「五木田智央 PEEKABOO」 東京オペラシティアートギャラリー

東京オペラシティアートギャラリー
「五木田智央 PEEKABOO」
4/14~6/24



東京オペラシティアートギャラリーで開催中の「五木田智央 PEEKABOO」を見てきました。

1969年に生まれ、イラストレーションから出発し、アメリカのサブカルチャーなどの雑誌や写真に着想を得て絵画を制作する五木田智央は、日本のみならず、ニューヨークやベルリンでも個展やグループ展に参加し、活動の場を広げてきました。

その五木田の新作を中心とした個展が、「五木田智央 PEEKABOO」で、本展のために描き上げた絵画を含め、約40点の作品が展示されていました。


五木田智央「Come Play with Me」 2018年

メインビジュアルを飾り、会場の冒頭に掲げられたのが、新作の「Come Play with Me」でした。ビキニ姿の女性が、笑いながら両手を上げていて、ダンスをしているのか、指先を鳴らしてリズムを取りながら、ステップを踏んでいるようにも見えました。素材はアクリルグワッシュで、色は五木田の絵画を特徴付けるモノクロームでした。筆触は滑らかで、動きがあり、腰や太もものの表現は肉感的で、量感にも秀でていて、幾分、写実を志向しているようにも見えました。


五木田智央「Nursery Staff」 2018年

一人の女性を正面から捉えた「Nursery Staff」も、同じくモノクロームながら、迫力のある作品で、シャツや顔面の白が際立ち、髪の毛の黒は艶やかでもありました。口をやや引き締めながらも、笑みをたたえていて、白い光を放つ眼差しには、何やら溢れんばかりの自信も感じられました。


五木田智央「Nursery Staff」(部分) 2018年

さらに細部へ近寄ると、五木田の筆遣いを目の当たりにすることが出来ました。白く塗り込めてシャツを象っているかと思いきや、素早く筆を動かしては、髪の流れる様を巧みに表現していました。また首から顎のあたりは、絵具が薄く重ねられ、ややぼかされているような部分もありました。


五木田智央「Holiday Flight」 2017年

デフォルメや歪み、また時にユーモアを見せる作品があるのも、五木田の作風の特徴かもしれません。「Holiday Flight」では、車の前で肩を寄せては並ぶ男女の姿を描いていますが、男性はまるで着ぐるみを付けたような顔を見せていました。


五木田智央「Lunch with the Emperor」 2018年

「Lunch with the Emperor」も面白い作品でした。窓を背にした室内での一コマを描いていますが、女性が真剣な眼差しを送る先に座るのは、何やら奇怪な動物のような男で、両手で肉片を思わせるように生々しい塊を持っていました。一体、両者は如何なる関係にあるのでしょうか。


五木田智央「Los Lobos」 2018年

また五木田は、大のプロレスファンでもあるそうです。おそらくプロレスラーを表した「Los Lobos」なども、その嗜好が表れた一枚と言えるかもしれません。


五木田智央「Gokita Recorda」 2002〜2018年

ラストには、プロレスラーをレコードジャケットのフォーマットに描いた連作が並んでいました。2002年から今年かけて制作されたもので、全225点もあり、名前と似顔絵、また実在の楽曲のタイトルが記されていました。レスラーと楽曲とには特段の関係はありませんが、プロレスと音楽の意外な組み合わせも、また魅力ではないでしょうか。


五木田智央「Gokita Recorda」 2002〜2018年

私が五木田の作品を初めて見たのは、2012年にDIC川村記念美術館で行われた「抽象と形態:何処までも顕れないもの」でした。7名の現代美術家を紹介する展覧会で、当時、最年少だった五木田も参加していました。その後、同じくDIC川村記念美術館にて、大規模な個展となる「五木田智央 THE GREAT CIRCUS」(2014年)も開催されました。もちろん見に行きました。


五木田智央「Untitled」

今回も旧作も出展されていますが、特に新作については、以前よりもかなり具象性が増したのではないでしょうか。まるで各々の絵画が映画のワンシーンのようであり、つなぎ合わせると何らかの物語が生まれるかのようでした。


会場内の撮影が出来ました。スマホでも撮影可能ですが、原則、シャッター音はNGです。ご注意下さい。(収蔵品展、及びproject Nは撮影不可。)


「五木田智央 PEEKABOO」会場風景

五木田展に続く、収蔵品展の「日常生活|相笠昌義のまなざし」が大変に充実していました。寺田コレクションに加え、神奈川県立近代美術館や個人蔵など、約80点の相笠の油彩画やエッチングが一堂に会していました。あわせてご覧になられることをおすすめします。


五木田智央「150 Beautiful Girls in Action Tonite」 2000年

6月24日まで開催されています。

「五木田智央 PEEKABOO」 東京オペラシティアートギャラリー
会期:4月14日(土)~6月24日(日)
休館:月曜日。
 *但し4月30日は開館。
時間:11:00~19:00 
 *金・土は20時まで開館。
 *入場は閉館30分前まで。
料金:一般1200(1000)円、大・高生800(600)円、中学生以下無料。
 * 同時開催の「収蔵品展062 日常生活|相笠昌義のまなざし」、「project N 71 平子雄一」の入場料を含む。
 *( )内は15名以上の団体料金。
住所:新宿区西新宿3-20-2
交通:京王新線初台駅東口直結徒歩5分。
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