都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「木島櫻谷 PartⅡ 四季連作屏風+近代花鳥図屏風尽し」 泉屋博古館分館
泉屋博古館分館
「生誕140年記念特別展 木島櫻谷 PartⅡ 四季連作屏風+近代花鳥図屏風尽し」
4/14~5/6

泉屋博古館分館で開催中の「生誕140年記念特別展 木島櫻谷 PartⅡ 四季連作屏風+近代花鳥図屏風尽し」を見てきました。
日本画家、木島櫻谷は、住友銀行を創設し、茶人でもあった15代住友吉左衞門(春翠)の茶臼山本邸の大広間を飾るため、四季折々の草花をあしらった「四季連作屏風」を描きました。

木島櫻谷「燕子花図」(右隻) 大正6年 泉屋博古館分館
そのうちの1つが「燕子花図」で、光琳以来、繰り返し描かれてきたカキツバタの花群を、金地の六曲一双の大画面に表しました。花は類型化せず、写生を基本としていて、左右だけでなく、上下にも振幅しているように見えました。大正期の琳派ブームの中、古典を愛した住友春翠の審美眼にも叶った作品と言えるかもしれません。
四季の連作の中、最も華やかなのが「菊花図」で、満開の白菊と朱菊を左右と上下に配置して描いていました。白菊の花は、胡粉を盛っていて、厚みがあり、朱菊と同じように油彩のような感触を見せていました。いずれの菊も見事に花開いている中、一部には花弁の揺らぎもあり、やはり写生を通じて表現していることが見てとれました。

木島櫻谷「柳桜図」(左隻) 大正6年 泉屋博古館分館
「柳花図」にも魅せられました。右隻に芽吹きの柳、左隻に満開の山桜を描いた屏風で、柳は若草色に染まり、桜は花を幾らか散らしていました。シャワーのように降り注ぐ柳の描写は実に流麗で、桜と取り合わせた構図も、洗練されていると言えるのではないでしょうか。円印は琳派を意識していて、実際に当時も「光琳風」と称されたものの、桜の花弁や柳葉の筆触からは、櫻谷ならではの細やかな表現も感じられました。
連作の最後の1点が、「雪中梅花」でした。雪をかぶった梅の大木を左右に描いていて、その多くはまだ蕾であることから、おそらく春先の頃の季節を示していました。櫻谷は一時期、江戸初期の狩野山楽周辺を研究したとされていますが、その傾向が見られる作品とも指摘されています。
櫻谷以外の作家にも魅惑的な作品がありました。その1つが田能村直入の「設色花卉図巻」で、蘭にはじまり、海堂、バラ、山吹、睡蓮、牡丹に南天などの四季の草花を、一枚の絵巻に描いていました。ともかく精緻な描写を特徴としていて、中国の明代の画家に倣ったとされています。
もう1点、今回の展覧会で最も惹かれたのが、富田范渓による「鰻籠」でした。二曲一双の銀地に、水際に生える葦と仕掛けの籠を描いていて、銀の色彩がそのまま水面を表現していました。富田は名古屋に生まれ、上京して東京美術学校に進み、のちに帰郷しては活動しました。主に花鳥を得意としていたとされています。
出展は櫻谷6点、さらに他の画家が10点と、必ずしも作品は多くありませんが、Part1とあわせて木島櫻谷と近代の花鳥画の魅力を存分に味わうことが出来ました。
「木島櫻谷 PartⅠ 近代動物画の冒険」 泉屋博古館分館(はろるど)

間もなく会期末を迎えます。5月6日まで開催されています。
「生誕140年記念特別展 木島櫻谷 PartⅡ 四季連作屏風+近代花鳥図屏風尽し」 泉屋博古館分館(@SenOkuTokyo)
会期:4月14日(土)~5月6日(日)
休館:月曜日。但し4/30は開館、5/1は休館。
時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
料金:一般800(640)円、学生600(480)円、中学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体。
住所:港区六本木1-5-1
交通:東京メトロ南北線六本木一丁目駅北改札1-2出口より直通エスカレーターにて徒歩5分。
「生誕140年記念特別展 木島櫻谷 PartⅡ 四季連作屏風+近代花鳥図屏風尽し」
4/14~5/6

泉屋博古館分館で開催中の「生誕140年記念特別展 木島櫻谷 PartⅡ 四季連作屏風+近代花鳥図屏風尽し」を見てきました。
日本画家、木島櫻谷は、住友銀行を創設し、茶人でもあった15代住友吉左衞門(春翠)の茶臼山本邸の大広間を飾るため、四季折々の草花をあしらった「四季連作屏風」を描きました。

木島櫻谷「燕子花図」(右隻) 大正6年 泉屋博古館分館
そのうちの1つが「燕子花図」で、光琳以来、繰り返し描かれてきたカキツバタの花群を、金地の六曲一双の大画面に表しました。花は類型化せず、写生を基本としていて、左右だけでなく、上下にも振幅しているように見えました。大正期の琳派ブームの中、古典を愛した住友春翠の審美眼にも叶った作品と言えるかもしれません。
四季の連作の中、最も華やかなのが「菊花図」で、満開の白菊と朱菊を左右と上下に配置して描いていました。白菊の花は、胡粉を盛っていて、厚みがあり、朱菊と同じように油彩のような感触を見せていました。いずれの菊も見事に花開いている中、一部には花弁の揺らぎもあり、やはり写生を通じて表現していることが見てとれました。

木島櫻谷「柳桜図」(左隻) 大正6年 泉屋博古館分館
「柳花図」にも魅せられました。右隻に芽吹きの柳、左隻に満開の山桜を描いた屏風で、柳は若草色に染まり、桜は花を幾らか散らしていました。シャワーのように降り注ぐ柳の描写は実に流麗で、桜と取り合わせた構図も、洗練されていると言えるのではないでしょうか。円印は琳派を意識していて、実際に当時も「光琳風」と称されたものの、桜の花弁や柳葉の筆触からは、櫻谷ならではの細やかな表現も感じられました。
連作の最後の1点が、「雪中梅花」でした。雪をかぶった梅の大木を左右に描いていて、その多くはまだ蕾であることから、おそらく春先の頃の季節を示していました。櫻谷は一時期、江戸初期の狩野山楽周辺を研究したとされていますが、その傾向が見られる作品とも指摘されています。
櫻谷以外の作家にも魅惑的な作品がありました。その1つが田能村直入の「設色花卉図巻」で、蘭にはじまり、海堂、バラ、山吹、睡蓮、牡丹に南天などの四季の草花を、一枚の絵巻に描いていました。ともかく精緻な描写を特徴としていて、中国の明代の画家に倣ったとされています。
もう1点、今回の展覧会で最も惹かれたのが、富田范渓による「鰻籠」でした。二曲一双の銀地に、水際に生える葦と仕掛けの籠を描いていて、銀の色彩がそのまま水面を表現していました。富田は名古屋に生まれ、上京して東京美術学校に進み、のちに帰郷しては活動しました。主に花鳥を得意としていたとされています。
【木島櫻谷 PartⅡ 名品選「夕焼け館長の、ここ見てね!」】
— 泉屋博古館分館 (@SenOkuTokyo) 2018年5月3日
本展を担当する当館分館長による名品選「夕焼け館長の、ここ見てね!」を4回にわけて当館facebookにてご紹介します。第4回は高島北海(たかしま ほっかい)の草花図屏風(梅雨・早秋)です。是非ご一読下さい。https://t.co/mYNyQguPvX pic.twitter.com/iZTirsAc1q
出展は櫻谷6点、さらに他の画家が10点と、必ずしも作品は多くありませんが、Part1とあわせて木島櫻谷と近代の花鳥画の魅力を存分に味わうことが出来ました。
「木島櫻谷 PartⅠ 近代動物画の冒険」 泉屋博古館分館(はろるど)

間もなく会期末を迎えます。5月6日まで開催されています。
「生誕140年記念特別展 木島櫻谷 PartⅡ 四季連作屏風+近代花鳥図屏風尽し」 泉屋博古館分館(@SenOkuTokyo)
会期:4月14日(土)~5月6日(日)
休館:月曜日。但し4/30は開館、5/1は休館。
時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
料金:一般800(640)円、学生600(480)円、中学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体。
住所:港区六本木1-5-1
交通:東京メトロ南北線六本木一丁目駅北改札1-2出口より直通エスカレーターにて徒歩5分。
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