都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「TARO賞20年 20人の鬼子たち」 岡本太郎記念館
岡本太郎記念館
「TARO賞20年 20人の鬼子たち」
3/12~6/18
岡本太郎記念館で開催中の「TARO賞20年 20人の鬼子たち」を見てきました。
現代美術家を公募の形式で紹介する「TARO賞(岡本太郎現代芸術賞)」も、今年で20年目を迎えるに至りました。
入選者は延べ410名(組)に及びます。20周年に因んでの企画です。うち選ばれた20名の受賞作家を紹介しています。
館内は全て撮影が可能でした。
関口光太郎「手の子」 2017年
入口正面で立ちはだかるのが関口光太郎の「手の子」でした。少年、もしくは少女でしょうか。メガホンを構えています。体の部分にはハサミやメガネが貼り付けられていました。まるでサイボーグです。そして色は一面の茶色です。遠目では絵具を塗ったように見えるかもしれません。
実はガムテープでした。関口は新聞紙などを丸めてはガムテープを貼付。そこから形を組み合わせて彫刻を作っています。
東北画は可能か?「ゆくもの」 2017年
台車に厨子のようなオブジェがのっていました。東北画は可能か?による「ゆくもの」です。総勢20名超のグループによる作品でした。内部には絵画や刺繍などがいわば散乱。時に供えもののように恭しく置かれています。厨子には南京錠で鍵がかけられていました。一体、何が納められているのでしょうか。
村井祐希「プリズムのためノ服」 2017年
村井祐希は絵具を素材に着られる絵画を制作しています。その名も「プリズムのためノ服」です。てんこ盛りの絵具がテーブルからはみ出しています。これが刺繍ならぬ成形段階なのでしょうか。さらに横には「衣服」も展示。絵具にシリコンなどを混ぜて固めているそうです。とすればゴムのような感触なのかもしれません。
吉田晋之介「plant」 2017年
絵画で面白いのが吉田晋之介の「plant」です。タイトルが示すように植木などの植物を描いています。とはいえ、背後は宇宙のような空間が広がり、上部にはビニールシートを開いたような水色がせり出していました。さらによく見ると米大統領の顔やラーメンの画像なども描かれています。かなりカオスです。コラージュのようでした。
その空間を侵食するのがfacebookのいいねのアイコンでした。これが相当の数です。上下左右、のたうち回るように連なっています。
チュンチョメの「空で消していく」も面白いのではないでしょうか。作品は映像です。一般の人にインタビューを敢行。それぞれの受け手の「嫌いなもの」を、空で消していくというインスタレーションを行っています。
チュンチョメ「空で消していく」 2017年
どのようにして消すのでしょうか。使う素材はただ2つ、iPhoneと鏡です。条件は青空であることのみ。一方で嫌いなものは人それぞれです。中には釣りが好きながらも、魚のにおいが嫌いと語る人もいます。また輸入家具店や高級化粧品店、さらに人混みが苦手として、渋谷のスクランブル交差点を消そうと試みる人もいました。
詳細は実際の映像を見ていただくほかありませんが、至極簡単な仕掛けで、いとも「嫌いなもの」を消す様子はなかなか痛快です。30分ほどの映像でしたが、思わず見入ってしまいました。
加藤智大「Clinging shadow」 2017年
ほか彫刻では西尾康之の「Space wall」と加藤智大の「Clinging shadow」の迫力も十分です。暗がりのスペースを効果的に用い、異様なまでの存在感を見せています。
大岩オスカール「太郎さんの犬とシャドウ・キャットの出会い」 2016年
大岩オスカールや風間サチコ、山口晃なども出展。著名なアーティストも少なくありません。受賞後は、「めざましい活躍を見せてくれている」(公式サイトより)というのもあながち誇張には思えませんでした。
なお嬉しいのはいずれも受賞した時点の旧作ではなく、近年、ないし今年制作の新作ばかりということでした。作家の今の表現を知ることが出来ます。
なお会場は毎年TARO賞を行う川崎・生田の美術館ではなく、東京・南青山の記念館です。最寄は表参道駅です。歩いて7〜8分ほどです。近くには根津美術館やスパイラルなどが位置します。
岡本太郎はかつてこの地に暮らし、戦後は坂倉準三の設計でアトリエを建設します。つまりゆかりの地でもあります。
思いの外にこじんまりとした建物でしたが、館内には太郎の残した彫刻や絵画が所狭しと展示されています。残されたキャンバスや絵筆も膨大です。岡本太郎の旺盛な制作の一端も伺うことが出来るのではないでしょうか。
それにしても庭に出ても太郎一色です。何やら熱帯にでも紛れてしまったかのような活気を帯びていました。
私もここ数年は岡本太郎現代芸術賞の展示を追いかけています。(以下、感想へリンク)
「第20回 岡本太郎現代芸術賞展」/「第19回 岡本太郎現代芸術賞展」/「第18回 岡本太郎現代芸術賞展」/「第17回 岡本太郎現代芸術賞展」
時に社会を鋭く批判するような作品も少なくなく、毎回、何らかの形で刺激を受けるの展覧会です。一つの節目である20年を過ぎました。今後の展開にもまた注目したいです。
6月18日まで開催されています。
「TARO賞20年 20人の鬼子たち」 岡本太郎記念館(@taro_kinenkan)
会期:3月12日(日)~6月18日(日)
休館:火曜日。但し祝日の場合は開館。
時間:10:00~18:00 *入館は閉館の30分前まで
料金:一般620(520)円、小学生320(210)円。
*( )内は15名以上の団体料金。
住所:港区南青山6-1-19
交通:東京メトロ銀座線・千代田線・半蔵門線表参道駅A5、B1出口より徒歩8分。
「TARO賞20年 20人の鬼子たち」
3/12~6/18
岡本太郎記念館で開催中の「TARO賞20年 20人の鬼子たち」を見てきました。
現代美術家を公募の形式で紹介する「TARO賞(岡本太郎現代芸術賞)」も、今年で20年目を迎えるに至りました。
入選者は延べ410名(組)に及びます。20周年に因んでの企画です。うち選ばれた20名の受賞作家を紹介しています。
館内は全て撮影が可能でした。
関口光太郎「手の子」 2017年
入口正面で立ちはだかるのが関口光太郎の「手の子」でした。少年、もしくは少女でしょうか。メガホンを構えています。体の部分にはハサミやメガネが貼り付けられていました。まるでサイボーグです。そして色は一面の茶色です。遠目では絵具を塗ったように見えるかもしれません。
実はガムテープでした。関口は新聞紙などを丸めてはガムテープを貼付。そこから形を組み合わせて彫刻を作っています。
東北画は可能か?「ゆくもの」 2017年
台車に厨子のようなオブジェがのっていました。東北画は可能か?による「ゆくもの」です。総勢20名超のグループによる作品でした。内部には絵画や刺繍などがいわば散乱。時に供えもののように恭しく置かれています。厨子には南京錠で鍵がかけられていました。一体、何が納められているのでしょうか。
村井祐希「プリズムのためノ服」 2017年
村井祐希は絵具を素材に着られる絵画を制作しています。その名も「プリズムのためノ服」です。てんこ盛りの絵具がテーブルからはみ出しています。これが刺繍ならぬ成形段階なのでしょうか。さらに横には「衣服」も展示。絵具にシリコンなどを混ぜて固めているそうです。とすればゴムのような感触なのかもしれません。
吉田晋之介「plant」 2017年
絵画で面白いのが吉田晋之介の「plant」です。タイトルが示すように植木などの植物を描いています。とはいえ、背後は宇宙のような空間が広がり、上部にはビニールシートを開いたような水色がせり出していました。さらによく見ると米大統領の顔やラーメンの画像なども描かれています。かなりカオスです。コラージュのようでした。
その空間を侵食するのがfacebookのいいねのアイコンでした。これが相当の数です。上下左右、のたうち回るように連なっています。
チュンチョメの「空で消していく」も面白いのではないでしょうか。作品は映像です。一般の人にインタビューを敢行。それぞれの受け手の「嫌いなもの」を、空で消していくというインスタレーションを行っています。
チュンチョメ「空で消していく」 2017年
どのようにして消すのでしょうか。使う素材はただ2つ、iPhoneと鏡です。条件は青空であることのみ。一方で嫌いなものは人それぞれです。中には釣りが好きながらも、魚のにおいが嫌いと語る人もいます。また輸入家具店や高級化粧品店、さらに人混みが苦手として、渋谷のスクランブル交差点を消そうと試みる人もいました。
詳細は実際の映像を見ていただくほかありませんが、至極簡単な仕掛けで、いとも「嫌いなもの」を消す様子はなかなか痛快です。30分ほどの映像でしたが、思わず見入ってしまいました。
加藤智大「Clinging shadow」 2017年
ほか彫刻では西尾康之の「Space wall」と加藤智大の「Clinging shadow」の迫力も十分です。暗がりのスペースを効果的に用い、異様なまでの存在感を見せています。
大岩オスカール「太郎さんの犬とシャドウ・キャットの出会い」 2016年
大岩オスカールや風間サチコ、山口晃なども出展。著名なアーティストも少なくありません。受賞後は、「めざましい活躍を見せてくれている」(公式サイトより)というのもあながち誇張には思えませんでした。
なお嬉しいのはいずれも受賞した時点の旧作ではなく、近年、ないし今年制作の新作ばかりということでした。作家の今の表現を知ることが出来ます。
なお会場は毎年TARO賞を行う川崎・生田の美術館ではなく、東京・南青山の記念館です。最寄は表参道駅です。歩いて7〜8分ほどです。近くには根津美術館やスパイラルなどが位置します。
岡本太郎はかつてこの地に暮らし、戦後は坂倉準三の設計でアトリエを建設します。つまりゆかりの地でもあります。
思いの外にこじんまりとした建物でしたが、館内には太郎の残した彫刻や絵画が所狭しと展示されています。残されたキャンバスや絵筆も膨大です。岡本太郎の旺盛な制作の一端も伺うことが出来るのではないでしょうか。
それにしても庭に出ても太郎一色です。何やら熱帯にでも紛れてしまったかのような活気を帯びていました。
私もここ数年は岡本太郎現代芸術賞の展示を追いかけています。(以下、感想へリンク)
「第20回 岡本太郎現代芸術賞展」/「第19回 岡本太郎現代芸術賞展」/「第18回 岡本太郎現代芸術賞展」/「第17回 岡本太郎現代芸術賞展」
時に社会を鋭く批判するような作品も少なくなく、毎回、何らかの形で刺激を受けるの展覧会です。一つの節目である20年を過ぎました。今後の展開にもまた注目したいです。
【TARO賞】第21回岡本太郎現代芸術賞 情報をアップしました。「時代を創造する者は誰か」―この半世紀前の太郎の真摯な問いかけを胸に刻んで、創作活動に邁進する方々の、幅広い応募を呼びかけたいと思います。7月15日から受付開始https://t.co/sCBUx9hWxQ pic.twitter.com/dmLkcDEQJ5
— 岡本太郎記念館 (@taro_kinenkan) 2017年6月1日
6月18日まで開催されています。
「TARO賞20年 20人の鬼子たち」 岡本太郎記念館(@taro_kinenkan)
会期:3月12日(日)~6月18日(日)
休館:火曜日。但し祝日の場合は開館。
時間:10:00~18:00 *入館は閉館の30分前まで
料金:一般620(520)円、小学生320(210)円。
*( )内は15名以上の団体料金。
住所:港区南青山6-1-19
交通:東京メトロ銀座線・千代田線・半蔵門線表参道駅A5、B1出口より徒歩8分。
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