川上未映子著『人生が用意するもの』2012年8月新潮社発行、を読んだ。
日常をちょっと変わった視点で眺め、独特の小悪魔的文体で語る川上未映子さんの、3頁たらずのエッセイが60編ほど。
「オモロマンティック・ボム」(おもしろとロマンティックをその頭のなかでボムっと爆発する)の単行本3冊目。
初出:週刊新潮、日本経済新聞の2011年5月~2012年5月
1 世界のみんなが気になるところ
ところで耳垢って、あんまり取れないと「なあんだ」みたいな感じで期待はずれ&ちょっとがっかりした気持ちになって、ごっそり取れると「おお!」みたいな、うれしい気持ちになって、捨てるまでちょっとのあいだじっと見つめていたくもなるあの感じ、あれってなんでだろう?
2 3月の記憶
震災の暗い話や、原発事故で政府の発表する数値は信じられないというどこにでもある話。危険認識派の人々はどんどん疲弊していき、周りの理解を得られず排斥され孤立していく。
3 人生が用意するもの
本を出して著者が受け取れる印税は例外を除けば一律で定価の1割。・・・売れても売れなくても刊行から2ヶ月以内にとにかく刷った初版分の印税が振り込まれる。
担当の女性と一緒に個室に入って一大セッション、ブラジャー装着。脇や背中の肉をなんの躊躇もなくがっと掴み、カップに盛り入れ「おまえらは胸の肉である」と錯覚させる手腕はなかなかのもので・・・
担当の女性と一緒に個室に入って一大セッション、ブラジャー装着。脇や背中の肉をなんの躊躇もなくがっと掴み、カップに盛り入れ「おまえらは胸の肉である」と錯覚させる手腕はなかなかのもので・・・
4 ラズノグラーシエごっこ
例えば「私は目が離れている」と言い、相手にも同じ事をいってもらう。ラズ(ズレ=異和=うっ)が発動せず、乗り越えていることがわかる。一方、「わたしは可愛くない」「うん君は可愛くない」ではうっとなる。事実を認めてはいるが、まだなんとかしたいと思っていることがわかる。これが、ラズノグラーシエごっこ。
私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
震災、原発の話は暗くてパッとしない。その他も、なんという事ない軽い話で3頁たらずの短い話が続く。しかし、多くは、ちょっとした独特の視点、軽いノリの文体でそれなりに面白く読める。
川上未映子の略歴と既読本リスト