川内有緒著『パリの国連で夢を食う。』(2014年9月15日イースト・プレス発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
世界一のお役所の舞台裏は、驚きの連続だった!
らららー、わおー、パリの美しさにはしゃぎながら面接をうけ、
約2000倍の倍率を勝ち抜いて、私は国連に転職した。
そこには奇妙な慣行やユニークな職場文化が花開き、
国際色豊かなオフィスにはスーツ、民族衣装、パジャマ姿の人まで。
ガチガチの官僚機構とカオスな組織運営に、ビックリしながらも
愉快な同僚たちや、個性的な生き方をする友人たちに囲まれて、
パリの日々は楽しく過ぎていく。
けれど、ふとした瞬間に我に返る。国連でやりたかったことって何だっけ?
・・・
新田次郎文学賞を受賞した川内有緒が、
パリと国連での5年半におよぶ自身の体験をユーモラスに描いた、
30代女性のライフストーリー。
川内有緒(かわぐち・ありお)
東京都出身。日大芸術学部卒。アメリカのジョージタウン大学で修士号取得。
アメリカ国内のコンサル会社や日本のシンクタンク勤務(中南米の文化を研究)。
31歳でパリの国連職員募集に応募(2000倍の倍率)し、パリ勤務。
5年半で辞職し、フリーランスとなる。英語の他にスペイン語とフランス語を多少話せる。
経歴はエリートそのもの(日芸卒は毛色が変わっているが)だが、出世欲や特権意識はまったくなく、日本人離れしたたくましさを持ち、誰とでもすぐ打ち解けて話せる。
国際色豊かな同僚は、ユーゴ内戦を生き抜いたセルビア人ツワモノ課長、白人や黒人など服装も価値観もバラバラ。正規雇用と定期雇用など立場も様々で、「毎日がサファリパーク状態」。彼らとの交流を通じて、各人、能力・志は高いのに、大組織国連は非効率。
パリ生活も、暮らしにくさは想像以上で、トラブル続き。「パリ症候群」だと著者はという。
初出:季刊「レポ」創刊号、二号、単行本化にあたり大幅に加筆、修正
私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
著者自身もまえがきで述べているように、世界にまたがる巨大な国連のある機関のある部署で見聞したことだけで、国連全体に通じる話ではない。
また、パリでの生活も5年半に留まり、網羅的、あるいは深く市民と交わった経験ではない。したがって、この本は、主に、果敢に世界に飛び出した若い女性の話を楽しむものと言える。著者が言うように、雑記として読むのが良いだろう。それにしても、物おじせず、何にでも挑戦するたくましい著者には感心する。