hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

南杏子『いのちの波止場』を読む

2025年01月31日 | 読書2

 

南杏子著『いのちの波止場』(2024年11月20日幻冬舎発行)を読んだ。

 

幻冬舎による作品紹介

吉永小百合さん主演映画『いのちの停車場』シリーズ最終話。主人公は映画で広瀬すずさんが演じた看護師・麻世。

これで安心して死ねるよ。
ありがとう、ありがとう。

余命わずかな人たちの役に立ちたい――“熱血看護師”麻世が「緩和ケア科」で学び、最後に受け取ったものは。
震災前の能登半島の美しい風景と共に、様々な旅立ちを綴る感動長編。

患者さんの苦痛を取り、嫌だと思うだろうことをしない。
それが最後にできる最高の仕事。

まほろば診療所の看護師・麻世は、能登半島の穴水にある病院の看護実習で「ターミナルケア」について学ぶ。激しい痛みがあるのに、どうしてもモルヒネを使いたくないという老婦人。認知症と癌を患い余命少ない父に無理やり胃ろうつけさせようする息子。そして麻世が研修の最後に涙と感謝と共に送るのは、恩師・仙川先生だった――。

 

シリーズの登場人物は共通だが、主人公は異なる。

いのちの停車場』は62歳の医師・白石咲和子。

いのちの十字路』は、新人医師・野呂聖二。

本書『いのちの波止場』は、若手看護師・麻世。

 

プロローグ

金沢のまほろば診療所の院長・仙川徹は突然、「70歳になるから、リタイアするね」と宣言。院長は白石咲和子、訪問診療は野呂聖二となる。そして、看護師・麻世は、能登半島・穴水町にある能登さとうみ病院・緩和ケア科の院長・北島の元で6カ月の看護実習を受けることになる。(これにはもう一つの隠された目的があった。)

 

第一章 キリシマツツジの赤

麻世の直接指導者は一回り上の45歳の妹尾理央子。仙川も病院顧問で週1日働いている。
この病院の、緩和病床は8床。死亡退院率は83%。入院期間は長くても30日くらい。

麻世の担当患者は久保田ルミ子。ルミ子は痛みが強くなっているのに、麻世が勧めてもどうしてもモルヒネをなぜか強固に拒否する。……

 

第二章 海女のお日様

中村照枝さんは83歳の現役を引退したばかりの海女さんだが、子宮体癌のステージⅣ。致死性の不整脈のためにICD(植え込み型除細動器)を胸に入れる手術を受けていた。ICDは小型のAEDで突然の不整脈に襲われたときに自動的に電気ショックを起こし正常な心拍に戻す機能がある。
問題は、死の淵にあるがん患者のICDを停止させないままでいると、体は静かに死に向かっているのに、ICDが作動して心臓と周辺筋肉はピクンとし、除細動が起きて苦痛をもたらす、これが繰り返される。

やがて、照枝さんにも死が訪れようとして、……。

ICDを止めるのは簡単だ、プログラミングをするか、体の上に磁石を当てるだけでよい。問題はいつ止めるかだ。

 

第三章 親父のつゆ

元そば店主で77歳の大山寛介さんが前立腺がんで入院した。63歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断されすでに14が経過し、重度認知症にもなっている。

 認知症も最終的には死に至る病だ。一般的には発症から10年から15年くらいで亡くなるケースが多い。最終的には「食べる」「飲み込む」といった生命を維持する機能までもが障害され、やがて目覚めた状態を保つのも難しくなる。

 

第四章 キリコの別れ

48歳の古屋茂さんが、進行が早くて治癒しにくい小細胞肺がんで入院してきた。両親の面会をあくまで拒絶している。
数基の高さ6mもある直方体の燈籠(キリコ)が神輿(みこし)を照らす「キリコ祭り」は、夏から秋にかけて能登半島の百か所以上あるどこかの地域で毎日行われる。茂さんは介護タクシーと車椅子で祭を見学した。

 

第五章 内浦の凪

新しい入院患者は、年齢70歳、男性、名前は仙川徹さん。……

 

エピローグ

2024年1月1日の起きた能登半島地震から8カ月目、麻世は野呂と共に穴水の町を訪れた。……

 

 

本書は書下ろし。原稿用紙488枚。

 

南杏子(みなみ・きょうこ)の略歴と既読本リスト

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

少しずつ衰えていき、死に進んでいくことに、本人、家族、場合によっては看護側も戸惑いながらも、徐々に受け入れていく過程が丁寧に描かれている。

 

患者側から見ると、医療について種々思うところがあるだろうが、臨床医が描く小説では、医者側からの、場合によりまったく異なる見方が示されるので、いろいろ思わされる。
本書は、主人公が医療側ではあるが、患者に近い所にいる看護師であるから、とくに患者側の意見が主張され、徐々に医師側の意見との整合が図られるという流れになっていて、我々の思考パターンに沿っているので分かりやすかった。

 

緩和ケアとは、心身ともに苦痛を最小限に抑えつつ、最後まで「生ききる』ことだと思うようになった。
しかし、苦痛(肉体的・精神的)を取り除き、患者ファーストで、嫌なことはせず、最後の希望を叶えることが望ましいのだが、現実にはこの小説ほどうまくいく場合は少ないのだろう。

 

事故などで急に亡くなるより、ガンの方が死ぬまで時間があるので、本人、家族にとって、もちろん辛いのだが、対処する多少の余地があるとも言える。

 

 

疼痛(とうつう)癌の浸潤などでおきるズキズキとうずくような強い痛み

病棟入院料:定額で一日、1割負担なら5千円、3割負担で15千円だが高額療養費制度を使うと70歳以上は1カ月で計5万円前後。

緩和ケアの名言:「治すことー時々、和らげることーしばしば、慰めることーいつも」“To cure somethings, to relieve often, to comfort always…”

ICD(植え込み型除細動器)の設置件数:年間6千件以上、累計2万人。AEDは全国で推計67万台以上。

花の終わり:昔から、サクラは「散る」、ウメは「こぼれる」、ツバキは「落ちる」、ボタンは「くずれる」、アジサイは「しがみつく」と言い表す。

膀胱の容量:一般的に最大容量は400㎖程度。我慢して1ℓ。

麻薬の使用:仮に緩和治療の副作用によって呼吸停止が起き、死期が早まる可能性があっても、苦痛緩和を目的とするなら麻薬の使用は間違っていない。

 

「生き物は必ず死を迎えるの。そして、死ぬ前には少しずつ体の働きを止めていくのよ」(白石咲和子)

つまり、死ぬ前に消化吸収機能が落ち、尿を作る力も落ちる。免疫の力や血液を作り出す能力も下がり、心臓や脳さえも機能しなくなる。

 

 

 

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桃井原っぱ公園へ

2025年01月29日 | 散歩

 

西荻窪駅から北東へ歩いて約20分・約1.4㎞に「桃井原っぱ公園」がある。

この公園はだだっ広い広場があり、災害時には災害救助用のヘリコプターの離着陸場になる。

さらに、杉並区の施設案内によると、

この地は、かつて中島飛行機株式会社の原動機工場が建ち、国産第1号の飛行機用エンジンをはじめ、当時世界に名を轟かせた零戦のエンジンも設計・製造された。

戦後、日産自動車株式会社荻窪工場となり、その間日本のロケット第1号も開発されたが、工場は移転、跡地は売却。
この公園は、平常時は地域の人々の憩いの場、災害時は周辺の消防署、警察署、病院等と連携した避難拠点となる。
大正14年 中島飛行機株式会社東京工場開設
昭和41年 日産自動車株式会社荻窪工場開設
平成10年 工場移転
平成17年 懇談会による公園検討開始
平成23年 公園開園

 

公園への立派なプロムナード

 

さらに進むと、遠くに公園が見える

 

広い! 左を見ても

 

右を見ても

 

こんなに広い。矢印が入って来たプロムナード。

 

開発経緯の説明も長い

 

「ロケット発祥の地」の碑

 

私は中学生だっただろうか。今でもあの興奮を思いだす。

糸川英夫のペンシルロケットの発射成功!

徹底的に攻撃、破壊され、世界の貧民国になり、悲惨な生活の中で、少しずつ立ち上がっていった日本。
かって誇った飛行機製造技術の開発は禁止されたが、あたらしいロケット開発を進めていたのだ。

ちょっと大きな鉛筆ほどのロケット「ペンシルロケット」だったが、日本の空に打ち上げたのだった!!

全長:230㎜、全質量:役230g、胴体径:18㎜ (1955年4月12日第一回発射実験成功)

当時は宇宙開発が将来の夢で、ロケットは、軍事用ではなく、平和利用の希望の実現だったと思う。

今だったら中学生でも作って打ち上げるようなおもちゃのようなロケットだが、当時、これは「大きな大きな一歩」だったのだ。

 

桃井原っぱ広場が「ロケット発祥之地」だったとは知らなかった。

当時、ここは富士精密工業の工場で、1955年、当地で国産ロケット第一号である「ペンシルロケット」が開発された記念の碑。

 

 

そして、零戦のエンジンを作っていた中島飛行機の工場がここにあった。

 

中島飛行機の工場は、その後、武蔵野市へ移転し、そこで日本初の空襲に襲われたのだ。

牛田守彦、高栁昌久著『戦争の記憶を武蔵野にたずねて 増補版 武蔵野地域の戦争遺跡ガイド

武蔵野の空襲の跡を歩く

 

 

今、この平和な広場では、手作り凧あげ大会が行われていた。

 

 

西荻窪駅へ戻る途中にあった「関根文化公園」

右下は、「私たちがこの公園を清掃しました。〇月〇日何時何分、次は……」

 

 

この公園、「文化」とついているだけのことがある。
吊り橋や滑り台が組み合わされたミニアスレチック、程よい高さの丸太の吊り橋など工夫を凝らした各種遊具が設置されている。

区民の方が自由に土のうを持ち出せる「土のうストッカー」もある。

コロナ以来、公園の池、プールは使用禁止になっているが、ここでも以前はプールだった場所をリニューアルして、ひろびろとした芝生が広がっている。

 

 

さて、のんびり帰るか、今日は一万歩を越すぞ!

 

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宮島未奈『成瀬は信じた道をいく』

2025年01月27日 | 読書2

 

宮島未奈著『成瀬は信じた道をいく』(2024年1月25日新潮社発行)

 

新潮社の内容紹介

成瀬の人生は、今日も誰かと交差する。「ゼゼカラ」ファンの小学生、娘の受験を見守る父、近所のクレーマー主婦、観光大使になるべく育った女子大生……。個性豊かな面々が新たに成瀬あかり史に名を刻む中、幼馴染の島崎が故郷へ帰ると、成瀬が書置きを残して失踪しており……!? 読み応え、ますますパワーアップの全5篇!

 

特設ページはこちら

 

成瀬あかり:滋賀県大津市生まれ、同市在住。なんでも簡単にできてしまうので、他人に構わずマイペース。口に出して種をまいておくのが大事だということで、いつもスケールの大きなことを言う。それなのに目標達成もたびたびで、天才シャボン玉少女としてローカル番組で名を馳せたこともある。

 

島崎みゆき:生まれついてから成瀬と同じマンションに住む。成瀬を見守るのが己の務めだと考えている。コミュニケーション能力が高く、友人も多い。

 

 

「ときめきっ子タイム」

ときめき小学校の4年生の北川みらいは、ステージ上で「膳所(ぜぜ)から世界へ!」とポーズを決めた高校生の「ゼゼカラ」の二人・成瀬と島崎を見た瞬間、心臓を掴まれてしまった。そこで、みらいなど4人の調査テーマは「ゼゼカラ」についてと決めた。成瀬に関する過去の種々の伝説などが語られる。

 

「成瀬慶彦の憂鬱」

あかりは京大を受験するが、父・慶彦の心配は約1時間で通えるのに、京都に下宿すると言い出すのではないかということだ。そう考えると、あかりの行動のひとつひとつが心配の種になってくる。

 

「やめたいクレーマー」

36歳の呉間言実(くれまことみ)はやめよと思っているのに、店についついクレームをつけてしまう。あかりがアルバイトしている平和堂フレンドマート大津打出浜店では万引きが多く困っている。呉間は、あかりから万引きを見つけたら通報するようにと頼まれ……。

 

「コンビーフはうまい」

母も祖母もびわ湖大津観光大使に選ばれている篠原かれんは、小さい時からそのための訓練を受けてきた。もう一人には成瀬が選ばれた。心得のある篠原は、不愛想な成瀬が心配だ。しかし、成瀬は彼女なりのやり方で……。

 

「探さないでください」

東京の大学に通う島崎みゆきが、大津の成瀬の家を訪れると、「探さないでください あかり」と書置きを残して、あかりの所在が分からないと、とくにお父さんが心配している。スマホは置いて行って、けん玉と観光大使の衣装がない。

 

 

初出:「やめたいクレーマー(「小説新潮」2023年5月号)」)、他は書下ろし

 

 

 

私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読むの?  最大は五つ星)

 

中学生向けの本だと思う。中学生や高校生ならともかく、大学生になっているのに、話しの世界が小さい。大津に話を限定するならせめてもう少し深いテーマにして欲しい。

 

成瀬のキャラは、確かに日本の女性としては今までにないが、その面白味だけで最後まで読む人は少ない。

なら、売れているのはなんでだと言われると。中高生+普段本を読まない人に人気なのでは??

 

 

宮島未奈(みやじま・みな)

1983年静岡県富士市生まれ。滋賀県大津市在住。京都大学文学部卒。

2021年「ありがとう西武大津店」で第20回「女による女のためのR-18文学賞」大賞、読者賞、友近賞をトリプル受賞。第39回「坪田譲治文学賞」、第21回(2024年)「本屋大賞」受賞。

2023年同作を含む『成瀬は天下を取りにいく』でデビュー。10万部を突破し話題になる。

 

 

・都(京都)から遠い浜名湖は遠江(とうおうみ)、琵琶湖は近いから近江

 

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中山七里『超合理的!ミステリーの書き方』を読む

2025年01月25日 | 読書2

 

中山七里著『超合理的!ミステリーの書き方』(幻冬舎新書742、な30-1、2024年9月25日幻冬舎発行)を読んだ。

 

幻冬舎の作品紹介

「目標は生涯現役。パソコンのキーを打ちながら死にたい」と語る著者はデビューから十四年間、三か月に一冊以上のペースで書き続け、ベストセラーを連発している。その極意とは何か?
「気分で仕事をしない」「プロットは三日で捻り出す」「主要キャラクターには落差を作る」「トリックよりも情報開示の順番に気をつける」など、思いつきに頼らず「質」と「量」を両立する創作術から、「トイレは一日一回、食事は二食」など驚異的な肉体改造まで、出し惜しみすることなく語り尽くす。ミステリーを書きたい人、読むのが好きな人必携の書!

 

本書はプロの小説家になるための、中山流ミステリーの書き方講座だ。

《情報の開示のコツ》《トリックは後で考える》《帰納法ではなく演繹法で書く》《取材はいらない》《原稿の直しは頭の中のものを出しているだけだから一度もない》といった素人が実行するには厳しい内容だが、説明は分かりやすい。

 

商業出版について、たとえば《編集者との付き合い方》《関係者に迷惑をかけるな》《締め切りについて》

 

「地獄を楽しんじゃうタイプ」「専業作家になったときからまともな暮らしを諦めた」「トイレは一日一回」「睡眠時間は3時間」「命の限り書く」「遊びたい、休みたい、と思ったらやめる」と中山流作家生活を述べる章

 

 

第1章 ミステリーとは何か

ミステリーは小ネタが支えている:大きなトリックが中心だが、周辺に小ネタがばらまかれていて、その小ネタだけでは犯人にたどり着けないが、真実が分かったときに、それらすべてが合理的につながる。

ミッシング・リンク:複数の事件が起きるがその関連性が最初はわからないが、リンクさえ掴めば全事件が解決する。

伏線:伏線はなるべく前に敷けば、結末で読者の思い込みと真実の落差が大きくなりどんでん返しの効果が大きくなる。

 

第2章 ミステリーを書く

中山流プロットの作り方:新作のたびに毎回3日3番唸りながら考えたものを、2000文字のプロットにまとめて編集の人に見せ、OKが出たものを書く。
編集者の後ろには何十万人の読者が控えている。中山さんには自分で書きたいものはひとつもない。

テーマ、ストーリー、キャラクター、トリックの順:トリックを最初に考える作家は多い。大事なのはトリックより情報を出す順番

 

第3章 ミステリーをより面白くする

原稿はゲラ(印刷)の状態で見直す/!、?等の記号は少なくする/一行アキは時間経過を表すときのみ使用/キャラクターを作る時は欠陥部分を作る/自分の文体を見つけるためには、たくさん書くことしかない/

 

第4章 ミステリーと生活

新人作家は量産しないと駄目/編集者はクライアントで作家は下請け/中山さんは、平均睡眠時間は3時間、トイレに行くのは一日一回、一日に映画を1本と本を1冊読む(趣味というより食事)/遊びたいとか休みたいと一回でも思ったら筆を折るつもり

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)

 

新人は、素晴らしい小説を書こうとするより、まず新作を量産しなければ話にならないらしい。そこで、もちろん合格点だが、ともかく量産するために方法・ノウハウが伝授されている。

 

「才能や個性がなくてもバイタリティとタフさがあればミステリー作家になれる」とあったので、どれどれと読んで行くと、睡眠時間は3時間・トイレは一日一回・一日に映画1本と本・1冊読むなどとんでもない話が出てきた。「まあ、最初からそのつもりもないけど」と負け惜しみ

 

 

中山七里 (なかやま・しちり)

1961年12月16日生れ。岐阜県出身。花園大学文学部国文学部卒。

2009年、『さよならドビュッシー』で第8回このミステリーがすごい!大賞を受賞
2010年1月、48歳での小説家デビュー
受賞作のほかに「災厄の季節」(のちに『連続殺人鬼カエル男』として刊行)も同賞初のダブルノミネート。

他に、『贖罪の奏鳴曲』『総理にされた男』『作家刑事毒島』『護られなかった者たちへ』『彷徨う者たち』『有罪、とAIは告げた』『ヒポクラテスの悲嘆』『鬼の啼く里』『ドクター・デスの再臨』など多数

 

 

短篇小説は原稿用紙100枚までの作品

小遣いで本を買う人は2万人しかいない

 

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スタバで一休み×2回

2025年01月23日 | 食べ物

 

「七井橋通り」の公園入口手前にある「スターバックスの井の頭公園店」に入った。

写真左が焼き鳥の「いせや公園店」

 

我々の注文は、アイス・ティーS ¥400、カフェ・ミストS ¥396    、12月28日

 

入口近くの黒板にはいつも何やら絵が描いてあったが、新しい絵を描いていた。1月3日

 

三が日から、井の頭公園帰りの人でほぼ満員。

 

我々の注文は、ユズ・シトラス・ティー(S)¥414、カプチーノ(S)¥455

 

 

いつもにも増して内容がなかったので、どうでもよい、スターバックスに関するトリビアな情報を追加。

スターバックス・ジャパンのホームページや、各種統計をわかりやすく解説している「nobuchom」のスターバックスの店舗数を参考にしました)

 

 

スターバックス コーヒー ジャパン(株):設立:1995年10月26日、従業員:5,505名、店舗数:1,986(うちライセンス店舗175店舗)
知事が「スタバはないけど砂場がある」と言ったが、2015年鳥取県に出店し、全国制覇。

 

世界の店舗数:2024年2月時点 世界86か国、38,587店舗(うちライセンス店は約半数)

  内訳:アメリカ 16,346、中国「星巴克」 6,804、韓国 1,870、日本 1,733、カナダ 1,458、イギリス 1,266

 

「スターバックス」の名の由来:メルヴィルの『白鯨』に出てくる一等航海士「スターバック」。

 

スターバックスのロゴの由来:ギリシャ神話に登場する上半身は女性、下半身は魚の怪物サイレン。

  シアトルにある1号店を見たことあるが、最初のロゴのままで、現在のロゴと違っていた。

 

日本での契約店番号:レシート記載の番号を見れば、日本で何番目に契約された店舗かわかる。

1996年8月 東京銀座にオープンした日本1号店「銀座松屋通り店」は「♯1」

井の頭公園店は、日本で39番目の契約店。

 

「トール・ラテ指数」:各国の通貨の強さを知る指数に、マクドナルドの「ビックマック指数」があるが、同様に、スターバックスのトール・ラテの価格で通貨強度を知る「トール・ラテ指数」がある

一番高い国はスイスで$7.17、日本は41位で$3.57 (2022年2月時点)

 

リージョナルランドマークストア:地域の歴史や文化を尊重し、その場所に適した建築様式で建設またはリノベーションした店舗。 現在28店舗(素敵な、入って見たくなる店の写真があります。ぜひクリックしてご覧ください。)。

 

スターバックスの歴史

1971年度:ゴードン・ポーカーと友人2人で、シアトルに焙煎したてのコーヒー豆の小売店としてオープン。

1982年度:ハワード・シュルツ(現:CEO)が役員として入社。
シアトルで名のあるレストランやエスプレッソバーに、コーヒーの提供を始める。

1983年度:シュルツがイタリア・ミラノで、1,500軒ものエスプレッソバーがあり薄いアメリカンコーヒーでなく、深い味わいのコーヒーを、居心地の良い空間でゆったりと会話と共に楽しんでいて、コーヒーバー文化展開の潜在性に気づく。

1984年度:シュルツはシアトルの繁華街の新店舗でコーヒーバーのコンセプトを試験実施、大成功を収める。

1985年度:シュルツがコーヒーチェーン・イル・ジョルナーレ社を設立。

1987年度:シュルツの会社がスターバックス コーヒー社を買収。社名をスターバックス社に改める。

1996年度: 8月世界に先駆けて東京・銀座に第1号店「銀座松屋通り店」をオープン。当時、カナダ、アメリカで店舗数が1,000店を超える。

2014年:負債が膨らみオーストラリアから撤退

2015年:米国スターバックスが、スターバックス ジャパンを完全子会社化したため上場廃止。

 

 

 

 

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「果実園リーベル」でモーニング

2025年01月22日 | 食べ物

 

吉祥寺東急3Fにある「果実園リーベル」でランチした。

 

決して忘れないのだが、以前テーブルに着いたら、店員さんが来て「11時を3分過ぎていますのでモーニング以外をお願いします」と言われたのだ。
今回、リベンジしようと、11時2分前に、入口で店員さんを呼んだら、「お二人共モーニングですね」と先手を打たれた。あさましいモーニング顔を読まれてしまった。 

 

フリードリンクのコーナー。左から、紅茶、冷たいアセロラ、ジュース、冷たい紅茶、冷たいコーヒー、ホットコーヒー、ホットラテなど。一番右はオレンジの生絞りで追加料金。

 

四方の壁には、各種パフェの大きな写真

 

まずは、ミックスジュース、アセロラ。

その後、ホット紅茶、ホットラテなどを賞味。

 

相方はフレンチトースト¥1300

 

 

私はフルーツサンド¥1200

 

以下、季節毎の入荷状況により果物は変わるでしょうが、諸物価高騰の折り、フルーツスサンドの付け合わせの果物の凋落ぶりをご覧あれ。

 

2023年5月21日

大きなメロンとパイナップル。これが、上の現在の写真では、小さな小さなメロンとオレンジになってしまいました。せめてもと、ぶどうは2個ふえているけど。

 

2023年5月26日

大きなメロンと、パイナップルが小さく小さくなりました。

 

 

2024年11月

メロンがなくなり、大きなパイナップルとオレンジになりました。

 

卑しさ丸出しで失礼しました。特別サービスのモーニングですので、あくまで果実園の努力の跡をご覧いただきました。

ごちそうさまでした。

 

 

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香山リカ『精神科医はへき地医療で”使いもの”になるのか?』

2025年01月21日 | 読書2

 

香山リカ著『精神科医はへき地医療で”使いもの”になるのか?』(2024年7月17日星和書店発行)を読んだ。

 

星和書店の内容紹介

ベテラン精神科医が、総合診療医に転身!
一念発起して北海道にある穂別町で「へき地医療」を始めた著者が、日常診療で思うところをつづったエッセイ。苦労も喜びも多い日々で考える、「こころを診る・からだを診る」こと――。プライマリ・ケア医として日々格闘しながらどんな診療をしているのか、何を思うのか、つぶさに語った。

 

『61歳で大学教授やめて、北海道で「へき地」のお医者さんはじめました』 の続編にもなっている。

 

精神科医になって35年、大学教員になってからも20年以上で、一般診療の経験がほとんどない香山さんがへき地診療所で、ベテランの所長と共に、総合診療医として働くことになった。

 

・マダニの取り方を学ぶ(マダニをピンセットでうまくはさんでクルクルッと回して刺し口ごとスポット取る)

・患者の前で、「内科外科マニュアル」を見ながら診察する

・しばらくは、「へき地診療医の薄い皮をかぶった精神科医」くらいの気持ちでのんびりやることにした。

 

・これはメンタル科の対象だなと思うと、つい総合診療科のワクを超えて対処しそうになる。ところが、そうやった元のなわばりの精神科のフィールドに呼び込むと、今度は総合診察科医としての見方ができなくなってしまうことがある。

 

 

本書は、星和書店のメールマガジン「こころのマガジン」で2022年9月から2024年5月まで掲載された連載コラム「精神科医はへき地医療で“使いもの”になるか?」をもとに加筆・修正されたものです。

 

参考:以下で、へき地勤務になるまでの経緯を香山さんが詳しく語っている。

香山リカ・むかわ町国民健康保険穂別診療所副所長に聞く

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)

 

率直な香山さんが、恥も外聞もなく、患者さんを前に診断がつかず、ああでもない、こうでもないと、迷ったり、措置をためらったりする様がありていに語られる。本人が言うよりはるかに優秀で、勉強家の香山さんだけが、診断に迷っているわけではないだろう。多くの医者が、大小はあっても、おそらく迷い、悩むことが多いのだろう。

それにしても、外科と内科などの差とくらべても、精神科と一般診療の差は大きいのではないかと推測できる。

 

頑張れ、香山さん!

 

香山リカの略歴と既読本リスト

 

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川は曲がる 

2025年01月19日 | 昔の話2

 

50年ほど前のことである。職場の大先輩の長野の実家に大勢でおじゃました。瓦屋根を持つ土塀に囲まれた大きな旧家で、夕暮れの薄暗がりの中、ちょっとした川にかかる橋を渡って、武家屋敷のような大きな門をくぐって家に入った。田舎のない私には何から何まで珍しかった。

 

夜になって、麻雀を始めていた先輩に「トイレはどこですか」と聞いた。

「外だよ」

「エッ、家の中にないんですか」

「ウン、庭に小屋があるから」

外に出ると全くの闇だった。東京と違い、目の前すぐから真っ暗で一歩も進めない。

戻って、先輩に「真っ暗なんで、懐中電灯がほしいんですけど?」

「ちょうちんならあるけど」

「あ、あ~あ、結構です」

 

まあ広い庭だからどこでしたってかまわないだろうと、そのまま庭へ出た。足探りしてすり足のまま少しずつ進んで行くと、土塀に突き当たり、少し右に行くと門があった。橋を渡って家に入ってきた方向と直角だから川の方向じゃないはずと、暗闇のなか、門を一歩外へ出た。ここらでと、チャックを下ろしかけて、昔、我家の男便所に掲げてあった「朝顔にしずくたらすな、いま一歩」を思い出し、一歩前に進んだ。

 

とたんに身体が回転し、頭の上に水面が来た。「ああこれが俺の最後か」と思い、水を何杯か飲んで、2、3回もがくと、足が水底を蹴った。立ちあがると、なんと言うことない浅い小川だった。岸をよじ登り、びしょびしょになった身体を確かめ、どじを踏んでしまって、どんな顔して家に入って行こうかと考えた。え~い、ままよと、「川に落ちちゃったよ! いや、参った、参った」と笑いながら、家に入った。水がしたたる私を見て、一瞬あっけに取られた皆が、一呼吸置いてから一斉に大笑いした。

 

翌朝、帰る時、入ってきた門を出て振りかえると、川は家を囲むように家の角で曲がっていた。浅はかだった。川は曲がることがあるのだ。おまけにきれいな田舎の川だと信じていたのに、けっこうビニールが浮いていたりして、参った、参った。

 

 

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月と富士

2025年01月18日 | 散歩

 

2025年1月18日、7時45分

 

東の空に月

 

その下には、マンション屋上越しの富士山

 

コメント (2)
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1月(3)の散歩

2025年01月17日 | 散歩

 

高井戸第二小学校前の葉をすっかり落とした大きな2本の木を見上げて、

この道(立教通り)を高井戸方面へ歩いてみる。

 

井の頭線の久我山駅と中央線の西荻窪駅を結ぶ杉並区のコミュニティーバス「すぎ丸」の停車場「新田縁(しんでんふち)通り」があった。この道は、環八と交差する井の頭通りの手前で合流するまで続く。

 

見事に手入れされた木々。植木屋会社の社長さんのお宅ではないだろうか??

 

ツバキの一種のようだが?

Google Lensによると「Camellia granthamiana、またはGranthamの椿は、1955年に香港で最初に発見された、希少な絶滅危惧種の椿」だということだが?

 

 

住宅街に突然現れたぶどう畑?

 

 

話し変わって、三鷹台駅前通りを南に700mほど行った「牟礼神明社」

ここは、以前、牟礼の里へ行く途中で寄り道したところだ

 

還暦(61歳)、古稀(希)(70)、喜寿(77)、傘寿(80)、米寿(88)、卒寿(90)、白寿(99)

こう並べてみると、私もまだまだだと思える。

昔は60(?)歳になると還暦ということで、赤いちゃんちゃんこを着せられたのだ。今思えば、まだ働き盛りなのに。

 

三鷹台駅前通りの東(あずま)橋

 

下を流れる玉川上水。狭いが結構深い。人力で、こんなに深く掘ったのか!

 

 

またまた話し変わってよそのお宅の勝手に花鑑賞。なるべくお宅が写らないようにしているからご勘弁を。

 

西向きのサザンカ

同じお宅の南向きのサザンカ。まあ、勝負つかずですね。

 

高く伸び過ぎて、上の方の花が楽しめないサザンカ

 

「風に吹かれて ふたりでゆれた あの白いブランコ」、じゃなくてバラ(古っ! ビリーバンバン覚えています?)

 

どこまでも階段を伝う「ピラカンサ」と思っていたら、Google Lensは「タイトウカマツカ」やら「トキワサンザシ」などとうるさい。

 

「カラマンシー」とのお告げ。四季を通して結実することから、四季橘の名があるという。

単に、キンカンじゃないの、と異議申し立てしときます。

 

誰とは申しませんが「キンモクセイ」って、あなたそれはないでしょう。柑橘類ということで手を打ちませんか。

 

 

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Ryumonでランチ

2025年01月16日 | 食べ物

 

吉祥寺駅南口から出て左手のヤマダ電機の脇から始まる「末広通り」を入り、300mほど進むと「Ryumon coffee stand」がある。

美味しいコーヒーを飲みたい時に寄る店だ。

 

小さいが2階建ての建物で、1階はカウンター席、2階はソファのあるゆったりしたお席になっている。

 

2階席から末広通りを見ると、正面に大きな桜の木があり、春には見事な桜を楽しめる。

 

シングルオリジンコーヒーというブレンドしない単一農園のコーヒー豆でつくるコーヒーやカフェラテを提供し、なによりコーヒーにこだわる店だ。トーストやケーキなどもある。

 

当日のコーヒーの詳細を書いた紙がテーブルにあった。

 

バケットサンドとコーヒー ¥820

 

コーヒーはもちろん、バケットも皮がバリバリで美味しかった。

 

う~む、この世に怒りの種は数あれど、満足満足。

 

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伊与原新『藍を継ぐ海』を読む

2025年01月16日 | 読書2

 

伊与原新著『藍を継ぐ海』(2024年9月25日新潮社発行)を読んだ。

 

今、書いていて、直木賞受賞の報が! やはり、思った通りだ、

 

新潮社の内容紹介

なんとかウミガメの卵を孵化させ、自力で育てようとする徳島の中学生の女の子。老いた父親のために隕石を拾った場所を偽る北海道の身重の女性。山口の島で、萩焼に絶妙な色味を出すという伝説の土を探す元カメラマンの男――。人間の生をはるかに超える時の流れを見据えた、科学だけが気づかせてくれる大切な未来。きらめく全五篇

 

地球惑星科学の博士でもある伊与原さんは「孤島で千二百万年を思う」でこう語っている。

『藍を継ぐ海』では、見島での他に、奈良の東吉野村、長崎の長与町、北海道の遠軽町、徳島の海辺の町を舞台にしたが、この五編に通奏低音として響かせようと試みたのは、それぞれの土地に固有の「継承」である。

……

 科学が世界を味気ないものにしているのではない。科学の知識が積み上がるにつれ、世界の時空はむしろ拡大し、その細部も豊かなものになっているのだ。列島の各地で営まれてきた「継承」を科学の光で照らしたとき、その像はよりくっきりと浮かび上がり、また新たな輝きを放ち始める。

 

「夢化けの島」 

舞台は山口県萩市の北西、約45㎞、日本海の孤島・見島。久保歩美は山口県内の国立大学の助教で専門は火成岩岩石学。学部卒論で見島を訪れて以来、年2回は通い続けて10年になる。任期付き研究者なので、研究費を稼げる目立つ研究をしなくてはいけないのだが、融通がきかず、笑顔を作るのが下手だ。
歩美は、元カメラマンだという三浦光平と知り合い、萩焼に使う見島土の採掘現場を探すことになる。

 

「狼犬ダイアリー」

午前二時、瞬時に目が覚めてしまった。遠吠えを、オオカミのそれを聞いたような気がして玄関を出ると、紀州犬のギンタも興奮している。数日前、大家の盛田家の息子、小3の拓己君が神社の前でオオカミを見かけたと騒いだのだ。私・まひろは、30歳を節目に奈良の山奥に移住してフリ―ランスのWebデザイナーになったが、貯金を切り崩すだけで、拓己にだけは「わたし、負け犬やねん」と呟く。

近隣でも何かに襲われて飼っている柴犬が怪我をした。ギンタを連れた拓己に引っ張られて、私もオオカミ探しに出かけ、神社の前にやっていたとき、一頭の獣が姿を現す。……

動物病院の先生は、かって吉野には狼混(ロウコン、近い世代でニホンオオカミと交配し、その血を受け継いでいる犬)が居たという伝承があるという。

 

「祈りの破片」 

原爆で被爆しながら大混乱の長崎で黙々と岩石を収集し、その溶けた様子、方向などから、爆心地を推定し、被害の凄まじさを調査していた男がいた(ここまでは史実)。彼は被爆後1年で亡くなったが、膨大な収集物・資料をそのまま残していたボロ屋が発見された。

 

「星隕(お)つ駅逓」 

アマチュアの団体「日本流星ネットワーク」の掲示板が北海道内で大火球と衝撃波を確認したと騒がしい。生まれも育ちも遠軽町の信吾は白滝郵便局長で配達員でもある。妻の涼子は10年目で初めての妊娠中であるが、父を心配している。父・公雄はまだ65歳なのに、妻が亡くなり、局長だった野知内(やちない)郵便局(かっての野知内駅逓)の名消えたので、元気がない。涼子は落下した隕石を発見したのだが、……。

 

「藍を継ぐ海」 

両端を岬ではさまれた500mほどの姫ケ浦海岸はアカウミガメの産卵地として知られていたが、巨大な堤防の影響もあって、近年は亀がやってきていない。沙月は1歳半のときに母が亡くなり、姉妹ともに祖父・義雄に育てられた。
久しぶりに産卵のあった浜に、中二の沙月は深夜に忍び込み、卵を5個盗み出した。納屋で孵化させるつもりなのだ。ウミガメ監視員の70歳になる佐和は、沙月の仕業と気づいていたが、町役場の職員には黙っていた。4,5年前、東京へ出ていき、連絡もない8歳上の姉・未月に置いて行かれた沙月が、浜に1匹だけ残って弱っていた子亀を見つけた。「この子亀だけ置いて行かれたと」泣いて佐和に訴え、二人で育ててタグを付けて海にかえしたことがあったのだ。その……

 

 

初出:「小説新潮」「週刊新潮」2021年11月号~2023年1月号

 

 

私の評価としては、★★★★★(五つ星:読むべき、 最大は五つ星)

 

第172回直木三十五賞候補作であるが、私としては是非受賞して欲しい。

 

どれも驚きで、感動の話だ。そしてその感動はあくまで静かにさわやかなのだ。

 

地球物理学者の伊与原さんだけあって、いつものように地球物理をネタにした話が興味をそそる。私はもともと物理的な話が好きなのだが、物理の中のロマンを、ギクシャクせずに巧みに物語の中に取り入れて、さわやかな話の中に溶け込ませている。

 

出会う人物も魅力的で、透明感ある文章に魅了される。派手さ、迫力、執念はないが、爽やかに引き込まれてしまう話しぶりが私の好みだ。

 

巻末には60以上の参考文献が並ぶ。各話は、物理現象の丹念な調べ、学びの結果として、自然に生活の中に取り込まれているのだろう。

 

伊与原新(いよはら・しん)の略歴と既読本リスト

 

 

メモ

萩焼の歴史:萩焼の開祖・李勺光(しゃくこう)は、弟・李敬と共に朝鮮出兵で日本に連れてこられ、納得がいく粘土が見つかるまで何カ月も毛利輝元の領内を探し回ったという。

毛利藩の御用窯は、李の流れをくむ坂家と、三輪家、林家。林家6代目の林泥平は名工だが素行が悪く、早々に引退した。(以下は創作)家督を譲った7代目の良平も不品行で出奔、窯は断絶。泥平は萩沖合数キロの大島へ、さらに見島に流され、焼物作りを命ぜられた。計画は頓挫したが、泥平は見島の土を本土に持ち帰った。一説には、萩焼に見島土が広く用いられるようになったにはそれがきっかけだと言う。

三浦光平はこの林家13代になるという。

 

萩の七化け:貫入という釉薬のひびから茶が器に沁み込み、長く使いこむうちに様々に風情が化けて味わいが増す。ガスや電気の窯でなく、登り窯で低温でゆっくり焼け上げるので焼き締めが弱く、吸水性に富む萩焼の特徴。

 

隕石:百万個以上の小惑星が回っている小惑星帯が火星と木星の間にある。互いに衝突しバラバラになって小惑星帯から飛び出た破片の一部が、太陽の周りを巡りながらやがて地球にぶつかる、それがほとんどの隕石。見た目はその辺の石とほとんで変わらない。

 

ビーチコーミング:海岸や浜辺に打ち上げられた漂着物を収集したり観察したりする遊び(Beach combing(櫛けずる)

 

黒潮:沖に出ると、潮の境目がはっきりわかって、向こう側が濃い藍色だった。黒潮だった。親潮は栄養分が多く、プランクトンが繁殖して、緑とか茶色がかった色だが、黒潮は栄養分が少なく、透明度が高く、青黒く見える。深い深い藍色だ。

 

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篠田節子『四つの白昼夢』を読む

2025年01月15日 | 読書2

 

篠田節子著『四つの白昼夢』(2024年7月30日朝日新聞出版発行)を読んだ。

 

朝日新聞出版の紹介

コロナ禍がはじまり、終息に向かった。
これは目眩? 日常の隣にある別世界。
分別盛りの人々の抱えた困惑と不安を
ユーモアと活力あふれる文章で描く四つの日常奇譚集。

妻は売れっ子イラストレーター、夫は音楽家。30代の夫婦が不動産屋の仲介で移り住んだ理想の家。しかし夫が出張中のある夜、天井から異様な物音が……。気のせい? 事故物件? それとも……。
そしてある日、夫婦は隣家の秘密を知ることになる。
(「屋根裏の散歩者」)

酔い潰れ、夜更けの電車内でヴァイオリンを抱いて眠る老人。慌てて下りていった彼の忘れ物は、なんと遺骨。「才女好き」と噂された男の、四十年に及ぶ家庭生活に、秘められたものはいったい何だったのか。
(「妻をめとらば才たけて」)

亡き父の後を継いだレストラン経営がコロナ禍で破綻に瀕している。家庭がきしみ始め、しっかり者の母が倒れ、妻は子供を連れて出て行く。負の連鎖の中でどん底の男が、はまったのは、因縁付きの謎の植物。完璧なフォルム、葉の緑のグラデーション。マニアの世界は地獄より深かった。
(「多肉」)

認知症の義母が亡くなった。ようやく見つけた葬儀用の遺影。しかしその肩先には人の手が写っている。そして切り取られた半分には見知らぬ男が。
背景からすると、近くの動物園で撮影されたようだ。
慎ましく物静かで、実の娘息子にも本音を語ることのなかった人の心の内にあったものは?
(「遺影」)

現実と非現実の裂け目から見えた、普通の人々の暮らしと日常の裏側。
『鏡の背面』(集英社文庫、吉川英治文学賞受賞作)や『冬の光』(文春文庫)
の流れにつながる、人の心の不思議と腑に落ちる人生のリアリティにあふれる力作。

 

「妻をめとらば才たけて」

浅羽:役所の同期のむっちゃんと結婚。アマチュアだがヴァイオリンの名手で、司書と学芸員の資格を持ち、資料室を希望して異動。40歳目前で離婚し、日野と同居し再婚。

日野禮子:一般人に知名度はないが、世界的ピアニスト。

荻上、森下:浅羽の役所勤務時代の同僚で、浅羽と違いそれなりに出世し、退職後、浅羽と飲み友達

 

 

初出:「小説トリッパ―」2021年夏季号~2023年春季号

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

柔らかな穏やかな文章で語られる日常をのんびり読み進めていくと、最初は少しズレ、やがて日常のすぐ隣にあるぼんやりした別世界に入り込んでしまう、ちょっと不思議な感覚になる奇妙な味わいの4編。

 

「屋根裏の…」屋根裏から聞こえる不気味な引きずるような音の正体は、隣家の甘やかされ男が原因だった。

「妻をめとれば…」置き去りにされた骨壺の謎は、友人たち厳しい想像と、全く異なる本人の考え。

「多肉」多肉植物の謎のアガペに魅せられ主人公が、生活の落ち込みと呼応して、徐々に正気を失っていく姿が恐ろしい。

「遺影」遺影の中で、見たことがないほどの明るい笑顔を見せる義母。寄り添っている人は誰なのか? 息子は嫌がって写真を切り取って捨ててしまうが、介護した嫁の調べた結果は奇妙なものとなった。

 

 

篠田節子の略歴と既読本リスト

 

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東野圭吾『架空犯』を読む

2025年01月13日 | 読書2

 

東野圭吾著『架空犯(かくうはん)』(2024年11月1日幻冬舎発行)を読んだ。

 

特設サイトの内容紹介(主な登場人物、少々の動画、物語の舞台などの紹介も)

誰にでも/ 青春があった/ 被害者にも/ 犯人にも、/ そして/ 刑事にも。

都内の高級住宅地で起こった火災。
焼け跡からは都議会議員と元女優の夫婦の遺体が発見された。
当初無理心中と思われていたが一転、殺人事件に様変わりした。
警視庁捜査一課の五代は所轄の刑事、山尾と捜査を始めることになるが———。
華やかな人生を歩んできた二人に一体何があったのか。

 

白鳥とコウモリ』とは全く別の物語だが、同じ主役・五代刑事が活躍する457頁の長編。

 

あらすじ

都内の高級住宅地の放火事件の現場から、ソファーで首に布を巻き付けた藤堂康幸の遺体が発見された。康幸は政治家一族で65歳の都議会議員だった。さらにバスルームで首を吊った姿の藤堂江利子の遺体が発見された。江利子は双葉江利子という名で知られた元女優だった。

 

捜査会議が開催され、夫妻は窒息死で、妻は背後から絞殺された後、ロープを首にかけて吊るされたと推定され、無理心中に見せかけた第三者による犯行であることが決定的になった。

 

五代は事件の被害者の人間関係を捜査する鑑取り(かんどり)捜査班で、57歳の所轄署・生活安全課の警部補・山尾と組むことになった。

 

捜査が進む中、「藤堂夫妻の非人道的行為に対し制裁を加えた」との犯行声明と、その証拠品を3億円で買い取れとの脅迫状が届く。やがて、犯人から、「藤堂康幸のタブレットを持っていて、その中の写真をメールに添付したから、3千万円でタブレットを買い取れ」との要求が出される。

 

五代は、藤堂(旧姓深水)江利子の高校時代を探り、薄紙をはぐように徐々に……。

たどり着いた犯人は実質的に自供するのだが、裁判で勝てる決定的証拠がない。このままでは検察は起訴しないし、五代たちは拘留期限が迫ってくるという立場に追い込まれる。

 

 

主な登場人物

五代務:警視庁捜査一課巡査部長。数々の実績を上げて、上司の信頼あつい。上司は筒井でその上が桜川

山尾陽介:所轄署生活安全課警部補。位は五代より上。観察眼は鋭く、表情は乏しい。

 

藤堂康幸:死亡。都議会議員。元社会科高校教師。第一秘書は望月。後援会会長は幼馴染の垣内

藤堂江利子:死亡。康幸の妻。元女優。旧姓深水。康幸の元生徒。事故で両親を亡くし、叔父夫婦に預けられる。

榎並香織:藤堂夫妻の娘。妊娠中。30歳。次回選挙で立候補予定。

榎並健人:榎並グループの御曹司で榎並総合病院副院長。

本庄雅美:江利子の女優時代からの友人。

今西美咲:東都百貨店外商員。本庄雅美や江利子が主な客。

平塚園長:「春の実学園」園長。

 

 

本作品は、『小説幻冬』2023年3月号~2024年9月号までの連載に加筆・修正し、書下ろしを追加。

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

最初からすんなりと読み始めて、そのままスイスイ読んでしまう。相変わらずの読みやすい東野さん。魂を揺さぶるような感動はないが、「ええ、意外、意外!」「う~ん、どうなるの?」など呟きながら、457頁、読まされてしまった。

 

五代は、頭脳明晰な刑事というよりは、相手のちょっとした仕草を感良く捉えて見逃さず、かつ地道な捜査を積み重ねて、小さな手がかりをつなげて、一つ一つ壁を突破していく。着実に犯人に近づいていくので、一緒に捜査している気分になってしまう。五代と不審な相棒との駆け引きも、スリルがあって面白い。

 

都議会議員の行動など多少、はてなと思う点、小さな破綻??はあっても、いいじゃないと思えてしまう。

 

 

東野圭吾の略歴と既読本リスト

東野圭吾作品は約90以上あるが、電子書籍化されているのは8作品。

 

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1月(2)の散歩

2025年01月11日 | 散歩

 

失礼ながらこれだけの花壇でも、ちょっと目を離していると荒れてしまう。ご苦労様、そしてありがとう。

 

サザンカ

 

サザンカ

下に、ツバキのように花でなく、花びらが散っているのでサザンカだろう。

 

昨年12月2日のブログで「「弁天門入口」を出たところに「サザンカ(山茶花)」の葉がツヤツヤ。」と蕾いっぱいの下の写真を掲げたが、

そのサザンカが約1カ月経って、沢山の花を咲かせている。

 

遠くに何やら黄色い大きな実がたくさん成っている。

倍率上げて撮るも、Google Lensは柿と答える。柿にしては大きく、縦長のような気がするが。

 

すっかり葉が枯れたトチノ木

 

手前にスイセンの花。まだまだ咲き始め。

 

井橋通り(公園入口への通り)でマザーズ 吉祥寺店(Trattoria e Pizzeria MOTHERS)が目についた。

 

ピザ、パスタといったイタリアンらしい。次回、入ってみよう。

この店、2本西側の「南二条通り」にある「EPEE」と同じ経営のようだ。

 

 

話し変わって1月2日。レストランのランチ予約が取れなくて、「CONIFER久我山」(コニファー)に店を開けてもらった。

 

ここは、昨年11月に2回ランチした。下はその時の写真。

 

1月2日のことで、急遽のお願いなので、ワンプレートのランチ。

丁寧に、いろいろ食材、料理の説明を受けたのに、何にも覚えていません。

ただ、次回からはしっかり覚えておこうと、老い誓った(オイチカッタ)。

 

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