都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「ジョルジュ・ブラック展 絵画から立体への変容」 パナソニック汐留ミュージアム
パナソニック汐留ミュージアム
「ジョルジュ・ブラック展 絵画から立体への変容 ―メタモルフォーシス」
4/28~6/24
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/18/eb/57a7aa1886d7953e46487fe4f602089d.jpg)
パナソニック汐留ミュージアムで開催中の「ジョルジュ・ブラック展 絵画から立体への変容 ―メタモルフォーシス」へ行ってきました。
キュビズムの創始者として知られるジョルジュ・ブラックは、晩年の一時期、立体作品の制作に取り組んだことがありました。
それが「メタモルフォーシス」で、オウィディウスの「変身物語」に登場する神々をテーマとし、グワッシュやリトグラフの平面から、陶磁器、ジュエリー、彫刻、室内装飾などに変容させながら、多様に立体作品を生み出していきました。
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「青い鳥、ピカソへのオマージュ」 1963年 サン=ディエ=デ=ヴォージュ市立ジョルジュ・ブラック‐メタモルフォーシス美術館
ブラックが「メタモルフォーシス」を手がけたのは、亡くなる2年前の1961年のことでした。グワッシュの「青い鳥、ピカソへのオマージュ」は、絶筆とも言われています。ほかにも「メディアの馬車」や「トリプトレモス」などが制作され、のちの立体作品の下絵と化しました。また一連のグワッシュから派生した版画も作られました。
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「ペルセポネ」 1961〜63年 サン=ディエ=デ=ヴォージュ市立ジョルジュ・ブラック‐メタモルフォーシス美術館
その主要なモチーフは、まず陶磁器に変容して現れました。例えば皿や壺、ピッチャーに、「ペリアスとネレウス」や「ペルセポネ」など、「メタモルフォーシス」にも登場した図柄が写されました。確かにモチーフは平面と立体でよく似ていて、互いに見比べるのも楽しいかもしれません。
「メタモルフォーシス」のハイライトはジュエリーでした。1961年、ブラックは、クリエイターのエゲル・ド・ルレンフェルドに、ジュエリーの制作を依頼しました。一連のジュエリーは実に自在な造形を見せていて、ギリシャ神話の女神の頭部や鳥などのモチーフを、巧みに落とし込んでいました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/22/55/b61575b29ce3de76eda0ea8b14442992.jpg)
「ヘベⅡ」 1961〜63年 サン=ディエ=デ=ヴォージュ市立ジョルジュ・ブラック‐メタモルフォーシス美術館
これらの作品は時のフランス文化大臣、アンドレ・マルローによって「ブラック芸術の最高峰」との評価を受け、1963年にはパリ装飾美術館でジュエリー展も開催されました。ブラックは単に二次元を三次元へ転化させただけでなく、「視覚による幸福を触覚に補いたい」(解説より)としていました。なおこの展覧会の約3ヶ月後、ブラックは81歳にて亡くなりました。
それにしても色に華やかで、造形の精緻な指輪やブローチは、実に魅惑的ではないでしょうか。神話のモチーフゆえか、どこか幻想的な作風も見せていて、キュビズムの画家であるブラックが、まさかこのようなジュエリーを手がけていたとは知りませんでした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/db/c020c3a685c4ace4ce77912a00ce0148.jpg)
「セファレ」 1961〜63年 サン=ディエ=デ=ヴォージュ市立ジョルジュ・ブラック‐メタモルフォーシス美術館
ブラックの立体への関心はさらに彫刻へと拡大しました。先の陶磁器やジュエリーに用いたモチーフを、今度はガラスやブロンズへと変容させました。一際、目を引いたのは、ガラス彫刻の「セファレ」で、透明感のある水色のガラスに、ジュエリーにも登場した鳥のモチーフを重ねていました。
ラストは装飾パネルやモザイク、それにタピスリーなどの室内装飾でした。そもそもブラックは少年時代、家業を継いで装飾画家としての修行を積んでいて、かねてより室内パネルなどに惹かれては、職人と協同して作品を制作していました。それは「メタモルフォーシス」でも同様で、やはりギリシャ神話の神をモチーフにした、モザイクやタピスリーが作られました。
貴石とステンドグラスの双方の意味を持たせた、フランスで「ゲマイユ」と称される作品も鮮やかでした。会場の照明や映像による演出も効果的で、ジュエリーをはじめとした立体作品の魅力を見事に引き出していました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0b/fb/4c94bf2614c53c4a5e15a235044194fd.jpg)
「静物」 1911年 ストラスブール近現代美術館
言うまでもなく主役はジュエリーなどの装飾品で、冒頭に2点の油彩画こそ展示されているものの、ブラックの画業を俯瞰するような絵画展ではありません。
しかしそもそも日本で、「メタモルフォーシス」が公開されたこと自体が初めてでもあります。その意味では、ブラックの創作の一端を知る、重要な機会と言えるかもしれません。
フランス北東部の町、サン=ディエ=デ=ヴォージュにある、「ジョルジュ・ブラック‐メタモルフォーシス美術館」から多くの作品がやって来ました。同館は、ブラックの仕事を後世に伝えるため、ジュエリークリエイターのエゲル・ド・ルレンフェルドと、ブラックの専門家であるアルマン・イスラエルによって構想され、1994年に開館しました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0b/2e/77e4488826243ab9a3f03bdd79ce66d4.jpg)
6月24日まで開催されています。
「ジョルジュ・ブラック展 絵画から立体への変容 ―メタモルフォーシス」 パナソニック汐留ミュージアム
会期:4月28日(土)~6月24日(日)
休館:毎週水曜日。但し5月2日は開館。
時間:10:00~18:00 *入場は17時半まで。
料金:一般1000円、大学生700円、中・高校生500円、小学生以下無料。
*65歳以上900円、20名以上の団体は各100円引。
*ホームページ割引あり
*5月18日(金)は国際博物館の日のため入館無料。
住所:港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階
交通:JR線新橋駅銀座口より徒歩5分、東京メトロ銀座線新橋駅2番出口より徒歩3分、都営浅草線新橋駅改札より徒歩3分、都営大江戸線汐留駅3・4番出口より徒歩1分
「ジョルジュ・ブラック展 絵画から立体への変容 ―メタモルフォーシス」
4/28~6/24
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パナソニック汐留ミュージアムで開催中の「ジョルジュ・ブラック展 絵画から立体への変容 ―メタモルフォーシス」へ行ってきました。
キュビズムの創始者として知られるジョルジュ・ブラックは、晩年の一時期、立体作品の制作に取り組んだことがありました。
それが「メタモルフォーシス」で、オウィディウスの「変身物語」に登場する神々をテーマとし、グワッシュやリトグラフの平面から、陶磁器、ジュエリー、彫刻、室内装飾などに変容させながら、多様に立体作品を生み出していきました。
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「青い鳥、ピカソへのオマージュ」 1963年 サン=ディエ=デ=ヴォージュ市立ジョルジュ・ブラック‐メタモルフォーシス美術館
ブラックが「メタモルフォーシス」を手がけたのは、亡くなる2年前の1961年のことでした。グワッシュの「青い鳥、ピカソへのオマージュ」は、絶筆とも言われています。ほかにも「メディアの馬車」や「トリプトレモス」などが制作され、のちの立体作品の下絵と化しました。また一連のグワッシュから派生した版画も作られました。
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「ペルセポネ」 1961〜63年 サン=ディエ=デ=ヴォージュ市立ジョルジュ・ブラック‐メタモルフォーシス美術館
その主要なモチーフは、まず陶磁器に変容して現れました。例えば皿や壺、ピッチャーに、「ペリアスとネレウス」や「ペルセポネ」など、「メタモルフォーシス」にも登場した図柄が写されました。確かにモチーフは平面と立体でよく似ていて、互いに見比べるのも楽しいかもしれません。
「メタモルフォーシス」のハイライトはジュエリーでした。1961年、ブラックは、クリエイターのエゲル・ド・ルレンフェルドに、ジュエリーの制作を依頼しました。一連のジュエリーは実に自在な造形を見せていて、ギリシャ神話の女神の頭部や鳥などのモチーフを、巧みに落とし込んでいました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/22/55/b61575b29ce3de76eda0ea8b14442992.jpg)
「ヘベⅡ」 1961〜63年 サン=ディエ=デ=ヴォージュ市立ジョルジュ・ブラック‐メタモルフォーシス美術館
これらの作品は時のフランス文化大臣、アンドレ・マルローによって「ブラック芸術の最高峰」との評価を受け、1963年にはパリ装飾美術館でジュエリー展も開催されました。ブラックは単に二次元を三次元へ転化させただけでなく、「視覚による幸福を触覚に補いたい」(解説より)としていました。なおこの展覧会の約3ヶ月後、ブラックは81歳にて亡くなりました。
それにしても色に華やかで、造形の精緻な指輪やブローチは、実に魅惑的ではないでしょうか。神話のモチーフゆえか、どこか幻想的な作風も見せていて、キュビズムの画家であるブラックが、まさかこのようなジュエリーを手がけていたとは知りませんでした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/db/c020c3a685c4ace4ce77912a00ce0148.jpg)
「セファレ」 1961〜63年 サン=ディエ=デ=ヴォージュ市立ジョルジュ・ブラック‐メタモルフォーシス美術館
ブラックの立体への関心はさらに彫刻へと拡大しました。先の陶磁器やジュエリーに用いたモチーフを、今度はガラスやブロンズへと変容させました。一際、目を引いたのは、ガラス彫刻の「セファレ」で、透明感のある水色のガラスに、ジュエリーにも登場した鳥のモチーフを重ねていました。
ラストは装飾パネルやモザイク、それにタピスリーなどの室内装飾でした。そもそもブラックは少年時代、家業を継いで装飾画家としての修行を積んでいて、かねてより室内パネルなどに惹かれては、職人と協同して作品を制作していました。それは「メタモルフォーシス」でも同様で、やはりギリシャ神話の神をモチーフにした、モザイクやタピスリーが作られました。
貴石とステンドグラスの双方の意味を持たせた、フランスで「ゲマイユ」と称される作品も鮮やかでした。会場の照明や映像による演出も効果的で、ジュエリーをはじめとした立体作品の魅力を見事に引き出していました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0b/fb/4c94bf2614c53c4a5e15a235044194fd.jpg)
「静物」 1911年 ストラスブール近現代美術館
言うまでもなく主役はジュエリーなどの装飾品で、冒頭に2点の油彩画こそ展示されているものの、ブラックの画業を俯瞰するような絵画展ではありません。
しかしそもそも日本で、「メタモルフォーシス」が公開されたこと自体が初めてでもあります。その意味では、ブラックの創作の一端を知る、重要な機会と言えるかもしれません。
フランス北東部の町、サン=ディエ=デ=ヴォージュにある、「ジョルジュ・ブラック‐メタモルフォーシス美術館」から多くの作品がやって来ました。同館は、ブラックの仕事を後世に伝えるため、ジュエリークリエイターのエゲル・ド・ルレンフェルドと、ブラックの専門家であるアルマン・イスラエルによって構想され、1994年に開館しました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0b/2e/77e4488826243ab9a3f03bdd79ce66d4.jpg)
6月24日まで開催されています。
「ジョルジュ・ブラック展 絵画から立体への変容 ―メタモルフォーシス」 パナソニック汐留ミュージアム
会期:4月28日(土)~6月24日(日)
休館:毎週水曜日。但し5月2日は開館。
時間:10:00~18:00 *入場は17時半まで。
料金:一般1000円、大学生700円、中・高校生500円、小学生以下無料。
*65歳以上900円、20名以上の団体は各100円引。
*ホームページ割引あり
*5月18日(金)は国際博物館の日のため入館無料。
住所:港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階
交通:JR線新橋駅銀座口より徒歩5分、東京メトロ銀座線新橋駅2番出口より徒歩3分、都営浅草線新橋駅改札より徒歩3分、都営大江戸線汐留駅3・4番出口より徒歩1分
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