都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「ニッポン貝人列伝-時代をつくった貝コレクション」 LIXILギャラリー
LIXILギャラリー
「ニッポン貝人列伝-時代をつくった貝コレクション」
3/8~5/26
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/46/87/770f3dbdad6b5209c2989e4ec3477fe9.jpg)
LIXILギャラリーで開催中の「ニッポン貝人列伝-時代をつくった貝コレクション」を見てきました。
海を身近とする日本には、古くから貝に魅せられ、貝を研究し、貝を蒐集した、いわば貝人というべき人々がいました。
その貝人らの活動を紹介するのが、「ニッポン貝人列伝」で、「日本近代貝類学の黎明期を築いた10人」(公式サイトより)のコレクションが公開されていました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/26/de/2a3ab8c2502015250da1b434580a0ad8.jpg)
明治31年に下関で生まれた河村良介は、おおよそ50年に渡って貝を収集し続け、日本で最も充実したコレクションを築き上げました。河村の貝との出会いは江ノ島への旅行で、土産店で見つけた貝の美しさに惹かれたのがきっかけでした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/27/ed/f1d1c93c2e5b586cf1f3eb3e957bd525.jpg)
結果的に河村は、国内外を問わず、累計1万種、10万点以上の貝を集め、現在は国立科学博物館の「河村コレクション」として知られるようになりました。まさに貝に惚れ込んだのか、死の直前までコレクションが続けられたそうです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1d/36/58c3098a202ee9e8b1bdfe0fc524d72f.jpg)
日本の貝類学の先駆者として位置づけられるのが、江戸の安政期に生まれた平瀬與一郎でした。淡路島の庄屋の長男であった平瀬は、京都へと移り、貝を標本していた宣教師と出会い、収集をはじめました。いつしか平瀬は、フィラデルフィア自然科学アカデミーやアメリカの国立自然史博物館にまで、貝の標本を納入するようになりました。息子の信太郎も父の影響を受け、貝類学者の道を歩みました。
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のちに日本貝類学の泰斗とまで称されたのが、黒田徳米でした。明治19年に兵庫県で生まれた黒田は、15歳の時、先の平瀬の営んでいた商店の奉公人となり、家事全般から倉庫の管理、また貝の洗浄や標本の整理を行うようになりました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/57/3c/5063b26c19066fa6836df7d3dd3dd0a2.jpg)
そして平瀬の設立した貝類博物館の研究員を引き受け、貝の研究に尽力し、昭和3年には日本貝類学会を設立しました。さらに京都大学で貝類の研究で博士号を取得し、100歳の誕生日の直前にまで研究や後進の指導に当たりました。著書、論文も500編以上発表し、一生涯に渡って、精力的に貝の研究に邁進したそうです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/60/9b/132f065319355c0d1eb0f7f051df348d.jpg)
その黒田に学び、日本の貝類学を世界的水準に押し上げたのが、波部忠重でした。京都大学に入学した波部は黒田と出会い、貝の生態と分類について研究しました。国立科学博物館の動物学研究部長に就任したほか、16年間に渡って日本貝類学会の会長も務めました。波部は、日本産の貝類の約5分の1を占める、1300もの新種を発見しました。
小学校教員で住職でもあった吉良哲明は、アマチュアの立場から貝をコレクションした貝人の1人でした。幼少の頃から貝に興味をもち、10代にして集めるようになりました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/02/6091e8b4bdd2c83a748935744b716cbf.jpg)
吉良は昭和29年、1200種類の貝を、鮮明な写真と解説で紹介した「原色日本貝類図鑑」を発行し、大きな評判を呼びました。その本によって、貝類の魅力に取り憑かれた人も少なくないそうです。また戦後の物資不足の中、おおよそ14年にも渡って、貝類学会の連絡誌を1人で発行し続けた人物でもありました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/61/4c/c0abe2573ec372639ea1660975e5510d.jpg)
「西の熊楠、東の源蔵」と評された、鳥羽源蔵の収集活動も興味深いのではないでしょうか。明治5年、陸前高田に生まれた鳥羽は、35歳の時に貝類の研究をはじめ、岩手県沿岸をくまなく歩いては貝を収集しました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/09/395f52f525c1144e125d629ad85a28ae.jpg)
その標本は同地の「海と貝のミュージアム」に収蔵されましたが、あろうことか東日本大震災の大津波で被災し、水没してしまいました。現在は、文化財レスキューの形で修復作業が進められていますが、このような大変な苦難が待ち構えていたとは、鳥羽自身も予想していなかったかもしれません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6c/eb/0fccc90e35343bd875f91226ed3354f8.jpg)
場内には、色とりどり、大小様々で、模様も多様な貝がたくさん並んでいました。これほどまとまった数の貝を見る機会も、そう滅多にないのではないでしょうか。
手に馴染むものが多く、保存も難しくない貝は、コレクションがしやすく、実際、日本貝類学会の会員も、プロの学者よりアマチュアのコレクターの方が多いそうです。
貝は何も海を住処とするだけでなく、川や淡水でも生息し、陸上の山林においても見ることが出来ます。また太陽光の届かない深海においても適応する上、寿命も長く、アサリやシジミで5年、ホタテやアワビで10年ほど生きるそうです。中でも2006年にアイスランド沖で発見されたアイスランドガイは、220年も生きたと記録されています。逞しい生命力ではないでしょうか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/09/e8/618cec68f8ffb8c848996ed60c2f2f86.jpg)
多彩な貝に惹かれるとともに、貝の生態、さらにはコレクションした貝人らの熱心な活動に目を見張るものがありました。
5月26日まで開催されています。
「ニッポン貝人列伝-時代をつくった貝コレクション」 LIXILギャラリー
会期:3月8日(木)~5月26日(土)
休廊:水曜日。
時間:10:00~18:00
料金:無料
住所:中央区京橋3-6-18 LIXIL:GINZA2階
交通:東京メトロ銀座線京橋駅より徒歩1分、東京メトロ有楽町線銀座一丁目駅7番出口より徒歩3分、都営浅草線宝町駅より徒歩3分、JR線有楽町駅より徒歩7分
「ニッポン貝人列伝-時代をつくった貝コレクション」
3/8~5/26
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LIXILギャラリーで開催中の「ニッポン貝人列伝-時代をつくった貝コレクション」を見てきました。
海を身近とする日本には、古くから貝に魅せられ、貝を研究し、貝を蒐集した、いわば貝人というべき人々がいました。
その貝人らの活動を紹介するのが、「ニッポン貝人列伝」で、「日本近代貝類学の黎明期を築いた10人」(公式サイトより)のコレクションが公開されていました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/26/de/2a3ab8c2502015250da1b434580a0ad8.jpg)
明治31年に下関で生まれた河村良介は、おおよそ50年に渡って貝を収集し続け、日本で最も充実したコレクションを築き上げました。河村の貝との出会いは江ノ島への旅行で、土産店で見つけた貝の美しさに惹かれたのがきっかけでした。
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結果的に河村は、国内外を問わず、累計1万種、10万点以上の貝を集め、現在は国立科学博物館の「河村コレクション」として知られるようになりました。まさに貝に惚れ込んだのか、死の直前までコレクションが続けられたそうです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1d/36/58c3098a202ee9e8b1bdfe0fc524d72f.jpg)
日本の貝類学の先駆者として位置づけられるのが、江戸の安政期に生まれた平瀬與一郎でした。淡路島の庄屋の長男であった平瀬は、京都へと移り、貝を標本していた宣教師と出会い、収集をはじめました。いつしか平瀬は、フィラデルフィア自然科学アカデミーやアメリカの国立自然史博物館にまで、貝の標本を納入するようになりました。息子の信太郎も父の影響を受け、貝類学者の道を歩みました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1b/9b/bfaf8d6fb8e9f6ad3f840d8d7e9ca063.jpg)
のちに日本貝類学の泰斗とまで称されたのが、黒田徳米でした。明治19年に兵庫県で生まれた黒田は、15歳の時、先の平瀬の営んでいた商店の奉公人となり、家事全般から倉庫の管理、また貝の洗浄や標本の整理を行うようになりました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/57/3c/5063b26c19066fa6836df7d3dd3dd0a2.jpg)
そして平瀬の設立した貝類博物館の研究員を引き受け、貝の研究に尽力し、昭和3年には日本貝類学会を設立しました。さらに京都大学で貝類の研究で博士号を取得し、100歳の誕生日の直前にまで研究や後進の指導に当たりました。著書、論文も500編以上発表し、一生涯に渡って、精力的に貝の研究に邁進したそうです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/60/9b/132f065319355c0d1eb0f7f051df348d.jpg)
その黒田に学び、日本の貝類学を世界的水準に押し上げたのが、波部忠重でした。京都大学に入学した波部は黒田と出会い、貝の生態と分類について研究しました。国立科学博物館の動物学研究部長に就任したほか、16年間に渡って日本貝類学会の会長も務めました。波部は、日本産の貝類の約5分の1を占める、1300もの新種を発見しました。
小学校教員で住職でもあった吉良哲明は、アマチュアの立場から貝をコレクションした貝人の1人でした。幼少の頃から貝に興味をもち、10代にして集めるようになりました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/02/6091e8b4bdd2c83a748935744b716cbf.jpg)
吉良は昭和29年、1200種類の貝を、鮮明な写真と解説で紹介した「原色日本貝類図鑑」を発行し、大きな評判を呼びました。その本によって、貝類の魅力に取り憑かれた人も少なくないそうです。また戦後の物資不足の中、おおよそ14年にも渡って、貝類学会の連絡誌を1人で発行し続けた人物でもありました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/61/4c/c0abe2573ec372639ea1660975e5510d.jpg)
「西の熊楠、東の源蔵」と評された、鳥羽源蔵の収集活動も興味深いのではないでしょうか。明治5年、陸前高田に生まれた鳥羽は、35歳の時に貝類の研究をはじめ、岩手県沿岸をくまなく歩いては貝を収集しました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/09/395f52f525c1144e125d629ad85a28ae.jpg)
その標本は同地の「海と貝のミュージアム」に収蔵されましたが、あろうことか東日本大震災の大津波で被災し、水没してしまいました。現在は、文化財レスキューの形で修復作業が進められていますが、このような大変な苦難が待ち構えていたとは、鳥羽自身も予想していなかったかもしれません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6c/eb/0fccc90e35343bd875f91226ed3354f8.jpg)
場内には、色とりどり、大小様々で、模様も多様な貝がたくさん並んでいました。これほどまとまった数の貝を見る機会も、そう滅多にないのではないでしょうか。
手に馴染むものが多く、保存も難しくない貝は、コレクションがしやすく、実際、日本貝類学会の会員も、プロの学者よりアマチュアのコレクターの方が多いそうです。
貝は何も海を住処とするだけでなく、川や淡水でも生息し、陸上の山林においても見ることが出来ます。また太陽光の届かない深海においても適応する上、寿命も長く、アサリやシジミで5年、ホタテやアワビで10年ほど生きるそうです。中でも2006年にアイスランド沖で発見されたアイスランドガイは、220年も生きたと記録されています。逞しい生命力ではないでしょうか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/09/e8/618cec68f8ffb8c848996ed60c2f2f86.jpg)
多彩な貝に惹かれるとともに、貝の生態、さらにはコレクションした貝人らの熱心な活動に目を見張るものがありました。
珍しい貝のコレクション約240点を通して、近代日本における貝類の研究者"貝人”たちの歴史を振り返る展覧会『ニッポン貝人列伝 ー時代をつくった貝コレクションー』が、2018年5月26日まで銀座のLIXILギャラリーで開催中です。https://t.co/fJhuO9PnnE pic.twitter.com/KpFfnkEInj
— Pen Magazine (@Pen_magazine) 2018年3月22日
5月26日まで開催されています。
「ニッポン貝人列伝-時代をつくった貝コレクション」 LIXILギャラリー
会期:3月8日(木)~5月26日(土)
休廊:水曜日。
時間:10:00~18:00
料金:無料
住所:中央区京橋3-6-18 LIXIL:GINZA2階
交通:東京メトロ銀座線京橋駅より徒歩1分、東京メトロ有楽町線銀座一丁目駅7番出口より徒歩3分、都営浅草線宝町駅より徒歩3分、JR線有楽町駅より徒歩7分
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