「大正モダーンズ~大正イマジュリィと東京モダンデザイン~」 日比谷図書文化館

日比谷図書文化館
「大正モダーンズ ~大正イマジュリィと東京モダンデザイン~」
6/8~8/7



日比谷図書文化館で開催中の「大正モダーンズ ~大正イマジュリィと東京モダンデザイン~」を見てきました。

大正時代から昭和初期にかけ、大衆文化が花開き、芸術も変革期を迎えた頃、デザインにおいても新たな展開が沸き起こりました。

中でも複製印刷の分野では、技術の進歩が発達し、書籍や雑誌、パンフレットや広告に至るまで、「イマジュリィ」と呼ばれる容れ物が登場しました。

そうしたデザインを紹介するのが、「大正モダーンズ~大正イマジュリィと東京モダンデザイン~」展で、杉浦非水にはじまり、橋口五葉、小林かいち、竹久夢二、小村雪岱など、同時代を牽引した作家による雑誌や装幀、またパッケージデザインなどが展示されていました。


杉浦非水「東京(第2巻第3号)」 1925(大正14)年

冒頭を飾るのが、当時の三越のブランドイメージを作り上げた、杉浦非水の商業図案でした。「非水図案集」では、蝶や女性の顔、それに鳥などを、曲線を多用した構図で表現していて、モダンなデザインを見せていました。大正時代は、「簡単化、大衆化の時代」(解説より)とも呼ばれ、それを反映したデザインが多様に生み出されました。


川端龍子「少女の友1月号(第8巻第1号)」 1915(大正4)年

東京の神田に出版社や印刷所が増えたのは、明治後半から大正にかけてのことでした。そしてこの時代に出版文化が隆盛し、多くの美術家らが雑誌の表紙のデザインを手がけました。中には岸田劉生や藤島武二らの洋画家もデザインを担っていて、半ば実験的とも呼べ得る、絵画とは異なった表現も作りました。


小林かいち「灰色のカーテン」 1925(大正14)年頃

大正時代のデザインには子どもや女性も数多く登場しました。特に積極的に取り上げたのは、竹久夢二や杉浦非水、それに小林かいち、蕗谷虹児でした。先立つ1900年に刊行された、エレン・ケイの著書、「児童の世紀」が世界的に流行し、日本でも子供を尊重すべき風潮が生まれ、1909年には三越で「児童博覧会」も開催されました。

一方で、明治末期から大正時代にかけては、浮世絵が見直され、江戸時代の世界が再び美術へ取り入れられました。その筆頭にあげられるのが、まさに江戸趣味を主題とした小村雪岱で、鏑木清方や橋口五葉も浮世絵のモチーフを援用しました。海外のジャポニスムの流行も影響していたそうです。


映画、演劇、舞踏、それにクラシックコンサートのパンフレットデザインも魅惑的ではないでしょうか。うち特に惹かれたのが、「松竹座ニュース」の表紙で、幾何学的なモチーフを活用し、構成主義的なデザインを落とし込んでいました。第一次大戦後の景気動向もあり、大正時代は、いわゆる中間層も文化的な催しに接した時代でもありました。

震災後、新たな街並みの築かれた東京には、モボやモガが登場し、より明るく、軽快な生活が好まれるようになりました。その中核とかしたのが、銀座で、「華宵好みの君が行く」と歌われ、様々なイラストレーションが街を彩りました。



資生堂のマッチラベルも興味深い資料のうちの1つでした。比較的手狭な一室での展示ですが、所狭しと資料が並んでいて、思いの外にボリュームがありました。またミニ図版の掲載されたリーフレットも有用ではないでしょうか。見応えは十分でした。

なお本展は、東京ステーションギャラリーで開催中の「夢二繚乱」の連動企画です。相互割引はありませんが、あわせて見るのが良さそうです。



8月7日まで開催されています。

「大正モダーンズ ~大正イマジュリィと東京モダンデザイン~」 日比谷図書文化館@HibiyaConcierge
会期:6月8日(金)~8月7日(火) 
休館:6月18日(月)、7月16日(月・祝)
時間:10:00~20:00(平日)、10:00~19:00(土曜)、10:00~17:00(日祝)。
料金:一般300円、大学・高校生200円、中学生以下無料。
住所:千代田区日比谷公園1-4
交通:東京メトロ丸の内線・日比谷線霞ヶ関駅B2出口より徒歩約3分。東京メトロ 千代田線霞ヶ関駅C4出口より徒歩約3分。都営三田線内幸町駅A7出口より徒歩約3分。
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