hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

「なだ万」でランチ

2019年12月30日 | 食べ物

 

あの、あの「なだ万」でランチした。

もちろん、本店    ではなく、新宿小田急デパート本館14階の「なだ万賓館」だ。  

 

店内には、一般席の他に、専門のカウンター席で寿司「清水」、天婦羅「まつ井」、鉄板焼「竹花亭」がある。一般のテーブル席ではこれらのカウンター席の料理も注文できる。

我々は一般席。

 14F なので北側の眺めをパチリ。

 

 

私は「松花堂弁当」。

最初出て来たのがこれ。

グラス状のものに入っているのは小松菜のおひたし。

 

 次に

 

 

ここで、テーブルの上で気になるものを見つけた。

 

「ノンアルコール」というので(宗教上の理由??)、注文。

これが酒でない「甘酒」。小さな生姜が浮いていた。

 

 

ここでようやく本体の松花堂弁当。丁寧な説明はすべて忘れた。

 

 

 

相方は「和遊膳」。

まず一の膳。

 

 

二の膳

 

 

三の膳

 

とくに、ふろふき大根が美味しかった。

 

ご飯

 

 

和遊膳にはデザートが付く。

 

 

二人で1万円少々なら、ともかく「なだ万」なのだからご満足。

 

 

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志水辰夫『きのうの空』を読む

2019年12月28日 | 読書2

 

志水辰夫著『きのうの空』(2001年4月20日新潮社発行)を読んだ。

 

宣伝文句は以下。

見上げた空は果てしなく高かった。都会での華やかな暮らし、想い続けている人の横顔が、ふわり浮かんだ。だが、この地にしがみつき、一日一日をひたすらに積み重ねなければ、生きてゆけなかった。わたしの帰りを家族が待っていた。親やきょうだいは、ときに疎ましくときには重く、ただ間違いなく、私をささえていた。名匠が自らを注ぎこみ、磨き続けた十色の珠玉。柴田錬三郎賞受賞作。

 

最初に蕪村の句「凧(いかのぼり) きのふの空の 有り所」とある。

凧は、いかのぼりと読む。「たこ」は江戸時代までは「イカ」「いかのぼり」と言われていて、関西に対抗して江戸でイカでなくタコだと言って凧という漢字を作ったらしい。

 

『旅立ち』

茂は、一番のちびでひねくれものだった。転校生で体の大きな清司が茂を助けたことから唯一の友人となった。二人は共に母子家庭だった。茂は廃船を修理し、はるかなるアメリカを目指す船旅の準備を始める。

 

『短夜(みじかよ)』

厳しい姑がいる格上の家へ嫁ぐ姉・智美を思いやって弟・信夫は機嫌が悪い。嫁入り行列の姉の背中に弟は「ばかやろーっ!」と叫ぶ。姉は……。

 

『イーッ!』

高校生ながら成熟した体を持つ榊原加奈子。啓介とは高校一年のとき演劇祭で共演することになり、城山でふたりだけで何回も練習した。啓介の父は事業に失敗し借金取りが押しかけてきて、受験勉強に熱が入らなかった。加奈子の母は小さな飲み屋をやっていて、いろいろ噂があった。加奈子も英語教師の殿村と噂があった。城山で会った彼女は街に向かって朗々と腹式呼吸で呼び掛けた。

「わたしたちは知り合ってもう八年になるんですよ。それなのにこうして、ふたりで向かい合って真面目にお話しするのは、きょうがはじめてだということにお気づきなりませんの?」

 

『家族』

畑中光彦は進学を断念し材木会社の事務員になり、公務員試験中級の勉強中。父は戦死し、一家の大黒柱だ。母・満子は行商、弟・昇は新聞配達、忠は東京で学校に通いながら働いている。妹・智子は家事。高校でクラスメートだった福田由美子は福田家の長女で将来は決められていた。

 

『かげろう』

桑原敬之(のりゆき)は、母と、高三の美代、中三妹・佳代の4人暮らし。敬之は肺結核の治療中だが、蚕業試験場の臨時職員に採用されていた。同じアパートの美人の田端芙美子が気になっていた。しかし、彼女の家にヤクザ風の茂夫がやって来た。夫だという。茂夫はなにかと敬之に頼み事をし、とまどいながらも巻き込まれてしまい、ヤクザの親分のところへ使いに行かされてしまう。

 

『息子』

康治の妻は男の子を出産し、病院にいる。母は康治に対してなんでも決めつけるように言い、妻とうまくいっていなかった。康治の会社に田舎饅頭を持って母・佐和子の姉、70歳過ぎの伯母が訪ねてくる。翌日伯母が亡くなったと電話を受ける。伯母は母と妻と康治を訪ねて仲を持とうとしたらしい。そんな状況なのに母はいきなり病院へ行ったらびっくりするが「喜ぶじゃろう」という。康治の「佐和子に謝ってくれよな」に対して、「どうして? 謝るようなことはなにもしとらんが」という。

 

『高い高い』

惣一は妻・喜美子と歩き始めたばかりの正を連れて久しぶりに帰省した。父は惣一が15歳のとき家族を捨て出て行って、惣一が母と妹・宏美を支えた。喜美子は惣一に城山の桜祭りに行って父と会うよう勧めるが彼は頑として俺は行かないと拒否する。翌日父が入院する病院へ惣一の運転で行き、宏美と喜美子だけが病室へ行く。惣一は口をへの字にすると父が窓に映る病室へ背を向け、抱いていた正を頭上に高く差し上げた。

 

『夜汽車』

幸一は息子・大介との約束を破っておじの葉山行夫を訪ねた。行夫は一応退院したがもうこの夏を超すことはできないだろうという状態だった。結局泊まることになったおじの家で、行夫を夜中起きると、おじが納屋で座っていた。おじは「汽車は来んのか」「なんにも聞こえん」と言った。行夫はおじは自分の寿命を‥‥。

 

『男親』

佐倉敬三には妻・芳子との間に一人娘で30歳になる道代がいる。道代は東京で外資系保険会社で働いている。親は付き合っている人がいるか、どんな人か気になってしかたない。ためらいながら聞いてみると、春川というその男の歳は……。

店の前で寝そべっていた犬が、ふたりの近づいて来るのを見ると居住まいを正した。

「今晩は」

と道代が犬に向かって言った。わん、と敬三が言った。犬はなんにも言わなかった。

 

『里の秋』

遠藤秀宏が昔住んでいて思い出多い家を壊し更地にする。仕事を頼んだ峯岸は遠慮なくさばさばと仕事を進める。秀宏と中学で同級だった砂原暁子は美人の母と二人暮らしで、鉱山の所長と噂があったその母が亡くなり、旅立つ汽車の窓の暁子に、秀宏は「負けるなよ」と声をかけた。

 

 

初出:「小説新潮」1997年1月号~2000年8月号

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

『旅立ち』:孤立した中での唯一の親友の交流。

『短夜(みじかよ)』:家族の犠牲になろうとする姉への弟のいらだちと想い。

『イーッ!』:共に経済的破綻環境にあるが、心も体も先に行っている同級生の彼女ともどかしい彼

『息子』:他人への思いなしに突き進む母をもてあます息子

『高い高い』:家族を捨てて家出し明日をも知れぬ体となった父に、苦労させられ許せない息子の精一杯のふるまい

 

とくに活躍しているわけではないが、貧しい環境の中で地道に努力してきた男の切なさとやさしさ。しみじみとした想いが詰まり、心を打つ短編集だ。

 

現在ではちょっと古めかしいが、たまにはこんな話に浸るのもいいものだ。

 

志水辰夫の略歴と既読本リスト

 

 

燠:おき。熾火(おきび)に同じ。消し炭。

忸怩とした思い:じくじ

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喜寿のお祝い

2019年12月26日 | リタイヤ生活

喜寿のお祝いで、お花が届けられた。

 

何という豪華さ!

さすがプロのアレンジメントだ。

 

4日後

 

 

少し上から見る

 

う~ん!

 

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2019年12月の花

2019年12月24日 | リタイヤ生活

 

12月中旬に届いた花。12月はこの一回。別途注文した正月用の花が、と言うほどではないが、月末に届く。

 

 

 

ガーベラは水を汚し、傷みやすいので、こまめに水を取り替えなければ。

 

 

ほとんど変化のない2日後

 

 

4日後。花の命は短くて、はや陰りが感じられる。

 

 

1週間後。暖房のリビングでよくここまでもった。

 

 

首を垂れたガーベラを、しぶとく一輪挿しに。

 

こんなことやりながらなんだが、ガーベラという花は鮮やかなのだが、何か人工的な色であまり好きになれない。

 

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マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールーの経歴と既読本リスト

2019年12月22日 | 読書2

マイ・シューヴァル Maj Sjowall

1935年ストックホルム生れ。雑誌記者・編集者を経て65年から10年間ペール・ヴァールーと“マルティン・ベック” シリーズを10作書き上げる。

 

ペール・ヴァールー Per Wahloo

1926年スウェーデン南部西海岸ハランド県ツール―生れ。男性。新聞記者を経て作家生活に。62年、執筆中の本の編集者マイ・シューヴァルと出会い、63年から共同生活。当時彼は結婚していたがその後離婚が成立。マイとのあいだに男子が二人いる。75年没。

 

10冊のシリーズ (原書刊行年、旧翻訳年、新翻訳年)

ロゼアンナ(ロセアンナ)(1965、1975、2014)                                                             

蒸発した男(煙に消えた男)(1966、1977、2016)

バルコニーの男(1967、1971、2017)

笑う警官(1968、1972、2013)

消えた消防車(1969、1973、2018)

サボイ・ホテルの殺人(1970、1975、-)

唾棄すべき男(1971、1976、-)

密室(1972、1976、-)

警官殺し(1974、1978、-)

テロリスト(1975、1979、-)

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マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー『刑事マルティン・ベック 消えた消防車』を読む

2019年12月20日 | 読書2

 

マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー著、柳沢由美子訳『刑事マルティン・ベック 消えた消防車』(角川文庫シ3-25、2018年4月25日)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

厳寒のストックホルム。警察が監視中のアパートが突如、爆発炎上した。任務についていたラーソン警部補は住人を救うべく孤軍奮闘するが、出動したはずの消防車が一向に到着しない。焼死者の中には、ある事件の容疑者が含まれていた。刑事マルティン・ベックは捜査を進めるうち、この火災に奇妙な点があると気づく。やがて捜査陣の前に浮かび上がってきたのは、意外な犯罪の構図だった―。警察小説の金字塔シリーズ、第五作。

 

 

マルティン・ベック:ストックホルム警察刑事殺人課警部。16歳の娘・イングリッド、14歳の息子・ロルフ。

レンナート・コルベリ:同警部補(途中で警部)。ベッグの相棒。妻はグン。6か月の娘・ボーディル。

フレドリック・メランダー:同警部補。ベテランで記憶力抜群。48歳。妻はサーガ。

グンヴァルド・ラーソン:同警部補。約43歳。身長192センチ。

エイナール・ルン:同警部補。温厚で赤鼻。

ベニー・スカッケ:同警部補。27歳。新人。オーケ・ステンストルムの後任。

エヴァルト・ハルマン:ストックホルム警察警視正。ベックの上司。定年を楽しみに。

サクリソン:防犯課巡査。23歳。

イェルム:国立犯罪技術研究所(SKL)の鑑識官。小言が多く、苛立ちやすいが、非常に優秀。

ペール・モンソン:マルメ警察刑事殺人課捜査官

オーサ・トレル:殉死したオーケ・ステンストルム警部補の恋人。警察学校へ入学。

 

ユーラン・マルム:警察が監視中の車泥棒?。42歳。焼死体で発見。  

ケネット・ロート:火事で焼死。6回刑務所入りの泥棒。27歳。

マックス・カールソン:男性。ケネット・ロートの訪問者。

カルラ・ベリグレンとマデレーン・オルセン:女性16歳と女性24歳。ケネット・ロートの訪問者。

モーディング一家:母で娼婦のアンナ=カイサ30歳、ケント5歳、クラーリ7か月、クリスティーナ14歳は火事で焼死。

アグネス、ヘルマン・スーデルベリ:火事で焼死。アルコール依存症の68歳と、67歳の夫婦。

 

バッティル・オーロフソン:盗難車関連の犯罪者。36歳。

エーンスト・シーグルド・カールソン:シッゲ。自殺。保険会社勤務。46歳。独身。 

 

小さいが多くの気になる謎が未解決のまま最終部まで引っ張られる。

・消防車はなぜすぐ来なかったのか?

・ルンの息子の家の中にあったおもちゃの消防車はどこに行ったのか?

・探しても探しても見つからない鍵となるオーロフソンはどこにいるのか?

・冒頭で自殺したエーンスト・シーグルド・カールソンはなぜマルティン・ベックの名を書いたのか?

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

やや関連する細かい謎が重なっていて、焼死したマルムの後ろに姿が見えない主犯がいる構造が複雑で、楽しめる。

本シリーズは初めての警察小説だと思うが、警察内部の人間関係がくっきりと描かれ、各刑事の家庭がチラリと姿を見せる構成が小説に厚みを出している。

 

登場人物が多すぎる。北欧の人名は日本人には覚えられない。原文への忠実な翻訳でなくなっても、呼びかけ時でも、文中でも、フルネームではなく、愛称か、名前だけにしてもらいたかった。

 

マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールーの略歴と既読本リスト

 

 

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するりとうどん

2019年12月18日 | 食べ物

 

吉祥寺の「UDON DINIG するり」でランチした。 

 

吉祥寺通りから東急の手前を左に、昭和通りに入り、二本目の西三条通りの角にある靴屋ドクター・マーチンを右に入ってすぐに「するり」はある。

 

 

席と席の間隔などまあ、吉祥寺では普通だろうか。カウンターも半個室もあり店内は意外と広い。


 

私は「明太クリームうどん」¥1280

 

明太子もそれほど辛くないし、うどんのスープはクリーミーで海老などたっぷり。

 

相方は「てんぷらうどん」¥1480

 

海老はサクサク、うどんは細めで食べやすかったとのこと。

 

「いいじゃない」。 こどもメニューもあるそうで、また来ることにしよう。

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ハン・ガン『回復する人間』を読む

2019年12月16日 | 読書2

ハン・ガン著『回復する人間<エクス・リブリス>』(2019年5月20日白水社発行)を読んだ。

 

白水社の宣伝文句は以下。 

李箱文学賞、マン・ブッカー国際賞受賞作家による珠玉の短篇集
痛みがあってこそ回復がある

大切な人の死や自らの病、家族との不和など、痛みを抱え絶望の淵でうずくまる人間が一筋の光を見出し、ふたたび静かに歩みだす姿を描く。

『菜食主義者』でアジア人初のマン・ブッカー国際賞を受賞し、『すべての、白いものたちの』も同賞の最終候補になった韓国の作家ハン・ガン。本書は、作家が32歳から42歳という脂の乗った時期に発表された7篇を収録した、日本では初の短篇集。

大切な人の死や自らの病気、家族との不和など、痛みを抱え絶望の淵でうずくまる人間が一筋の光を見出し、再び静かに歩み出す姿を描く。現代韓国屈指の作家による、魂を震わす7つの物語。

 

 

「明るくなる前に」

かつて職場の先輩だったウニ姉さんは6年前の弟の死をきっかけに世界各地を旅する放浪の人になった。久しぶりに再会した彼女に、私は抗がん剤治療を受けていると語り、そんなことよりインドの話をしてよと迫る。彼女は、インドでは死体が外で燃やされていたと語る。

人を燃やすときいちばん最後まで燃えるのが何かわかる? 心臓だよ。夜に火をつけた体は一晩じゅう燃えてるんだ。明け方行ってみたら、心臓だけが残ってて、じりじり、燃えてたの。

……

そのとき初めて、ウニ姉さんみたいな女性を書きたい、と思ったのだろう。

そしてデング熱で……。

 

「回復する人間」

あなたは、直径1センチ少々の二つの穴を見つめている。

足を挫き韓方医院でお灸を据えたら酷い火傷になった。火傷跡が細菌感染を起こし、病院でレーザー治療をする。そもそもの発端は姉の葬儀で足をくじいたことだった。疎遠だった姉は1週間前に死んだ。あなたは問う。どこで何を間違えたんだろう。2人のうちどちらが冷たい人間だったのか。

助かりましたね。

あなたの左の足首の穴の中の、灰白色の組織のまん中に、シャープペンシルの芯で突いたほどの赤っぽい点が一つできたのをみて、医者がそう言うのをあなたは知らない。

訳者あとがきにこうある。

著者も足首に火傷をしてことがあるそうで、何か月もその部位に感覚がなかったが、初めてそこが痛んだときに医者に「これで治ったのですよ」と言われ、「ああ、回復ってこういうことなんだ」と実感したという。痛みがあってこそ回復がある。これこそが、本書を貫く大きなテーマである。

 

「エウロパ」

イナは悪夢を見ると言った。その悪夢の中に僕は入ったことがない。彼女と一緒に暮らしていないから、悪夢を見ている様子を見たこともない。

僕はどこまでもイナの友だちで友達以上の何かであったことはない。性的志向を隠す僕はイナにとって姉妹。

ミュージシャンのイナは歌う。

エウロパ、

凍りついたエウロパ

あなたは木星の月

私の命の果てまで生きても

あなたには触れない。冷たいエウロパ

僕は女装してイナと共にソウルの繁華街を散歩する。

 

「フンザ」

辺境を旅してきた青年が一番印象深かった土地はフンザだと言った。千年前に滅亡したフンザ国の遺跡でパキスタンの東北の山間部にある。まったく協力しない夫のもと、2歳の子供の育児と仕事で孤独で絶望的な31歳の女性は、なぜか見知らぬフンザを想う。

 

「青い石」

私は昔遠い世界へ去ったあなたに語りかける。あなたは血が止まらなくなる病気で日常生活に困難を抱えていた。

 

「左手」

ソンジンの左手はある日突然勝手に動き出す。仕事のミスをしつこく説教する上司の口を左手がふさぎ、大騒動になる。学生のとき好きだったソネを見かけ、彼女の店に行く。帰ろうとしたとき、左手は彼女の頬に触れ、そして……。翌日職場へ出てもコントロールできない左手のおかげで、早退させられる。最後には左手が彼に反抗し……。

 

「火とかげ」

交通事故で左手が使えなくなった女性画家ヒョニョン。自分には絵しかないと使い過ぎた右手も悪くなって、筆を持つことも、ほとんどの家事もできなくなってしまった。基本的に繊細で優しい性格の夫も、仕事と家事ですり減ってしまった。友人のソジンからの電話で、彼女が映っている写真が店に飾ってあると伝えて来た。店を探し、少しずつ思い出す中で、撮影した男性のことを思い出すが、……。

 

 

私の評価としては、★★★★★(五つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

あくまで雰囲気だけだが、村上春樹の小説、とくに『ノルウェイの森』と似ている。喪失感、失われた思い出での語り口。しかし、描写ははるかに繊細で、今にも壊れそうな危うさが漂い、文才が際立つ。大長編はどうかわからないが、少なくとも短中編では村上春樹より面白いし、何か伝えたいことも感じられる。

 

今少しハン・ガンに付き合ってみようと思う。

 

ハン・ガン(韓江)の略歴と既読本リスト

 

 


斎藤真理子
1960年、新潟市生まれ。明治大学文学部史学地理学科考古学専攻卒業。

1980年より韓国語を学び、1991~92年、韓国の延世大学語学堂へ留学。

2015年、パク・ミンギュ『カステラ』(ヒョン・ジェフンとの共訳、2014年、クレイン)で第1回日本翻訳大賞受賞

 

 

以下、ネタバレで白字(訳者の斎藤真理子さんによる(Web河出))

著者の教えに基づいて解釈するなら、1章は現実であるが、2章は、「私」から彼女へと生の譲渡が成就した段階なので、現世であって現世でない。そこでは姉が「私」を生きている、または「私」が姉によって再び生きられている、ともいえる。そして3章では再び叙述の主体が「私」の目に戻る。姉と自分の生が両立することは不可能であると悟った「私」は、ソウルへ戻って、姉に惜別の挨拶を送る儀式を行う。母に贈る衣裳を焼くことが儀式である。そして「私」は、彼女が吐き出した息を思いきり胸に吸い込みながら、再びこの生を生きていくことを誓う。

訳者は、これらは作者の意図であっても、読者を限定する可能性があることから、訳者あとがきには書かなかったという。私も、確かにその通りだと思った。

 

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黒川伊保子『夫のトリセツ』を読む

2019年12月14日 | 読書2

 

黒川伊保子著『夫のトリセツ』(講談社+α新書 800-2 A、2019年10月17日講談社発行)を読んだ。

 

 

「第1章 神は、夫婦を別れさせようとしている」

世の男性たちは、母性とは、ひたすら優しく穏やかなものだと思い込んでいる。なんなら、自分も子どものように甘えられると思っている。とんでもない。母性とは、子どもを育て抜くための生き残り戦略だ。当然、大人の男に対しては、苛立ち、厳しくなる。妻たちは、命がけで「母」を生きている。母性を美化されても、迷惑なだけだ。

 

「第2章 使えない夫を「気の利く夫」に変え方法」

なにせ、この国の男たちは、こちらがあげた呼び水にさえ、うまく応えられない。…

実はこの対話術、本当は母親が教えないといけないのだ。

 

「せめてこの日(記念日)だけは」とか「せめてこんなとき(具合が悪いとき)だけは」、言わなくてもやってくれることを夫の愛の踏み絵にしてしまうと、確実に絶望する。…行きたいレストランの電話番号を夫に渡して、…具体的に頼もう。

 

男性は、結論のわからない話に耐性が低い。疲弊してしまうのである。…以後、妻の話がモスキート音として聞こえてしまうわけ。……男性と話すときは、結論(結論を出すための会話なら目的)から言おう。

 

「第3章 ひどい夫を「優しい夫」に変え方法」

身体拡張感覚の強い男性脳は、妻をも、そのように感じてしまうのである。自分の身体の一部のように。だから、褒めないし、お礼をいわないのだ。自分の腕に「よくできたね」と言わないように、自分の心臓に「毎日、ありがとう」と言わないように。

その代わり、妻に先立たれると、身体の一部を失ったショックで、弱ってしまう。

 

「第4章 脳とは、かくも厄介なものである」

謝るときも、気持ちに謝る。…「心細い思いをさせてごめん」と謝る。……女性が謝ってほしいのは、遅くなったという事実に対してじゃなく、待たされて連絡がとれなくて心細い時間を過ごした自分の気持ちに対してなのだから。

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

前作『女の機嫌の直し方』、『妻のトリセツ』は、残念ながらかなり説得力があったのだが、やはりかなり女性側の一方的言い分だった。この本では、男の脳はその昔狩りをするため空間認知能力が高いがそのために……なので、やむを得ないのだと、女性に諦めることを勧めている。

 

女性はこう、男性はこうと、決めつける箇所が多いが、話を分かりやすく、面白くするために、新書レベルではしかたないだろう。夫婦の会話など引用例は秀悦で、確かにと笑える。

 

でき過ぎる息子、ひねたところなしの夫、姑になつくおよめちゃん、などそこらじゅうが家族自慢で鼻につく。

 

 

黒川伊保子(くろかわ・いほこ) 
1959年長野県生まれ。人工知能研究者、脳科学コメンテーター、感性アナリスト、随筆家。

奈良女子大学理学部物理学科卒業。富士通ソーシアルサイエンスラボラトリにて、人工知能(AI)の研究開発に従事。

2003年(株)感性リサーチを設立、同社代表取締役に就任。感性分析の第一人者。

著書『怪獣の名はなぜガギグゲゴなのか』  、『恋愛脳』、『夫婦脳』、『家族脳』、『日本語はなぜ美しいのか』、『「ぐずぐず脳」をきっぱり治す! 』、『キレる女 懲りない男――男と女の脳科学』、『英雄の書』、『女の機嫌の直し方』、『妻のトリセツ』、『夫のトリセツ』など。

 

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松庵文庫でランチ

2019年12月12日 | 食べ物

 

松庵文庫」というのは、築80年という古民家での、「文庫」という名のギャラリー&ブックカフェだ。

Caféであり、本屋さんで、少々の品を並べるGalleryでもある。 

場所は、五日市街道と中央線の間で、西荻窪駅の南西、歩いて10分足らずある住宅街の中にある。

 以前行ったときは撮影が行われていて入れなかった。撮影限定のレンタルスペースとしても利用されているらしい。

 



 

  

展示(席で読むことができる)、販売している本は、荻窪の書店「Title」がセレクトしたものだ。

 

お召し上がりになったのは、私めが、「お米農家やまざきの新米御膳で、自家製鮭のフレークを牛肉のしぐれ煮」。

 

見るからに手が込んだ料理で、健康志向、自然派で、多種が少しずつと、女性好み。勿論美味。

 

相方は、「古来種お野菜のドリア」、八重津の鰹だしをベースにしたドリアの根菜と果物のサラダ付きをお召し上がり。

 

写真ではわからないが、ドリアの中には鶏肉、キノコ、里芋など多くの品が隠れていた。ごく少量のドリアと、水菜の葉少々と茎の大部分が私めに下されただけで、美味しくほぼ完食されて、ご満足とのお言葉を賜った。

 

箸の端が異常に細く、小さなものも掴みやすい。この箸、ショップで売っていたが、ときどき箸を噛む癖があるので遠慮した。

 

 

 

砂糖はキビ砂糖で、手前のコーヒーカップは色も形もなかなかのものだったが、真上からの写真ではわからない。紅茶のカップは飲み口が厚くて飲みにくかったという。

 

ランチドリンク(コーヒーと紅茶)を付け、二人で三千円ちょっとなら「いいじゃない!」。

 

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2019年11月の花

2019年12月10日 | リタイヤ生活

 

11月9日に届いた花

 

 6日後

 

 

11月23日に届いた花

 

 

 

斜め上から

 

 

6日後にはほぼ満開

 

 

約2週間後まで生き残ったのは以下。

 

 

茎が短くなり過ぎたスプレーカーネーションは一輪挿しへ.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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志水辰夫『いまひとたびの』を読む

2019年12月08日 | 読書2

 志水辰夫著『いまひとたびの』(新潮文庫し-35-2、2009年8月1日新潮社発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

ドライブに連れてって。赤いオープンカーで――交通事故で夫を亡くして以来、車椅子の生活を送ってきた叔母の願いは意外なものだった。やがて男は叔母の秘められた思いと、ある覚悟に気づくが……(「いまひとたびの」)。大切な人と共有した「特別な一日」の風景と時間。それは死を意識したとき、更に輝きを増す。人生の光芒を切ないほど鮮やかに描きあげて絶賛された傑作短編集。

 

各々が30頁ほどの短編9編よりなる短編小説集。

 

すべての短編がなんらかの死を底辺にし、切ない過去を諦観しつつ静かに胸を痛める。短編小説の名手による風景描写の中によみがえる人生。
目の前に迫る自分の死、年老いた親の死、しばらく音信がなかった旧友の死。老境と言える年になり、死が見えて来たとき、自分の過去がよみがえる。それは、日常のなんということない出来事であったり、忘れていた切ない記憶であったり、久しく帰っていなかった故郷であったりする。

 

 

私の評価としては、★★★★★(五つ星:読むべき)(最大は五つ星)

 

志水辰夫の小説は、冒険小説でなく、時代小説でなく、ハードボイルドでもなく、現代物の短編が好きだ。

志水の抑制のきいた文章で紡ぎだす背景描写のなかでの、切ない思い、人生のやるせなさが身に染み、漂う諦観が心のさざ波を鎮めようとする。

なかでも私が胸を打たれたのは、気に入った順番で、「夏の終わりに」、「いまひとたびの」、「赤いバス」、「嘘」……。

 

志水辰夫の略歴と既読本リスト

  

 

「赤いバス」
ようやく長男に酒の卸問屋を譲って、ひとり山荘で暮らす男が、知的障害のある少年ミツオに出会う。少年はめったに止まらないバス停によく座っている。赤いバスで姉が帰省するのだという。ある夕方、赤いバスから少年の姉が降りてきて、二人は墓地の手前の桑畑の夕闇の中に消えていった。
男は(以下ネタバレ気味なので白字)

機嫌を直し、自信にあふれ、いっそう楽天的になっていた。……
こうなったら絶対、あと一年は生きのびてやろうとおもっている。来年のお盆にまた、ミツオと一緒にあの娘をバス停で迎えてやるのだ。そしてつぎの年からは、わたしもあのバスに乗って帰って来る。

 

「七年のち」

児玉と共に会社のために奮闘していた井川が亡くなって七年。会社の同期生の児玉、部長になった井上と、子会社に出た温厚な池谷が集まった。中学生だった美代子は、母の美砂子に似て美人で来月から社会人になるという。美代子には毎月匿名で奨学金を送ってくる足長おじさんがいて、そのコラージュが部屋に飾られていた。美代子は思い出した。通夜の夜、ベランダで泣いていると、タバコを吸いに来たおじさんが、たった一ヶ月しか生きられなかった娘がいたと語った。

 

「夏の終わりに」
男は、母が亡くなって空き家になった田舎にリタイヤーして暮らそうとしている。大柄で華やか、自信にあふれたキャリアウーマンである妻が短い休暇を過ごしにやってくる。妻はいう「ほっとするところだとは認めるけど」「東京以外のところはすべて行きずりの土地でしかないのよ。根の下ろし方がわからないの」。

彼が「両方が単身赴任だと思えばよい」と言うと、妻は「わたしも辞めるわ」と言った。
男は、妻が自分の病に気付いたと分かり、駅で「ここに帰って来るのはよすことにしたよ」「できるだけ一緒に暮らしたい。…これからはもっときみにつきまとっていたい」と言う。
「私はあなたに好きなことさせてあげたいのよ」
「だから一緒にいたいんだ」

 

「トンネルの向こうで」

郷里の兄から母が再入院したとの電話があった。しかし、智之は北海道出張の予定があり、本部長としていろいろなところに行かねばならなかった。札幌時代に通った店を求めて道に迷った。

 

「忘れ水の記」
彼は、侑子が女将をしていた旅館「羽生田館」に泊まる。彼女は交通事故で死んでいて、今は娘の由紀子が女将だった。出された料理はほとんど食べられなかった。

侑子は女将の座を継がなければならかった。彼は東京に大学へ進み、以後、本当に必要だったものまで捨ててしまったのではないかと思い続けた。……てるてる坊主の記憶……

 

「海の沈黙」 略

 

「ゆうあかり」
彼と妻・美津子と寧子(やすこ)は学生時代の仲間だった。寧子から妻に、クラス会に出席できなくなったとの手紙が届く。同じ仲間だった磯部が会社にやって来た。磯部はかって寧子へ告白したが、彼女は好きな人がいますと答えた。そして今、彼女は瀕死の状態だという。帰りの電車の向かいのホームに一瞬寧子の姿を見た。帰宅すると寧子が危篤との妻のメモがあった。

 

「嘘」

妻・国子は入院している兄嫁・弥生の介護を、ほとんど顔を見せなくなった弥生の姪の片山美奈子に代わっていたが、耐えがたい意地悪をされていた。弥生の息子の剛と彼の息子・憲一が自動車事故で亡くなったのだが、弥生は運転していたのは憲一に決まっていると言い募った。彼がただひとり弥生を看取ったが、国子に弥生は最後に謝りながら死んでいったと告げる。

 

「いまひとたびの」
叔母・松方柚子は運転する車が事故を起こし、夫をなくし、自分は車いすの生活になった。30年間叔母の前で車の話はしなかったのに、3か月前訪れた時、ドライブに連れて行けといわれた、ニューヨーク転勤が決まり、その前に伯母をドライブに連れ出した。ユーノス・ロードスターという真赤なスポーツカーで箱根に向かった。しかし、レストランに入っても叔母はまったく料理に手をつけなかった。最後に、叔母の頼みで、事故の現場を見た。「帰りましょう」叔母はあっさり言った。「気がすんだわ」

自宅の窓から眺める叔母は手を振り、笑っていた。窓の前を通り過ぎてからUターンして、その前をアクセル一杯踏んだユーノスは凱旋し、彼は「いえーい!」と声を張り上げた。

 

 

都邑(とゆう):まちとむら。都会

花卉(かき):花の咲く草

嫂(あによめ)

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志水辰夫略歴と既読本リスト

2019年12月06日 | 読書2

 

志水辰夫(しみず・たつお)
1936年高知県生まれ。雑誌ライターなどを経て、

1981年、『飢えて狼』でデビュー。

1985年、『背いて故郷』で日本推理作家協会賞

1990年、『行きずりの街』で日本冒険小説協会大賞

1994年、『いまひとたびの』で日本冒険小説協会短編部門大賞と「本の雑誌」年間ベスト一位

2001年、『きのうの空』で柴田錬三郎賞受賞

その他、『情事』『暗夜』『約束の地』

短編集『きのうの空』『生きいそぎ』『負け犬』『男坂』『うしろ姿』

2007年、『青に候』で、70歳を過ぎてから時代劇デビュー。以降『蓬莱や帳外控』、『疾れ、新蔵』、『新蔵唐行き』

 

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志水辰夫『新蔵唐行き』を読む

2019年12月04日 | 読書2

 

志水辰夫著『新蔵唐行(とうゆ)き』(2019年10月20日双葉社発行)を読んだ。

 

「好書好日」のエクストラ

越後の廻船問屋の手代、新蔵は、蝦夷から北前船で戻る途中に行方を絶った若主人を探すため、全国を旅していました。長崎の福江島で唐船に救われた日本人の噂を耳にし、唐人の父を訪ねる少女とともに清国へ渡る決心をします。

 折しも、阿片(アヘン)戦争が始まろうとしていた矢先。波乱の時代に、新蔵は言葉もわからないまま港町を渡り歩き、若主人につながる情報を探ろうとします。港ではイギリス船やベルギー船までが押し寄せ、唐人同士の騙し合いも加わり、阿片を巡る陰謀が渦巻きます。

 しかし、どんなときでも怯まない新蔵は、度胸と采配によって艱難(かんなん)辛苦を乗り越え…。果たして若主人とは出会えるのでしょうか。時代劇の名手が綴る、大海を股にかけた長編小説です。

 

新蔵:名家・小此木(おこのぎ)家が経営する廻船問屋三国屋の手代。鉄芯入りの木刀での素振りを怠らない。

藤吉:泳ぎが得意。抜け目なくしぶとく生き抜く。

小此木孝義:三国屋の嫡子。指揮をとる第八龍神丸で蝦夷から兵庫へ向かう途中で消息不明。

小此木佐江:兄・孝義にかわり小此木家を経営。父・唯義は隠居。

ななえ:福江島玉之浦の漁師・六兵衛に育てられる。唐の大富豪・周士斐の娘。

鄭:新蔵がななえ”と共に唐へ向かった萬慶(ばんけい)号の船長。

沈:鄭が用意した川船(サンパン)・東風の所有者。

張:通事(通訳)

黄(封巾)(ふあんぱん):寧波を抑える荷を運ぶ結社。

紫(封巾)(しはん):福州を抑える結社。悪辣で「いま倭寇」と呼ばれる。

以下略

 

本作品は書き下ろし。

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

波乱万丈の活劇小説で面白く読める。私よりはるかに(?)高齢の著者のエネルギーには感嘆だが、いかにも古めかしいスタイルだ。

 

おまけに、登場人物の大部分は中国人で、名前が覚えにくい。中国の小さな町、港の詳細な描写があるが、著者は現地を訪れたのだろうか? いずれにしても驚異だ。

 

この本を読んだ理由は、新刊本リストを眺めていて、志水辰夫の名前から、若桜木虔の『 ミステリー小説を書くコツと裏ワザ』に以下のようにあった(ブログに書いた)ことを思い出し、一度は読んでみようと思ったのだ。

「地の文(風景描写)が上手い志水辰夫氏の作品を勉強すること。」

しかし、読んでいるうちに、筋を追うことに専念していて地の文などは速読してしまっていた。今、パラパラ読むと、子供が遊んでいる中国の田舎町の描写などよく書けているが、活劇小説では目立たない。

 

 

 

 

志水辰夫の略歴と既読本リスト

 

 

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志水辰夫『行きずりの街』を読む

2019年12月02日 | 読書2

 

志水辰夫著『行きずりの街』(新潮文庫し35-1、1994年1月25日新潮社発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

女生徒との恋愛がスキャンダルとなり、都内の名門校を追放された元教師。退職後、郷里で塾講師をしていた彼は、失踪した教え子を捜しに、再び東京へ足を踏み入れた。そこで彼は失踪に自分を追放した学園が関係しているという、意外な事実を知った。十数年前の悪夢が蘇る。過去を清算すべき時が来たことを悟った男は、孤独な闘いに挑んでいった……。日本冒険小説協会大賞受賞作。

 

波多野和郎:東京の敬愛女学園を辞めさせられ、故郷・丹波の光明学院へ。現在、故郷・丹波で塾を経営。40歳。

手塚雅子:敬愛女学院在学中に波多野と交際し、卒業後結婚。離婚後、母・映子の六本木のバー「彩」を経営。

広瀬ゆかり:高校時代に波多野の家へ出入り。東京へ出て行方不明。

 

神山節雄:現敬愛女学園学長。教育評論家。

金子美篤(よしあつ)敬愛女学園理事長兼学長だったが、波多野の事件で自殺。

金子夏江:学園創設者の孫で美篤の妻。美篤死後、理事長代行として学園を支配。事故死。学長は息子・英明。

角田良之:夏江のもとで学園の経理部長。広瀬ゆかりの世話する。

木村美紀:学長室付き。事情通。30歳過ぎ。

 

池辺忠賢(ただまさ)敬愛女学園から波多野を排斥、文教議員と結びついて父母会会長に。現常務理事。ダブルの背広を着た六十年配。東亜メインテナンス株式会社を経営。

大森幸生:池辺のお抱え運転手(用心棒)。放埓な体躯、むっくり盛り上がった鼻。

中込安弘:池辺の会社の営業企画部長。

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

面白く読める。登場人物は良く描かれているし、背景や、雰囲気の描写もうまい。しかし、いかにも昔の小説。誰もが心に傷を抱えていて、やたら暗く、おやじくさい。

ミステリーの要素は少なく、ハードボイルドと言える。しかし、主人公は弱く、ただ蛮勇で、叩かれても死なずしぶといだけ。

 

 

志水辰夫の略歴と既読本リスト

 

 

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