかあれほどに素晴らしい作品だとは思いませんでした。図版では度々目にした有名作ではありますが、実物の色彩の躍動感と言ったら比類がありません。光が全て色で表現されています。まるで白昼夢です。それこそ夢見心地で見入ってしまいました。またほかのルノワール作も粒揃い。これまで見てきたルノワール展の中で圧倒的に充実していました。
7.「柳幸典 ワンダリング・ポジション」 BankArt Studio NYK
柳幸典の表現がBankArtの空間を見事なまでに支配していました。中でも驚いたのは3階での展開です。太陽に追われ、光に導かれたと思いきや、突如、リトルボーイが現れます。そしてその先に放射性廃棄物と瓦礫をまとったゴジラが鳴りを潜めていました。日本の近代史を回顧した目はあまりにも凶暴で恐ろしい。黙示的です。これほど戦慄なまでの体験をした展覧会もありませんでした。
8.「旅するルイ・ヴィトン」 紀尾井町ルイ・ヴィトン特設会場
ヴィトンの歴史と世界観を見事に伝えていたのではないでしょうか。いわゆる美術展というジャンルではないかもしれませんが、フランスよりやってきた貴重な歴史資料も多数。構成自体も良く練られていました。そして何よりは展示空間です。これが素晴らしい。部屋を移動するごとに新たな発見があります。気がつけば1時間半、夢中で見ていました。
9.「ジャック=アンリ・ラルティーグ 幸せの瞬間をつかまえて」 埼玉県立近代美術館
フランスの大富豪の家に生まれ、自由気ままに写真を撮り続けたラルティーグ。確かにどの写真からも幸福感、ないし愉悦感が伝わってきます。2度の大戦があった時代ながらも、その気配は微塵も感じられません。日本初公開となった戦後のカラー写真がまるでInstagramのように見えたのも面白いところでした。作品よりもラルティーグという人物に強く興味を覚えました。
10.「若冲展」 東京都美術館
今年、最も話題となり、事実上、最も多くの人を集めたのが若冲展でした。動植綵絵と釈迦三尊像の揃い踏み展示は圧巻の一言。東京では初めての邂逅でした。ほか菜蟲譜、鹿苑寺の襖絵など代表作もずらり。確かに動植綵絵を含めた展示としては空前絶後のスケールでした。ただし人気は沸騰し、会期途中には最大で5時間待ちもの行列が発生。物議を醸しました。大規模展の開催や運営のあり方について色々と考えさせられました。
次点.「ロバート・フランク展」 東京藝術大学大学美術館・陳列館
いかがでしょうか。ロバート・フランクについては、教育的プログラムと、作品をあえて安価な新聞用紙に印刷する手法に、写真展の新たな方向性も垣間見えたことから、次点にしました。またベスト10以外で特に印象に残った展覧会は以下の通りです。(順不同)
「小田野直武と秋田蘭画」 サントリー美術館
「日本におけるキュビスムーピカソ・インパクト」 埼玉県立近代美術館
「マリー・アントワネット展」 森アーツセンターギャラリー
「デトロイト美術館展」 上野の森美術館
「ゴッホとゴーギャン展」 東京都美術館
「浦上玉堂と春琴・秋琴 父子の芸術」 千葉市美術館
「柳根澤 召喚される絵画の全量」 多摩美術大学美術館
「禅ー心をかたちに」 東京国立博物館
「円山応挙 『写生』を超えて」 根津美術館
「ラスコー展」 国立科学博物館
「クラーナハ展」 国立西洋美術館
「さいたまトリエンナーレ2016」 さいたま市内各会場
「速水御舟の全貌ー日本画の破壊と創造」 山種美術館
「大仙厓展ー禅の心、ここに集う」 出光美術館
「ダリ展」 国立新美術館
「小川信治ーあなた以外の世界のすべて」 千葉市美術館
「トーマス・ルフ展」 東京国立近代美術館
「驚きの明治工藝」 東京藝術大学大学美術館
「宇宙と芸術展」 森美術館
「伊藤晴雨 幽霊画展」 江戸東京博物館
「燃える東京・多摩 画家・新海覚雄の軌跡」 府中市美術館
「メアリー・カサット展」 横浜美術館
「木々との対話」 東京都美術館
「ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち」 国立新美術館
「古代ギリシャ展」 東京国立博物館
「よみがえれ!シーボルトの日本博物館」 国立歴史民俗博物館
「大妖怪展」 江戸東京博物館
「観音の里の祈りとくらし展2」 東京藝術大学大学美術館
「ポンピドゥー・センター傑作展」 東京都美術館
「ほほえみの御仏ー二つの半跏思惟像」 東京国立博物館
「いま、被災地からー岩手・宮城・福島の美術と震災復興」 東京藝術大学大学美術館
「国吉康雄展」 そごう美術館
「ポンペイの壁画展」 森アーツセンターギャラリー
「高島野十郎展ー光と闇、魂の軌跡」 目黒区美術館
「原安三郎コレクション 広重ビビッド」 サントリー美術館
「黄金のアフガニスタン」 東京国立博物館
「開館50周年記念 美の祝典1~3」 出光美術館
「六本木クロッシング2016」 森美術館
「安田靫彦展」 東京国立近代美術館
「俺たちの国芳 わたしの国貞」 Bunkamura ザ・ミュージアム
「馬鑑 山口晃展」 馬の博物館
「村上隆のスーパーフラット・コレクション」 横浜美術館
「没後100年 宮川香山」 サントリー美術館
「原田直次郎展」 埼玉県立近代美術館
「国芳イズム」 練馬区立美術館
「気仙沼と、東日本大震災の記憶」 目黒区美術館
「佐藤雅晴ー東京尾行」 原美術館
「夷酋列像ー蝦夷地イメージをめぐる人・物・世界」 国立歴史民俗博物館
「ボッティチェリ展」 東京都美術館
「英国の夢 ラファエル前派展」 Bunkamura ザ・ミュージアム
「初期浮世絵展」 千葉市美術館
毎年のことながらかなり多くなってしまいました。ここからあえてピックアップするなら、「東雲篩雪図」の美しさに驚いた「浦上玉堂と春琴・秋琴」。写真表現の多様性を見せつけられた「トーマス・ルフ」。まさにタイトルに偽りなし、状態の良い壁画ばかりが揃った「ポンペイの壁画展」。過剰なまでに膨大で、館内を覆う熱気にものまれた「村上隆のスーパーフラット・コレクション」。ボッティチェリのみならず、リッピ親子の3人の関係を優品ばかりで辿った「ボッティチェリ展」。そして浮世絵の成立史を極めて綿密に検証した「初期浮世絵展」なども深く印象に残りました。
日本、西洋、そして現代美術と分け隔てなく見ているつもりですが、何となしに日本美術に心に留まる展覧会が多かったような気がします。露出の多い国芳、国貞を、言わばキャッチーな切り口で見せた「俺たちの国芳 わたしの国貞」も面白かったのではないでしょうか。妖怪ウォッチ云々だけでなく、さりげなく貴重で珍しい作品も多かった「大妖怪展」もワクワクしながら見入りました。
近代の洋画家に充実した回顧展が目立ちました。約100年ぶりという「原田直次郎展」をはじめ、福武コレクションが一堂に会した「国吉康雄展」、そして初期から晩年までの画業を総覧した「高島野十郎展」も大変に見応えがありました。特に高島はかつて三鷹での個展で知って以来、より多く作品を見たいと思っていただけに、またとない機会となりました。
「燃える東京・多摩 画家・新海覚雄の軌跡」も好企画ではなかったでしょうか。作品はもとより、社会運動と深く関わった画家の生き様が伝わるような内容でした。無料のリーフレットも理解を深めるのに役立ちました。
震災から5年。被災と復興について踏み込んだ企画も行われました。それが「気仙沼と、東日本大震災の記憶」と「いま、被災地からー岩手・宮城・福島の美術と震災復興」の2つの展覧会です。
前者では気仙沼のリアス・アーク美術館の被害状況を丹念に紹介。学芸員らが実際に収集した被災物にレポートをつけていたのが殊更に印象的でした。後者では復興の様子だけでなく、東北全般の美術に目を向けた構成が特徴的でした。戦前、戦後の展開のみならず、まさしく今、震災後の現代美術についての言及もありました。
皆さんは今年一年、どのような美術との出会いがありましたでしょうか。心に残った展示などについてコメントかTBをいただければ嬉しいです。
このエントリをもって年内の更新を終わります。今年も「はろるど」とお付き合い下さりどうもありがとうございました。それではどうか良いお年をお迎え下さい。
*過去の展覧会ベスト10
2015年、2014年、2013年、2012年、2011年、2010年、2009年、2008年、2007年、2006年、2005年、2004年(その2。2003年も含む。)
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