「近くへの遠回り―日本・キューバ現代美術展 帰国展」 スパイラルガーデン

スパイラルガーデン
「近くへの遠回り―日本・キューバ現代美術展 帰国展」
6/6~6/17



日本とキューバ、12名の現代アーティストによる「近くへの遠回り―日本・キューバ現代美術展」は、今春、ハバナのウィフレド・ラム現代美術センターで開催され、「好評」(解説より)を得ました。その帰国展が、現在、東京・南青山のスパイラルガーデンにて開かれています。


手前:レニエール・レイバ・ノボ「Untitiled」 2018年
奥:三瀬夏之介「Exchangeability」 2018年


床一面にカラフルなカーペットが広がっていました。レニエール・レイバ・ノボの「無題」で、カーキ色を主体に、赤、青、水色、それに肌色のほか、柄物の布の切れ端が、無数に編み込まれていました。キューバでは「普遍的な家庭用品」(解説より)であるマットを素材としていて、全てリサイクルされた布を使用していました。


レニエール・レイバ・ノボ「Untitiled」 2018年

カーキ色の布はキューバの軍服で、ほかが一般市民の服でした。キューバは、アメリカとの国交も回復し、軍事的緊張が緩んだともされていますが、彼の地にとって軍服とは、我々よりもはるかに身近な素材なのかもしれません。


田代一倫「東京」 2018年

田代一倫は、写真のシリーズ、「東京」を出展していました。写真家が、警備員の仕事の行き帰りに撮影した作品で、都内の様々な場所で、ポーズを構える人々の姿を写し出していました。


田代一倫 「東京」 2018年

しかし撮影は必ずしもスムーズに進まず、拒否されたり、中には「肖像権」の問題があるとして、注意されてしまうこともあったそうです。確かに被写体との間には独特の緊張感も漂っていて、東京における人同士の距離感を示しているかのようでした。


持田敦子「距離、その落下、その痕跡について」 2018年

吹き抜けのスペースで目立っていたのは、持田敦子の「距離、その落下、その痕跡について」でした。パイプによる足場が階段状に連なり、天井付近にまで達したインスタレーションで、ハバナでも既存の建物に階段を作る作品を制作しました。


持田敦子「距離、その落下、その痕跡について」 2018年

階段を上がると、足場からスパイラルを見下ろすことも可能でした。但し足元はやや揺らぎ、全てに安定しているとは言えません。実際に不安定な靴や、大きな荷物を持って進むことは出来ませんでした。


持田敦子「距離、その落下、その痕跡について」 2018年

なおハバナでは、会場の裏庭に6メートルの階段を構築したものの、なかなか材料が集まらず、当初の計画通りの高さに達しませんでした。その様子を示すための、同地での制作、ないし完成風景を捉えた写真もありました。


高嶺格「歓迎されざる者ーカリブ編」 2018年

多くのカラフルなTシャツで彩られた船に目が留まりました。それが高嶺格の「歓迎されざる者ーカリブ編」で、キューバからカリブ海を超え、アメリカへ目指す人々をテーマとしていました。アメリカでは、基本的に、「上陸した者に市民権を与え、海上で保護された者はキューバに送還する」(解説より)政策を実施しているそうです。


高嶺格「歓迎されざる者ーカリブ編」 2018年

Tシャツのプリントは、アメリカに渡った船の表面をフロッタージュの技法で写したものでした。また船は、身の回りの多様な資材で作られていて、中には芝刈り機のエンジンなども用いられていました。しかしながら、手作りの船による渡米は大きなリスクを伴い、数十万人が海上で命を落としました。


高嶺格「歓迎されざる者ーカリブ編」 2018年 *「漂流朝鮮人之図」(複製)

船の横には、江戸時代に朝鮮半島から日本に漂流し、保護され、無事に帰国した人々の様子を描いた、「漂流朝鮮人之図」の複製が展示されていました。いわゆる難民の問題は、何も今日にはじまったわけではありません。


岩崎貴宏「寓話のような」  2018年

そのほか、日本側では三瀬夏之介や毛利悠子、岩崎貴宏、ミヤギフトシ、キューバからはホセ・マヌエル・メシアス、グレンダ・レオンらも展示に参加していました。ともすると、互いに身近な国とは言えないかもしれませんが、今年は、キューバへ日本人が移住してから、120年の節目の年でもあります。


会期中は無休です。6月17日まで開催されています。

「近くへの遠回り―日本・キューバ現代美術展 帰国展」 スパイラルガーデン@SPIRAL_jp
会期:6月6日(水)~6月17日(日)
休館:会期中無休
時間:11:00~20:00
 *但し6月6日(水)は18:30まで。
料金:無料
住所:港区南青山5-6-23
交通:東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅B1出口すぐ。
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