都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「木島櫻谷 PartⅠ 近代動物画の冒険」 泉屋博古館分館
泉屋博古館分館
「生誕140年記念特別展 木島櫻谷 PartⅠ 近代動物画の冒険」
2/24~4/8

泉屋博古館分館で開催中の「生誕140年記念特別展 木島櫻谷 PartⅠ 近代動物画の冒険」のブロガー内覧会に参加して来ました。
明治から昭和にかけての京都で活動し、「狸の櫻谷」と呼ばれるほど、動物画でも人気のあった、木島櫻谷の展覧会が、泉屋博古館分館ではじまりました。
会期はPart1とPart2の2期に分かれていて、各会期毎に全ての作品が入れ替わり、1つとして同じ作品は展示されません。現在は、前期に当たるPart1が行われていて、主に櫻谷の描いた動物画が展示されていました。
1877年、木島櫻谷は、狩野派の絵師の弟子にも汲む、木島周吉の次男に生まれました。木島家周辺には多くの画家が出入りし、櫻谷にも幼い頃から絵が好きで、早くも10代の頃には画家を志しました。そして16歳の時に、京都画壇の重鎮でもあった今尾景年の元に弟子入りしました。
20代の櫻谷は、写生に勤しむ中、大作も描き、京都で一目を置かれる存在となりました。動物画においても、一に写生を重視し、円山・四条派の技を駆使しながら、次々と作品を生み出しました。

木島櫻谷「野猪図」 明治33(1900)年
冒頭を飾るのが、24歳の時の「野猪図」で、右から枯野を横切らんとばかりに進む猪を描きました。よく見ると、猪の後脚の近くには、小さな鳥が舞っていて、まるで猪の勢いに驚いたように慌てて飛び立っていました。枯野の草木や蔦の描写は流麗で、猪の毛並みも細かく、早くも櫻谷の高い画力を伺い知れるものがありました。実際、当時の第6回新古美術品展で、二等を獲得したそうです。

木島櫻谷「猛鷲図」 明治36(1903)年 株式会社千總
「猛鷲図」も力作ではないでしょうか。内国勧業博覧会のために描いたタペストリーの原画で、右上から光の差し込む空間の中、木の上で飛び立とうとする大きな鷲の姿を捉えていました。背後から覗き込むような構図も劇的で、羽毛にも質感に秀でていて、強い風が吹いているのか、木の葉も舞い、鷲を取り巻く空気の存在を感じることも出来ました。タペストリーも金賞を受賞し、天皇のお買い上げの栄誉を受けたそうです。若き櫻谷の出世作と言えるかもしれません。

木島櫻谷「初夏・晩秋」 明治36(1903)年 京都府(京都文化博物館管理)
獰猛な鷲とは一転して、可愛らしい鹿の群れを表したのが、「初夏・晩秋」と題した屏風絵でした。右隻が初夏で、鹿は夏毛に短い角の姿をしていて、中には座り込み、足を休めているものもいました。一方の左隻が「晩秋」で、角も伸び、冬毛に変わった鹿を描いていました。右隻、左隻とも、鹿は皆、別々の方を向いていて、その視線が空間に広がりを与えていました。鹿の毛は、思いの外に素早い筆触であり、絵具の濃淡にて身体の量感を表していました。白い菊や桔梗の花も、画面のアクセントとなっていました。

木島櫻谷「熊鷲図屏風」 明治時代
若き櫻谷の1つの到達点とも呼ばれているのが、左右で熊と鷲の対峙した「熊鷲図屏風」でした。熊は雪原の上に、遠くを見やるかのように立ち、僅かに潤んだ瞳などからは、知性を宿しているように見えなくはありません。鷲も熊と同様に、前を見据えていて、鋭い爪を松の枝に立て、羽を休めていました。一見、放埓にも映る筆触も、一部は繊細で、特に熊の頭部などは、かなり細い筆で毛並みを表していました。どことなく動物から気品を感じられるのも、櫻谷画の特徴の1つかもしれません。
30代に入ると、櫻谷は東京画壇の影響も受け、色彩を取り込むなど、一部で装飾性を帯びた作品も描きました。中でも今回、特に重要なのが「かりくら」で、薄野の中を上下に馬を走らせる3名の武者を描きました。武者の着衣など、色彩に溢れていて、なおかつ馬の駆ける姿には、躍動感もありました。

木島櫻谷「かりくら」 明治43(1910)年 櫻谷文庫
この「かりくら」が、意外にも東京で新出の作品でした。とするのも、制作当時、第4回文展の発表の翌年から、行方不明となり、100年以上、足跡が途絶えていたからです。今から4年前、櫻谷の旧居に当たる櫻谷文庫の片隅から発見されました。
しかし状態は劣悪で、表装もなく、シミや虫による損傷、さらに絵具などが剥落していたそうです。そのため、約2年をかけて補修し、昨年の京都の櫻谷展で公開されました。東京へ来るのは初めてのことです。
あくまでも主人公は武者であるかもしれませんが、ともかく目立つのは、美しく、軽やかに靡いた鬣を見せる馬の姿で、その意味では動物画の範疇に入るかもしれません。
櫻谷で最も有名な「寒月」も東京へやって来ました。36歳の時の作品で、下弦の月がかかる雪夜の竹林の中、一頭の狐が足跡を雪の上に残しながら、とぼとぼと歩いて来る様子を表しています。一見、モノクロームに見えながら、実は竹や木の幹には青や茶色も混じっていて、白い雪の効果もあってか、仄かな月明かりが全体に満ちているように思えなくもありません。また構図も優れていて、竹林は左右のみならず、奥へと向かい、実に深淵なる空間が広がっていました。

木島櫻谷「寒月」 大正元(1912)年 京都市美術館
櫻谷は「寒い悲しい雪の夜の淋しみを狐によって表したい。」と語っていたそうですが、上目遣いで、やや警戒しながら進む狐の姿からは、確かに一抹の寂寞感も感じられるかもしれません。
第6回文展出品の際、当時、批評活動を展開していた夏目漱石が、「不愉快」と評したエピソードでも知られていますが、結果的に櫻谷は、本作で3度目の日本画最高賞を受賞しました。
40代後半を過ぎると、櫻谷は画壇より離れ距、京都市北西部の衣笠の自邸で、書画の制作に時間を費やしました。ほぼ隠棲に近い生活だったそうです。動物画においても、主に身近な小動物を見据え、より情感に豊かな作品を生み出しました。

右:木島櫻谷「菜園に猫」 大正〜昭和時代・20世紀
左:木島櫻谷「獅子」 昭和時代・20世紀 櫻谷文庫
その一例が「菜園に猫」で、糸瓜の実のなる菜園にて、伏してくつろぐ、ぶち猫の姿を描きました。この白地のぶち猫は、大正期以降、繰り返し登場するため、櫻谷邸の飼い猫とも指摘されています。

左:木島櫻谷「葡萄栗鼠」 大正時代・20世紀
「葡萄栗鼠」も可愛らしい作品でした。たわわに緑色の実をつけた葡萄棚の中、ただ1匹の栗鼠のみが、何やら目を細め、満足げな表情で爪の手入れをしていました。葡萄、栗鼠ともに子孫繁栄の象徴であり、いわゆる吉祥の主題を意味していますが、櫻谷の手にかかると、とても日常的でかつ牧歌的な風景を表したようにしか見えません。

木島櫻谷「月下遊狸」 大正7(1918)年 泉屋博古館分館
得意の狸では「月下遊狸」が魅惑的でした。上空には大きな上弦の月が浮かび、その下に残菊の交じる秋の野を、一頭の狸が歩んでいました。狸のふさふさとした毛の質感が絶品で、夜霧に霞むような秋草は、もはや幻想的ですらありました。櫻谷の住んだ衣笠界隈は、狸がしばしば出没したと言われています。とすれば、よく目にした光景を、小品へ落とし込んだのかもしれません。

木島櫻谷「鹿の母子」 大正〜昭和時代・20世紀 櫻谷文庫
「鹿の母子」ほど微笑ましい動物画はないかもしれません。秋の野原で寛ぐ鹿の親子は、目を細め、もはや笑うような仕草を見せていました。櫻谷の描く動物には生気があり、何より時に人懐っこいほどに表情があります。ほかにも「獅子」における、ライオンの哀愁を帯びた目線などは、櫻谷画の真骨頂かもしれません。

木島櫻谷「写生帖・縮模帖」 明治時代・19〜20世紀 櫻谷文庫
櫻谷は写生に明け暮れた画家でもありました。実際に10代から30代の間、おおよそ600冊もの写生帳類が残され、その多くに動物が登場していました。それは写生会であり、動物園であり、はたまた自邸の暮らしの中で描かれたものでした。

「京都市立紀念動物園優待券」 大正11(1928)年 櫻谷文庫
中でも動物園に熱心に通ったのか、大正11年の京都市動物園の優待券、すなわちパスポートも残されています。櫻谷は動物を見据え、描き、さらに絵画へ生命を注ぎ込んだ画家でもありました。
最後に改めて展覧会の情報です。会期は2期制、主に櫻谷の動物画を紹介するPart1「近代動物画の冒険」は、4月8日まで開催されます。その後、Part2として、櫻谷が注文を受けて制作した「四季連作屏風」のほか、同時代の花鳥画の屏風を公開する「四季連作屏風+近代花鳥図屏風尽し」が、4月14日からはじまります。展示作品は全て異なります。

【生誕140年記念特別展 木島櫻谷】泉屋博古館分館
「PartⅠ 近代動物画の冒険」:2月24日(土)~4月8日(日)
「PartⅡ 「四季連作屏風+近代花鳥図屏風尽し:4月14日(土)~5月6日(日)
またPart1でも、会期途中、3月20日に一部の作品が入れ替わります。全てを見るには足繁く通う必要がありそうです。

「木島櫻谷 PartⅠ 近代動物画の冒険」会場風景
4年前の泉屋博古館分館、そして昨年の京都の泉屋博古館、さらに巡回である今回の東京展と、ここ数年、櫻谷に関する展覧会が続いて来ました。その都度、注目を集めてきました。いよいよ櫻谷ブーム到来となるのでしょうか。
4月8日まで開催されています。まずはおすすめします。
「生誕140年記念特別展 木島櫻谷 PartⅠ 近代動物画の冒険」 泉屋博古館分館
会期:2月24日(土)~4月8日(日)
休館:月曜日。
時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
料金:一般800(640)円、学生600(480)円、中学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体。
住所:港区六本木1-5-1
交通:東京メトロ南北線六本木一丁目駅北改札1-2出口より直通エスカレーターにて徒歩5分。
注)写真はブロガー内覧会の際に主催者の許可を得て撮影しました。
「生誕140年記念特別展 木島櫻谷 PartⅠ 近代動物画の冒険」
2/24~4/8

泉屋博古館分館で開催中の「生誕140年記念特別展 木島櫻谷 PartⅠ 近代動物画の冒険」のブロガー内覧会に参加して来ました。
明治から昭和にかけての京都で活動し、「狸の櫻谷」と呼ばれるほど、動物画でも人気のあった、木島櫻谷の展覧会が、泉屋博古館分館ではじまりました。
会期はPart1とPart2の2期に分かれていて、各会期毎に全ての作品が入れ替わり、1つとして同じ作品は展示されません。現在は、前期に当たるPart1が行われていて、主に櫻谷の描いた動物画が展示されていました。
1877年、木島櫻谷は、狩野派の絵師の弟子にも汲む、木島周吉の次男に生まれました。木島家周辺には多くの画家が出入りし、櫻谷にも幼い頃から絵が好きで、早くも10代の頃には画家を志しました。そして16歳の時に、京都画壇の重鎮でもあった今尾景年の元に弟子入りしました。
20代の櫻谷は、写生に勤しむ中、大作も描き、京都で一目を置かれる存在となりました。動物画においても、一に写生を重視し、円山・四条派の技を駆使しながら、次々と作品を生み出しました。

木島櫻谷「野猪図」 明治33(1900)年
冒頭を飾るのが、24歳の時の「野猪図」で、右から枯野を横切らんとばかりに進む猪を描きました。よく見ると、猪の後脚の近くには、小さな鳥が舞っていて、まるで猪の勢いに驚いたように慌てて飛び立っていました。枯野の草木や蔦の描写は流麗で、猪の毛並みも細かく、早くも櫻谷の高い画力を伺い知れるものがありました。実際、当時の第6回新古美術品展で、二等を獲得したそうです。

木島櫻谷「猛鷲図」 明治36(1903)年 株式会社千總
「猛鷲図」も力作ではないでしょうか。内国勧業博覧会のために描いたタペストリーの原画で、右上から光の差し込む空間の中、木の上で飛び立とうとする大きな鷲の姿を捉えていました。背後から覗き込むような構図も劇的で、羽毛にも質感に秀でていて、強い風が吹いているのか、木の葉も舞い、鷲を取り巻く空気の存在を感じることも出来ました。タペストリーも金賞を受賞し、天皇のお買い上げの栄誉を受けたそうです。若き櫻谷の出世作と言えるかもしれません。

木島櫻谷「初夏・晩秋」 明治36(1903)年 京都府(京都文化博物館管理)
獰猛な鷲とは一転して、可愛らしい鹿の群れを表したのが、「初夏・晩秋」と題した屏風絵でした。右隻が初夏で、鹿は夏毛に短い角の姿をしていて、中には座り込み、足を休めているものもいました。一方の左隻が「晩秋」で、角も伸び、冬毛に変わった鹿を描いていました。右隻、左隻とも、鹿は皆、別々の方を向いていて、その視線が空間に広がりを与えていました。鹿の毛は、思いの外に素早い筆触であり、絵具の濃淡にて身体の量感を表していました。白い菊や桔梗の花も、画面のアクセントとなっていました。

木島櫻谷「熊鷲図屏風」 明治時代
若き櫻谷の1つの到達点とも呼ばれているのが、左右で熊と鷲の対峙した「熊鷲図屏風」でした。熊は雪原の上に、遠くを見やるかのように立ち、僅かに潤んだ瞳などからは、知性を宿しているように見えなくはありません。鷲も熊と同様に、前を見据えていて、鋭い爪を松の枝に立て、羽を休めていました。一見、放埓にも映る筆触も、一部は繊細で、特に熊の頭部などは、かなり細い筆で毛並みを表していました。どことなく動物から気品を感じられるのも、櫻谷画の特徴の1つかもしれません。
30代に入ると、櫻谷は東京画壇の影響も受け、色彩を取り込むなど、一部で装飾性を帯びた作品も描きました。中でも今回、特に重要なのが「かりくら」で、薄野の中を上下に馬を走らせる3名の武者を描きました。武者の着衣など、色彩に溢れていて、なおかつ馬の駆ける姿には、躍動感もありました。

木島櫻谷「かりくら」 明治43(1910)年 櫻谷文庫
この「かりくら」が、意外にも東京で新出の作品でした。とするのも、制作当時、第4回文展の発表の翌年から、行方不明となり、100年以上、足跡が途絶えていたからです。今から4年前、櫻谷の旧居に当たる櫻谷文庫の片隅から発見されました。
しかし状態は劣悪で、表装もなく、シミや虫による損傷、さらに絵具などが剥落していたそうです。そのため、約2年をかけて補修し、昨年の京都の櫻谷展で公開されました。東京へ来るのは初めてのことです。
あくまでも主人公は武者であるかもしれませんが、ともかく目立つのは、美しく、軽やかに靡いた鬣を見せる馬の姿で、その意味では動物画の範疇に入るかもしれません。
櫻谷で最も有名な「寒月」も東京へやって来ました。36歳の時の作品で、下弦の月がかかる雪夜の竹林の中、一頭の狐が足跡を雪の上に残しながら、とぼとぼと歩いて来る様子を表しています。一見、モノクロームに見えながら、実は竹や木の幹には青や茶色も混じっていて、白い雪の効果もあってか、仄かな月明かりが全体に満ちているように思えなくもありません。また構図も優れていて、竹林は左右のみならず、奥へと向かい、実に深淵なる空間が広がっていました。

木島櫻谷「寒月」 大正元(1912)年 京都市美術館
櫻谷は「寒い悲しい雪の夜の淋しみを狐によって表したい。」と語っていたそうですが、上目遣いで、やや警戒しながら進む狐の姿からは、確かに一抹の寂寞感も感じられるかもしれません。
第6回文展出品の際、当時、批評活動を展開していた夏目漱石が、「不愉快」と評したエピソードでも知られていますが、結果的に櫻谷は、本作で3度目の日本画最高賞を受賞しました。
40代後半を過ぎると、櫻谷は画壇より離れ距、京都市北西部の衣笠の自邸で、書画の制作に時間を費やしました。ほぼ隠棲に近い生活だったそうです。動物画においても、主に身近な小動物を見据え、より情感に豊かな作品を生み出しました。

右:木島櫻谷「菜園に猫」 大正〜昭和時代・20世紀
左:木島櫻谷「獅子」 昭和時代・20世紀 櫻谷文庫
その一例が「菜園に猫」で、糸瓜の実のなる菜園にて、伏してくつろぐ、ぶち猫の姿を描きました。この白地のぶち猫は、大正期以降、繰り返し登場するため、櫻谷邸の飼い猫とも指摘されています。

左:木島櫻谷「葡萄栗鼠」 大正時代・20世紀
「葡萄栗鼠」も可愛らしい作品でした。たわわに緑色の実をつけた葡萄棚の中、ただ1匹の栗鼠のみが、何やら目を細め、満足げな表情で爪の手入れをしていました。葡萄、栗鼠ともに子孫繁栄の象徴であり、いわゆる吉祥の主題を意味していますが、櫻谷の手にかかると、とても日常的でかつ牧歌的な風景を表したようにしか見えません。

木島櫻谷「月下遊狸」 大正7(1918)年 泉屋博古館分館
得意の狸では「月下遊狸」が魅惑的でした。上空には大きな上弦の月が浮かび、その下に残菊の交じる秋の野を、一頭の狸が歩んでいました。狸のふさふさとした毛の質感が絶品で、夜霧に霞むような秋草は、もはや幻想的ですらありました。櫻谷の住んだ衣笠界隈は、狸がしばしば出没したと言われています。とすれば、よく目にした光景を、小品へ落とし込んだのかもしれません。

木島櫻谷「鹿の母子」 大正〜昭和時代・20世紀 櫻谷文庫
「鹿の母子」ほど微笑ましい動物画はないかもしれません。秋の野原で寛ぐ鹿の親子は、目を細め、もはや笑うような仕草を見せていました。櫻谷の描く動物には生気があり、何より時に人懐っこいほどに表情があります。ほかにも「獅子」における、ライオンの哀愁を帯びた目線などは、櫻谷画の真骨頂かもしれません。

木島櫻谷「写生帖・縮模帖」 明治時代・19〜20世紀 櫻谷文庫
櫻谷は写生に明け暮れた画家でもありました。実際に10代から30代の間、おおよそ600冊もの写生帳類が残され、その多くに動物が登場していました。それは写生会であり、動物園であり、はたまた自邸の暮らしの中で描かれたものでした。

「京都市立紀念動物園優待券」 大正11(1928)年 櫻谷文庫
中でも動物園に熱心に通ったのか、大正11年の京都市動物園の優待券、すなわちパスポートも残されています。櫻谷は動物を見据え、描き、さらに絵画へ生命を注ぎ込んだ画家でもありました。
最後に改めて展覧会の情報です。会期は2期制、主に櫻谷の動物画を紹介するPart1「近代動物画の冒険」は、4月8日まで開催されます。その後、Part2として、櫻谷が注文を受けて制作した「四季連作屏風」のほか、同時代の花鳥画の屏風を公開する「四季連作屏風+近代花鳥図屏風尽し」が、4月14日からはじまります。展示作品は全て異なります。

【生誕140年記念特別展 木島櫻谷】泉屋博古館分館
「PartⅠ 近代動物画の冒険」:2月24日(土)~4月8日(日)
「PartⅡ 「四季連作屏風+近代花鳥図屏風尽し:4月14日(土)~5月6日(日)
またPart1でも、会期途中、3月20日に一部の作品が入れ替わります。全てを見るには足繁く通う必要がありそうです。

「木島櫻谷 PartⅠ 近代動物画の冒険」会場風景
4年前の泉屋博古館分館、そして昨年の京都の泉屋博古館、さらに巡回である今回の東京展と、ここ数年、櫻谷に関する展覧会が続いて来ました。その都度、注目を集めてきました。いよいよ櫻谷ブーム到来となるのでしょうか。
【NHK Eテレ日曜美術館再放送のご案内 3月11日朝9時です】
— 櫻谷文庫 (@oukokubunko) 2018年3月3日
3月11日朝9時から「漱石先生 この絵はお嫌いですか ~孤高の画家 木島櫻谷」... https://t.co/CQkhntsQNY
4月8日まで開催されています。まずはおすすめします。
「生誕140年記念特別展 木島櫻谷 PartⅠ 近代動物画の冒険」 泉屋博古館分館
会期:2月24日(土)~4月8日(日)
休館:月曜日。
時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
料金:一般800(640)円、学生600(480)円、中学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体。
住所:港区六本木1-5-1
交通:東京メトロ南北線六本木一丁目駅北改札1-2出口より直通エスカレーターにて徒歩5分。
注)写真はブロガー内覧会の際に主催者の許可を得て撮影しました。
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