尾形光琳「風神雷神図屏風」 東京国立博物館

東京国立博物館・本館7室
尾形光琳「風神雷神図屏風」
5/30~7/2



尾形光琳の「風神雷神図屏風」が東京国立博物館で公開されています。


重要文化財「風神雷神図屏風」 尾形光琳 江戸時代・18世紀

二曲一双の屏風の左隻が雷神です。左足を前に出し、雷鼓を打ち鳴らそうとしています。右足を強く引き、右手を曲げているゆえか、やや身構えているようにも見えなくはありません。

一方で右隻に現れたのが風神でした。風を起こすための大きな白い袋を持っています。視線を互いに合わせているのでしょうか。ともに嵐を予兆される黒い雲を従えていました。双方は鬼の姿でありながらも、にやりと笑っているかのようで、どことなくコミカルです。親しみやすさも感じられました。

光琳が元にしたのが宗達の「風神雷神図屏風」でした。宗達画はかつて建仁寺の末寺である妙光寺に伝来。そこは光琳の弟である乾山の営んでいた鳴滝窯にほど近い場所でした。


重要文化財「風神雷神図屏風」(左隻) 尾形光琳 江戸時代・18世紀

おそらく光琳は乾山を通して宗達画の存在を知り、何らかのインスピレーションを得て、模写、すなわちトレースしたと考えられています。大きさも同一である上、輪郭線なども極めて精緻に写し取っています。また残された画稿から古絵巻を参照したことも分かっているそうです。いずれにせよ相当に力を入れて制作したことは間違いありません。


重要文化財「風神雷神図屏風」(右隻) 尾形光琳 江戸時代・18世紀

ただし幾つかの相違点があります。最も顕著なのが全体の配置です。宗達画は太鼓や衣の一部が画面からはみ出ているのに対し、光琳は風神、雷神とも位置をやや低くし、全体像を画面の中に収めています。さらに寸法自体も光琳画の方が大きめです。よって空間自体は光琳画の方が広いものの、両神とも宗達画よりやや小さく見えます。また細部の彩色なども一部変えているそうです。

会場は東博本館の2階7室。常設展内です。同室にはほか、宗達派の「扇面流図屏風」と17世紀の「洛中洛外図屏風」もあわせて公開されています。


重要文化財「夏秋草図屏風」 酒井抱一 江戸時代・19世紀 *2010年の東博平常展での展示風景。(現在は展示されていません。)

のちに光琳に私淑した酒井抱一は、本作の裏に「夏秋草図屏風」を描きました。雷神には雨にうたれる夏草を配し、風神には風に吹かれる秋草を表しました。

抱一はここで風神と秋草、雷神と夏草、風神雷神の金に夏秋草図の銀、天上の神と地上の自然などを対比しました。いわば琳派変奏の代表的な作品として知られています。

かつて光琳の「風神雷神図屏風」と抱一の「夏秋草図屏風」は表裏一体、2つで1つの作品でした。それが保存上の観点から切り離されたのは1974年です。以来、別々の作品として独立しています。

大琳派展など、同じ展覧会に出展される機会こそありますが、表裏一体の形で公開されたのを、私は一度見たことがありません。いつか目にできればと思いました。


尾形光琳の「風神雷神図屏風」は7月2日まで公開されています。

尾形光琳「風神雷神図屏風」 東京国立博物館・本館7室(@TNM_PR
会期:5月30日(火)~7月2日(日)
時間:9:30~17:00。
 *毎週金・土曜は21時まで、日曜・祝日は18時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。但し月曜日が祝日または休日の場合は開館し、翌平日に休館。
料金:一般620(520)円、大学生410(310)円、高校生以下無料。
 *( )は20名以上の団体料金。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
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