「Office Vacant」/「NEUT.」 セントラルイースト東京2005 10/10

セントラルイースト東京2005・日本橋ステーション(中央区日本橋室町)
「Office Vacant」/「NEUT.」
10/1~10/10(会期終了)

セントラルイースト東京(CET)2005で、唯一有料の会場である日本橋ステーションでの特別企画展です。

「Office Vacant」は、「ニッポンのオフィスを変革せよ!」という合い言葉の元に、ビル内の事務所のレイアウトをそのままにして、6名の作家がアートを展開するイベントです。かつて事務所だった空間には、使われなくなった場所の寂しさとでも言えるような、ある意味で廃墟を思わせるホコリっぽさや、退廃の匂いを感じさせますが、そこへ大胆なビデオ・インスタレーションなどが投入されると、そのアンバランスの妙が、作品を引き立てさせた上に、会場全体をも蘇生させます。真っ暗な空間に薄い幕を吊るして、動きと広がりのある映像を見せたエンライトメントの作品は、自分が立って場所が日本橋の事務室の残骸であることを忘れさせます。しばし時間を忘れて、映像を見入っていると、宇宙の果ての広大で深淵な光景か、逆に意識や神経の流れを視覚化したような超ミクロの世界を思い起こさせました。

「NEUT.」は、デザイン系アートの企画として、半ば文化祭のようなノリで、会場が構成されている展覧会です。都会の街中の風景写真から、看板や標識の文字などを全て塗りつぶして、日常のリアリティーを巧みに消失させた作品や、マウスをクリックすると、スクリーンに映しだされた色や形が変化していく作品などが印象に残りました。

CETのメイン会場ということで、なかなか盛り上がっていた様子ですが、会場入口にあたるビルの一階には、この企画展を示すような大きな看板などがありません。もう一歩、開かれた形になればとも思いました。

*私がCETの神田地区を廻った感想はこちらです。
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田中功起「原因が結果」 ナディッフ 10/9

ナディッフ(渋谷区神宮前)
田中功起「原因が結果」
9/9~10/10(会期終了)

表参道のナディッフで、先日まで開催されていたミニ企画展です。書店内の狭いスペースの置かれた小さなモニターによる、僅か数分の、とても短いビデオ・インスタレーションです。

映しだされる映像は、一見何気ない光景にも見えますが、それらは全て因果関係が崩壊しているものばかりです。横倒しになった一個の扇風機は、電源こそ入れられてブンブンと威勢良く回っていますが、本来ならあるはずの羽の部分に、何故かタオルが巻かれています。また、空の澄んだ晴天の元で、強い風に思いっきり吹き飛ばされているビニール傘。一体何のためにあるのでしょう。そして、透明の液体が入ったグラス。そこに同じような透明の液体が入れられると、不思議にも上部が化学変化を起こすように凝固してしまいます。これでは飲めません。

この展覧会のパンフレットに、「成るべくしてそのように成ったモノや出来ごと。」という言葉がありましたが、そこに逆説的なヒネリを加えたのが、これらの作品ではないかと思います。結果の「無意味性」が予見されていることを敢えて行う。映像自体のクオリティーも高く、どのシーンも非常に美しく撮影されています。「ありそうでなさそうな光景」を巧みに生み出す発想力。なかなか面白い試みです。

この日は殆ど偶然にナディッフへ入って、何となしにこのビデオ・インスタレーションを見たのですが、思いの外楽しい時間を過ごすことが出来ました。また他でも見てみたいと思います。
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セントラルイースト東京2005 10/10

神田エリア(千代田区内神田界隈)
セントラルイースト東京(CET)2005
10/1~10/10(会期終了)

東京都心部の東側(セントラルイースト)を、アートやデザイン、それにライブなどのイベントで盛り上げようという企画です。神田、馬喰町、八丁堀などのエリアに点在する空きビルや空きテナントの一室に、現代アートやデザイン系の展示が並びます。CETとしては、昨年に引き続いて二度目の開催とのことです。

神田から八丁堀まで、会場のエリアは広範囲に渡っていますが、私が見たのは神田界隈と、CETのメイン会場として、特別な企画展も開催された日本橋ステーションの展示です。(日本橋ステーションの感想はこちらへ。)

CET神田地区
K02 菱岡ビル 泉沢儒花/syfte.
K03 高橋ビル 奥まゆみ
K04 穂刈ビル AKI./長靖
K05 星徳ビル 27(天野謙佑+村上貴紀)/SEVEN DOGS NEXUS
K06 ムサシノビル flask/福津宣人/point/sonia chow/野老朝雄(トコロアサオ)/United Bows (野老朝雄+今井健+荒牧英治)
K08 INOビル まくらのいきおい / 加藤和也 コヤマイッセー/太田素子/attaka≒高橋辰夫/Tissue
K09 CASA NUOVA GALLERY 福山正紘

これらの会場を見て回りました。作品によっては、ビルの古い内装と調和していたり、人気のない寂しい室内をパッと明るくさせていたりと、思わぬ展開を見せてくれたものもあります。空きビルの鄙びた風情と現代アート。良い方向での相乗効果があるようです。

特に印象に残ったのは、K03の奥まゆみとK04の長靖、またはK05のSEVEN DOGS NEXUS、さらにはK06の福津宣人と、同じくK06の長岡勉と田中正洋の展示です。K03の奥まゆみの作品は、廃屋となったビルの一室に、まるでそこをねぐらにしているような可愛らしい生き物たちが住み着いています。また、K05のSEVEN DOGS NEXUSは、ビルの女性トイレをそのまま利用して、なかなか刺激的な展示を繰り広げます。さらに、K06の福津宣人の巨大な人形や、蛍光灯を使ったインスタレーションを見せた長岡勉と田中正洋も、空きビルや廃屋という空間を、アートを介した面白い「場」へと変換させていたようです。

K04の長靖の作品は、家電カタログのイメージを切り抜いて印刷し、ラベルとして構成、展示するものです。かつて住宅として使われていた狭い一室には、テレビやクーラーなどのコピーが展示されています。クーラーはまるで魚拓のように吊るされ、テレビは壁面へいくつも並べられます。それらは、決して現物ではなく、カタログのコピーに過ぎませんが、この場がかつて生活の空間であったことを強く匂わせます。この作品も「場」を巧みに取り込んだようです。もちろん、作品自体も面白いとは思うのですが、このような空間で見たことが、さらに印象を深めさせます。

メディア等への露出が少ないこともあるのか、参加されていた方々は、コアな美術ファンや、美術やデザイン関係の学生さんが目立ち、一般的なイベントとしての認知度はまだまだ低いように思いました。私が出向いた神田地区でも、駅に企画の告知はなく、地図を受け取ることが出来るインフォメーションの場所すら分かりにくい状況です。また、メインの日本橋ステーションの会場も、中こそ盛況でしたが、外の日本橋界隈の賑わいを取り込むほどではありません。もっと一般の方へのアプローチが必要のようです。

あちこちの空きビルを巡りながら作品を鑑賞することは、意外にもスリリングで楽しめます。都会の真ん中でアートのオリエンテーリング。来年はもっと広い範囲を楽しんでみるつもりです。
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「荒木経惟写真展 飛雲閣ものがたり」 epSITE 10/8

EPSON Imaging Gallery epSITE(新宿区西新宿)
「荒木経惟写真展 飛雲閣ものがたり」
9/21~11/3

京都・西本願寺内の庭園に佇む楼閣、飛雲閣。写真家の荒木経惟さんが、その四季を撮り尽くします。計五回に渡って行われた撮影は、春夏秋冬、多様に趣きを変える飛雲閣の姿を、独特の「語り口」によって、愉快な「ものがたり」へと変えてくれました。実に魅力的な写真ばかりです。

一見すると、何気ない名勝の光景。少し可愛らしい表情も見せる飛雲閣は、荒木さんのカメラに捉えられると、さらにより人懐っこくなって、その姿を自己主張してくるようです。三層の最も上の部分にある二つの障子窓は、好奇心を丸出しにしている目であり、その下の二層は、やや肥満気味に横へ広がってしまった体の部分にも見えます。まるでそれは、大変失礼ながら、荒木さんご本人の姿のようです。また、作品の中には飛雲閣という人物が居て、それが一生懸命にカッコ良い姿を写させようと頑張っているようにも見えます。本来なら落ち着きのあるはずの楼閣を、これほどまでに微笑ましく、愉快に、擬人的に見せてくるとは、ただただ驚かされるばかりです。

右に飛雲閣が、左には紅葉が配された、丁度、楼閣と紅葉が対になったような一枚の写真に惹かれました。飛雲閣と見事な紅葉のコラボレーション。京都の秋の風情を存分に楽しむことのできる作品です。そして、この作品で最も興味深いのは、飛雲閣が少し斜めになるように、紅葉の方へせり出して写っていることです。前景右手の紅葉へ、「オレも入れてくれ。」と言わんばかりに存在感を見せつける飛雲閣。紅葉もこれ見よがしと、鮮やかな色彩で対抗しますが、飛雲閣も黙ってはいません。

明かりがたっぷり取り込まれた小部屋に、花瓶へさされた美しい花々が写った作品も魅力的です。障子越しの陽光の白さが、赤やピンクの花びらへ映え、さらにはそれを受ける青い花瓶へと浸透していきます。床に敷きつめられた畳からは、この楼閣の気品が伝わりますが、面白い点は、この花々が妙に色気を醸し出しているということです。一人の女性が、美しい横顔を見せながらこちらを見つめている。そんな光景とも重なります。これにも参りました。

既に、今回の作品は、「飛雲閣ものがたり」(本願寺出版社)として、写真集となって発売されています。私が荒木さんの作品を見出したのは、今年に入ってからのことですが、展覧会などで幾度となく出会う氏の作品には、見る度に惹き付けられます。11月3日までの開催です。
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「イサム・ノグチ展」 東京都現代美術館 10/1

東京都現代美術館(江東区三好)
「イサム・ノグチ展 -彫刻から空間デザインへ~その無限の想像力- 」
9/16~11/27

東京都現代美術館で開催中の、イサム・ノグチ(1904-1988)の回顧展です。展示作品の数は約40点ほど、会場のスペースは美術館の地下フロア(屋外も含む。)のみと、決して大規模な内容ではありませんが、ノグチの魅力を味わうことの出来る優れた展覧会です。

ともかく圧巻なのは、現代美術館の巨大な吹き抜けで、猛烈な存在感を示している「エナジー・ヴォイド」(1971-72)です。高さ3.6メートルにも及ぶ巨大な石彫。一見シンプルな形をしていますが、見る角度によって、ほぼ無限大に表情を変化させます。三角形、四角形、円。作品の周りを行ったり来たり、まさに右往左往して歩きながら、出来るだけ近づいて、または遠目で眺めてみます。鈍く黒光りする石の重々しい質感。外からガラス越しに降り注ぐ陽の光をたっぷりと受けて、気持ち良さそうに、ゆっくりと深呼吸しているかのようです。また、作品の中心部の大きな空洞は、そこがまるでブラックホールであるように、作品を取り巻く全体(鑑賞している人々も含む。)の「気」、つまりまさに「エネルギー」を強く引きつけています。空洞という、ある種、何もない部分が感じさせる、強烈な重力のような吸引力。彫刻が、これほど力感を漲らせていて、逞しく見えるとは思いませんでした。この出会いは衝撃的ですらあります。

展示作品の素材は、真鍮からブロンズ、それに石と、ノグチの創作の長い過程を反映してか、実に多岐に渡っています。そして、それらの中では、特にブロンズと石の作品から、「エナジー・ヴォイド」と同じようなエネルギーを感じることが出来るようです。展示の構成はとてもシンプルで、ただ愚直に作品を並べたようにも見えますが、ノグチの作品はどれも他のものとあまり干渉し合うことがなく、一点一点の重みをストレートに伝えてくれます。実は私、これまでノグチの作品に強く惹かれたことがなかったのですが、今回の展示でそれは完全に覆されました。この重み。この気配。作品の持つ強い磁力に、私もすっかり引き付けられてしまったようです。

唯一明かりが落とされた薄暗い展示室には、数点の石彫が並んでいました。その中で最も気になったものは、「この場所」(1968年)という、7片の石が四角形に合わさった作品です。床へそのまま置かれていて、見下ろす形で鑑賞することになりますが、決して大きな作品ではないのに、横へ横へという広がりを感じさせます。と同時に、この7片が今にもバラバラになってしまって、澱んだ深淵が口を開けて待っている、そんな気分にもさせられます。亀裂を挟んだ7片のせめぎ合いと揺らぎ。明るい場所で見ると、また印象も変わりそうです。

先日の記事にも、一部写真をアップしましたが、屋外のスペースには、「オクテトラ」(1968年)と「プレイ・スカルプチャー」(1966-67年)の二点が置かれています。これらは写真撮影可の上に、触っても良し、遊んでも良しと言うことで、多くの方が作品へ直に触れていました。「オクテトラ」の穴の中へ体を潜り込ませてみたり、「プレイ・スカルプチャー」の曲線の上へ、器用に体を添わせてみたりと、まさに作品を全身で感じながら、作品とコミュニケーションをとります。これら2点の作品には、「エナジー・ヴォイド」で感じられたような「強烈な重力」や「存在の重み」のようなものは影を潜め、もっと親しみやすい表情を見せています。また、鮮やかな色や形の妙も、他の石彫やブロンズ作品にはあまりなく、場に合わせながら、多様な方向へと開くことが可能です。「エナジー」のような「重み」のある作品と、このような体験的なコミュニケーションが可能な作品。一口に彫刻と言っても、その両方へ向いているノグチの創作の幅広い包含力には、心底驚かされました。

私としては久々に「痺れた」展覧会でした。いつもの如く、全く私の主観ではありますが、わざわざ木場まで足を運ぶ価値は十二分にあると思います。これはおすすめしたいです。
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イサム・ノグチ 「オクテトラ」 東京都現代美術館「イサム・ノグチ展」にて

東京都現代美術館で開催中の「イサム・ノグチ」展で、屋外展示(会場内)されている作品「オクテトラ」(1968年)です。写真撮影可ということで、拙いですが早速カメラにおさめてきました。もちろん、中へ入ったりして自由に遊ぶことも出来ます。入れ替わり立ち代わり、多くの方で賑わっていました。


最も人がいなくなった時を見計らってカメラに…。洗練された形です。


上部だけ。陽の光に美しく反射しています。


中から外を覗いてみると…。

屋外展示には、もう一点、「プレイ・スカルプチャー」(1966-67年)という作品も並んでいます。こちらも何枚か写真に撮って来たのですが、たくさんの方の顔が写っていますので、残念ながらブログには載せられそうもありません。チョコンと座ってみたり、寝そべってみたり…。皆さん気持ち良さそうでした。
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「特集展示 青木繁『海の幸』」 ブリヂストン美術館 10/1

ブリヂストン美術館
「特集展示 青木繁『海の幸』100年」
9/17~10/10

ブリヂストン美術館で開催中の、明治の洋画家、青木繁(1882-1911)の回顧展です。代表作「海の幸」(1904年)をはじめとした、約20点ほどの作品で氏の画業を振り返ります。展示作品の殆どは、このブリヂストン美術館か、もしくは石橋美術館の所蔵です。青木繁に「強い」、この美術館ならではの企画と言ったところでしょうか。

まずは、展示会場でも一際目立っている「海の幸」です。思っていたよりも随分と小さい、畳一枚程度の横長のキャンバスには、漁を終えた全裸の男女が、まさに「海の幸」でもある魚を抱えながら、波打ち際を行進するかのように歩く姿が描かれています。この作品は、青木が、房総半島南端の布良海岸へ実際に出向いて制作したものだそうですが、漁の姿をそのまま描写したのかはともかくも、画面からは不思議とリアリティーが喪失しています。そのどこかおどろおどろしい画面は、漁師たちの収穫と言うより、まるで、冥界に住む怪人や奇人たちが闊歩している姿にも見えます。また、一人、こちら側を向いている、白い顔立ちをした女性の表情。これは印象に残ります。彼女の視線の先には一体何があったのでしょうか。

絵具は薄くキャンバスに載せられているようで、下地の線が比較的くっきりと画面に浮き出ています。全体の色遣いで気になったのは、朱色の多用です。特に輪郭線でそれが目立ちますが、漁師たち一人一人に、無骨なまでに与えられた朱色は、その内なる生命力の発露とでも言うのか、不気味な表現でありながらも、どこか力強さを与えています。一歩間違えれば、未完成とも受け取れるほどの荒々しいタッチと、朱色によって鈍く輝く漁師の姿。あまり他ではお目にかかれない、妖気とも言えそうな、異様な気配を感じます。

「海の幸」以外では、「輪転」(1903年)が最も印象に残りました。大きな太陽の下で、明るい光に包まれながら踊り狂う4人の裸婦。タッチは極めて躍動的で、裸婦もまるで何かに憑かれたかのように、まさに乱舞していますが、天の太陽を核にして、全体を大きなうねりで飲み込むような表現は、自然神を信仰する原始的な宗教祭祀を思い起こさせます。この作品は、主題がハッキリしないということですが、それがまた作品に神秘性をもたらしているようです。

「海の幸」への科学的調査(赤外線や顕微鏡で作品を分析。)についての詳細な展示や、丁寧な作品解説が書かれた冊子の配布は、この展覧会へかける美術館の強い意気込みを感じます。10月10日、次の月曜日までの開催です。
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「牡蠣と水菜のクリームパスタ」 レストラン・MOT 10/1

「レストラン・MOT」
東京都現代美術館(地下フロア)
クリームパスタのランチセット

東京都現代美術館の地下にある、美術館の併設レストランです。数年前までは、言葉は悪いのですが、いかにも「公立美術館のレストラン」と言った感じでしたが、レストラン・チェーン「カーディナス」の運営になってからは、メニューやサービスが一新されました。いつも大体空いていて、美術館が余程賑わっていない限り混雑することがありません。約1000円前後で、気軽にランチを楽しむことができます。

私が出向いた時は、「イサム・ノグチ展」開催中の、しかも土曜日のランチタイムと言うことだったので、さすがにそれなりの賑わいを見せていました。大きな窓の側の席に座ると、水辺のある中庭を少し見渡すことが出来ます。また、地下でありながら、晴れていれば陽の光も差し込みます。なかなか明るい雰囲気のレストランです。

この日注文したのは、「牡蠣と水菜のクリームパスタ」に、サラダとパンた飲み物が付いたセットメニューです。お値段は1300円弱。ごく一般的な価格でしょうか。

まずはセットのサラダとパンです。パンはペーストに付けていただきます。



私の好きなトマトは入っていなかったようです…。

メインのパスタです。クリームソースは何とカレー味。ただ、カレーが主張し過ぎることはありません。細いパスタに良く絡んでいます。


パスタの上には鮮やかな「いくら」が少々。牡蠣は4つほど入っていました。

この日は少し混雑していたので、食べ終わった後はすぐに席を立ちました。空いている日であれば、コーヒーでも飲みながら、のんびりと過ごすことも出来ます。ゆっくりと美術談義、などというもの良いかもしれません。
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「アート・サークル2005」 横浜トリエンナーレ開催記念スタンプラリー

先月の28日から、現代美術の祭典である横浜トリエンナーレ始まりましたが、それに合わせて、首都圏各地の美術館では、「アート・サークル2005」というスタンプラリーが開催されています。

この企画は、横浜トリエンナーレを含めて、指定された首都圏の美術展を5つ以上巡ると、タイのアニメーション作家ウィスット・ポンニミット氏のデザインによる、特製Tシャツがプレゼントされるというものです。ちなみに、指定された美術展は、以下の通り、首都圏一円から計9会場、全12展となっています。

横浜美術館 「李禹煥 余白の芸術」展(9/17~12/23)
BankART 1929 「グローバル・プレイヤーズ」展(9/17~10/17)/「BankART Life」展(10/28~12/18)
神奈川県立近代美術館(鎌倉) 「篠原有司男」展(9/17~11/6)/(葉山)「シュヴァンクマイエル」展(9/10~11/6)
原美術館 「やなぎみわ」展(8/13~11/6)
東京オペラシティアートギャラリー 「シュテファン・バルケンホール」展(10/15~12/25)
森美術館 「杉本博司」展(9/17~2006/1/9)
東京国立近代美術館 「ドイツ写真の現在」展/「アウグスト・ザンダー」展(10/25~12/18)
東京都現代美術館 「イサム・ノグチ」展(9/16~11/27)
川村記念美術館 「ゲルハルト・リヒター」展(11/3~2006/1/22)

それぞれの展覧会会場にて、上にアップした写真のような青い冊子を配布しています。私も、先日出向いたMOTの「イサム・ノグチ」展にてこの冊子をいただいて、早速、中にスタンプを一つ押したのですが、スタンプ台が目立たない位置にあったせいか、反応は今ひとつのようでした。横浜の本会場ではどうなのでしょうか。

5会場を集めなくてはいけないとなると、ハードルがやや高いような気もしますが、トリエンナーレを含んだ5会場ということなので、私のような素人の現代美術ファンでも、意外に溜まる数なのかもしれません。既に出向いた「李禹煥」展と「イサム・ノグチ」展はもちろんのこと、今月にも行こうかと思っている「やなぎみわ」展、さらには「杉本博司」展や「ドイツ写真の現在」展に、川村の目玉的展覧会である「ゲルハルト・リヒター」展。どれも「これは!」と言えるものばかりです。

ところで、特製Tシャツのデザインをされたウィスット・ポンニミット氏ですが、なかなか意欲的な活動をなさっておられる方のようで、ネットで検索をしてみてもDVDの作品集などが挙がってきます。また、Tシャツのデザイン画は公式のサイトにも載っています。なかなか可愛らしいです…。

ちなみに、Tシャツの応募には、スタンプを集めた台紙だけではなく、それぞれの会場の入場券も必要とのことです。気軽に楽しめるスタンプラリー。一度試してみるのも悪くないかと思います。
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伶楽舎 第7回雅楽演奏会 「武満徹:秋庭歌一具」 10/2

伶楽舎第7回雅楽演奏会(伶楽舎創立20周年記念/武満徹生誕75年記念)

芝祐靖 瑞霞苑
武満徹 秋庭歌一具

演奏 伶楽舎

2005/10/2 14:00 サントリーホール大ホール

先月に聴いた、サントリー音楽賞コンサートでの伶楽舎の雅楽演奏。その時の音色が忘れられず、今度は伶楽舎の定期公演へ行ってきました。いわゆる現代音楽家の武満徹の曲が演奏されるとは言え、雅楽のみのコンサートを聴くのは今回が初めてです。

一曲目の「瑞霞苑」は、伶楽舎の音楽監督であり、また龍笛の奏者でもある芝祐靖氏が作曲した音楽です。曲の冒頭部分の参入音声(まいりおんじょう)では、奏者自身が歌声を響かせながらステージへ入場してくるわけですが、そのゆったりとした足取りと高らかな声は、ホールの空間を、日常の喧噪からは離れた「異次元」へと変換させます。雅楽の生み出す独特な「場」の誕生です。「瑞霞苑・道行」(ずいかえん・みちゆき)からは管弦楽が開始され、笙や篳篥(ひちりき)の音が、深い呼吸の元に大きく広がっていき、また静かに収斂していきます。そしてステージ上には、左右から次々と舞人が登場し、この「場」の空気と戯れるような、穏やかな舞いが披露されます。この「瑞霞苑」は、皇居の紅葉山から道灌山へ至る小径の、「深山幽谷」のような有様を描いた作品だそうですが、ゆっくり目を閉じて雅楽の音に耳をはせると、まるで鬱蒼とした森の中で、木々から湧き立つ湿り気を肌に吸い取りながら、その美しい音に酔っているような気持ちにさせられます。ホールの強い残響が、雅楽の生み出す音と相容れないようにも思いましたが、まさに美しい自然が目の裏に浮かぶような音楽です。

そして二曲目は、伶楽舎が得意としている武満徹の「秋庭歌一具」です。こちらの曲は、「瑞霞苑」よりも、やはり西洋音楽的とでも言うのか、曲の構成や音の組み立てに配慮がなされているようで、笙などはそれこそオルガンのように響くのですが、舞台中央や左右に配された奏者が作り出す響きは、透明感と瑞々しさに溢れています。独立して演奏される機会の多い、この曲の中心部分の「秋庭歌」は、ひんやりとした冷気を音に纏わせながら、葉も落ち、生き物は冬ごもりを始め、光は弱く柔らかくなっていくような、一抹の寂しさを伴う秋特有の美しさを巧みに表現しています。「秋庭歌」から、笛と木鉦が交錯する「吹渡二段」、そしてこれまでの全ての響きを吸収するかのように、素朴に訥々と木鉦が鳴る終結部の「退出音声」。龍笛と太鼓が温かく絡み合い、笙が大きな「場」を作る。「聴く」というよりも「浸る」という世界でしょうか。

キャパシティが大き過ぎたのか、会場にはかなりの空席が目立ちましたが、大地や空と共鳴し合っているかのような雅楽の響きは、耳に体に、時には険しくも優しく響いてきます。伶楽舎のコンサートは、これからもチェックしていきたいです。
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10月の予定と9月の記録

10月の予定

 展覧会
  「青木繁 『海の幸』100年」 ブリヂストン美術館(10/10まで)
  「プラート美術の至宝展」 損保ジャパン東郷青児美術館(10/23まで)
  「ギュスターブ・モロー展 後期展示」 Bunkamuraザ・ミュージアム(10/23まで)
  「デ・キリコ展」 大丸ミュージアム・東京(10/25まで)
  「荒木経惟写真展 『飛雲閣ものがたり』」 epSITE(11/3まで)
  「やなぎみわ展」 原美術館(11/6まで)
  「写真はものの見方をどのように変えてきたか 第4部」 東京都写真美術館(11/6まで)
  「イサム・ノグチ展」 東京都現代美術館(11/27まで)
  「美の伝統 三井家伝世の名宝 前期展示」 三井記念美術館(前期11/13まで)

 コンサート
  「伶楽舎第7回雅楽演奏会」 武満徹:「秋庭歌一具」他/サントリーホール 2日 14:00~
  「古典四重奏団 バルトーク全曲演奏会2」 バルトーク:「弦楽四重奏曲第4番~6番」/第一生命ホール 12日 19:15~
  「新国立劇場2005/2006シーズン」 ロッシーニ:「セビリアの理髪師」/カバレッティ/新国立劇場 14日~22日

 映画
  未定です。


9月の記録(リンクは私の感想です。)

 展覧会
  4日 「写真はものの見方をどのように変えてきたか 第3部」 東京都写真美術館
  11日 「難波田龍起展/収蔵品展 難波田史男/projectN 高木紗恵子」 東京オペラシティアートギャラリー
  11日 「ローリー・アンダーソン『時間の記録』」 ICC  
  19日 「石川九楊の世界展」 三越日本橋本店ギャラリー
  19日 「百花繚乱」 山種美術館 
  23日 「李禹煥展 余白の芸術」 横浜美術館
  24日 「アジアのキュビズム/所蔵作品展 沈黙の声」 東京国立近代美術館
  24日 「大巻伸嗣 ECHOES INFINITY」 資生堂ギャラリー

 コンサート
  10日 「第36回サントリー音楽賞受賞記念コンサート『西村朗』」 西村朗「雅楽 夢幻の光」他/本名徹次
  17日 「新国立劇場2005/2006シーズン」 ワーグナー「ニュルンベルクのマイスタージンガー」/レック

 映画
  4日 「この素晴らしき世界」 チェコ映画祭2005/東京都写真美術館ホール

10月の展覧会やコンサート予定と、9月に出向いたそれらの記録です。既に「イサム・ノグチ展」と「青木繁 海の幸展」、それに「伶楽舎」のコンサートへは先日行ってきましたので、近いうちに感想をアップ出来ればと思います。(特に「イサム・ノグチ」展は、期待以上の素晴らしい展覧会でした。)他には、名品揃いという「プラート美術展」や、いよいよオープンの三井記念美術館の名宝展、さらには初めて行く第一生命ホールでの古典四重奏団のコンサートなど、今月も目白押しです。

9月は何と言っても横浜の「李禹煥展」でしょうか。感想には、身の程をわきまえずに、展示会場のことなどについて、些か不満じみたことを書いてしまいましたが、むしろそれよりも、李の近作にまとめて触れたことで、色々と発見させられることばかりでした。「横浜トリエンナーレ」の鑑賞と合わせて、11月にもう一度出向こうかと思っています。

難波田親子に強いとも言えるオペラシティーの「難波田龍起展」も秀逸でした。私はどちらかと言うと子の史男の世界に惹かれるのですが、大きなエネルギーを蓄えているような、龍起の作品にも感銘させられます。また、予想以上に刺激的だった三越での「石川九楊展」や、美しいインスタレーションを楽しませてくれた大巻伸嗣の個展も面白かったです。

音楽では、しっかりした演奏を聴かせてくれた新国立劇場の「マイスタージンガー」と、初めて出会った雅楽の世界に強く惹き込まれた西村朗の「受賞記念コンサート」も強く印象に残りました。特に雅楽はこれからもずっと聴いてみたいと思います。現代音楽のコンサートで予想外の出会いをしたようです。

いよいよ「芸術の秋」。私の大好きな季節がやってきました。今月も贅沢に美術三昧と行きたいところです。
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「李禹煥展 余白の芸術」 横浜美術館

横浜美術館(横浜市西区みなとみらい)
「李禹煥展 余白の芸術」
9/17~12/23

李禹煥の近作によって構成された大規模な個展です。展示作品は約40点ほどでしょうか。横浜美術館の展示空間は、かつてないほど大胆に変化しています。究極のインスタレーションです。

展示作品の配置は、李禹煥自らによって厳密になされたとのことですが、作品が生み出す空間の広がりや、その圧倒的な存在感からすると、全体的にやや手狭な印象を与えているように思います。李の作品の中でも、特に今回の展覧会に出品されたものは、どれも決して「作品自体の閉じた空間」とはならずに、それこそ前後左右の『場』を取り込むかのようにあるわけですが、それを充分に味わうためには、もっと作品同士に『間』があった方が良いでしょう。「関係項」シリーズこそ、美術館の余白的な空間を何とか上手く使い、その魅力をなるべく削がないように置かれていたとは思いますが、展覧会前半に並べられた「風と共に」と「照応」のシリーズは、作品同士が共鳴し合うと言うよりも相互に干渉してしまっていて、もしそれが李自身の意図だったとしても私にはあまり良いとは思えませんでした。もちろんこのように置くことで、逆説的に李の作品のデリケートさが伝わるわけですが、余白を主人公とするためには、さらにもう少しだけの『間』が必要だと言えそうです。

一方で、重い鉄板や石を直に床へ置くとカーペットが損傷してしまうという現実的な問題があったにしろ、会場の床の全てをコンクリート剥き出しにしてその上に作品を並べたことや、いくつかの作品を、一つの展示室に一つだけ展示するという、極めて贅沢な『場』を作ったことは、この展覧会の評価すべき点だと思います。また美術館で唯一、天井の高い展示室に並べられた「照応」シリーズは、それぞれが連鎖的に共鳴し合うかのようにあって、その伸びやかな開放感と、どこかザワザワとした揺らぎを見せながらも、ピーンと空気が張りつめたような緊張感を併せ持つ様を感じ取ることが出来ました。率直に申し上げれば、「これを会場全体でも味わえれば…。」と思ったほどです。

最後の展示室は、ウォール・ペインティングとして、壁に直接、李によって面的な点が打たれていました。左、中央、右に三つの点が、大きさも高さも僅かに異なって配されています。それらは緩やかに繋がるのか、それとも外へと拡散していくのかは分かりませんでしたが、まずは三点が交わる位置に立ち、点と余白をゆっくりと見渡してみることにしました。展示室の中を一巡、二巡、そして上を見上げたり、下のコンクリートを見やりながら、右往左往するのはなかなか贅沢な経験です。ところでこの部屋に打たれた点は、比較的早い時期の「照応」に使われたような限りなく黒に近いものではなく、やや青みを帯びた白っぽく薄いものでした。また「空間の広がり」や「余白の連鎖」と言うよりは、この展示室の照明がやや暗い(展覧会全体の照明もかなり暗く設定されています。李に言わせれば、日本の美術館は照明が「ダメ」ということなのだそうですが…。)こともあるのか、点同士が対峙的にせめぎあっていて、どこかもがいているようにも感じます。そして、余白は、点とは別に、あまり混じり合うことなく泰然としながら確かに存在していました。ちなみに展覧会の終了後、この作品がどうなるかは未定とのことですが、もし別の場所への移設が可能であるならば、陽の光が淡く緩く差し込むような、もう少し明るい場所で見たいとも思います。

会期中にもう一度出向くつもりです。会場は極めて閑散としていますが、それが余計に『余白』と『場』を引き立てます。12月23日までの開催です。

*拙ブログの「李禹煥展 余白の芸術」関連記事
 ・李禹煥と菅木志雄の対談「もの派とその時代」(11/13)
 ・李禹煥本人によるレクチャー「現代美術をどう見るか」(9/23)
 ・横浜美術館学芸員柏木氏によるレクチャー「90分でちょっとのぞいてみる李禹煥の世界」その1その2(8/28)
 ・美術館前庭の「関係項」(写真)

二回目も行ってきました。
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