可部町の三入地区に祀られている三入神社への長い参道石段は2ケ所ある。息を切らせて登った境内には神社では珍しい鐘楼があり梵鐘が架けられている。この梵鐘は刻銘によると延宝5年(1677)9月に海田鋳物師の植木六郎兵衛直増が鋳造したものである。この梵鐘の特徴は池の間の文様で、中国古典の仙伝文学からの図柄文様では他に2ケ所植木直増の作品がみられる以外稀有のものである。文様は老女仙・童女仙と犬の「曹仙媼像」と鯉に乗る仙人「子英像」の仙人像が抽出されている。また各所に従来の和鐘とは少し違った斬新な手法を用いた梵鐘である。
詳しくは拙稿「植木氏の鋳造作品について-中国仙伝文学からの図柄文様-」参照(広島県文化財ニュース第162号・安芸国鋳物師の鋳造活動所収)