2018年6月に見たい展覧会~岡本神草・江戸の悪・エッシャー

晴天も少なくないものの、ぐずついた天候の日もあり、関東も梅雨入りが間近に迫って来ました。

5月の展覧会では、まず2人の画家の回顧展、高山辰雄と長谷川利行展が印象に残りました。また三井記念美術館の「大名茶人・松平不昧」も、不昧に関した茶道具をかなり網羅していて、実に見応えのある内容となっていました。畠山記念館でも不昧展が開催中(6/17まで)だけに、あわせて見ておきたいところかもしれません。

目黒区美術館の「藤田嗣治 本のしごと 文字を装う絵の世界」も充実していました。藤田が渡仏後から晩年至るまで手がけた挿絵を多く出展していて、ともかくジャンルも内容も多様でかつ幅広く、いかに藤田が器用な画家であるかを改めて知ったような気がしました。また油彩や陶芸の作品も一部に参照していて、挿絵を中心にした画業の展開も、時間を追って辿ることが出来ました。

既に終了したものの、東京国立博物館の「名作誕生ーつながる日本美術」の後期展示も、さすがの名品揃いで感心しました。会期末が迫っても、館内には余裕があり、なかなか東京で見る機会の少ない「風俗図屏風」も、じっくりと鑑賞することが出来ました。

6月に見たい展覧会をリストアップしてみました。

展覧会

・「浮世絵モダーン 深水の美人! 巴水の風景! そして…」 町田市立国際版画美術館(~6/17)
・「鈴木其一の四季花鳥図屏風と景徳鎮窯のちいさな五彩」 東京黎明アートルーム(~6/30)
・「ターナー 風景の詩」 東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館(~7/1)
・「夢二繚乱」 東京ステーションギャラリー(5/19~7/1)
・「風間サチコ展 ディスリンピア2680」 原爆の図丸木美術館(~7/8)
・「はじめての古美術鑑賞 漆の装飾と技法」 根津美術館(~7/8)
・「岡本神草の時代展」 千葉市美術館(~7/8)
・「内藤正敏 異界出現」 東京都写真美術館(~7/16)
・「うるしの彩り―漆黒と金銀が織りなす美の世界」 泉屋博古館分館(6/2~7/16)
・「人麿影供900年 歌仙と古筆」 出光美術館(6/16~7/22)
・「江戸の悪 PARTⅡ」 太田記念美術館(6/2~7/29)
・「ミラクル エッシャー展」 上野の森美術館(6/6~7/29)
・「生誕120年 中村忠二展」 練馬区立美術館(6/22~7/29)
・「大正モダーンズ~大正イマジュリィと東京モダンデザイン」 日比谷図書文化館(6/8~8/7)
・「ゆらぎ ブリジット・ライリーの絵画」 DIC川村記念美術館(~8/26)
・「名作展 ベストセレクション 龍子記念館の逸品」 大田区立龍子記念館(~8/26)
・「小瀬村真美:幻画~像(イメージ)の表皮」 原美術館(6/16~9/2)
・「ルーヴル美術館展 肖像芸術―人は人をどう表現してきたか」 国立新美術館(~9/3)
・「悪人か、ヒーローか」 東洋文庫ミュージアム(6/6~9/5)
・「ゴードン・マッタ=クラーク展」 東京国立近代美術館(6/19~9/17)
・「ブラジル先住民の椅子 野生動物と想像力」 東京都庭園美術館(6/30~9/17)
・「ミケランジェロと理想の身体」 国立西洋美術館(6/19~9/24)

ギャラリー

・「output! artput!」 Shibamata FU-TEN Bed and Local(6/8~6/10)
・「コーネーリア・トムセン展」 加島美術(6/2~6/16)
・「近くへの遠回り―日本・キューバ現代美術展」 スパイラルガーデン(6/6~6/17)
・「青秀祐展」 eitoeiko(6/9~6/30)
・「第12回 shiseido art egg 冨安由真展」 資生堂ギャラリー(6/8~7/1)
・「田中里奈展」 アートフロントギャラリー(6/15~7/1)
・「八木夕菜 NOWHERE」 ポーラ・ミュージアム・アネックス(6/15~7/8)
・「土屋信子 30 Ways To Go To The Moon」 SCAI THE BATHHOUSE(~7/14)
・「今津景 Measuring Invisible Distance」 山本現代(6/9~7/14)
・「宮永愛子展 life」 ミヅマアートギャラリー(6/20~7/21)
・「絵と、 vol.2 藤城嘘」 ギャラリーαM(6/16~8/10)
・「ふるさとの駄菓子―石橋幸作が愛した味とかたち」 LIXILギャラリー(6/7~8/25)

表紙を飾る「口紅」も大変に目を引くのではないでしょうか。千葉市美術館にて、日本画家、岡本神草の回顧展が開催されます。



「岡本神草の時代展」@千葉市美術館(~7/8)

明治27年に神戸に生まれた岡本神草は、当初、新南画風の作品を手がけていましたが、大正の初期から舞妓などを夢二風に描き、その後、濃厚でかつ官能性を帯びた美人画などを制作しました。さらに、菊池契月に師事し、さらなる展開を見せようとしたものの、38歳の若さで急逝しました。


その神草の大規模な回顧展です。そもそも活動期間が短く、残された完成作は決して多くありませんが、今回は現存する代表作を全て出品した上、素描や下図を参照し、神草の画業の全般を辿ります。またあわせて同時代に活動した、師の菊池契月をはじめ、甲斐庄楠音や福田平八郎などの京都画壇の作品も観するそうです。出展作も実に約170件に及びます。(一部に展示替えあり。)

なお展覧会は京都国立近代美術館からの巡回です。千葉市美術館が東日本唯一の会場でもあります。

6月は「悪」に注目です。太田記念美術館にて「江戸の悪 PARTⅡ」が行われます。



「江戸の悪 PARTⅡ」@太田記念美術館(6/2~7/29)

これは、今も昔も人々を「魅了」(チラシより)する「悪」を、江戸の浮世絵より紹介する展覧会で、盗賊や侠客、そして悪の権力者や妖術使いなど、多様に描かれた「悪」のイメージを紐解いていきます。2015年に開催されたPART1を、よりパワーアップした内容になるそうです。


また6月は多分野連携展示として、「悪」をテーマとした展覧会が、都内各地の博物館や画廊で開催されます。それぞれの「悪」を巡り歩くのも面白いかもしれません。



多分野連携展示「悪」
http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/special/2018/edonoaku/event.html

「悪人か、ヒーローか Villain or Hero」 東洋文庫ミュージアム(6/6~9/5)
「惡-まつろわぬ者たち」 國學院大學博物館(6/1~8/5)
「HN【悪・魔的】コレクション~evil devil」 ヴァニラ画廊(5/30~7/1)
「悪を演やる-舞台における悪の創造(仮)」 国立劇場伝統芸能情報館(6/2~9/24)
「悪を演やる-落語と講談」 国立演芸場演芸資料展示室(4/1~7/22)

夏にかけて最も人気を集める展覧会になるかもしれません。上野の森美術館で、20世紀の「奇想の版画家」(チラシより)、エッシャーの回顧展が開催されます。



「ミラクル エッシャー展」@上野の森美術館(6/6~7/29)

世界最大級のエッシャー・コレクションを誇るイスラエル博物館の作品で構成する展覧会で、科学、聖書、技法、人物といった8つのキーワードからエッシャーの作品の魅力を追いかけていきます。意外にも東京では、約12年ぶりの大規模なエッシャー展でもあります。


何かと地名度も高く、人気のあるエッシャーのことです。また美術館自体のキャパシティも小さいこともあり、早々から混み合う可能性も十分に考えられます。なるべく早い段階で行く予定です。

それでは少し遅くなりましたが、今月もどうぞ宜しくお願いします。
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