小島寛之著『世界は素数でできている』(角川新書K-151、2017年8月10日KADOKAWA発行)を読んだ。
以下、KADOKAWAの解説。
素数のすべてを総合的に解説する。めくるめく素数の世界を探索できる一冊。
本書では、素数についての話を繰り広げる。素数とは、1と自分自身以外では割り切れない2以上の整数のこと。こんなに簡単な素数が、古代から人々を魅惑しているのだ。
2、3、5、7、11……と神出鬼没に表れる素数。不規則に表れるように見えて、妙な規則性があったりする。素数を表す数式はいまだ見つかっていない。バラバラに見える素数だが、実は秘めた威力を持ち、私たちの身近にもあったりする。たとえば、パスワードを安全にするRSA暗号は素数を用いている。
第1部は、「素数入門編」。素数とは何か、どうして注目されるのか、数学者たちは何を見つけてきたのか、そんなことを解説していく。
第2部では、より深い素数の森を散策する。理系の読者には、「なるほど、そういうわけなのか!」とうなってもらえるはずだ。そして、文系の読者には、「へえ! 素数ってそんなに芳醇な世界観を持っているのか」と驚いてもらえるだろう。
本書は、素数のすべてを総合的に解説し、めくるめく素数の世界を探索できる一冊といえるのだ。
目次
はじめに
■第1部 素数のふしぎ
第1章 世の中は素数でいっぱい
第2章 素数にハマった数学者たち
第3章 素数についてわかったこと・未解決なこと
第4章 素数の確率と自然対数
■第2部 素数が作る世界
第5章 RSA暗号はなぜ破られないのか
第6章 虚数と素数
第7章 難攻不落! リーマン予想
第8章 素数の未来
おわりに
参考文献
私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
各種ある素数に関する解説本の中では極めて分かりやすい本だ。その意味では「★★★★(四つ星:お勧め)」なのだが、素数、数論に興味を持つ人は少ないので「★★★」とした。
言葉だけでなく数式の引用があり理解が進む。しかも大抵の場合は、数値例が書いてあるので私でも理解できる。
ただし、この種の本を読むときの恒例どおり、読み進めると徐々に少し少しづつ理解が甘くなり、最後の方はただ読んでいるだけになる。
でも、確かに、素数は面白い。
小島寛之(こじま・ひろゆき)
1958年東京生まれ。東京大学理学部数学科卒、東大大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。経済学博士。
現在、帝京大学経済学部教授、数学エッセイスト。
主な著書は、『完全独習 統計学入門』『世界を読みとく数学入門』『無限を読みとく数学入門』『確率的発想法 数学を日常に活かす』など。
温泉などに行くと下駄箱やロッカーは必ず素数の番号を選び、2017年が「西暦と和暦が両方とも素数になる」珍しい年であることを喜ぶ、「素数マニア」の一人。
(関係ないけど、私は子供の頃、風呂屋の下足札は必ず16(川上哲司の背番号)だった)
メモ
・素数は無限個ある。ピタゴラスが証明
・2以上の自然数は、素因数分解が必ず可能で、しかも唯一である。
〇ユークリッドの互除法
126÷98=商1 余り28
98÷28=商3 余り14
28÷14=商2 余り0
最大の除数14が最大公約数。
〇フェルマーの小定理
「pを素数、aをpの倍数でない自然数とする。このとき、ap−1をpで割った余りは必ず1となる。言い換えるなら、ap−1-1はpの倍数となる」
「フェルマーの小定理」は、素数でない判定には使えるが、素数である判定には使えない。
〇ガウスの素数定理
x以下の素数の個数は、x÷logx で近似できる。
〇完全数
自分自身を除く約数の和が、自分自身に一致する整数。メルセンヌ素数と密接な関係がある。
例、6、28、496、8128
〇双子素数
差が2である素数のペア。無限個あると予想されているが、未証明。
〇18世紀のフランスの女性数学者 ソフィ・ジェルマン
エコール・ポリテクニクには女性は入学できなかったので、学生を知り合いになって講義ノートを入手して独習した。ラグランジュの宿題に男性の偽名を使って解答して感心したラグランジュは彼女に自宅を訪ね、その後個人的に指導した。