都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「ロマン・チェシレヴィチ 鏡像への狂気」 ギンザ・グラフィック・ギャラリー
ギンザ・グラフィック・ギャラリー
「ロマン・チェシレヴィチ 鏡像への狂気」
5/15~6/24
ポーランドのグラフィックデザイナー、ロマン・チェシレヴィチの個展が、ギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催されています。
チラシの表紙からして鮮烈でした。ともにモチーフは人物の顔です。しかし画面の左右から押し込み、中央部が溶けて消えるようなイメージは、不気味な印象を喚起させてなりません。実は表紙の右の作品のモデルは「モナリザ」でした。それを鏡像として変容させています。このいわゆるシンメトリカルのシリーズで、チェシレヴィチはポスター作家としての地位を確立しました。
左:「パリーパリ 1937-1957年」 Centre Pompidou Exhibition Poster 1981年
グラフィカルなイメージもシンメトリーの世界へ巧みに落とし込んでいます。例えばポンピドゥーのためのポスターです。鮮やかなイエローを背景にエッフェル塔が上下に反転しています。本展を監修したデザイナーの矢萩喜從郎は、シンメトリカルに見られるような、「三次元を吸収し、二次元に押し込む」(解説より)チェシレヴィチのスタイルを、「狂気のバキューム真空」と評しました。確かに消失点が空間の全てをのみこむかのようでもあります。
チェシレヴィチが学んだのはロシア構成主義とバウハウスでした。クラクフ美術アカデミーを卒業後、1950年代にはポスター作家として活動します。1960年代の初期にフランスへ渡り、フォト・モンタージュの作家、ジョン・ハートフィールドにインスピレーションを得ました。さらに雑誌「エル」や「ヴォーグ」のアートディレクターにも就任。以降、モンタージュの手法などを用い、幻想的でかつ、時に風刺や批判を交えたポスターを制作しました。
左:「審判」 The Trial by Franz Kafka Theater Play Poster 1964年
ともかく目立つのは顔を引用した作品でした。例えばカフカの「審判」です。ワルシャワで上演された演劇のポスターでした。大きく前を見据える男性がモノクロームで示されています。しかしそれだけではありません。顔の下にはもう1つ、いや2つないし3つの小さな顔が連続して描かれています。まるで無限増殖です。顎から顔が生成されています。
右:「第14回 ドゥシニキ国際ショパン音楽祭」 Duszniki International Chopin Piano Festival Event Poster 1958年
演劇と並んで目に付いたのは、音楽祭、オペラのポスターでした。ショパン音楽祭では黒い地平の上に、青、朱色ないし茶色、そして赤の色彩を雲のように描いています。音楽の即興的な動きを表したのでしょうか。躍動感も感じられました。
「ドン・ジョバンニ」 Don Giovanni W.A.Mozart Opera Performance Poster 1961年
モーツァルトの「ドン・ジョバンニ」にも魅せられました。タイトル・ロール、ドン・ジョバンニが剣を持って立っています。情熱的な彼の内面を表現するためか、顔がハート型であるのも特徴です。足元の赤い炎は地獄落ちを予感させているのかもしれません。題字の「DON JUAN」も効果的です。宙に舞うリボンのように軽やかでした。
おどろおどろしくも、妖しく艶やかで、なおかつ時に洗練されたチェシレヴィチのポスター。思いがけないほどに魅惑的でした。
作品はポスター112点に加え、コラージュ29点、雑誌ほか38点。かなりボリュームがあります。所狭しと並べられていて、不足はありません。いずれもポーランドのポズナン国立美術館のコレクションです。日本で初めての本格的なチェシレヴィチの展覧会でもあります。
6月24日まで開催されています。
「ロマン・チェシレヴィチ 鏡像への狂気」 ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)
会期:5月15日(月)~6月24日(土)
休廊:日曜・祝日
時間:11:00~19:00
料金:無料
住所:中央区銀座7-7-2 DNP銀座ビル1F
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅から徒歩5分。JR線有楽町駅、新橋駅から徒歩10分。
「ロマン・チェシレヴィチ 鏡像への狂気」
5/15~6/24
ポーランドのグラフィックデザイナー、ロマン・チェシレヴィチの個展が、ギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催されています。
チラシの表紙からして鮮烈でした。ともにモチーフは人物の顔です。しかし画面の左右から押し込み、中央部が溶けて消えるようなイメージは、不気味な印象を喚起させてなりません。実は表紙の右の作品のモデルは「モナリザ」でした。それを鏡像として変容させています。このいわゆるシンメトリカルのシリーズで、チェシレヴィチはポスター作家としての地位を確立しました。
左:「パリーパリ 1937-1957年」 Centre Pompidou Exhibition Poster 1981年
グラフィカルなイメージもシンメトリーの世界へ巧みに落とし込んでいます。例えばポンピドゥーのためのポスターです。鮮やかなイエローを背景にエッフェル塔が上下に反転しています。本展を監修したデザイナーの矢萩喜從郎は、シンメトリカルに見られるような、「三次元を吸収し、二次元に押し込む」(解説より)チェシレヴィチのスタイルを、「狂気のバキューム真空」と評しました。確かに消失点が空間の全てをのみこむかのようでもあります。
チェシレヴィチが学んだのはロシア構成主義とバウハウスでした。クラクフ美術アカデミーを卒業後、1950年代にはポスター作家として活動します。1960年代の初期にフランスへ渡り、フォト・モンタージュの作家、ジョン・ハートフィールドにインスピレーションを得ました。さらに雑誌「エル」や「ヴォーグ」のアートディレクターにも就任。以降、モンタージュの手法などを用い、幻想的でかつ、時に風刺や批判を交えたポスターを制作しました。
左:「審判」 The Trial by Franz Kafka Theater Play Poster 1964年
ともかく目立つのは顔を引用した作品でした。例えばカフカの「審判」です。ワルシャワで上演された演劇のポスターでした。大きく前を見据える男性がモノクロームで示されています。しかしそれだけではありません。顔の下にはもう1つ、いや2つないし3つの小さな顔が連続して描かれています。まるで無限増殖です。顎から顔が生成されています。
右:「第14回 ドゥシニキ国際ショパン音楽祭」 Duszniki International Chopin Piano Festival Event Poster 1958年
演劇と並んで目に付いたのは、音楽祭、オペラのポスターでした。ショパン音楽祭では黒い地平の上に、青、朱色ないし茶色、そして赤の色彩を雲のように描いています。音楽の即興的な動きを表したのでしょうか。躍動感も感じられました。
「ドン・ジョバンニ」 Don Giovanni W.A.Mozart Opera Performance Poster 1961年
モーツァルトの「ドン・ジョバンニ」にも魅せられました。タイトル・ロール、ドン・ジョバンニが剣を持って立っています。情熱的な彼の内面を表現するためか、顔がハート型であるのも特徴です。足元の赤い炎は地獄落ちを予感させているのかもしれません。題字の「DON JUAN」も効果的です。宙に舞うリボンのように軽やかでした。
おどろおどろしくも、妖しく艶やかで、なおかつ時に洗練されたチェシレヴィチのポスター。思いがけないほどに魅惑的でした。
作品はポスター112点に加え、コラージュ29点、雑誌ほか38点。かなりボリュームがあります。所狭しと並べられていて、不足はありません。いずれもポーランドのポズナン国立美術館のコレクションです。日本で初めての本格的なチェシレヴィチの展覧会でもあります。
ポーランドのグラフィックデザイナー、ロマン・チェシレヴィチの展覧会 ヒッチコック『めまい』のポスターも(5月15日~6月24日)https://t.co/sxL9Ua2dbr pic.twitter.com/pw541qPJ5x
— CINRA NETイベント情報 (@CINRANET_EVENT) 2017年6月8日
6月24日まで開催されています。
「ロマン・チェシレヴィチ 鏡像への狂気」 ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)
会期:5月15日(月)~6月24日(土)
休廊:日曜・祝日
時間:11:00~19:00
料金:無料
住所:中央区銀座7-7-2 DNP銀座ビル1F
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅から徒歩5分。JR線有楽町駅、新橋駅から徒歩10分。
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