「ニッポンの国宝100」第25号(東寺両界曼荼羅図/法隆寺伽藍) 小学館

小学館のウィークリーブック「ニッポンの国宝100」が、全50号のうちの半数に当たる第25号に到達しました。



「週刊 ニッポンの国宝100」
http://www.shogakukan.co.jp/pr/kokuhou100/

それが「東寺 両界曼荼羅」と「法隆寺伽藍」の特集で、ともに京都・奈良を代表する仏教美術、および建築が取り上げられていました。なお、東寺、法隆寺とも、既に別の国宝が掲載済みで、東寺では第8号で「立体曼荼羅」、そして法隆寺では第7号で「救世観音」、第13号で「百済観音」が特集されました。特に法隆寺の両観音像は、私も好きな仏像だけに、ともに追いかけました。



いつもの高精細な図版は、東寺の「両界曼荼羅」を鑑賞するのに有用でした。現存最古の彩色の両界曼荼羅である「金剛界曼荼羅」が原寸で掲載されているため、成身会を囲んだ、賢劫千仏の細かな姿までを確認することが出来ました。もちろん実際の作品に当たるのが一番かもしれませんが、おそらく肉眼ではここまで鮮明に見えません。



「国宝鑑賞術」では、5つの観点から両界曼荼羅の世界を解き明かし、作品の見方を分かりやすく紹介していました。また「国宝くらべる大図鑑」の視点もユニークで、ともすると見落とされがちな、両界曼荼羅の細部の菩薩や珍獣などを抜き出して見せていました。



後半の「法隆寺伽藍」も充実していました。まず目を引いたのは、世界最古の木造建築とされる西域伽藍を上空から捉えて掲載した写真で、おそらく現地でも、この高さから鑑賞することは叶いません。また若草伽藍と西院伽藍の古代瓦を比較しながら、長らく論争の続いてきた法隆寺の再建・非再建論争についても触れていました。1939年、焼土ともに若草伽藍が発掘されたことから、再建説が広く支持されました。

しかし近年、五重塔や金堂の天井壁画に、火災前の木材が使用されていたことが判明したため、非再建の可能性もあるとして、再び論争が沸き起こっているそうです。また2017年には、おおよそ50年ぶりに、若草伽藍の発掘調査も行われました。いずれ何らかの形で、一定の見解がまとめるのかもしれません。



国宝への旅をテーマとした「行こう国宝への旅」は、法隆寺へのガイドでした。私も昨年春、「救世観音菩薩立像」を拝むため、春の特別公開の際に法隆寺へいきましたが、その時の記憶も蘇りました。



「国宝救世観音菩薩立像 特別公開」 法隆寺夢殿(はろるど)

ちょうど折り返しに達した「週刊ニッポンの国宝100」は、これ以降も、来年の9月に向けて、残りの25号が刊行されます。(刊行予定一覧

26:室生寺/洛中洛外図屏風 舟木本
27:東大寺伝日光・伝月光菩薩/浮線綾螺鈿蒔絵手箱
28:早来迎/清水寺
29:向源寺十一面観音/紅白芙蓉図
30:醍醐寺/信貴山縁起絵巻
31:仏涅槃図/出雲大社
32:浄土寺/彦根屏風
33:明恵上人像/仁和寺
34:四天王寺扇面法華経冊子/法隆寺釈迦三尊像
35:葛井寺千手観音/薬師寺吉祥天像
36:志野茶碗 銘卯花墻/東大寺伽藍
37:羽黒山五重塔/聚光院花鳥図襖
38:辟邪絵/色絵雉香炉
39:勝常寺薬師三尊像/夕顔棚納涼図屏風
40:天燈鬼・龍燈鬼/金剛峯寺
41:浄瑠璃寺九体阿弥陀/二条城
42:東大寺不空羂索観音/観音猿鶴図
43:普賢菩薩/三佛寺投入堂
44:神護寺薬師如来/十便図・十宜図
45:玉虫厨子/臼杵磨崖仏
46:唐招提寺/火焔型土器
47:本願寺/鷹見泉石像
48:中宮寺菩薩半跏像/崇福寺
49:青不動/赤糸威鎧
50:深大寺釈迦如来/大浦天主堂

全て国宝を扱うだけに、有名な作品や建築も目立ちますが、中には一般的な書籍で細かく扱われないような国宝もあり、「ニッポンの国宝」ならではの多角的な視点での解説も期待出来ます。



昨年は京都国立博物館の「国宝展」を筆頭に、ともかく国宝に関する企画や展覧会も続き、「国宝イヤー」とも言われました。実際、「国宝展」は、同博物館の特別展史上最多となる、約62万名もの入場者を記録しました。

「週刊ニッポンの国宝100/東寺両界曼荼羅図・法隆寺伽藍/小学館」

さすがに今年は国宝がムーブメントになることはなさそうですが、今後とも「ニッポンの国宝」で国宝に親しんでいければと思いました。

「週刊ニッポンの国宝100」@kokuhou_project) 小学館
内容:国宝の至高の世界を旅する、全50巻。国宝とは「世界文化の見地から価値の高いもので、たぐいない国民の宝たるもの」(文化財保護法)国宝を知ることは、日本美術を知ること。そして、まさに日本のこころを知る旅だともいえます。「週刊 ニッポンの国宝100」では、現在指定されている1108件の中からとくに意義深い100点を選び、毎号2点にスポットを当てその魅力を徹底的に分析します。
価格:創刊記念特別価格500円。2巻以降680円(ともに税込)。電子版は別価格。
仕様:A4変形型・オールカラー42ページ。
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