「高畑勲がつくるちひろ展」 ちひろ美術館・東京

ちひろ美術館・東京
「高畑勲がつくるちひろ展 ようこそ!ちひろの絵のなかへ」 
5/19~8/20



「奈良美智がつくる茂田井武」に続きます。ちひろ美術館・東京で開催中の「高畑勲がつくるちひろ展 ようこそ!ちひろの絵のなかへ」を見てきました。

「奈良美智がつくる茂田井武」 ちひろ美術館・東京

現在のちひろ美術館の展示は二本立てです。茂田井展に加え、「高畑勲がつくるちひろ展」が行われています。

ここで作品をセレクトしたのは映画監督の高畑勲です。自身の制作にインスピレーションを与えたという、いわさきちひろの絵本を展示しています。

展示室4のみ撮影が可能でした。(作品はピエゾグラフです。)



例えば「あめのひのおるすばん」です。いわさきちひろは、いわゆる物語絵本ではなく、絵で展開する絵本を制作。色の滲みなども物語に取り込んで表現しています。ここに高畑は「心理的なものをこれほど深く表現し得た絵本はない」(解説より引用)と評価しました。



また高畑は映画「火垂るの墓」の制作に際し、いわさきちひろの「戦火のなかの子どもたち」を重ねて読んでいます。ちひろは同作において、自身の体験した東京の空襲の記憶を元に、ベトナム戦争の子どもたちの様子を描きました。高畑は若いスタッフに絵本で戦争の追体験をしてもらったそうです。



一風変わった演出がありました。それが「絵を拡大する」です。何と高畑はちひろの絵を拡大。最大で6.6倍に引き伸ばしています。



これが意外なほど大きいのに驚きました。通常、手元で愛でる絵本の形態とはまるで異なります。もはや壁画です。色や筆触がより際立っているように見えます。その豊かな情景に全身が包みこまれるかのようでした。

さて練馬のちひろ美術館、実は初めて行きました。



西武新宿線の上井草駅から小さな商店街を抜けて10分弱。下石神井の閑静な住宅街の中にあります。建物は2階建です。いわさきちひろが晩年の22年を過ごした自宅兼アトリエの跡に建てられました。さらに2002年には公開スペースを拡張し、全面バリアフリーに改装されました。



入口から右手がショップ、左手がカフェスペースです。カフェには絵本もあり、キッズドリンクも用意されるなど、子どもにも楽しめるように工夫されています。授乳室もあります。実際にもベビーカーで来られている親子連れを何組か見かけました。



カフェにはテラスもあり、手入れの行き届いた中庭を望みながら、ゆっくりと寛ぐことも可能です。



展示室は全部で4室です。ちひろ愛用のソファなども置かれています。ほかアトリエの復元展示も見どころではないでしょうか。随所から生前のいわさきちひろの息吹を感じ取れるような空間です。とてもこじんまりとした美術館ですが、心地良く過ごすことが出来ました。


8月20日まで開催されています。

「奈良美智がつくる茂田井武 夢の旅人 / 高畑勲がつくるちひろ展 ようこそ!ちひろの絵のなかへ」 ちひろ美術館・東京
会期:5月19日(金)~8月20日(日)
休館:火曜日。但し祝日の場合は開館。
時間:10:00~17:00 *入館は閉館の30分前まで
料金:大人800(520)円、高校生以下無料。
 *10名以上の団体、65歳以上、および学生証を提示すると700円。
 *ぐるっとパスで無料。
住所:練馬区下石神井4-7-2
交通:西武新宿線上井草駅下車徒歩7分
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