「本館 特別展示 リヒター/クールベ」 国立西洋美術館

国立西洋美術館
「本館 特別展示 リヒター/クールベ」 
6/19~2019/1/20

国立西洋美術館で開催中の「特別展示 リヒター/クールベ」を見てきました。

ドイツの現代美術家、ゲルハルト・リヒター(1932〜)は、自邸のダイニング・ルームにクールベの風景画を飾り、隣り合う部屋に、自作の「シルス・マリア」を置いています。


「特別展示 リヒター/クールベ」会場風景

その「シルス・マリア」が、意外にも、日本の西洋美術の殿堂、国立西洋美術館へとやって来ました。タイトルは「リヒター/クールベ」で、「シルス・マリア」を含む、リヒターの絵画2点と、国立西洋美術館の所蔵する、クールベの「狩猟者のいる風景」が、あわせて展示されていました。


ギュスターヴ・クールベ「狩猟者のいる風景」 1873年

「狩猟者のいる風景」は、クールベの晩年、1873年にスイスへ亡命する直前、故郷のオルナンの地を描いた作品で、中央の小川を挟み、左手の狩人が、対岸の動物を捕らえようと身構える姿を表していました。奥には白い崖が聳えたち、夕方なのか、青い空は僅かに陰っているようにも思えました。左手の樹木の幹など、随所にクールベならではの質感に富んだ油彩表現を見ることが出来ました。


ゲルハルト・リヒター「シルス・マリア」 2003年

一方の「シルス・マリア」は、リヒターが写真のイメージを援用しながら描いた作品で、スイスの南東部の景勝地を舞台としていました。ちょうど「狩猟者のいる風景」と向かいあっていて、朧げな緑や青の色彩から、緑に深い山々や、白い雲の靡く空の景色が浮かび上がっていました。


ゲルハルト・リヒター「抽象絵画(ラヴィーン)」 1996年

その2点の合間には、白い色彩が斑紋状に広がる、リヒターの「抽象絵画」が展示されていました。タイトルが示すように、いわゆる抽象表現ながらも、元は景色が描かれていて、のちに画家が白く「塗り潰しました。」(*)その重層的で、厚みのある質感は、クールベ画の「荒っぽい物質性」(*)と共通するとする指摘もなされていました。


「特別展示 リヒター/クールベ」会場風景

リヒターは1980年代、「偶然のなりゆき」(*)によって、クールベの風景画を入手したそうです。その作品には、時にクールベの名を含みこみ、構図をなぞったイメージがあるとも言われています。ともするとクールベは、リヒターにとって、特別な画家であるのかもしれません。

会場は常設展の展示室です。またクールベに関しては、引き続く常設展でも、「波」や「罠にかかった狐」、それに「眠れる裸婦」などの作品が展示されています。あわせてお見逃しなきようご注意下さい。


2019年1月20日まで開催されています。*内は解説より

「本館 特別展示 リヒター/クールベ」 国立西洋美術館@NMWATokyo
会期:6月19日(火)~2019年1月20日(日)
休館:月曜日。7月17日(火)、9月25日(火)、10月9日(火)、12月28日(金)~1月1日(火・祝)、1月15日(火)。
 *但し、7月16日(月・祝)、8月13日(月)、9月17日(月・祝)、9月24日(月・休)、10月8日(月・祝)、12月24日(月・休)、1月14日(月・祝)は開館。
時間:9:30~17:30 
 *6月22日(金)~9月29日(土)までの毎週金・土曜日と、毎月最終金曜日は21時まで開館。10月以降の毎週金・土曜日は20時まで開館。但し11月17日(土)は17時半まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般500(400)円、大学生250(200)円、高校生以下無料。
 *特別展チケットで観覧可。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:台東区上野公園7-7
交通:JR線上野駅公園口より徒歩1分。京成線京成上野駅下車徒歩7分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅より徒歩8分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )