東野圭吾著『ウインクで乾杯』(祥伝社文庫ひ3-1、1992年6月1日祥伝社発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
パーティ・コンパニオン小田香子は恐怖のあまり声も出なかった。仕事先のホテルの客室で、同僚牧村絵里が、毒入りビールを飲んで死んでいた。現場は完全な密室、警察は自殺だというが…。やがて絵里の親友由加利が自室で扼殺され、香子にまで見えざる魔の手が迫ってきた…。誰が、なぜ、何のために…。ミステリー界の若き旗手が放つ長編本格推理の傑作。
小田香子(おだ・きょうこ)は玉の輿に乗るため資産家との出会いが多いパーティコンパニオンの仕事に満足している。ようやく見つけた獲物の高見不動産専務の高見俊介と喫茶店で会うようにこぎつけた。しかしその時、同僚のコンパニオン牧村絵里が遺体で発見された。密室状態のホテルの一室で、青酸化合物を飲んで死亡していた。警察は自殺と判断するが、刑事の芝田は不審を持つ。
さらに、絵里の親友の由香利が自宅マンションで、扼殺された。
この作品は1988年10月祥伝社ノン・ノベルから「香子の夢」として刊行。
私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
東野さんのごく前期の作品なので人間ドラマとしての深みはない。ただ、何が何でも玉の輿を目指す軽薄なコンパニオンと、偶然隣人になった、冴えないながら仕事にこだわりを見せる担当刑事との間に弾むコミカルな会話がおもろい。
この頃から東野さんの文章は読みやすく、とくに深みがないこの作品はどんどん読み進めてしまう。それもまた良しだ。
密室物だが、トリックは平凡で本格的謎解きには程遠い。自殺した伊瀬が伝えようとしたメッセージが、とても見つけることができない方法で、なぜそんな方法を取ったのか納得できない。
登場人物
小田香子(おだ・きょうこ):主人公、パーティコンパニオン「バンビ・バンケット」勤務。24歳。
牧村絵里:「バンビ・バンケット」勤務。ホテルで青酸カリの中毒死体で発見。長身で美人、英会話が得意。
丸本久雄:「バンビ・バンケット」の社長。37歳、独身。
江崎洋子:「バンビ・バンケット」の古参のチーフコンパニオン。
米沢:「バンビ・バンケット」の営業社員。
浅岡綾子:「バンビ・バンケット」勤務
真野由香利:フリーのパーティコンパニオン、絵里の親友。エキゾチックな美人で長身。
角野(すみの)文江:フリーのパーティコンパニオン。
高見雄太郎:高見不動産の元社長。実家のある名古屋で伊瀬耕一により殺害。
高見礼子:雄太郎の一人娘。
高見康司:雄太郎の実弟。兄の没後、高見不動産の社長に就任。
高見俊介:康司の息子。高見不動産の専務。30代。
西原正夫:日本全国に支店を持つ宝石店「華屋」の社長。
西原昭一:正夫の長男。華屋の副社長。40代半ば。
西原健三:正夫の三男。馬鹿息子との評判。
佐竹:健三の黒子。鋭い目つき。
芝田:警視庁捜査一課の刑事。30歳前後で、背が高くて色黒。香子の住むマンションの隣人。
直井:警視庁捜査一課の刑事。芝田より年上で、妻子持ち。
坂口:警視庁捜査一課の係長。あだ名は「豆狸」。
松谷:警視庁捜査一課の警部。芝田・直井の上司。
加藤:築地警察署の刑事。
牧村規之:牧村家の長男。絵里の兄。
伊瀬耕一:画家。名古屋時代の絵里の恋人。3年前に高見雄太郎を殺害して自殺。
戸倉:クイーンホテルの支配人