「田原桂一 Les Sens」 ポーラミュージアムアネックス

ポーラミュージアムアネックス
「田原桂一 Les Sens」 
6/9~7/9



はからずとも遺作展となってしまいました。ポーラミュージアムアネックスで開催中の「田原桂一 Les Sens」展を見てきました。

会場は暗室でした。床には一面に細かな黒い砂が敷き詰められています。踏み込めば砂のじゃりじゃりとした感触が足に伝わりました。いつものホワイトキューブでの展示ではありません。

その暗がりに浮かび上がるのが「Les Sens」のシリーズです。モチーフは全て手です。全部で4点ありました。いずれも2015年にフランスのリヨンで発表した写真です。日本初公開でもあります。



モデルはおそらく一人ではありません。というのも、大人と子どもが手を取り合っているからです。腕と手、そして指のみが写されているため、誰の手はおろか、明確な性別も判然としません。しかし小さな赤ん坊のような手が、大人の太い指をか弱く、手繰り寄せるように握る姿は、例えば親子のような密接な繋がりを思わせます。



また大人の手が子どもの手を包むように握る姿も美しい。それ一つ自体がまるで石の彫刻のようでもありました。



一際、輝くのが光のオブジェです。間隔をあけて点滅をひたすら繰り返しています。さらにレーザーによるプリズムの光の演出も行われていました。田原は展示の準備に際し、「庭を作りたい」、「光を操りたい。」と語っていたそうです。確かに夜の石庭に迷い込んだような雰囲気も感じられました。



「人の想いを写し 自然を映し ひかりを移す 風があり薫りたち 静寂に音が響き 肌がふるえる 温度のある優しさと鉱物の輝き」 田原桂一(解説パネルより)

それにしてもあまりにも突然の訃報でした。田原桂一は、展覧会を直前に控えた今月6日、肺がんのために亡くなられました。65歳でした。


私が田原の作品を見知ったのは、今から10年以上も前、2004年に東京都庭園美術館で行われた「光の彫刻」と題した個展でした。

当時は庭園美術館の現本館のみでの展示でした。特に「トルソー」のシリーズに惹かれ、同館の空間とも相まってか、深く感銘したことを覚えています。その「トルソー」は夜間のイベントで美術館の屋外正面にも投影されました。とても美しいライトアップでした。



以来、必ずしも作品に接する機会は多くありませんでしたが、今回の「Les Sens」の開催を知った際も、久々に作品を見られると楽しみにしていました。改めて心からご冥福をお祈りいたします。



7月9日まで開催されています。

「田原桂一 Les Sens」 ポーラミュージアムアネックス@POLA_ANNEX
会期:6月9日(金)~7月9日(日)
休館:会期中無休
料金:無料
時間:11:00~20:00 *入場は閉館の30分前まで
住所:中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル3階
交通:東京メトロ有楽町線銀座1丁目駅7番出口よりすぐ。JR有楽町駅京橋口より徒歩5分。
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