hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

5月の散歩

2020年05月31日 | 散歩

5月9日、生垣というよりはみ出した庭木?  なんの花?

5月9日、バラの生垣。白と淡いピンクのバラが上品。

5月9日、大きな葉の中心に赤い花弁の中に白い花。その中にツツジの花もどきが顔を出している。 名がわからぬ花の中に顔を出すわからない花。

5月18日、2か月ぶりの外出。渋谷駅井の頭線改札外の岡本太郎の壁画「明日の神話」。

明日の神話保全継承機構」によれば、長さ30m、高さ5.5m。1969年頃制作されたが、依頼先のメキシコのホテルの経営が悪化し、流れ流れて資材置き場に放置されていたのが偶然発見され、修復して2008年ここに設置されたという。

 

5月18日、以前はかならずこの場所から数人の外国人観光客が動画、写真を撮っていた渋谷の交差点。今はパラパラの人影。

5月20日、道路にこぼれ落ちている満開のバラ。

5月20日、井の頭公園の三角広場近くで見つけたキノコ?  昔、我家に乾燥し同様なものがあって、「猿の腰掛」と呼んでいたが、サルノコシカケ科と総称されるらしい。

5月20日、井の頭公園のベンチは使用禁止とはなっていなかった。しかし、「散歩、ジョギングは、マスク着用のうえ、人との距離を十分に保ち、1時間以内に退園したください。」との自粛要請の看板が下げられていた。

これ以上自粛すると、はくズボンが無くなる。補償はしていただけるのでしょうか?

 

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リベルテでランチ

2020年05月29日 | 食べ物

 

リベルテ・パティスリー・ブーランジェリ-は、吉祥寺通りから大正通りに入り、2本目の通りを北に入ってすぐ右側にある。昨年7月以来の訪れだ。

パリに1,200店以上あるブーランジェリー(パン屋)に勝ち抜いてきた人気店「リベルテ・パティスリー・ブーランジェリ-」。「パリのおいしい日常をお届けする」をコンセプトに、世界展開1号店として2018年3月24日に吉祥寺にオープンしたのが、このLIBERTÉ東京本店だ。(基本的に、ブーランジェリーはパン屋で、パティスリーはケーキ屋)

1階は、スイーツやパンの販売。2階はイートインとカフェ。
通常時は、平日 10時〜11時(イートイン)/11時〜18時(カフェ)(土・日・祝は10時が 9時になる)

 

まだ11時前でとりあえずコーヒーだけと2階に上がった。店員さんに聞いて、11時前でも注文可能な以下のメニューを頼んだ。

2階は2組ほどの客がカフェメニューで談笑するのみ。もともとテーブル間の間隔が広く、ゆったりした贅沢な作りだ。

壁際に飾ってあった菊があまりにも丸いので、思わずパチリ。

クロワッサン大好きの私の注文

実物は以下。

なんといってもクロワッサンが美味しい。もどきでなく、これぞ本物のクロワッサンだ。皮のように最後まで剥がれ、芯まで、シャレでなく、パリ パリだ。
1階のパン売場でみたら、このクロワッサンはフランスのAOPバターを使っていて、一回り大きく330円。クロワッサン・ジャポンは国産バターで190円。

(AOPバター:アペラシオン・ドリジン・プロテジェ。生産法などの原産地保証)

 

相方はフルーツサンド

下が実物。1/8だけお相伴に預かったが、しっとりと美味しい。パンの差か?

私のコーヒーは、武蔵野で古くから続く自家焙煎珈琲家「香七絵」のリベルテオリジナルブレンド。

相方のティーはリベルテオリジナルのアールグレイをティープレスで提供。

二人で2,200円ほど、いいじゃない!

食事を終えて1階に降りると、パンを求める人で一杯になっていた。

 

 

クロワッサンというと、オーストラリアのパースにロングステイ中の事を思い出す。

朝、読めもしない新聞を買いに近所の新聞屋に行くと、パンも売っている。クロワッサンを指さして注文すると、隣にいた地元のおじさんが、「クリサント(croissant)というのは、フランス語でクロワッサンっていうんだぜ」と自慢そうに教えてくれた。「日本語でもクロワッサンなんですけど!」と言いたかったが、言えないので、日本人らしくニヤニヤして「サンキュー」とだけ呟いた。

 

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ボトルブラッシュの花

2020年05月27日 | 散歩

ボトルを洗うブラシのような花を咲かせるボトルブラッシュ(ブラシノキ)をご存じだろうか?

 

オーストラリアのパースにロングステイしていたときによく見かけた。もともとはオーストラリア原産でワイルドフラワーの一種だ。

 

日本で私が見かけたのは2008年横浜だった。この時点で既に日本でもかなり普及していたようだ。2012年には井の頭公園の近くでも見かけた

 

一昨年までは咲いていたのに花が見当たらない木もある。やはり花を咲かせるのは難しいのだろうか。

失礼しました。4月6日に上の写真のように咲いていなかったこの木も、5月29日には下の写真のように咲いていた。日本では4月から6月にかけて咲くようだ。

 

ボトルブラッシュは日本では4月に咲くが、南半球のオーストラリアでは9月のワイルドフラワー・フェスティバルの季節に咲き、街なかでもよく見かけた。

パースのボトルブラッシュの花

さすが本場もん。

花は下を向いて咲いていたのが多いが、上を向いていたのもあったと思う。

 

おまけ

東京で4月に目立つ花はモッコウバラと藤の花(2013年)

 

 

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3月はミモザ

2020年05月25日 | 散歩

 

3月中旬に散歩すると家々のミモザの花が目立つ。ミモザづくしでご覧いただこう。

 

あちらこちらに自由に枝を伸ばしたミモザ(2017年3月)

青空に黄色い花が映える。

大きく繁ったミモザ(2019年3月)

こちらも同じ3月。

それにしても、空が入ると電線が邪魔をする。地中化するとすっきりし、空が大きく開けるのだが。

さらに同じく2019年3月

同じミモザの2018年3月

散歩中、一度目に入るとミモザばかり気になる3月のミモザ散歩でした。

 

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凪良ゆう『流浪の月』を読む

2020年05月23日 | 読書2

 

凪良ゆう著『流浪の月』(2019年8月30日東京創元社発行)を読んだ。

 

表紙裏にはこうある。

あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。それでも文、わたしはあなたのそばにいたいあなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。それでも文、わたしはあなたのそばにいたい――。再会すべきではなかったかもしれない男女がもう一度出会ったとき、運命は周囲の人を巻き込みながら疾走を始める。新しい人間関係への旅立ちを描き、実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。

 

2020年本屋大賞受賞

 

家内更紗(かないさらさ)は、「やばいぐらいにマイペース」な母・灯理(あかり)と、母親を愛する父・の自由な家庭で育った。父が亡くなり、母に捨てられ、厳格な伯母の家に預けられる。
自由はなく、世間一般のルールを守ることを強制する伯母の家で更紗は息が詰まりそうになる。その上、一人息子・中二の孝弘が夜に部屋へ忍んで来ることを更紗は伯母に言えなかった。

 

小4の更紗は公園でロリコンと噂されている大学生・佐伯文(ふみ)19歳と出会い、独り暮らしの家に付いて行き、そのまま住み着いてしまう。育児書に縛られた母親に育てられ、「正しい生き方」から一歩も踏み出せなかった彼は、奔放な更紗に影響されていく。やがて、TVで少女誘拐事件と報道され、動物園へ行ったときに警察に捕まり、文は逮捕され、更紗は施設に送られる。

 

成人しファミレスで働くようになった更紗は(りょう)と同棲するが、「少女誘拐事件の被害者」として息を潜めて暮らす。亮は一方的に実家に帰り、婚約者として紹介しようとする。更紗はある日カフェ「calico」で偶然文と再会する。

 

恋人のさんが言った。「‥‥南くん(文)のことは、結局、最後までわからないままだった」‥「あなたは、それでいいの?」……わたしの答えは昔からひとつしかない。「いけないと思ったことが、ないんです」

 

 

凪良ゆう(なぎら・ゆう)の略歴と既読本リスト

 

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

単なる友達ではなく、恋人でもない二人、しかもかけがえのない二人の間の関係が新しいものと感じる。身近な人々や世間一般から理解されず、ロリコンとストックホルム症候群と決めつけられ、文は犯罪者、更紗は助け出さりるべき人として扱われる。そんな環境がよりつよく二人を結びつける。

 

驚愕の派手な事件が起こるわけでもなく、エグイ場面が続くわけでもない。強烈な個性や、気の利いたセリフが飛び交うわけでもない。それでも最後まで読者を離さないのは著者の筆力だろう。

 

しかし、更紗にはイライラする。文がロリコンとして捕まっても、事実の説明が出来ず、いたずらされた孝弘を訴えることもしない。結果として、文に大迷惑をかけてしまう。

筋立ても、何か、少女漫画を読んでいるかのような気分になる。

 

三角座り:体育座りの関西での(?)呼称

 

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無料公開電子版で読んだ 湊かなえ『告白』

2020年05月21日 | 読書2

 

図書館が閉館し、読む本がない最近、双葉社で湊かなえのデビュー作、ベストセラーの『告白』が期間限定で全編無料公開された(5月4日~31日)。

 

ほとんどネタバレではないと思っている「あらすじ」

 

第一章「聖職者」

S中学校の1年生の終業式の日。担任・森口悠子は生徒たちに語る。
数カ月前、学校のプールで彼女の一人娘の愛美が死んだため退職すると話し出す。愛美の父親はTVなどで有名な『世直しやんちゃ先生』こと桜宮先生で、HIVに罹っているので結婚していない。そして、実は娘は事故死ではなく、このクラスの生徒「A」と「B」に殺されたのだ。警察には告げないが、復讐を仕掛けたと語る。

 

第二章「殉教者」

クラス委員長の美月の悠子への報告の形で語られる。
2年になった春休み後、少年A(成績優秀で感電財布を自作した)渡辺修哉は登校していたが、少年B(母親に溺愛されマザコン、美月の幼馴染)下村直樹は不登校になっていた。新任教師「ウェルテル」こと寺田良輝は愚かな熱血漢で見当違いの行動に突っ走る。そして修哉へのいじめが始まる。直樹はついに母親‥‥。

 

第三章「慈愛者」

直樹の姉姉・聖美が語り、読んでしまった母親の日記が続く。
直樹はHIV感染の恐怖から極端な潔癖症になるが、一方で髪を切らず風呂にも入らず不潔になり、ひきこもりは長引く。母親は「ウェルテル」の訪問にも直樹をかばい続ける。

 

第四章「求道者」

直樹が語り手。
修哉がバカにしていた直樹を誘い、発明した感電財布の実験者を提案させ、愛美が実験対象者になり、悲劇が起こったのだ。その後、引きこもりの直樹から実情を聞かされ、母親は絶望し、心中を図るが‥‥。
直樹は逮捕され、病院に入り、記憶喪失状態となる。

 

第五章「信奉者」

修哉のサイト『天才博士研究所』に、「母親への遺書」として自分の生い立ち、愛美殺人の経緯、次の犯行予告をアップロードした。修哉は、彼を捨てて去った優秀な母親が振り返るような事件を起こしたかったのだ。自作爆弾の起動装置としていた彼の携帯電話に非通知の着信があった場面でこの章は終わる。

 

第六章「伝道者」

森口悠子は、桜宮に阻止された復讐を諦めていなかった。森口は修哉が設置した爆弾を‥‥、修哉が起動した後で、こう告げた。「ねえ、修哉くん、これが本当の復讐であり、あなたの更生の第一歩だとは思いませんか?」

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

確かにこれまでの小説にないほどの  “えぐい” 話だ。我が子を殺されたからといって教師が生徒に対し、これほど残忍に復讐するとは! さすが『イヤミスの女王』(嫌な気分になるミステリー)。

 

でも、筋が左右に荒れすぎていて、難病、いとも簡単な殺人、爆弾と、携帯小説(現存しているの?)並だ。その後の著者の活躍をみると、習作だったのだろう。

 

 

湊かなえ(みなと・かなえ)

1973年広島県生まれ。

2007年「聖職者」で第29回小説推理新人賞受賞

2008年同作品を収録した『告白』でデビューし、2009年本屋大賞受賞

2012年「望郷、海の星」で日本推理作家協会賞短編部門受賞

2016年『ユートピア』で山本周五郎賞受賞

2018年『贖罪』がエドガー賞〈ペーパーバック・オリジナル部門〉にノミネート

他に『少女』『Nのために』『夜行観覧車』『往復書簡』『花の鎖』『境遇』『サファイア』『白ゆき姫殺人事件』『母性』『望郷』『高校入試』『豆の上で眠る』『山女日記』『物語のおわり』『絶唱』『リバース』『ポイズンドーター・ホーリーマザー』。
エッセイ集『山猫珈琲』など。

 

 

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村井俊哉『統合失調症』を読む

2020年05月19日 | 読書2

 

村井俊哉著『統合失調症』(岩波新書(新赤版)1801、2019年10月18日岩波書店発行)を読んだ。

 

このところ図書館が閉館で読む本がない。数年ぶりに本屋さんに行き、ぶらぶらと読む本を探した。コロナ関連の本ばかりが目立つ。ネットでいろいろな観点から検索している身としては、ただただ本屋の中を徘徊してもこれという本に出合わない。昔は、本が私を呼んでいて、これだという本に出合えたものだが。

ということで、多少ややこしくて、読むのに時間がかかるこの本を選んだ。面倒になって「えいや!」である。

 

 

岩波新書編集部による「『統合失調症』の執筆に際し考えたこと(新書余滴)」で著者はこう語っている。

新書『統合失調症』で強調したように、この病気は100人に1人近くの人が患う「普通の病気」である。家族や友人がこの病気を患う可能性も考えると、誰にとっても他人事ではないはずである。ところが、メディアは(ということは、一般市民は)「統合失調症」という病気に何となく蓋をして、こういう病気を持つ人が私たちの周りにはいないかのごとく生活しているのである。

 

  • 天才と統合失調症は関係ない。ゲームの理論のジョン・ナッシュは統合失調症になる前に成果を上げた。統合失調症になると集中力がなくなるなど深い思考は困難になる。
  • 精神障害者の犯罪率は一般より低いが、暴力的犯罪は若干高い。
  • 『精神病』という言葉は、『幻覚』や『妄想』を伴う特定の症状を指す言葉で、双極性障害(躁うつ病)などは含まれず、精神障害一般ではない。
  • 統合失調症の原因についてはほとんど何も分かっていないが、効果ある治療薬は開発されている。
  • 双極性障害に比べ治りにくい病だが、著者は、病との共生も含めて、回復は50%と述べている。
  • 親兄弟に統合失調症を持つ人の相対リスクは約10倍と遺伝の影響はある。しかし、統合失調症の生涯有病率は1%未満なので、10倍でも生涯有病率は10%に過ぎない。

 

 

村井俊哉(むらい・としや)
1966年、大阪府生まれ。1998年京都大学大学院医学研究科修了(医学博士)。マックスプランク認知神経科学研究所を経て、京都大学大学院医学研究科教授。専門は精神医学

著作『精神医学の実在と虚構』『精神医学を視る「方法」』『精神医学の概念デバイス』

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

統合失調症は、精神分裂病と呼ばれていた時代から、わけのわからない不気味な病気としておそれられ、それでいて怖いもの見たさでいい加減な都市伝説が流布していたと思う。

一般人も統合失調症とは何かを学ぶべきだ。そのためにこの本は、バランスがとれていて、わかりやすく、最適だ。さまざまに現れる多くの症状など詳しすぎる説明の部分もあるが、突き詰めて読まず、大意をくみ取ればよい。

 

定性的説明にとどまらず、大雑把に、可能かなぎり数値をあげて定量的に説明している点は好感が持てる。

 

 

私のメモ

  • 病気の始まりがピークとなる年齢層は20歳代前半。小学生以前は極めて低い。40歳なら既に始まる確率は低い(ピーク年齢の1/7程度)。
  • 統合失調症は100人に一人がかかる普通の病気。統合失調症が天才を生み出すわけではなく、逆に天才的な才能を持った人が患う病気でもない。慢性疾患の一つで十分回復が得られない場合でもうまく付き合いながら生活していける。
  • 実例  クラスの同級生の話し声が自分のことを言っているのではないかと気になりだした。3か月後、家にいても数名の人が自分の行動についてひそひそはなしているような声が聞こえるようになった。さらに3か月後、だんだん頻繁になり、自分のことが皆に知れ渡っていて、例えばTVでも自分のことを言っているような気がするようになった。
  • 精神科病院への入院:多くの場合は、任意入院だが、本人の意に反する入院(医療保護入院、措置入院)も行われる。これは、統合失調症では、本人が見ている世界と現実の世界の乖離が起こるからだ。
  • 統合失調症という病名は、ほぼ、幻覚、妄想、陰性症状、気分症状、認知機能障害などの症状の集まりで定義されている。
  • 幻聴は人の声が多く、自分自身を非難したり攻撃したりしてくるものが多い。
  • 病識:自分が病気であること、あるいは、自分の症状が病気の症状であることへの気付き。統合失調症では、幻覚への病識が保たれていないことが多い。アルコール依存症の人も医者が大げさなどと自分の病気を否認するが、心の奥では自分の健康に不安を抱えている。一方、脳内にマイクロチップがあると確信し訴える統合失調症の人はマイクロチップの方に不安を抱えている。
  • 妄想には、自分は高貴な家系の子孫であるといった血統妄想や、自分は画期的な発明をしたといった誇大妄想が見られることもある。
  • 精神科が扱う病気の総称は「精神障害」や「精神疾患」で、「精神病」という言葉は病名ではなく幻覚や妄想という特定の症状をさす言葉だ。英語のpsychosis の訳語が「精神病」で、「精神障害」などへ改訂が図られている。
  • 「セイリエンス仮説」:ドパミン神経系は外界の刺激の中から重要なものだけに注意を向けさせるが、過剰になると妄想が生じる。その刺激の目立ちやすさがセイリエンス(Salience、顕著性)。そして、ドパミンを抑える薬が統合失調症によく効くことから、有力な仮説である。しかし、なぜ主に20歳代前半に幻覚・妄想がしょうじるのかは説明できない。
  • 統合失調症の予後:精神科医の間では「3分の1の法則」とささやかれている(完治する人、何回もエピソードを繰り返し、その間は回復している人、だんだん悪くなる人が3分の1づつ)。病と共生していく「もうひとつのリカバリー」を含め、著者は回復は50%と患者さんへ言っている。
  • 「旧神経症」は不安を主たる症状とし、「統合失調症」は幻覚・妄想を主たる症状とする差がある。
  • 統合失調症には地域差はない。ストレスの多い国、少ない国も関係ない。人口10万人中の自殺率は日本は5、ブラジルは6.5。
  • 遺伝の影響:第一度近親(親兄弟)に統合失調症を持つ人の相対リスクは約10倍。しかし、統合失調症の生涯有病率は1%未満なので、生涯有病率は10%となる。
  • ドパミン拮抗薬:ドパミン受容体に蓋をするように結合し、情報伝達を弱める。
  • 電気けいれん療法:かっての怪しい治療法。うつ病に効果があるが、統合失調症の一部の人にも効果的。
  • ヤスパースの唱える妄想の3要素は、①その内容がありえないこと、②非常に強い確信、③訂正不能であること。現実には患者はときに疑うこともあるし、あり得ないと思われたことが起こることもあり、難しい。さらに、宗教などサブカルチャー内ではあり得ない事が起こっても妄想とはしないなど、宗教的信念と妄想の違いも難しい

 

 

 

 

 

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20年5月上旬の花

2020年05月17日 | リタイヤ生活

5月8日に届いた花

 

赤いカーネーション5本と、

紫と白の小花がこんもりと盛り上がったスカビオサ。

左にあって、あちこちによそ見しているのがキク科のマトリカリア

右下の可憐な水色の花がブルースター、別名ルリトウワタ。

星型の5弁の青い花で、葉は毛におおわれている。

 

右下の常緑性のツタはアイビーで、観葉植物。

アイビーリーグとはハーバードなど米国北東部の私立名門8大学で、

校舎がツタでおおわれた伝統校リーグのこと。

昔の人間の私は、アイビーというと若い頃横目で見ていた平凡パンチで有名なアイビールックを思い出す。

 

1週間後、カーネーションは開き切って、紫と白のスカビオサは真ん丸、小さなキクのようなマトリカリアもすべての花が満開。

ブルースターは下の方の花が淡い青からピンク白に変わった。

 

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有川浩の略歴と既読本リスト

2020年05月15日 | 読書2

有川浩(ありかわ・ひろ)
1972年生れ、高知県出身。女性。
2003年『塩の街』電撃小説大賞受賞でデビュー
2004年『空の中』『海の底』
2006年『図書館戦争』、『別冊 図書館戦争I』『レインツリーの国
2008年『阪急電車』」
2009年『植物図』『フリーター、家を買う。』  
2010年『ストーリー・セラー
2011年『ヒア・カムズ・ザ・サン』『県庁おもてなし課』  
2012年『三匹のおっさん』『旅猫レポート
2013年『キケン
2014年『キャロリング

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有川浩『レインツリーの国』を読む

2020年05月13日 | 読書2

 

有川浩著『レインツリーの国』(新潮文庫あ62-1、)を読む

 

裏表紙にはこうある。

きっかけは「忘れられない本」。そこから始まったメールの交換。共通の趣味を持つ二人が接近するのに、それほど時間はかからなかった。まして、ネット内時間は流れが速い。僕は、あっという間に、どうしても彼女に会いたいと思うようになっていた。だが、彼女はどうしても会えないと言う。かたくなに会うのを拒む彼女には、そう主張せざるを得ない、ある理由があった――。

 

目次

1 直接会うのが駄目やったら、せめて電話だけでもどうかな。
2 「……重量オーバーだったんですね」
3 傷つけた埋め合わせに自信持たせてやろうなんて本当に親切で優しくてありがとう。
4 「ごめんな、君が泣いてくれて気持ちええわ」
5 歓喜の国

あとがき
解説・山本弘

 

伸(しん):向坂伸行(さきさか・のぶゆき)、大学卒業し、関西から上京して入社3年目。

ひとみ:ブログ『レインツリーの国』の管理人。レインツリーはアメリカネムノキの別名で、ネムノキの花言葉は「歓喜」、「胸のときめき」。恋に恋するかのようにブログ名を付けた。

(表紙には小さく英語の題名が“World of delight”とある)

 

「あとがき」で有川は書いている。

夫が2回突発性難聴にかかり、処置が早かったことと医師が非常に的確に治療したために、聴覚復帰した。耳の病気に疎く、取り返しがつかない所だったその経験から、『図書館内乱』の中で中途失聴と難聴のエピソードを書いた。

そして、調べるほどに「中途失聴と難聴の方を主人公に据えた恋愛物が書きたい』という思いが形になったという。

私が書きたかったには『障害者の話』ではなく、『恋の話』です。ただ、ヒロインが聴覚のハンデをもっているだけの。

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

最近の恋愛は、身分、国籍など壁がなくて盛り上がりにくい。難病もまたかという感じだし、この小説では身体的障害が打ち破るべき壁になっていると、冷たいお言葉。

 

メールのやり取りにより、誰にも理解されなかったライトノベルで思い切り盛り上がってしまい、リアルで(実際に)会いたくなってしまったのはさもありなん。メールでは何の障害もない女性が直接の会話では問題があり、会うのを拒む。よくできている話だ。

ところが、会った相手の女性は障害の劣等感からややこしい性格。次々を壁を乗り越える二人に、気短で単純な私は50年の歳月を経てイライラと読み進めてしまった。

 

登場人物がほぼ二人だけなのが、短期記憶が破壊されている身にはすばらしい。

 

メールをやりとりしているのに、実際には会いたくないというのはなぜかと考え、第2章のタイトルが「……重量オーバーだったんですね」なので、彼女は体重を気にしているのかと思ってしまった。単純で、バカな私!

 

有川浩(ありかわ・ひろ)の略歴と既読本リスト

 

 

 

 

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母の日のプレゼント

2020年05月11日 | 日記

最近のご時世で離れて住む息子一家ともしばらく会っていない。TV会議のZoomでゆっくり顔でも見ながら孫達と話そうと思っても、小学生の孫たちはふざけてしまって、変顔したり、なぞなぞを仕掛けてきたりしてあっという間の30分になってしまう。それでも疲れをしらない孫たちの姿に年寄は元気をもらった。

 

その後、電話が掛かってきて、母の日に孫を連れてわが家を訪れて、プレゼントを渡したいが、玄関先で帰るという。

母の日当日、ちょっと部屋に入ればと誘う我々と、ちょっとだけだからとせがむ孫に、息子の意思は固く、プレゼントと、品数豊富で豪華なお弁当を置いて、そのまま帰って行った。

 

プレゼントの一つは花束。

豪華!

適当な花瓶がないのだが、ともかく活けてみた。

バラ、カーネーション、名も知らぬ花などがあふれる! しげしげと眺めていてもあきない。

もう一つのプレゼントは手作りのケーキ。“Thanks Mother’s Day From X&Y” とのシールもある。

上の写真の左のレモンケーキは、はっきりとレモンの味が感じられ、しっとりとおいしく味わった。

もう一つは見たことあるケーキ。アーモンド・フロランタンというらしい。

これもパリパリと、止まることなくあっという間に姿を消した。

レシピをググると、複雑怪奇、面倒くさいことこの上なし。

相方によると、ケーキだけは目分量ではだめで、きちんと量を守り、手順通りに作らないと美味しくならないという。

私は食べる方に回ります。

 

この腕なら十分優秀なケーキ職人になれると認定します。

 

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電気ケトルを購入

2020年05月10日 | その他

 

経緯

ティファールT-falの電気ケトル(アプレシア・エージー・プラスロック0.8L)が壊れた。きょう体の中ほどにある半透明の容量目盛りにヒビが入り、水漏れするようになった。

落としたわけでもなく購入後まだ2年1か月なので修理可能か電話してみたが、受付は休止中。メールで受け付けるが、時間がかかるなどクドクドと告げる。しゃくに障るが、温度設定付が欲しかったので、修理はあきらめ新しく購入することにした。

 

まず、「電気ケトル 温度設定付」をネットで検索すると、品数は少ない。ざっとみたところ、ティファールはほぼ同じきょう体の下に温度調節用の台を置くタイプ。その他、外国物のようなかっこよいデザインのものが2社。あとは少しずつコーヒーにお湯を垂らすグースネックの各種電気ケトルが数種。価格は6.5千円~1万円程度。

メルカリをのぞくと、8,500円~1万円くらいで各社の品が並ぶが、売れきればかり。

 

お茶を入れるたびに鍋でお湯を沸かすのも面倒で急いで買いたい。このご時世だが結局、朝一番9時半にヨドバシに行った。しかし、店頭に並ぶのは、ティファールとグースネックのコーヒー用のみ。お茶にはドボドボ入れたいのでグースネックは除外。

結局、1万円弱とネットより高価だし、現在の品が壊れた文句も言えないのが業腹だが、泣く泣くティファールを購入。リュック(バックパック?)に詰めてお持ち帰り。

 

アプレシア・エージー・プラスコントロール0.8L

使い方は簡単。

右上の「電源ボタン」を押すと、現在の水温が表示される(下の写真では28°)。

左上の「温度設定ボタン」を押す毎に、100度、95、90、85、80、70、60度と設定温度が7段階変わる。

設定する温度のままにして2秒経つとピッと音がして加熱を開始し、画面左上に「温度設定ランプ」が点滅する。設定温度になるとピッと音がして加熱終了。

左下の「沸騰ボタン」を押せば、画面左下の「沸騰ランプ」が点滅して、沸騰すると、ピーと音がして止まる。従来品に比べかかる時間はかなり短いと感じる。

 

保温

保温したい温度を左上の「温度設定ボタン」で設定し、右下の「保温ボタン」を押す。これが保温の基本動作。設定温度まで加熱して、右下に「保温ランプ」が点滅し、設定温度になると1時間保温する。温度が下がると自動で加熱する。

 

温度設定モードで加熱中に「保温ボタン」を押しても良い。左上の「温度設定ランプ」が消灯して右下の「保温ランプ」が点滅し、設定した温度になると保温する。

温度を設定していない状態で「保温ボタン」を押すと、60℃に加熱・保温する。

ネットで保温のし方がわからないという声があった。確かに、ごく自然な使い方として、設定温度に達し(お湯を使っ)た後で「保温ボタン」を押す方法では、60℃以下なら(多分)60℃に加熱・保温するし、以上なら無視??。

 

使い終り

電源ボタンを押してオフにする。

夜寝る前に、水あかが付かないようにケトル内の水を捨てる(今のところ守っている)。「電源プラグはコンセントから抜いてください。」とあるが、そのままにして、その元のスイッチを切っている。

 

従来の我家の壊れた(強調)ティファールとの大きな差は、注ぎ口が多少大きくなったことと、その内部にフィルターが追加されていること。あとは、下の台から電力を本体へ伝える非接触結合部分が従来の1から3枚の同心円になった。多分伝導効率が良くなっているのだろう。

 

今の所、快適に使っている。しかし、また壊れたら、このブログで痛烈に叩いてやる! 影響力ないけど。トホホ。

 

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千早茜『正しい女たち』を読む

2020年05月08日 | 読書2

千早茜著『正しい女たち』(2018年6月10日文藝春秋発行)を読んだ。

 

6編の連作短編集。ただし、連作といってもさまざまな媒体へ掲載された短編を集めたものなので、いくつかの短編でごく一部の登場人物が共通しているだけで、話の背景などの共通性は少ない。

 

「温室の友情」
大学までエスカレーター式の私立中学で出会って以来の4人、遼子、環(たまき)、麻美、恵奈。

遼子はママが過保護で秘密を守れないと知っていた。可愛くませていた環は高校で大学生を付き合い、経験済となり、大学ではタレント活動を始めた。おとなしかった麻美も彼氏と同棲した。31歳となった遼子は化粧品会社に勤め、親の建設会社で働く博之と付き合っている。恵奈は西村と不倫しの泥沼に沈んでゆく。遼子は彼の前では我慢ばかりしている恵奈を心配し、いらだつ。麻美だけが結婚して子どもができ、付き合いが悪くなった。

母が自分のことはなんでも分かっていると思い込んでいると憤慨していた遼子は、親友恵奈の気持ちは誰よりも知っていると確信していた。そして、自分たちの友情を壊しかねないものは「正しくない」と行動に出る。

 

「海辺の先生」

海沿いの田舎町の地元の母が経営するスナックの2階が高校生の向田美優の住まいだった。夜寝られず高校では保健室で寝てばかりいて、成績は悲惨だった。友人は駅前の文房具屋の娘のさよちゃんだけだった。スナックの客で先生と呼ばれる男に美優は「母がなんでも勝手に決める」とぼやくと、男は「決められるのがいやだったら」「自分で決めないと何も変わらないですよ」と答えた。美優は「東京の大学に行く。だから、勉強を教えて」と頼む。先生と呼ぶ佐倉と美優は噂になるが、教え続けた。変わると決心して進む美優が、先生と母親をも変えていった。

 

「偽物のセックス」

会社の飲み会でのエロ話でもりあがり、麻美の夫は、マンションの同じ階で帰って来た男に絡みつく女を見た。麻美は夫婦で妻の方は「まあ、いろいろ」という。夫は気になってしかたなっく、女の後をつけるようになり、さらに……。女は言った。「でもね、わたし、正しくないセックスには興味がないの。……」「夫とセックスするのは正しいことでしょう。……なのに、なぜ、それを口にしたからって、ふしだら、と噂されるのかしら。…」

 

「幸福な離婚」

3年前、イツキはミヤ(宮原)に言った。「ミヤってさ、可能な限り自由でいたいっておもっているでしょう」と。彼らはあと150日足らずで離婚する。二人はそれまでの日々をいがみあうこともなく静かに豊かに過ごす。

 

「桃のプライド」

かっての勢いはどこえやら、二流タレントとして活動する環。チョイ役のドラマを見たと騒ぐ恵奈と遼子。恵奈は大手化粧品会社、遼子も大手アパレル会社で活躍している(遼子は「温室の友情」では化粧品会社だったのに)。環は堅実な人生の見本を前に喉が詰まり、よけいに「おしゃれで美人でセンスがいい私」を自己演出し、中毒のようにインスタを盛りつづける。女子会は華やかに盛り上がるが、互いを値踏みし、裏を覗き見ようとする。

 

「描かれた若さ」

紗耶香は清水に言った。「婚約指輪の代わりに肖像画が欲しい」 清水が画家の津野春を訪ねると……。かって付き合って捨てた29歳の舞には眼鏡の女子高生の従妹がいた。

 

 

初出:「オール読物」、「小説BOC3」、「週刊文春」、書き下ろし(描かれた若さ)

 

 

千早茜の略歴と既読本リスト

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

女性の嫌味、執念深さなどがよく書けてはいる。短編ではあるが、頭だけで考えているような無理なストーリーが多く、わざとらしさが目立つ。文章は上手く、才能は感じる。

今後に乞うご期待といったところか。

 

「海辺の先生」だけがハッピイエンドで気持ちよく読める。

 

 

木下闇:このしたやみ。季語。 鬱蒼と茂る木立の下の暗がり。昼でも暗く涼しい。

 

「人生で若い時分なんてのは一瞬だよ。老いてからがさ、長いんだ」

充分実感しています。若い時は「今だ。今だけだ。40歳になったらもうおしまいだな」と思っていました。

 

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久坂部羊『老父よ、帰れ』を読む

2020年05月06日 | 読書2

 

久坂部羊著『老父よ、帰れ』(2019年8月30日朝日新聞出版発行)を読む

 

宣伝文句は以下。

高齢者医療の現場を知る医師でもある著者の「認知症介護」小説。
テレビ、新聞・雑誌で話題になった『老乱』につぐ第二作。

45歳の矢部好太郎は有料老人ホームから認知症の父・茂一を、一念発起して、自宅マンションに引き取ることにした。
認知症専門クリニックの宗田医師の講演で、認知症介護の極意に心打たれたからだ。勤めるコンサルタント会社には介護休業を申請した。妻と娘を説得し、大阪にいる弟一家とも折にふれて相談する。好太郎は介護の基本方針をたててはりきって取り組むのだが・・・・・・。
隣人からの認知症に対する過剰な心配、トイレ立て籠もり事件、女性用トイレ侵入騒動、食事、何より過酷な排泄介助・・・・・・。ついにマンションでは「認知症対策」の臨時総会が開かれることになった。
いったい家族と隣人はどのように認知症の人に向き合ったらいいのか。
懸命に介護すればするほど空回りする、泣き笑い「認知症介護」小説。

 

認知症には4タイプある。(1)アルツハイマー型、(2)レビー小体型、(3)脳血管性、(4)前頭側頭型。

父・矢部茂一は(4)で、反社会的行動が増えて、意思疎通が困難になり、やかて人格崩壊に至る危険性がある。

 

好太郎の妻は泉。祐次郎は、好太郎の弟で、妻は看護師の朋子。関西に住む。

有吉佐和子の『恍惚の人』を読んで、泉は朋子に言う。

「…(認知症が)遺伝するんだったら、夫も同じようになるかもしれないでしょう。舅の介護で苦労した上に、年老いてから夫まで認知症になったらたまらないって思うの」

 

宗田医師の話

幼稚園の子どもに聞くようなことを問われたら、それだけで高齢者はプライドが傷つきます。自分は認知症を疑われている、厄介者扱いされていると感じて、惨めな気持ちになるのです。

 

認知症を治したいと思うことが、なぜいけないのか。それは患者本人の気持ちを傷つけるからです。ご家族は病気だけを否定しているつもりでも、当人は自分のすべてを拒絶されているように感じます。

 

姑の世話を嫁さんが一生懸命続けていた。認知症になった義母は嫁に「あんた、だれ」と言った。そして義母が最後に入院する前に「あんたには世話になったなぁ、あんたはほんまにええ人や、けど、わたしはもっとええ人を知ってるで」と。「それはだれですか」と聞いたら、「うちの嫁や」

 

「認知症になっても、心は残っているんです。ただ、すべてが残っているわけではない。それを喜んでほしいとか、名前を忘れないでいてほしいとかいる自分の都合に合わせようとするから、気持ちが乱れるんです」

 

食べ物も飲み物もほしがらないのは身体が必要としていないからです。消化や吸収にも体力がいるのです。点滴も心臓や腎臓に負担がかかります。

在宅医療をやっている医師の間では、高齢者は点滴や栄養補給などせずに、乾いて亡くなるのが一番楽そうというのが共通認識です。

 

認知症の損害保険がある。月々1700円の掛け金で、最大1千万円の補償が行われる。

 

 

久坂部羊(くさかべ・よう)の略歴と既読本リスト

  

初出:「小説トリッパ―」2017年冬季号~2018年秋季号に「父よ、帰れ」として掲載。

  

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

認知症介護の実際の問題と、対処への基本的考え方が良く書けていて、参考になる。

しかし、課題を浮かび上がらせるためとはいえ、主人公の好太郎のあまりにも子供っぽさにはいやになってしまう。介護の理想論を聞いて、考えなしに父親を家に引取り、自分の名前を何としても呼ばせようとしたり、被害をおそれる人にむきになって反論したりする。大人なら、そういった本音はもう少し隠すだろう。

 

それにしても、延命治療すると、こうなってしまい、死ぬに死ねなくなるという、酷い、エゲツナイ表現があったのにはびっくり。そこまで言うか?

 

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マティスに感謝

2020年05月04日 | 美術

絵画を見ることが好きだ。

印象派の父とも呼ばれるマネが好きだ。初期の挑戦的な作品も良いが、絵の具をポンと置いただけなのに離れてみるといかにも人影に見えるなど荒いタッチの晩年の枯れた絵も良い。

また、抽象画は夢中にはなれないが、印象派や、後期印象派の個性的な絵はじっと見ていて飽きない。眠れない夜は画集を眺めて静かな気持ちになってから寝入る。

 

どうしても一人選ぶということになると、マティスになる。
簡潔な表現で色彩のセンスが抜群だ。

中学の図工の時間に教師がマティスの絵を掲げどう思うかと聞いた。私が「立体感がない」というと教師が渋い顔をした。他の人が「影がない」と答えると、教師は笑みを浮かべ、「そうです。影がないが立体的に見えるでしょう」と言った。私は“影がない”イコール“立体感がない”と思い込んでいたのだが、確かに教師が正しかった。

 

マティスの野獣派時代の乱暴とも言える鮮やかな色彩の夫人の絵。中期の、窓と鮮やかな模様の壁を持ち、植物が配置された粧飾的な絵。華やかさ、楽しさ溢れるセンスの良いこれらの絵は魅惑的だ。

 

さらに1作品だけと言われると、エルミタージュ美術館にある「ダンス(Ⅱ)」ということになる。

五人の女性が裸で手をつなぎ、うねるように輪になって踊っている。背景は緑の大地と青い空のみ。人物も縁取りされた褐色一色。単純そのものの絵だが、躍動感いっぱいだ。互いにしっかり手を取り合っているが、手前では少し離れている手をいっぱい伸ばしてつなごうとしている。単純で伸びやかで力強く、人生の喜びに溢れる絵だ。

ニューヨーク近代美術館にも同様な「ダンス(Ⅰ)」があるが、(Ⅱ)より淡い色で描かれている。

 

さらさらと描いたようだが、充分な計算、繰返す修正、微妙な調整の成果なのだろう。

こんな絵を見ることが出来る幸せに、そして、創りだしたマティスの努力に、さらにその才能を産み出したものに感謝したくなる。

マティスの墓を訪れた時、感謝をささげた。

 

                                             

 

 

 

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