「ふるさとの駄菓子ー石橋幸作が愛した味とかたち-」 LIXILギャラリー

LIXILギャラリー
「ふるさとの駄菓子ー石橋幸作が愛した味とかたち-」 
6/7~8/25



リクシルギャラリーで開催中の「ふるさとの駄菓子ー石橋幸作が愛した味とかたち-」を見てきました。

戦後、郷土菓子を作りながら、約半世紀にも渡って全国各地の駄菓子を調べ歩いては、スケッチに記録した1人の菓子職人がいました。

その人物こそが、明治18年から続く、仙台の「石橋屋」の2代目である石橋幸作で、単に駄菓子を絵と文字に記しただけでなく、紙粘土で立体的に再現して残しました。また、膨大な駄菓子は、用途や目的に分類されたため、いわば民俗学的観点からも高く評価されました。


「細工もの」

その石橋の残したスケッチブックと、紙粘土の再現駄菓子が、京橋のリクシルギャラリーにやって来ました。


「駄菓子行脚 東北編」

冒頭は、石橋の駄菓子行脚の記録、すなわち駄菓子スケッチブックでした。例えば「駄菓子行脚 東北編」では、岩手県で採取した「明けがらす」や「ごまひねり」といった駄菓子が、カラーの挿絵で写されていて、「あやめ団子」では、「串にさし、紅と青の色とりどりの団子に砂糖と蜜をかけて焼く」とした、製法や食べ方までも記されていました。


「ふるさとの駄菓子を探ねて」

昭和35年の記録集、「ふるさとの駄菓子を探ねて」では、山形県の郷土の金平糖である「招き猫」が描かれていました。石橋は、当時、山形で唯一の金平糖店に足を運び、工場も見学しては、駄菓子を採取しました。また興味深いのは、スケッチに雑感が記されていることで、中に採取に際し、「あまり収穫がなかった。」とした言葉も残されていました。石橋は、戦後に商売を子息に譲り、全国へ駄菓子を求めて旅しましたが、道中は平坦ではなく、多々、苦労もあったようです。


「ふるさとの駄菓子行脚」

北海道の菓子博覧会で採取した、アイヌの菓子のスケッチも目を引きました。アイヌ語では「シド」と呼ばれ、ウバユリという植物からとったデンプンで作られているそうです。一体、どのような味がするのでしょうか。

石橋は自らの著作「駄菓子のふるさと」で、駄菓子の用途を6つに分類して提示しました。それはのちに「信仰」、「薬」、「道中」、「食玩」、「お茶請」の5つに改められました。そして一連の駄菓子を、紙粘土で制作しました。会場では、石橋の残した紙粘土菓子、約1000点のうち、200点ほどが紹介されていました。


「信仰駄菓子」 しんこ犬、稲花餅、彼岸饅頭ほか

まず1つが「信仰駄菓子」で、神仏に供えるために作られ、祈願をこめて寺社に飾られる縁起菓子、正月や盆などの行事菓子、さらに個人の慶忌のための引菓子を当てはめて分類しました。


「道中駄菓子」 凍餅、水饅頭、鬼煎餅ほか

また宿場町などで旅人の疲れを癒し、土産として売られていた菓子を、「道中駄菓子」と呼びました。そして石橋自身も、旅先の宿で出された菓子を調べては、作り手を訪ねました。ともかく石橋にとって、一にも二にも実地調査が重要だったようで、無数の紙粘土菓子からは、石橋の駄菓子調査にかける並々ならぬ熱意が伝わってきました。


「食玩駄菓子」 風船玉、豊年団子、カラカラ煎餅ほか

ほかにも「薬駄菓子」は滋養栄養のための菓子で、「お茶請駄菓子」は、文字通りお茶に添える菓子、さらに「食玩駄菓子」は、くじ引きの景品に使われた菓子を指していました。大小、色も形も様々な紙粘土菓子を前にすると、「たかが駄菓子」など、とても口に出来ません。いかに駄菓子の世界が奥深く、バリエーションに豊富であるのかが、良く分かりました。


「吹き飴売り」

石橋の駄菓子への情熱は留まるところを知りません。時代とともに失われていく駄菓子を、かたちに残したとした石橋は、幼い頃に見た駄菓子売りの様子を、今度は紙粘土の人形に再現しました。


「しんこ細工師」

吹き飴売りや団子の担ぎ売り、そしてしんこ細工師など、実に精巧で、駄菓子売りの掛け声すら聞こえるかのように生き生きとしていました。


「八百屋菓子売り」

八百屋菓子とは、人参や大根、茄子などの野菜を、色も形も本物そっくりに作った駄菓子のことで、明治から大正にかけて縁日で売られていたそうです。

「ふるさとの駄菓子 石橋幸作が愛した味とかたち/LIXIL BOOKLET」

まさか全国の駄菓子を、これほどまでに丹念に調査、分類、さらに記録し、再現して保存した人物がいたとは知りませんでした。



8月25日まで開催されています。おすすめします。

「ふるさとの駄菓子ー石橋幸作が愛した味とかたち-」 LIXILギャラリー
会期:6月7日(木)~8月25日(土)
休廊:水曜日。夏季休業あり。
時間:10:00~18:00
料金:無料
住所:中央区京橋3-6-18 LIXIL:GINZA1、2階
交通:東京メトロ銀座線京橋駅より徒歩1分、東京メトロ有楽町線銀座一丁目駅7番出口より徒歩3分、都営浅草線宝町駅より徒歩3分、JR線有楽町駅より徒歩7分
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