「絵画の行方 -現代美術の美しさって何?- 」 府中市美術館 2/11

府中市美術館(府中市浅間町1-3 都立府中の森公園内)
「絵画の行方 -現代美術の美しさって何? -」
2005/12/10-2006/2/19

現代美術、特に絵画を手がけている6名のアーティストによるグループ展です。ベテランから若手の作家まで、抽象画を基調にした絵画の「美しさ」を競い合います。コンパクトにまとまった良質な展覧会です。

まずは一番惹かれた、二木直己の「見晴し台」シリーズです。薄い紙を貼付けた横長のキャンバスの上には、白、黒、青の三層になった色状の帯びが並びます。そしてそれぞれが、一番上の白は空、中央の黒は枠や柵、下の大部分の深い青(緑?)は台と言うようにして合わさり、一つの「見晴し台」を形成するのです。また、それぞれの色の帯はシンプルでかつ抽象的なので、あえてタイトルの「見晴し台」を意識しないでも、形の面白さだけで楽しむことが出来ます。抽象と具象の揺らぎの間が心地良い作品です。

この「見晴し台」で特に素晴らしい点は、鉛筆と色鉛筆の細かい線の交錯にて生み出された、それぞれの色合いの絶妙な移ろいです。下から上、右から左、時にはグルグルと回転しながら画面を這っている、黒や青の細く柔らかい線。それが何本も何本も寄り添いながら絡み合い、最後は束となって色の帯を形成します。エネルギーを蓄えているような黒の深みと、まるで水面の揺らぎのようなワサワサした青。また、赤を一切使っていないのに、補色効果により所々が赤らんで見えるのも興味深い所です。まるでパステル画のようなしっとりした色合いの美しさは、思わず頬ずりしたくなるような優し気な雰囲気すら漂わせています。鉛筆と色鉛筆によって生み出された、たまらなく魅力的なこの質感。強く惹かれます。

二木の作品以外では、まず小林俊介の質感に優れたモノトーン絵画が一押しです。縦横2メートルほどの大きなキャンバスに、たっぷりと瑞々しく配された黄色やオレンジの顔料。何でも油で溶いた樹脂とテンペラを何層にも塗り重ねて制作したとのことですが、まるで淡い光をたくさん取り込んだような明るさと、その反面の影を映し出したような深みのある画面は、展示室の場の雰囲気をインスタレーションとして一変させる力を持っています。その色に包み込まれるかのようにして味わいたい作品です。

もう一方、詩的なタイトルと和をイメージさせる画風の調和が美しい、水上央子の作品もおすすめです。抽象的なデザインながらも、まるで琳派を思わせるような大胆な文様。それが和を思わせる落ち着いた彩色の上に飾られています。またテープで貼ったような光沢感のある模様も魅力的です。背景の色と穏やかに微睡むかのように美しく映えています。

同時開催の常設展「戦後の日本美術を中心に」と、併設の牛島憲之記念館「初期の作品を中心に」もかなり楽しめました。企画展を含め、全て次の日曜日(2/19)までの開催ですが、是非おすすめしたいと思います。(美術館へは京王線東府中駅からコミュニティバスの『ちゅうばす』を使いました。時間は約7、8分。値段は100円!30分間隔ですがこれは便利です。)
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「ニューヨーク・バーク・コレクション展」 東京都美術館 2/5

東京都美術館(台東区上野公園8-35)
「ニューヨーク・バーク・コレクション展 -日本の美 三千年の輝き- 」
1/24-3/5

「世界有数の日本美術収集家」(パンフレットより。)というメアリー・バーク氏の、膨大な日本美術コレクションにて構成された展覧会です。縄文土器から琳派・若冲まで、個人コレクションとは到底思えないほどに名品が揃います。見応え十分です。

まずは最も楽しみにしていた伊藤若冲の二点です。(展示順では一番最後に当たります。)二羽の鶴が合体して描かれた「双鶴図」(1795年)のユーモラスでかつ幽玄な味わいも良いのですが、ここではやはりあまりにも美しい「月下白梅図」(1755年)が一押しです。この作品を見てまず気になったのは、満月が大きく描かれているにも関わらず、思いがけないほどに暗い画面全体の雰囲気です。蛍光灯などもないこの時代の月夜の様子をストレートに表現したのか、それとも、白梅の淡い白色を、まるで蛍の灯火のように照らし出させて美しく表現するためなのか、ともかくも想像以上の暗がりの中にて梅が描かれています。そしてその暗がりにいっぱい散りばめられた、まるで牡丹雪のような白梅の数々。よく見ると、花は咲いているものよりもまだ蕾みの方が多く、その膨らみによる白さが際立っていることが分かります。縦横無尽にクネクネと横たわる木の枝に、絵具の重みすら感じさせる瑞々しい白梅。黄色いおしべが、まるで金粉を吹き付けたかのようにキラキラと輝く様子も魅力的です。この一点に出会えただけでも、展覧会に来た価値が十分にあったと言えるほどです。

展示作品は全部で約120点ほどに及びます。多様なジャンルを万遍なく取り揃えたバークのコレクションは、もちろんどれも魅力的な品ばかりと言えるわけですが、中でも仏像や仏画、さらには桃山と江戸期の屏風画には、目を見張らされるほどの質の高さを感じます。縄文と弥生の土器(『縄文土器』、『弥生土器』)が一点づつ並べられ、造形そのものや美意識(用途の差異によるものも大きいのかと思いますが。)の違いに驚き、また白鳳から鎌倉期にかけての仏像(特に『不動明王坐像』の恐ろしく見開いた目!)の迫力に圧倒され、さらには優雅な桃山期の屏風画(『柳橋水車図屏風』の見事さ!橋が迫出しています。)にうっとりさせられる。時空を超えた日本美術の旅が、今ここで一人のコレクションによって体現されています。この上なく贅沢な話です。

初めに取り上げた若冲と並んで興味深かった作品は、酒井抱一の「桜花図屏風」(1805年頃)でした。やや「葉桜」気味でもある立派な桜の木が、不思議なことに花の部分よりも幹をクローズアップするかのような構図で描かれています。特に右側の太い幹における、絵具が金地に溶け込んだ、まるで霞からぼんやりと浮かび上がっているような気配。これは絶品です。もちろん、やや重々しく描かれた桜の花も味わい深いのですが、私は花よりもこの幹の方に強く惹かれます。金箔にスッと滲みゆく顔料の美しさは息を飲むほどです。

会場にて最も人だかりが出来ていたのは、パンフレットの表紙にもなっている曾我蕭白の「石橋図」(1779年)でした。我先にと頂上を目指す逞しい獅子たちと、まるで地獄の底から噴き上がる蒸気のような雲のうねり、さらにはたった今地殻変動によって隆起したばかりのような荒々しい岩壁。その全てが、何ら迷いを感じさせない筆にて、サラッと、しかし躍動的に描かれています。また、二匹の獅子が岩山から落下している様子など、サービス精神をも感じさせるアニメーション的な細かい芸も必見です。これまで曾我蕭白の作品をあまり積極的に見て来なかったのですが、今回の展覧会にて一気にその世界に引き込まれました。

「春日宮曼陀羅」や「大麦図屏風」、さらには狩野探幽の「笛吹地蔵図」(17世紀)から酒井鶯蒲の「六玉川絵巻」(1893年頃)など、まだまだ他にも惹かれた作品はたくさんあるのですが、それを挙げればきりがなくなるほどに、どっぷりと日本美術の魅力に浸ることの出来る展覧会です。私が出向いた日は幸いにもあまり混雑していませんでしたが、早めのご観覧をおすすめします。来月5日までの開催です。

*この日開催された、展覧会監修者である辻惟雄氏の講演会「バーク・コレクションの魅力」の記事はこちらへ。
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伊福部昭さん、逝去

「ゴジラ」作曲、東京音大元学長の伊福部昭さん死去 (朝日新聞) - goo ニュース

昨日報道されていた訃報ですが、作曲家の伊福部昭さんがお亡くなりになられたそうです。91歳でした。ご冥福をお祈り致します。

引用したニュース記事にもある通り、伊福部さんは「ゴジラ」を始めとした映画音楽の作曲で特に有名ですが、日本のクラシック音楽に与えた影響も大きく、まさに日本作曲界の重鎮としてご活躍なされた方です。芥川也寸志氏や黛敏郎氏を育てたと聞けば、その存在の大きさが伝わってくるとも思います。

ハッキリとは覚えていないのですが、私も一度だけ、在京オーケストラの公演で伊福部さんの音楽に接したことがあります。情感豊かな旋律美と、まるで大地からマグマが噴き出しているような、ドロドロとうねる力強いリズム感がとても印象的でした。恥ずかしながら、その時演奏された曲のタイトルも失念してしまったのですが、原始日本の土着的な匂いすら漂わせる、あたかも西洋音楽に対抗するかのような独特の個性には、強く驚かされたことを覚えています。

自宅に伊福部さんの曲のCDがなかったので、早速今日タワーレコードにて「伊福部昭 作曲家の個展」(FONTEC)を購入してきました。(タワーレコードの独自企画として、FONTECの日本人作曲家シリーズの名盤が復刻、安価にて提供されています。)井上道義&新日本フィルの演奏で、その名の通り、サントリーホールの「作曲家の個展」(1991年)でのライブ録音です。井上さんらしい機動的で小気味良いリズム感と、美しいカンタービレが磨かれた「タプカーラ」と「日本組曲」。もちろん、新日本フィルの精緻な合奏力も聴き応え十分です。ややおとなしめの録音ではありましたが、伊福部さんの魅力をたっぷり味わえる一枚と言えるでしょう。(日本人作曲家シリーズのCDとして有名な、NAXOS「日本作曲家選輯 伊福部昭」は、試聴の限りではかなり荒っぽい演奏でした。もちろんそれも魅力かと思いますが。)また、芥川也寸志&新交響楽団の「伊福部昭 管弦楽選集」(FONTEC)の演奏も誉れ高いとのことで、そちらも是非聴いてみたいです。

それでは、改めましてご冥福をお祈りしたいと思います。(何か他におすすめのCDがあれば、ご教授していただけると嬉しいです。)
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三宮正満&アンサンブル・ヴィンサント 「ゼレンカ:8声のシンフォニア」他 2/8

三宮正満&アンサンブル・ヴィンサント デビュー・コンサート

バッハ:協奏曲 ニ長調(BWV42/1-1068/2-1054/3)
ゼレンカ:ヒポコンドリア(ZWV187)
パッヘルベル:カノンとジーグ ニ長調
バッハ:オーボエとヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調(BWV1060R)
テレマン:オーボエダモーレ協奏曲 イ長調(TWV51:A12)
ゼレンカ:8声のシンフォニア イ短調(ZWV189)

演奏 アンサンブル・ヴィンサント
メンバー
 三宮正満(オーボエ)
 荒木優子(ヴァイオリン・ソロ)
 川久保洋子(ヴァイオリン1)
 長岡聡季(ヴァイオリン2)
 山口幸恵(ヴィオラ)
 懸田貴嗣(チェロ)
 西澤誠治(コントラバス)
 鈴木優人(チェンバロ)
 尾崎温子(オーボエ2)
 功刀貴子(ファゴット)

2006/2/9 19:00~ 日本福音ルーテル東京教会

元々予定していなかったのですが、いつも拝見させていただいている「eugene's blog !!」(鍵盤楽器奏者でいらっしゃる鈴木様のブログ)の告知を読んで、当日券にて聴いてきました。場所は、新大久保にある日本福音ルーテル東京教会です。

この日のコンサートで最も面白かったのは、聞き慣れないゼレンカという作曲家(1679年ボヘミア-1745年ザクセン。カトリック宗教音楽家。)の音楽でした。バッハも高く評価していたという彼の音楽は、どことなく表情がギコチナくて、目まぐるしく曲想も変化するのですが、ともかくも楽器と楽器が丁々発止と渡り合うような、まさにバロック的なスリリングさがたまらなく魅力的で、まるでロックを聴いているようなノリすら味わえます。二曲目に演奏された「ヒポコンドリア」は、それこそヒポコンドリー(心気症)による不安や落ち着きのなさをイメージさせますが、時に「鬱」から突然「躁」へも変化して、あたかも音楽がトランス状態に陥ってしまったような気配さえ漂わせます。楽譜を飛び出した音が勝手にクルクルと踊り出している。そんな印象も与える音楽でした。

メインの「8声のシンフォニア」は、「ヒポコンドリア」と比べると構成感に優れるようです。ただこの曲も、即興的な味わい、つまりそれこそトランス的な部分に強い魅力が感じられます。第4楽章のアンダンテにて突如出現する怒濤のアレグロでは、ファゴットやチェロが、もうこれ以上楽器を酷使させるのは止めてくれんとばかりに、ブーブー、ゴリゴリと、まるで動物の鳴き声のように響き渡ります。また、第1楽章でのヴァイオリンの軽快なパッセージ、さらには第2楽章の長閑なファゴットソロなども聴き応え十分です。ウィットにも富んだゼレンカの魅力。彼の音楽に出会えたことは、この日のコンサートでの最大の収穫でした。

もちろん、いわゆる名曲も決してお座なりになっていたわけではありません。特に興味深かったのは、ハッペルベルの「カノンとジーグ」です。極めて有名な「カノン」については頻繁に耳にすることがあるのですが、その後の「ジーグ」の部分はまさに初耳でした。(本来はカノンとジーグで1セットなのだそうです。)また、「G線上のアリア」や「チェンバロ協奏曲第3番」の第3楽章などが織り交ぜられた、まるで名曲メドレーのような「協奏曲ニ長調」(この日の公演のために編曲されたもの。)も楽しく聴くことが出来ます。プログラミングの妙を感じさせた面白い試みです。

アンサンブル・ヴィンサントは尻上がりに調子を上げていました。(特に休憩後の2曲が優れていました。)低音のしっとりした響きがたまらないオーボエや、曲を細かく切り刻むかのような鋭さを見せていたコントラバス、それに全体を力強く支え、尚かつ浮き上がるようなリズム感を楽しませてくれたチェンバロが強く印象に残りました。次回のアナウンスがなかったのですが、是非また聴いてみたいと思います。
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「バーク・コレクションの魅力」 「バーク・コレクション展」記念講演会 2/5

東京都美術館講堂(台東区上野公園8-35)
記念講演会 「バーク・コレクションの魅力 -日本に恋したアメリカ女性の宝物- 」
2/5 14:00~
講師 辻惟雄(展覧会監修者)

先日東京都美術館で開催された、バーク・コレクション展の記念講演会です。講師はこの展覧会を監修された辻惟雄氏。最近では「日本美術の歴史」(東京大学出版会)という本もお書きになられた日本美術絵画史の第一人者です。ここに、配布されたレジュメに沿って、講演の内容を記録しておきたいと思います。(予告タイトルは「生き続ける日本美術」でしたが、レジュメには「バーク・コレクションの魅力」とありました。そちらをタイトルにします。)


1.アメリカ人の日本美術蒐集過程

・日本美術とアメリカとの出会い
  先行したヨーロッパのジャポニスム(1867年のパリ万博)
  ↓
  ヨーロッパ経由での日本文化との出会い(19世紀アメリカ)
   財力にものを言わせて質量ともにヨーロッパを抜き去る。(=先入観なしに自由にコレクション)
    フーリア、スポールディング、ルドー、バッキンガムらの富豪

・フェノロサによる日本美術研究と作品蒐集
  1878年に来日。「お雇い外国人」として東京美術学校設立に尽力。
  アンダーソン(英・医者)の日本美術蒐集に刺激され、日本絵画を集め始める。
  富豪ビゲローらと共同で日本美術を研究、蒐集。→作品をボストンやフーリア美術館へ。

・第2次大戦後の日本美術とアメリカ
  進駐軍軍属や留学生として、アメリカ人東洋美術研究者が多数来日。
   ケイヒル、シャーマン、リー、パカードなど
  富豪らの日本美術蒐集も続く。
   パワーズ(教科書会社経営)、プライス(若冲の熱狂的ファン)、ドラッカー(経済学者)、そしてバーク。

 →世界で最も日本文化への関心が高いアメリカ人
  =質量ともに世界最高の日本美術コレクション。
   特に浮世絵では本国日本を上回る。(ハッパー:広重に取り憑かれた蒐集家。死後、広重の墓の隣に埋葬。)


2.バーク・コレクションの成り立ちと特色

・バーク一家
  南北戦争にて功績を残した名門ルヴィングストン家を母方の先祖に持つ家柄。
  いわゆる教養のある上流階級。
 
  伯父:エール大にて日本人留学生二名と親しくなり来日。(関東大震災後)
     「白衣観音図」(カタログ番号36)は、伯父帰国後、留学生の娘が手みやげにアメリカヘ持っていた作品。
  母親:1902年に日本へ観光旅行。着物などを購入。日本文化に魅せられる。
     別荘に日本庭園を建築。中国陶磁など東洋古美術全般をコレクション。
     画家オキーフ(1887-1986。風景、花、動物の骨などを描き続けた画家。)と交流。

・メアリー・バーク女史
  1954年 建築家ワルター・グロピウスのすすめで日本訪問。
       建築家吉村順三の案内で日本庭園を見てまわる。=数寄屋造などを賞賛。
       日本の田舎の風景に魅せられる。=「fell in love with Japan」
  1955年 ジャクソン・バーク(デザイナー)と結婚。
  1956年 最初の日本美術コレクションとして、江戸期の「源氏物語図屏風」を購入。
       →本格的な日本美術の勉強を始める。(=大学や研究所にて、研究生として美術史を学ぶ。)
  1962年 浮世絵のコレクションを入手。琳派を蒐集。源氏物語(英訳)を読破。
  1965年 ニューヨークの高級アパート内に「ミニ・ミュージアム」を作る。(夫ジャクソンのデザインによる。)
  1973年 この年までに、仏像、仏画、大和絵、書、水墨画などのコレクションを幅広く蒐集。
       67、68年には大量の南画(水墨を基調にした東洋画。江戸期に技法確立。)を購入。
  1975年 夫ジャクソン死去。
   →その後も蒐集に情熱を燃やす。仏像、茶室ギャラリーの増設など。

・バーク・コレクションの特色
  質の高さ。超一流・一流揃いのコレクション。(特に仏像。)
  女性らしいきめ細やかな美的感性が作品選択に表れる。(大和絵系など。美しい作品。)
  縄文土器から江戸期まで、日本美術を万遍なく概観出来る幅広いコレクション。(蕭白、若冲まで。)
  事前申し込み制にて公開。


3.バーク・コレクション展の経緯

  1985年 東京国立博物館(他)での「バーク展」 122点
  2000年 メトロポリタン美術館「Bridge of Dreams展」 168点
  2006年 東京都美術館(他)での「ニューヨーク・バーク・コレクション展」(本展) 116点
       東博展にないもの69点、メトロ展にないもの23点が出品。


4.日本人にとってのバーク・コレクションの意義

・日本美術の国際的普遍性のあかし
  海外に存在する日本美術を、作品の「流失」(ネガティブ)ではなく、その「普遍性の証明」(ポジディブ)として捉えるべき。
  文化交流に果たす日本美術の役割。(=『里帰り展』の企画。)
・日本美術を映す鏡としてのコレクション
  まさに「白雪姫の鏡」のように、日本美術を映し出してくれるバーク・コレクション。その貴重さ。


5.スライド作品解説(カッコ内の番号は、カタログ番号)

(1)縄文土器:蛇のような口縁部が印象的。
(2)埴輪:古墳時代のもの。死者の慰めとして埋葬。頬紅の赤み。髪を結ったオシャレな女性。 
(3)弥生土器:ボールのような形。弥生土器としては変わっている。赤色は魔除けの意味か。
(4)横瓶:須恵器。素焼きの土瓶。灰が表面に付着する様はうわぐすりのよう。
(6)天部形立像:彫刻としては最も大きなコレクション。木彫。顔は厳粛。貞観から藤原期に入った和風化の様式。
(14、15)不動明王坐像、地蔵菩薩立像:共に快慶作。寄木造り。目には水晶。堂々とした様子。
(17)灰釉菊花文壷:古瀬戸焼。素焼きが主流の中でうわぐすりを使った作品。(中国文化の影響か。)
(21)住吉物語絵巻断簡:文学に関心の強いバークの趣味が垣間みられるコレクション。住吉物語は原典が不明。切り取られたものが多く、詞書が残ったのはこれだけ。貴重な品。
(22)平治物語絵巻断簡:色紙大の小さな品。元は大きな巻物。六波羅合戦において平家が源氏を倒した光景が描かれる。
(23)絵因果経断簡:釈迦の前世を伝えた仏伝。巻物。活劇的。
(24)春日宮曼陀羅:藤原氏の守り神春日大社を鳥瞰的に描いた図。一番下にある鳥居から参道、宮、春日奥山と描かれる。神の使いの鹿の描写。一番上には、神が仏に姿を変えて(本地仏)描かれている。貴族が屋敷に飾って参拝していた。
(28)清滝権現像:神仏混合的な作品。女神の姿。現在残っていないふすま絵を伝える。貴重。
(29)釈迦三尊羅漢像:一番左下に聖徳太子(釈迦の生まれ変わり)、右下には空海(太子の生まれ変わり)が描かれている。謎めいた作品。
(31)源氏物語絵巻:図柄を小さくしたもの。(需要が追いつかず多く生産するため。)黒い線のみで描かれた「白絵」と呼ばれる方法。
(32)秋冬景物図屏風:ヨーロッパから手に入れた大和絵。六曲一双の片側のみ。室町期に流行った「四季絵」。ススキの枯れ草にかかる雪の様子が美しい。
(39)愚庵 葡萄図:輪郭線を使わず、墨の濃淡だけで表現。葡萄、ツタ、蝉が描かれている。
(44)雪村 竹林七賢図:竹林七賢図をパロディー化。七賢人が酒を飲んで遊んでいる。自由奔放な印象。竹もまるで人間のように伸びやかに描かれている。
(51)鼠志野葡萄文瓜形鉢:桃山期の焼物。自由自在のデザイン。引っ掻いた様に描かれた葡萄のつたが印象的。
(53)平鉢 備前:備前焼。焼物の上に他の焼物を重ねて出来た図柄。(作為的に作られた。)それが「わびさび」として評価される。
(56)白濁釉角徳利 小代:桃山期。朝鮮半島から連れて来た陶工による作品。うわぐすりが美しい。
(60)蓮池蒔絵経箱:蓮をデザインしたもの。虫にくわれたり、葉が枯れた様子も描いている。
(66)狩野探幽 笛吹地蔵図:優しく穏やかな画風。ハーグの感性が表れている。水子供養に描かれた作品。
(69)柳橋水車図屏風:桃山期の王道的デザイン。金箔にて橋が覆われている。風流な屏風画。現世から来世への橋渡しの意味。
(71)大麦図屏風:麦畑が雲の形のように切れている。霧が畑にかかっている様子なのか。抽象性も感じさせる。
(76)扇流図屏風:扇流しの構図。小川に流れている扇を絵画化。非常に珍しい構図。描かれているのは全て女性だが、後に一人の男性が金箔に隠されていたことが判明した。
(83)英一蝶 雨宿り風俗図屏風:雨宿りの光景。身分制度のある江戸期において、武家も町人も分け隔てなく雨宿りをしている様子が興味深い。
(92)尾形光琳 布袋図:光琳晩年の様式。洗練されている。
(96)酒井鶯蒲 六玉川絵巻:マイナーな画家だが、見応えのある作品。川の青みが目にしみるように美しい。一体どのような顔料を使ったのか。名前にとらわれず良い物を購入するハーグのセンスが見て取れる。
(100)伊藤若冲 双鶴図:首をグイッと曲げている鶴二羽。クレーンのような足がユーモラス。形の遊び。

以上です。最後は少々時間切れ気味で、やや駆け足での作品解説となりましたが、スライドを使って、一点一点丁寧に見せていただけました。辻氏のお話で特に印象的だったのは、バーク・コレクションのような海外の日本美術のコレクションを、「日本から失われた。」というようにマイナスの方向で捉えず、もっと懐深く、普遍的に愛されている証として考えようというくだりです。私など、どうしても海外に日本美術の至宝があることを苦く思ってしまいますが、確かに「里帰り」したこの美術品を温かく迎える姿勢は重要でしょう。とても示唆に富んだお話でした。
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NHK交響楽団 「モーツァルト:ハ短調ミサ曲」他 2/4

NHK交響楽団 第1560回定期公演Cプログラム2日目

モーツァルト:交響曲第34番
モーツァルト:ハ短調ミサ曲(大ミサ曲)

指揮 ヘルベルト・ブロムシュテット
ソプラノ1 幸田浩子
ソプラノ2 半田美和子
テノール 福井敬
バリトン 河野克典
合唱 国立音楽大学
演奏 NHK交響楽団

2006/2/4 15:00 NHKホール3階

ザルツブルク時代の最後の交響曲と、ウィーン時代の幕開けを告げたハ短調ミサ曲の組み合わせ。共に不思議とあまり取り上げられない名曲ですが、モーツァルトファンにとってはたまらないプログラムです。指揮はブロムシュテットでした。

交響曲第34番では、この日コンサートマスターを務めたペーター・ミリング(客員)と、まるで別人のように生き生きと演奏を続けたヴァイオリン群の存在感が際立ちます。挙手によるブロムシュテットのリズミカルな指揮によって生み出された、アクセントの明快で、小気味良くまとまった精緻な弦楽合奏。いつになく腰が低く据わっていながらも、愉悦感を決して損なわせることなく、伸びやかに音楽を進めます。こうなってくるとモーツァルトの音楽は、俄然生気を帯びてきます。見事な求心力です。

平板な演奏では、それこそ「癒し効果」のように睡魔に襲われるアンダンテ楽章も、実にニュアンスに富んだ演奏でした。また、オーケストラから浮き上がってくるようにやや強めだった木管群と、それに反して控えめだった金管やティンパニとの呼吸感も抜群です。秒代わりで表情が変化していくこの曲を、オーソドックスな演奏法にてしっかりと味わうことが出来る。これまでに在京オーケストラの演奏でいくつかモーツァルトの交響曲を聴いてきましたが、少なくともその中では最上と思わえるほどでした。遊び心と茶目っ気のあるフレーズを聴いていたかと思うと、時に一音にて天上的(?)な美しさへと変化させる。このようなどこか浮気心もあるモーツァルトの音楽を、奇を衒わない実直な演奏で表現していきます。客席の反応は今ひとつでしたが、私としては後半の大ミサよりも、この第34番に軍配を挙げたいと思います。これは名演です。

メインの大ミサでもオーケストラは好調でした。レンジは広く、ミサ曲と言うよりもオペラのように華々しいこの曲を、堅牢な構成感を失うことなく、それでいながら時にダイナミックに演奏して行きます。また、ブロムシュテットは声楽陣への配慮も忘れません。全体的に控えめに、声へ合わせるかのようにオーケストラを操ります。キリエとグローリアの対比。サンクトゥスの力強いフーガ。どれも見事でした。

大ミサで残念だったのは、声楽陣、特にソプラノの二名です。もちろんこのホールで歌うということ自体が、ソリストへ一定のハンディキャップになるのかもしれませんが、それにしても音程が不安定で、やや危なっかしい個所が目立ちます。(どことなく声質に違和感もありました。)また、まさにコンスタンツェのために書かれた、この曲の花形スターでもあるソプラノ1の幸田浩子による独唱は、殆ど華が感じられません。テノールの福井とバリトンの河野は比較的手堅かった上、国立音大の学生さんによる合唱も健闘していただけあって、少し粗が目立ちました。

モーツァルトをこのホールにて聴くことは出来るだけ避けたいのですが、それでも前半の第34番は優れた演奏で楽しめました。今後もブロムシュテットとN響のコンビが長く続くことを願いたいです。
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2月の予定と1月の記録 2006

2月の予定

 展覧会
  「大いなる遺産 美の伝統展」 東京美術倶楽部(2/26まで)
  「パウル・クレー展」 大丸ミュージアム・東京(2/28まで)
  「ニューヨーク・バーク・コレクション展」 東京都美術館(3/5まで)
  「前川國男 建築展」 東京ステーションギャラリー(3/5まで)
  「オラファー・エリアソン 『影の光』」 原美術館(3/5まで)
  「鵜飼美紀+辻和美 -光のかけら- 」 群馬県立館林美術館(4/2まで)

 コンサート
  「NHK交響楽団第1560回定期Cプロ」 モーツァルト「ミサ曲」他/NHKホール 2/4 15:00~


1月の記録(リンクは私の感想です。)

 展覧会
  2日 「博物館に初もうで 新春特別展示『犬と吉祥の美術』」 東京国立博物館
  8日 「ルオーと音楽」 松下電工汐留ミュージアム
  8日 「後藤純男展」 三越日本橋本店ギャラリー
  8日 「堂本尚郎展」 世田谷美術館
  14日 「スイス現代美術展」 千葉市美術館
  14日 「ゲルハルト・リヒター展」 川村記念美術館
  21日 「日本の四季 -雪月花- 」 山種美術館
  21日 「須田国太郎展」 東京国立近代美術館

 ギャラリー
  8日 「life/art'05 part2 田中信行」 資生堂ギャラリー
  8日 「永遠なる薔薇」 ハウスオブシセイドウ
  15日 「AKARI The Sculpture of Light 展」 リビングデザインセンターOZONE
  28日 「李禹煥新作版画展・旧作展」 シロタ画廊
  28日 「増井淑乃展」 小山登美夫ギャラリー
  28日 「グループショウ 西から東から」 シュウゴアーツ
  28日 「life/art'05 part3 金沢健一」 資生堂ギャラリー
  28日 「國安孝昌展」 ギャラリーなつか

 コンサート
  15日 「読売日本交響楽団第74回東京芸術劇場マチネー」 シベリウス「交響曲第5番」他/セゲルスタム
  29日 「新国立劇場2005/2006シーズン」 モーツァルト「魔笛」/服部譲二

 映画
  7日 「風と共に去りぬ」 ル テアトル銀座
  21日 「ホテル・ルワンダ」 シアターN渋谷

早くも2月に突入してしまいましたが、今月予定している展覧会やコンサートを挙げてみました。ちなみに、展覧会の「バーク・コレクション」とコンサートの「N響定期」は、既に見聞き終えています。感想は近日中にアップするつもりです。(またコンサートは、他にもいくつか気になる公演があるので少し増えるかもしれません。月に一回では少々寂しい気もします。)

東京美術倶楽部の「大いなる遺産」(ディケンズ風ですが…。)という展覧会は、JRの駅ポスターで知りました。何でも日本美術の貴重な品々を、期間限定で特別公開する催しだそうです。あまり聞き慣れない場所ですが、少し足を運んでみたいと思います。(また、群馬の県立館林美術館への小旅行も予定しています。こちらも非常に楽しみです!)

1月については、映画を見て初めて泣いてしまった「ホテル・ルワンダ」と、川村のリヒター、それに世田谷の堂本尚郎、さらには近美の須田国太郎の各個展が、それぞれとても印象に残りました。もうリヒター展は終了してしまいましたが、ルワンダを含め、どれも是非皆さんにお薦めしたい内容のものばかりです。

昨年末から見ているギャラリーは、もちろん今月もいくつか廻る予定です。また先月は、lysanderさんともご一緒させていただきました。清澄から銀座までの散歩(?)にもお付き合い下さり、本当に嬉しかったです。とても気さくで、また紳士な方でいらっしゃいました。改めましてどうもありがとうございました!

それでは今月もこの「はろるど・わーど」をどうぞよろしくお願いします。
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「須田国太郎展」 東京国立近代美術館 1/21

東京国立近代美術館(千代田区北の丸公園3-1)
「須田国太郎展」
1/12-3/5


竹橋の近代美術館で開催中の「須田国太郎展」を拝見してきました。「日本近代洋画家を代表する」(美術館より。)という須田(1891-1961)の回顧展は、同美術館では何と42年ぶりです。主に油彩画を中心とした、約150点の作品がズラリと並んでいます。非常に見応えのある展覧会です。

須田が画壇へデビューしたのは遅く、初めて個展を開いたのも41歳(1932年)になってからのことです。そしてその「初個展」を再現した展示(1、第一回個展)が、今回の展覧会の導入部に当たります。日本で美術を学んだ後に渡欧し、プラド美術館にてヴェネツィア派の絵画を精力的に模写したという彼の制作は、「エル・グレコ『復活』」(1921)などでも概観出来ますが、この時期の作品で惹かれたのは、もっと素朴に描かれた「自画像」(1929)でした。白みがかったどす黒いワイン色ともピンクを帯びた黒とも言える、まさに「須田の色」を随所に散りばめて、丸めがねを掛けた須田の姿が丁寧に描かれています。絵具の豊かな質感をも感じることの出来る、とても重みのある作品です。

戦前期の作品(2、戦前)ではまず、否応無しに「水浴」(1935)が目に飛び込んできました。キャプションによれば「セザンヌを意識した。」作品とのことですが、大勢の女性の裸体は、まるでアングルの絵画を思わせるように魅惑的です。また興味深いのは、画面へ目を近づけた時に初めて感じられた表面の質感でした。どこか青木繁をもイメージさせる、ややザラッとした硬質なタッチです。まるで女性が石像のようにも見えてきます。水辺にくすんだピンク色からは、光とも水の揺らめきとも付かない奇妙な気配を感じることが出来ました。

1930年代から1940年代にかけてが、須田の最も優れた、また力感の漲った黄金期です。この時期の作品には、静物画から風景画までの多種多様な画題に、万遍なく「須田の色」が配されています。盆地を鳥瞰的に捉えた「夏の朝」(1933)や「夏の午後」(1933)は、異常なほど狭い空が窮屈な印象を与えていますが、色の厚みにて面を構成する、どこか幾何学的な画風(ここでもセザンヌのイメージを感じます。)が魅力的です。またワイン色と白とを、黒にて織り交ぜた「野バラ」(1934)の艶やかな美しさや、獰猛な豹が対となった描かれた「黄豹」(1944)と「黒豹」(1937)にも惹かれました。その大胆で危うさすら感じさせる構図感と、独特な「須田の色」の組み合わせには目を奪われます。見れば見るほどに魅力を増す作品とはまさにこれらのことかもしれません。

戦後に入ると(3、戦後)「須田の色」が幾分変質してきました。黒はさらに黒く、またピンクはより鮮やかにと言うように、全体的にそれまでよりももっとハッキリした、メリハリのある表現が生み出されていきます。そしてその中でも一際目立つのは、やはり「須田の色」をたたえた「脱衣」(1948)のような、鬼気迫る表情のある、色の奥深さをぶつけてくる作品でした。何故これほど黒みを帯びているのか。決してペシミズム的ではないものの、おおよそ脱衣という行為には似つかないような暗鬱さを感じることが出来ます。まるでラ・トゥールにおける闇のような、思わずそこへと吸い込まれそうな黒です。

会場は閑散としていましたが、作品の一点一点はどれも非常に魅力的です。来月5日までの開催されています。おすすめしたいです。
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「國安孝昌展」 ギャラリーなつか 1/28

ギャラリーなつか(中央区銀座5-8-17 8F)
「國安孝昌展 -静かに行く、遠く帰る- 」
1/10-2/4

銀座のど真ん中のビル内にいるとは思えないような、大自然すらイメージさせる驚きのインスタレーション。「ギャラリーなつか」にて開催中の國安孝昌の個展です。

エレベーターを降りた瞬間、いきなり目に飛び込んで来たのは、ともかく丸木と小さなレンガによって組み立てられた巨大なオブジェ(?)でした。まるでキャンプファイアーか、はたまたどこかの軍事要塞にも見えてくるこれらの作品は、足の踏み場を探すのも難儀するほどギャラリーの空間を埋め尽くしています。作品を見るというよりも、むしろジャングルで木をかき分けながら探検している。そんな気分にもさせられます。

窓越しに外を眺めると眼下には中央通りが見えて、今自分が銀座にいることを確認できますが、中はそれと全く似つかない別世界です。それにしてもよくあれほど木とレンガをギャラリー(8階!)へ持ち込んだことでしょう。木とレンガが一個一個丁寧に積み上げられ、またつなげられて、結果的に空間全体を支配する巨大な構築物となる。素材は大変にシンプルですが、出来上がった作品の複雑さと、場の面白さは並大抵ではありません。これら全ての作品群が、まるで恐竜のような一つの巨大生物となって、見る者に襲いかかってくるとさえ思うほどです。

このような巨大な作品の一方で、両手で持ち抱えることも出来そうな、可愛らしい小さな作品も見逃すことが出来ません。こちらも同じく木とレンガで作られていますが、ある作品には、まるで燭台のように一本のロウソクが灯されていました。思わず手をかざしたくなるような温もりがあります。もちろん、小さなかがり火のようにして外へ飾っても美しい作品でしょう。

「見て感じなきゃ損のインスタレーション」。(展力『Recommend & Review』より。)まさにその通りでした。参りました。明日4日までの開催です。
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「表参道ヒルズ」が今月11日オープン!

「表参道の新シンボル「ヒルズ」完成、11日に本格開業」(yomiuri-online)

安藤忠雄の設計による話題の「表参道ヒルズ」が、今日完成して報道関係に公開されたようです。オープンは今月11日。最近何かと元気な表参道界隈における最大のランドマーク誕生ともあって、しばらくは大変な混雑となりそうです。

地上6階、地下6階の真新しい施設は、「同潤会青山アパート」の記憶を残したとのことで、実際にアパートの様子が一部復元されたりもしているそうです。また、表参道の斜面の並木道に沿った低層の外観は、最近東京で多く見られる超高層ビルによる再開発の趣きとかなり異なります。六本木ヒルズやランドマークタワーのような威圧感のある高層ビルではなく、感度こそ高くとも、裏路地などの雑多な表情が魅力的な表参道に合った、まるで長屋のような施設。のんびり散歩するのが楽しいこの界隈で、ブラブラと歩いていたらいつの間にか吸い寄せられていた。そんな場所になるのかもしれません。

施設概要、または出店テナントなどは公式HPを参照していただきたいのですが、美術に関連のある話題としては、二つのギャラリー、「ギャラリー同潤会」「ギャルリー 412」のオープンが見逃せません。既に「ギャラリー同潤会」の方では、オープニングを含めた企画展の情報も掲載されています。ともに今度チェックしていきたいと思いました。(また、アーティストとコラボレーションしたスィーツを扱うという『S and O』も気になります。)

出来れば、「ヒルズ」というネーミングをもう少し考えていただきたかったのですが、(森ビルは東京にいくつ『ヒルズ』を作るのでしょうか…。)根津やワタリウムにナディッフまで、アートのひしめくあの界隈の、さらなるスポットとなりそうです。
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「life/art'05 part3 金沢健一」 資生堂ギャラリー 1/28

資生堂ギャラリー(中央区銀座8-8-3)
「life/art'05 part3 金沢健一」
1/26-2/12

「life/art'05」シリーズ第三弾は、金沢健一の「音響彫刻」(?)によるインスタレーションでした。音を楽しむ「音のかけら - 森から」というオブジェと、それに関連した二点の映像作品が展示されています。

「音のかけら - 森から」(2005)は、大きなニ枚の鉄板(?)から切り出した無数の欠片と、その抜け殻の二点から成り立っているようです。欠片は床に山盛りとなって、無造作に置かれたボールやバチを待ち受けます。作家本人によるライブイベントも随時企画されているとのことですが、もちろん自由にバチなどを使って響きを楽しむことも可能です。大きさも形もまちまちな欠片は、当然ながら一つとして同じ音を出しません。また、ボールやバチの落とし方や叩き方の違いによっても、音の表情は様々に変化します。欠片の重々しさからは想像しにくい、思いの外に透き通った、鉄琴と言うよりもむしろフルートのような軽やかな響き。ジワリと心にしみ入るような、気持ち良い音響空間が誕生します。

拙ブログのpart2の感想では、誤って「残っている。」と表現してしまった須田の造花ですが、今回もまた増えていました。いかにも隠していると言うような場所のものは簡単に見つかりましたが、意外と堂々と置かれているものが見つけにくい。これは結構苦戦します。今月12日までの開催です。

「part1 今村源」/「part2 田中信行」
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