「博物館でお花見を 2018」 東京国立博物館

東京国立博物館
「博物館でお花見を 2018」 
3/13~4/8



上野の春を彩る恒例企画、桜に関した作品と、お庭の桜も楽しめる「博物館でお花見を」が、今年も東京国立博物館ではじまりました。


国宝「花下遊楽図屛風」 狩野長信筆 江戸時代・17世紀

まずは館内でのお花見です。国宝室では、お馴染みの「花下遊楽図屏風」が公開中でした。右隻に満開の八重桜、左隻に海棠の咲く中、ともに酒宴を開いたり、風流踊りをする人物を表した屏風で、永徳の末弟、長信が制作したと考えられています。


国宝「花下遊楽図屛風」(右隻) 狩野長信筆 江戸時代・17世紀

右隻の桜は白い花をたくさん咲かせていて、戸張の向こうでは楽器に手をやり、楽しげに演奏する人の姿も見られました。花はおそらく胡粉なのか、かなり絵具が盛られていて、半ば立体的に浮き上がっていました。また人物の着物の衣装も精緻に表現されていて、やや退色しているものの、その色彩も魅力と言えるのではないでしょうか。なお右隻の中央には何もありませんが、これは大正時代の修理の際、関東大震災に見舞われ、焼失してしまった部分にほかなりません。


国宝「花下遊楽図屛風」(右隻・部分) 狩野長信筆 江戸時代・17世紀

焼失前に撮影された写真もキャプションに掲載されていて、桜の下で花見をする貴婦人の姿が描かれていた様子を見ることが出来ました。モノクロームではありますが、在りし日の姿を偲べるかもしれません。

さすがに身近な花だけあるのか、桜をモチーフとした作品はこと欠きません。特に桜をあしらった工芸品が目立ちました。


「色絵桜樹図透鉢」 仁阿弥道八作 江戸時代・19世紀

仁阿弥道八の「色絵桜樹図透鉢」が華やかでした。白泥と赤い色彩で満開の桜を描いていて、透かしも効果的なのか、器の内外の全体で桜の咲く様子を表現していました。また切り込みがあり、凹凸の見られる口縁部も、まるで桜の花びらを思わせるかもしれません。琳派の乾山に倣った器だとも言われています。


「色絵桜透文手鉢」 京焼 江戸時代・18世紀

同じく透かしを取り入れた京焼の「色絵桜透文手鉢」も優品でした。見込みに咲くのは、桜ではなく梅で、青い竹も笹を付けていました。では一体、桜はどこに見られるのでしょうか。その答えは鉢の側面で、透かし自体が桜の花の形をしていました。また青と緑の絡み合う取っ手など、随所に細かな工夫も見られる作品でした。


「色絵桜樹図皿」 鍋島 江戸時代・18世紀

見込の全体で桜を表現した鍋島の「色絵桜樹図皿」も美しいのではないでしょうか。幹や枝は屈曲していて、花は溢れんばかりに咲き誇っていました。花びらは一枚一枚、赤い絵具で細かく描かれていました。シンプルな図案ながらも、華やかでかつ、鍋島らしい品格のある作品と言えるかもしれません。


「小袖 白綸子地若松桜幕模様」 江戸時代・18世紀

小袖などの衣装にも桜はたくさん描かれていました。一際、目立っていたのは、小袖の「白綸子地若松桜幕模様」で、その名の通り、満開の桜が幔幕にかかっていました。また随所に広がる扇面は、末広がりを示す吉祥模様で、王朝文化のシンボルでもありました。源氏物語の「花宴」をイメージしたとも言われています。


「振袖 染分縮緬地枝垂桜菊短冊模様」 江戸時代・18世紀

振袖の「染分縮緬地枝垂桜菊短冊模様」も風流で、腰から上を春、下を秋に分け、しだれ桜が肩からかかる風景を表現していました。こうした腰の上下で模様を分けるスタイルは、江戸中期から後期にかけて流行しました。何でもこの頃、帯の幅が広がったことから、様々な帯結びを楽しむ風潮が生まれたそうです。


「不動明王立像」 平安時代・11世紀

桜の意外なモチーフとしては「不動明王立像」が挙げられるかもしれません。平安時代の作例で、目を剥き出し、見る者を威嚇するかのように堂々と立っていました。一見、桜と無関係に思えるかもしれませんが、実のところ素材がサクラ材でした。サクラを用いた珍しい仏像としても知られています。


「枝垂桜蒔絵笛筒」 江戸時代・18世紀 ほか

ほかにも永楽保全の「三島写桜文茶碗」や、雅楽でも用いる笛を収めるための「枝垂桜蒔絵笛筒」など、桜に因んだ優品が目白押しでした。「展示室に咲く名品の桜」(チラシより)で、一足早いお花見を味わうことが出来ました。



こうした一連の桜の作品を追うには、展覧会のチラシが有用でした。中を開くと、「本館桜めぐり」と題し、桜をモチーフにした作品が図版入りでピックアップされていました。



今年も「桜スタンプラリー」が開催中です。会期中、本館展示室の5つのポイントでスタンプを押すと、オリジナル缶バッジがプレゼントされます。バッジはら本館1階のエントランスの特設ブースで引き換えることが出来ました。


「博物館にお花見を」に合わせ、本館北側に広がる庭園の開放もスタートしました。庭園内には多様な品種の桜の木が植えられ、のんびりとお花見をすることも可能です。なお庭園は普段、非開放のため、自由に散策出来るのは、春と秋の開放時だけに限られています。つまり1年に2回しかありません。さらに3月末、及び4月第1週の週末は、日没後、19時半までの夜間ライトアップも行われます。

【春の庭園開放】
会期:3月13日(火)~5月20日(日)
時間:10:00~16:00
 *但し3月30日(金)、3月31日(土)、4月6日(金)、4月7日(土)は19時半まで開放。夜間ライトアップも実施。



私が出向いた際は、まだ桜は咲いていませんでしたが、おそらく来週末から今月末には見頃を迎えるのではないでしょうか。桜の時期の上野はどこも凄まじい人出ですが、この庭園はさほど混み合いません。隠れたお花見スポットと言えそうです。



「名作誕生ーつながる日本美術」の準備設営ため、平成館の特別展示室はクローズしていますが、当初、3月18日までを予定していた表慶館の「アラビアの道」は、5月13日まで会期が延長されました。


「アラビアの道ーサウジアラビア王国の至宝」会場風景

「アラビアの道ーサウジアラビア王国の至宝」 東京国立博物館(はろるど)

「アラビアの道」展は、常設展観覧料のみで入場可能です。お花見展と合わせて見るのも良いかもしれません。

間もなく春本番を迎えそうです。4月8日まで開催されています。

「博物館でお花見を 2018」 東京国立博物館@TNM_PR
会期:3月13日(火) ~4月8日(日)
時間:9:30~17:00。
 *毎週金・土曜は21時まで開館。
 *4月の日曜は18時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。
料金:一般620(520)円、大学生410(310)円、高校生以下無料。
 *( )は20名以上の団体料金。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
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