青山美智子著『赤と青のエスキース』(2021年11月23日PHP研究所)を読んだ。
PHP研究所の解説
2021年本屋大賞2位『お探し物は図書室まで』の著者、新境地にして勝負作!
メルボルンの若手画家が描いた1枚の「絵画(エスキース)」。
日本へ渡って30数年、その絵画は「ふたり」の間に奇跡を紡いでいく――。
2度読み必至! 仕掛けに満ちた傑作連作短篇。
●プロローグ
●一章 金魚とカワセミ メルボルンに留学中の女子大生・レイは、現地に住む日系人・ブーと恋に落ちる。彼らは「期間限定の恋人」として付き合い始めるが……。
●二章 東京タワーとアーツ・センター 30歳の額職人・空知は、淡々と仕事をこなす毎日に迷いを感じていた。そんなとき、「エスキース」というタイトルの絵画に出会い……。
●三章 トマトジュースとバタフライピー 漫画家タカシマの、かつてのアシスタント・砂川が、「ウルトラ・マンガ大賞」を受賞した。雑誌の対談企画のため、二人は久しぶりに顔を合わせるが……。
●四章 赤鬼と青鬼 パニック障害が発症し休暇をとることになった51歳の茜。そんなとき、元恋人の蒼から連絡がきて……。
●エピローグ 水彩画の大家であるジャック・ジャクソンの元に、20代の頃に描き、手放したある絵画が戻ってきて……。
「エスキース」とは、絵画制作において、着想や構想、構図を描きとめた下絵や素案。
登場人物
一章
レイ:21歳。「エスキース」のモデル。メルボルンでの1年間の交換留学生。委縮しがち。
ブー:“I’m ブー”と名乗り、「ブー」と呼ばれる。レイと期間限定で付合う。21歳。お調子者で屈託なく笑うが…。両親は日本人だが、生まれも育ちもメルボルン。
ジャック・ジャクソン:20歳。ブーの友人。アルバイトしながら独学で水彩画を描く。小柄。
ユリ:29歳の女性。ワーキングホリデーでレイと共に免税店で働く。
二章
村崎:額縁工房の職人・経営者。42歳。
空知(そらち):額縁工房大出の職人。30歳。ツアーで行ったメルボルンでジャックに出会う。円城寺画廊持ち込みの「エスキース」の額縁の制作をかってでる。
円城寺:画廊経営。立花さんは社員でパートナー。
三章
タカシマ剣:48歳の一応知られた漫画家
砂川凌:26歳。モデル並み。タカシマのかつてのアシスタント。「ウルトラ・マンガ大賞」を受賞。
乃木:対談を企画した男性向け情報誌DAP編集部員。
レトロな喫茶店「カドル」店主:豊かな顎鬚。ウエイトレスは愛想が悪い。対談者の間には「エスキース」が。
四章
茜(?):1年前に蒼(?)との生活から飛び出して独り住まい。50歳で海外の食器、インテリアを輸入販売するオーナーと二人だけの会社に転職。やりがいを感じ始めたとき、パスポートを引き取りに元恋人・蒼の所へ行く途中でパニック障害が発症し休暇をとることになった。少し落ち着いたころ蒼から猫を預かることになり…。
五章
謎解き
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)
章が変わり、時代が進むと、同一人物が異なる表記で登場するのは、ルール違反ではないのか? まあ面白かったので、ルールはどうでも良いのだけれども。
カモフラージュするためもあるのだろうが、二人があまりにも二転三転するので、混乱する。まあ、誰でもが、自分に自信がなくて、確固とした決断・実行ができないことはあるので、許そう。
青山美智子の略歴と既読本リスト(明日UPします)
青山美智子さんは、中京大学を卒業後、オーストラリア渡り、シドニーの日経新聞社で記者をしていた。
以下、ネタバレなので白字とする。(マウスで選択すると読めます)
日本人には、ネイティブの発音するRedはレイと聞こえ、BlueはBoo(ブウ)と聞こえる。
つまり、レイ=Red=茜と、ブウ=Blue=蒼は、赤と青(のエスキュース)だというわけ。
なお、「カドル」はフランス語で額縁。