都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「茶の湯の名品ー破格の美・即翁の眼」 畠山記念館
畠山記念館
「茶の湯の名品ー破格の美・即翁の眼」
4/8~6/18
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畠山記念館で開催中の「茶の湯の名品ー破格の美・即翁の眼」を見てきました。
荏原製作所の創立者で、数寄者として知られる畠山即翁は、自身の収集品を一般に公開すべく、畠山記念館を開設しました。
その畠山の茶の湯コレクションが揃いました。さらに特別展示として雪村の「竹林七賢図屏風」も展示。ほか抱一の「十二ヶ月花鳥図」や国宝の「林檎花図」などを交え、絵画や茶陶の魅力を紹介しています。
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国宝「林檎花図」 伝趙昌筆 南宋時代(13世紀)
「林檎花図」が絶品でした。中国は南宋時代、趙昌の筆と伝えられる作品です。団扇の画面に花をつけた林檎の枝を描いています。花はうっすら赤色を帯びていました。大きく咲くものと蕾、さらにはややしおれているものもあります。極めて写実的です。ぼかしや細い線を用いて花弁や葉脈を表しています。馨しい香りが伝わってくるかのようでした。
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「粉引茶碗 銘 松平」 朝鮮時代(16世紀)
うつわでは「粉引茶碗 銘 松平」に惹かれました。松平不昧の伝来品です。白いうつわの形は端正です。揺らぎがなく、薄手ゆえか軽やかさも感じられます。前面の切り込みが景色を一変させていました。もちろん実際の切り込みではありません。釉薬のかからない部分の下地が露出しているわけです。まるで笹の葉のように見えました。
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「赤楽茶碗 銘 早船」 長次郎作 桃山時代(16世紀)
長次郎の「赤楽茶碗 銘 早船」も優品でした。全体は薄い柿色です。高台の部分が黒く陰っています。山に粉雪が散る姿を思い浮かびました。ちなみに銘の由来は、利休が茶会のために早船で取り寄せたと語ったからだそうです。渋く枯れた味わいこそ利休の目に適ったのかもしれません。
一風変わっているのが「割高台茶碗」でした。織部の所持です。形はやや歪み、口は楕円形をしています。高台は四方に鋭く裂けて、まるで古い土器のような雰囲気もあります。面白いのが高台の裏面でした。というのも十文字の形の窪みがあり、それが十字架のようにも見えるからです。一説ではキリシタンとの関係も指摘されているそうです。驚きました。真相は如何なるものなのでしょうか。
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重要文化財「伊賀花入 銘 からたち」 桃山時代(16〜17世紀)
前衛的と呼んでも差し支えないかもしれません。「伊賀花入 銘 からたち」が圧巻でした。ひしゃげたような形をした花入には重量感があります。質感はまるで岩石の表面です。胴の部分が六角に面取りされています。欠けた口縁の一部が胴に付着しています。それをミカン科の植物、からたちの棘に見立てて名付けられました。
この伊賀花入はかつて金沢にあり、いわば門外不出の名品として知られていたそうです。ゆえに即翁が入手すると、からたちの別れを惜しむ人々が紋付袴を着て金沢駅で見送りました。それを知った即翁も人を集め、同じように紋付袴で上野駅で迎えたそうです。作品に礼を尽くし、心を尽くすとは、このことを指すのかもしれません。
最後に是非とも挙げたいのが書です。筆で「波和遊」とあります。揮毫したのはもちろん即翁でした。
それにしても波和遊とは一体どのような意味があるのでしょうか。答えはHow are you?でした。即翁は晩年、ロックフェラー・ジュニアを茶会に招いた際、「波を越えてやってきた人と和をもって遊びましょう。」を意味する「波和遊」を書き記しました。何という遊び心にも満ちた機知ではないでしょうか。
即翁が生前に記念館で披露した茶の湯の取り合わせなども再現。コレクションとともに、まさに即翁の審美眼を随所で感じることが出来ました。
さて今年は茶の湯のいわば当たり年でした。春から都内各地の美術館や博物館で関連の展覧会が行われてきました。
「茶の湯のうつわー和漢の世界」 出光美術館
「茶の湯」 東京国立博物館
「茶碗の中の宇宙」 東京国立近代美術館
スケールの面で上記の3展に及びません。畠山記念館には近代美術館や国立博物館のような凝った照明も仕掛けもありません。しかしながら茶室や茶庭を有し、即翁自らが発案した、まさに茶の湯のための空間で見るうつわは、また他にはない独特の趣きがあるのではないでしょうか。
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なお次回の夏季展も茶の湯です。「茶の湯ことはじめ2」が開催されます。昨年の「ことはじめ展」の第2弾として、茶道具の鑑賞ポイントを分かりやすく紹介するそうです。茶の湯ファン云々を問わずに楽しめる内容になるかもしれません。
「茶の湯:時代とともに生きた美/別冊太陽/平凡社」
6月18日まで開催されています。
「茶の湯の名品ー破格の美・即翁の眼」 畠山記念館
会期:4月8日(土)~6月18日(日)
休館:月曜日、 5月12日(金)。
時間:10:00~17:00(入館は16時半まで)
料金:一般700(600)円、学生500(300)円、中学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
住所:港区白金台2-20-12
交通:都営浅草線高輪台駅A2出口より徒歩5分。東京メトロ南北線・都営三田線白金台駅1番出口より徒歩10分。
「茶の湯の名品ー破格の美・即翁の眼」
4/8~6/18
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畠山記念館で開催中の「茶の湯の名品ー破格の美・即翁の眼」を見てきました。
荏原製作所の創立者で、数寄者として知られる畠山即翁は、自身の収集品を一般に公開すべく、畠山記念館を開設しました。
その畠山の茶の湯コレクションが揃いました。さらに特別展示として雪村の「竹林七賢図屏風」も展示。ほか抱一の「十二ヶ月花鳥図」や国宝の「林檎花図」などを交え、絵画や茶陶の魅力を紹介しています。
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国宝「林檎花図」 伝趙昌筆 南宋時代(13世紀)
「林檎花図」が絶品でした。中国は南宋時代、趙昌の筆と伝えられる作品です。団扇の画面に花をつけた林檎の枝を描いています。花はうっすら赤色を帯びていました。大きく咲くものと蕾、さらにはややしおれているものもあります。極めて写実的です。ぼかしや細い線を用いて花弁や葉脈を表しています。馨しい香りが伝わってくるかのようでした。
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「粉引茶碗 銘 松平」 朝鮮時代(16世紀)
うつわでは「粉引茶碗 銘 松平」に惹かれました。松平不昧の伝来品です。白いうつわの形は端正です。揺らぎがなく、薄手ゆえか軽やかさも感じられます。前面の切り込みが景色を一変させていました。もちろん実際の切り込みではありません。釉薬のかからない部分の下地が露出しているわけです。まるで笹の葉のように見えました。
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「赤楽茶碗 銘 早船」 長次郎作 桃山時代(16世紀)
長次郎の「赤楽茶碗 銘 早船」も優品でした。全体は薄い柿色です。高台の部分が黒く陰っています。山に粉雪が散る姿を思い浮かびました。ちなみに銘の由来は、利休が茶会のために早船で取り寄せたと語ったからだそうです。渋く枯れた味わいこそ利休の目に適ったのかもしれません。
一風変わっているのが「割高台茶碗」でした。織部の所持です。形はやや歪み、口は楕円形をしています。高台は四方に鋭く裂けて、まるで古い土器のような雰囲気もあります。面白いのが高台の裏面でした。というのも十文字の形の窪みがあり、それが十字架のようにも見えるからです。一説ではキリシタンとの関係も指摘されているそうです。驚きました。真相は如何なるものなのでしょうか。
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重要文化財「伊賀花入 銘 からたち」 桃山時代(16〜17世紀)
前衛的と呼んでも差し支えないかもしれません。「伊賀花入 銘 からたち」が圧巻でした。ひしゃげたような形をした花入には重量感があります。質感はまるで岩石の表面です。胴の部分が六角に面取りされています。欠けた口縁の一部が胴に付着しています。それをミカン科の植物、からたちの棘に見立てて名付けられました。
この伊賀花入はかつて金沢にあり、いわば門外不出の名品として知られていたそうです。ゆえに即翁が入手すると、からたちの別れを惜しむ人々が紋付袴を着て金沢駅で見送りました。それを知った即翁も人を集め、同じように紋付袴で上野駅で迎えたそうです。作品に礼を尽くし、心を尽くすとは、このことを指すのかもしれません。
最後に是非とも挙げたいのが書です。筆で「波和遊」とあります。揮毫したのはもちろん即翁でした。
それにしても波和遊とは一体どのような意味があるのでしょうか。答えはHow are you?でした。即翁は晩年、ロックフェラー・ジュニアを茶会に招いた際、「波を越えてやってきた人と和をもって遊びましょう。」を意味する「波和遊」を書き記しました。何という遊び心にも満ちた機知ではないでしょうか。
即翁が生前に記念館で披露した茶の湯の取り合わせなども再現。コレクションとともに、まさに即翁の審美眼を随所で感じることが出来ました。
さて今年は茶の湯のいわば当たり年でした。春から都内各地の美術館や博物館で関連の展覧会が行われてきました。
「茶の湯のうつわー和漢の世界」 出光美術館
「茶の湯」 東京国立博物館
「茶碗の中の宇宙」 東京国立近代美術館
スケールの面で上記の3展に及びません。畠山記念館には近代美術館や国立博物館のような凝った照明も仕掛けもありません。しかしながら茶室や茶庭を有し、即翁自らが発案した、まさに茶の湯のための空間で見るうつわは、また他にはない独特の趣きがあるのではないでしょうか。
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なお次回の夏季展も茶の湯です。「茶の湯ことはじめ2」が開催されます。昨年の「ことはじめ展」の第2弾として、茶道具の鑑賞ポイントを分かりやすく紹介するそうです。茶の湯ファン云々を問わずに楽しめる内容になるかもしれません。
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6月18日まで開催されています。
「茶の湯の名品ー破格の美・即翁の眼」 畠山記念館
会期:4月8日(土)~6月18日(日)
休館:月曜日、 5月12日(金)。
時間:10:00~17:00(入館は16時半まで)
料金:一般700(600)円、学生500(300)円、中学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
住所:港区白金台2-20-12
交通:都営浅草線高輪台駅A2出口より徒歩5分。東京メトロ南北線・都営三田線白金台駅1番出口より徒歩10分。
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