「第12回 shiseido art egg 冨安由真展」 資生堂ギャラリー

資生堂ギャラリー
「第12回 shiseido art egg 冨安由真展」 
6/8~7/1



2006年にはじまった、新進アーティストを公募で紹介する「shiseido art egg」も、今年度で12回目を迎えました。

今回は350件の応募があり、専門家の選定の上、冨安由真、佐藤浩一、宇多村英恵が入選しました。うちそれぞれが、約1ヶ月弱程度の会期で、個展形式で作品を発表していきます。

トップバッターに選ばれたのは、1983年に東京で生まれた冨安由真でした。作家は、「心霊など、不可視なものや科学で解明されていないことを手掛かりに、現実と虚構の狭間を探るインスタレーションを制作する」(解説より)としています。それでは一体、どのような作品が展開していたのでしょうか。



薄暗がりの空間が待ち構えていました。タイトルは「くりかえしみるゆめ」で、合板の合間に扉があり、半ば入り組んだ迷路のような部屋や廊下が続いていました。室内には、アンティークを思わせる家具や調度品、それに黒電話などが置かれていました。いずれも無人で、誰もいないものの、不思議と人の気配、ないし生活の痕跡を残しているようにも思えました。



さらに部屋の随所には、ともすると不気味にも感じられる絵画が飾られていました。テーカップには砂が入れられ、いわゆる恐怖小説で知られるエドガー・アラン・ポーの著作なども置かれていました。ランプは点滅し、消えてたかと思いきや、突如、強い光を放つこともありました。不可思議、ないしオカルト的とも呼べうる空間が広がっていたと言えるかもしれません。



食堂、書斎などを廊下を伝って進むと、一際、広い部屋に到達しました。円形のテーブルの上には電球が灯り、随所には古いブラウン管のテレビがあり、やはり消えていたかと思うと、突然、点いたりしていました。ベットの上のリネンは乱れていて、まるで先ほどまで人が寝ていたかのようでした。



音が重要なモチーフの1つでした。というのも、しばらく歩き、また部屋を眺めていると、俄かに窓をドンドンと叩く音が聞こえてくるからです。音は、あまりにも突然でかつ、まるで人を驚かすように忙しなく響いていました。ただし、そもそもどのように叩かれているかも分からず、音の発生源を確かめようとも、狐につままれるばかりでした。これぞ「心霊」現象の1種である、ポルターガイストなのかもしれません。



冨安は今年の「第21回 岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)」の特別賞にも選出され、川崎市岡本太郎美術館で開催された「TARO賞」展にも作品を出展していました。

「第21回 岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展」 川崎市岡本太郎美術館(はろるど)

「TARO賞」は一室のみの展開ながらも、同じく暗い部屋を舞台として、突然、窓や壁が打ち鳴らされ、やはり超常現象を思わせる展開を見せていました。



その拡大バージョンと言えるかもしれません。先のポーやUFOに関する書籍、ないし随所の絵画も効果的で、個々の要素がより複雑に絡み合いながら、不在の住人を取り巻く、何らかの物語が紡がれているかのようにも思えました。



一概に言えませんが、人が少ない方がより楽しめる展示かもしれません。

「第12回 shiseido art egg展」
冨安由真展:6月8日(金)~7月1日(日)
佐藤浩一展:7月6日(金)~7月29日(日)
宇多村英恵展:8月3日(金)~8月26日(日)


7月1日まで開催されています。

*写真は全て「くりかえしみるゆめ」2018年

「第12回 shiseido art egg 冨安由真展」 資生堂ギャラリー@ShiseidoGallery
会期:6月8日(金)~7月1日(日)
休廊:月曜日。
料金:無料。
時間:11:00~19:00(平日)、11:00~18:00(日・祝)
住所:中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A2出口から徒歩4分。東京メトロ銀座線新橋駅3番出口から徒歩4分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )