「千葉のデザインの本と展示あります」 渋谷ヒカリエ d47 MUSEUM

渋谷ヒカリエ 8F d47 MUSEUM
「千葉のデザインの本と展示あります d design travel CHIBA EXHIBITION」 
2/16~4/1



ロングライフデザイン研究家のナガオカケンメイが編集長を務め、全国47都道府県の個性をデザインの観点から選び出し、ガイド本にまとめた「d design travel」は、第23号の「千葉号」が発行されました。

その「千葉号」の発売を記念して行われているのが、「d design travel CHIBA EXHIBITION」で、同号に取り上げられた食品や道具、日用品のほか、デザインにも関した様々な品物を一堂に紹介していました。



まずは「千葉号」の装丁を手がけた、南房総市出身のイラストレーター、安西水丸の表紙からはじまりました。それにおそらく編集部がガイド制作に際した使用した、書籍やバインダーなども並んでいました。また取材中に味わったのでしょうか。千葉県を代表する名産品である落花生が、ジップロックに詰められていました。

「千葉号」の対象領域は、安房、上総、下総の千葉県全域に及んでいました。「d design trave」において千葉県は、移住者によって開拓された歴史を有し、自然や人を寛大に受け入れ、見守る多様性があると定義していました。率直なところ、広大な千葉県を一括りにするのは困難ですが、おおらかさなどは、確かに一つの気質として挙げられるかもしれません。



千葉県には幾つかの美術館も存在します。うち特に知られるのが、佐倉市のDIC川村記念美術館で、ポスターのほか、かつて開催されたロスコ展などのカタログが展示されていました。私も好きな美術館の1つで、ここ数年は、殆どの展覧会を追いかけているような気もします。またお馴染みの広大な庭園も見どころの1つで、四季で愛でる草花も同美術館の魅力と言えるかもしれません。



かつて「いちはらアート×ミックス」の舞台となった、小湊鐵道のブースもありました。市原市の五井駅より、中房総の丘陵地帯を走り、養老渓谷を超え、大多喜町の上総中野駅までの約40キロを結ぶ鉄道で、沿線は過疎化が進むものの、最近では観光客を呼び込むため、一部区間において里山トロッコ列車も運行されています。



レストランやショップ、カフェだけでなく、当地の人に着目して千葉県を紹介しているのも特徴です。その1例が銚子市の外川にある鮨処、「治ろうや」で、店主の鈴木宏昌さんが、銚子ならではの新鮮なネタの寿司や、同地にしかない伊達巻ずしを提供していました。



また千葉県は、各地に酒蔵の点在する酒どころでもあります。その中で興味深いのは、神崎町の寺田本家でした。寺田本家を営むを寺田優さんは、関東随一の自然酒醸造元の24代当主で、近年は味噌や醤油などの多い街の特性を生かし、地域で発酵をテーマとしたイベントも積極的に行ってきました。特にこの3月にも行われる「発酵の里こうざき酒蔵まつり」は人気を集め、今や日本最大級の「酒蔵版クラフトマーケット」として成長しました。



ほかにも鴨川市の老舗旅館、「三水」や、大多喜町にある築200年の古民家宿、「まるがやつ」など、宿泊施設に関するブースもありました。ここでは農業体験などを通し、地域の人々を巻き込んだ取り組みも行っているそうです。



安房、上総地域の展示が目立つ中、都市部で目を引いたのは、松戸市でした。うち1つが「PARADISE AIR」で、市中心部の松戸駅周辺のアーティストレジデンスの取り組みでした。どれほど市民に認知されているかは定かではありませんが、かつての宿場町であり、現在はベットタウンとして知られる松戸を、アートの視点で再活性化させようという試みなのかもしれません。実際、「d design travel」でも、「千葉号」の制作拠点として、編集部が「PARADISE AIR」に滞在していたそうです。



松戸市の創業で、大手ドラックチェーンの1つであるマツモトキヨシについての展示もありました。店内用のカゴや、PB商品のパッケージ、それにポイントカード類などが並んでいて、馴染みの深い地元の方も多いかもしれません。ちなみに同社の創業者である松本清氏は、かつて松戸市長を務めた、地元の有力な政治家でもありました。



白樺派についての展示も目を引きました。手賀沼に面した風光明媚な我孫子市には、柳宗悦らの文人も集まり、一時は民芸運動の拠点とも化しました。今も宗悦居宅跡などが残されている上、白樺文学館が建つなど、往時の様子を偲ぶことも出来ます。私も一昨年、散歩した記憶が蘇りました。(*白樺派ゆかりの我孫子を歩く



銚子市に創業したヒゲタ醤油の樽の造形美にも見入りました。デザインは何も新しいものばかりではなく、むしろ古い道具類にこそ価値を見出せるのかもしれません。



会場内には、「d design travel」の発売に際し、編集部の取材した物産品を扱うストアもオープンしていました。実は千葉県は、都内に常設のアンテナショップを持っていません。その意味では、都内で、千葉ならではのデザインや土産品に触れる良い機会と言えそうです。



私も一度は長く離れたものの、生まれは千葉県で、成人してからもずっと県内に住み続けて来ました。常に千葉県民という自覚は持っていて、それなりに千葉県に愛着もあります。

ただし、千葉県に深く根ざしているかと問われると、心許ないのも事実でした。実際、生活の半分近くは東京にあると言ってもよく、毎週末となれば、都内へ出かけ、それこそ美術館で展示を見たり、商業施設などに繰り出しています。そもそも県内の移動や生活の範囲も、京葉、東葛飾、せいぜい佐倉、成田程度で、それ以外の地域に出かけることもありません。近年、佐原や銚子に観光へ行きましたが、外房となると、一体、何年前に旅行したのか覚えていないほどです。

「d design travel CHIBA/D&DEARTMENT PROJECT」

この展示に接した上、改めて購入した「千葉号」こと「d design travel CHIBA」を読んでいると、自分自身が千葉県を良く知らないことに気がつきました。



「d design travel CHIBA」の観点を通し、より千葉に関心を持ち、魅力を見出した上で、実際に旅する、一つの切っ掛けとなりそうです。


入場は無料です。4月1日まで開催されています。

「千葉のデザインの本と展示あります d design travel CHIBA EXHIBITION」@d_design_travel渋谷ヒカリエ 8F d47 MUSEUM@hikarie8
会期:2月16日(金)~4月1日(日)    
時間:11:00~20:00
 *最終入館は19:30まで。
料金:無料
住所:渋谷区渋谷2-21-1 渋谷ヒカリエ8階
交通:東急田園都市線、東京メトロ副都心線渋谷駅15番出口直結。東急東横線、JR線、東京メトロ銀座線、京王井の頭線渋谷駅と2F連絡通路で直結。
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