呉勝浩著『おれたちの歌をうたえ』(2021年2月10日文藝春秋発行)を読んだ。
文藝春秋BOOKSの内容紹介
「あんた、ゴミサトシって知ってるか?」
元刑事の河辺のもとに、ある日かかってきた電話。その瞬間、封印していた記憶があふれ出す。真っ白な雪と、死体――。あの日、本当は何があったのか?
友が遺した暗号に導かれ、40年前の事件を洗いはじめた河辺とチンピラの茂田はやがて、隠されてきた真実へとたどり着く。
『スワン』で日本推理作家協会賞、吉川英治文学新人賞を受賞。圧倒的実力を誇る著者が、迸る想いで書き上げた大人のための大河ミステリー。
第165回直木賞候補作。書下ろし。長野を舞台に昭和、平成、令和にまたがる600頁の大河ミステリー。
元刑事で今はデリヘルの運転手をしている河辺のもとに、幼馴染の佐登志が死んだと連絡が入る。知らせてきたのは佐登志の世話をしていたというチンピラの茂田は、佐登志が遺した暗号のような詩を金塊の隠し場所だと信じ、それを解くヒントを河辺が持っていると考えていた。期せずして、二人はこの暗号を解くために動き出す。
河辺は、佐登志の遺体に他殺の痕跡を発見し、暗号に挑むが、それは二人が高校生だった43年前の、故郷・上田市の菅平高原を持つ真田町での未解決事件に関連するものだった。
高校生の頃、フーカの指示で栄光の5人組が、春子を襲った工業高校の男たちに復讐する。河辺が襲った飯沢は心理的ダメッジで入院した。訴訟となりそうな問題を解決してくれたのが岩村清隆・セイさんだった。
また、5人組は学生運動で指名手配されていた近藤征人ら二人組を発見して、逮捕に結びつけた。
呉勝浩(ご・かつひろ)
1981年青森県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。
2015年『道徳の時間』で第61回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。
2018年『白い衝動』で第20回大藪春彦賞受賞。
2020年『スワン』で第41回吉川英治文学新人賞、第73回日本推理作家協会賞を受賞、および第162回直木三十五賞候補。
他の著書に『ライオン・ブルー』、『マトリョーシカ・ブラッド』『雛口依子の最低な落下とやけくそキャノンボール』など。
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)
完全には解決していない昔々の田舎での悲惨な事件が背景として絡み合い、その後バラバラになった5人組がそれぞれの事情、思惑で争い、協力し、真実を求め、あるいは隠し続けようとする。その過程で、厳しい事情の中で、かっての仲間の変節を疑い、疑心暗鬼になってしまう。
複雑な過去、現在の事情の中での謎の追及は興味深々で、どんどん読み進められる。
少年時代からの5人組の友情、別れ、だまし合いを描く、600頁の大作。「こいつは悪くなってしまったのか、それとも?」と疑問を膨らませながら延々と最後まで読み終えてしまった。
厳しい状況をなんとか克服して、結局、5人組は良き人生を送ることができたのか? 読み終えてもまだ、答えは彼方に。
栄光の五人組
河辺久則:ヒ―坊。今は海老沼の下でデリヘルの運転手。妻は泰枝。
五味佐登志:サトシ。親が運送業。
外山高翔(そとやま・こうしょう):コーショー。音楽好き。
石塚欣太(きんた):キンタ。成績抜群のおぼっちゃま。。長野市の進学校へ
竹内風花(ふうか):フーカ。5人組のリーダー格。
竹内三起彦:キョージュ。中学の国語教師。千百合、風花の父。
竹内千百合(ちゆり):フーカの7つ上の姉。美人。上田市の会社で事務員をしている。
岩村清隆:セイさん。ヤクザ。崔一家の面倒を見ていて、崔一家は岩村姓を名乗っている。河辺のあこがれの人。
岩村(崔・チェ)英基:日本へ出稼ぎ。運転手。妻は里子。
岩村文男(ムンナム):河辺の年長の友だち。
岩村春子:岩村家の末っ子で皆に可愛がられる。
飯沢伸夫:5人組の仕返しで河辺に追い詰められ、心理的打撃で入院。
近藤征人(まさと):医大を中退し学生運動で指名手配。
茂田:佐登志の世話を任されていたチンピラ
坂東:ネット通販で稼ぐシャインビューの元締め。組にも顔が効く。
チャボ:坂東の手下
キリイ:坂東の手下
海老沼:かって河辺の後輩で、SPRエンタープライズ代表。
阿南:警視庁捜査一課強行犯係・係長。河辺を辞職に追い込もうと必死。
佐々木:警視庁捜査一課強行犯係。かって理解ある河辺の上司だった。
赤星:企業に食らいつく紅閃(こうせん)グループ代表