hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

川上未映子『夏物語』を読む

2023年06月29日 | 読書2

 

川上未映子著『夏物語』(文春文庫か51-5、2021年8月10日文藝春秋発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

大阪の下町で生まれ小説家を目指し上京した夏子。38歳の頃、自分の子どもに会いたいと思い始める。子どもを産むこと、持つことへの周囲の様々な声。そんな中、精子提供で生まれ、本当の父を探す逢沢と出会い心を寄せていく、生命の意味をめぐる真摯な問いを切ない詩情と泣き笑いの筆致で描く、全世界が認める至高の物語。

 

毎日出版文化賞 芸術部門受賞、 米TIME誌ベスト10/米New York Times必読100冊/米図書館協会ベストフィクション選出!

 

「第一部(2008年夏)」(約200頁)

ともかく東京で出て、ときどき雑文を書いて、月数十万円のバイトでようやく暮らす30歳の夏目夏子は、夫と別れた39歳の姉・巻子と、その娘・11歳の緑子を東京駅で待っていた。高級とは縁のない「シャネル」といスナックのホステスの巻子は、なぜか豊胸手術に固執していた。一方、来年中学生となる緑子は、これもまたなぜか母の巻子に口をきかなくなっていた。(このあたりは、『乳と卵』の続編になっている)

 

「第二部(2016年夏~2019年夏)」(約400頁)

夏子は20歳の頃、小説を書こうと決めて上京し、33歳になる年に小さな文学賞を受賞したが、タウン誌などにエッセイ書くだけだった。1年後、初めて刊行した短編集が6万部を超えるヒットになった。すぐに大手出版社の編集者・仙川涼子が連絡をくれて、励まされた。しかし、長編小説執筆は途中でぴたりと止まったままとなる。

一方、高校の同級生の成瀬君と6年間恋人だったのに性交できなくなって別れた。相手もおらず、結婚する気もないのになぜか「わたしの子どもに会いたい」と思い、精子提供について調べ始める。

 

 

私の評価としては、★★★★★(五つ星:読むべき、 最大は五つ星)

 

年寄りには辛い長さだが、興味を持って読み終えた。

 

著者は、数人の登場人物、個性的な女性に子供を産むことに関する考えを明快に語らせる。

経済力も実家の支援もあるシングルマザーの作家の遊佐は母性賛歌を謳う。

「子どもを産むまえのわたしは愛のことなど、何も知らなかった。世界の半分が手つかずだった。……何にも替えられない、わたしの人生において、これ以上の出来事はない、存在はない」

 

人工授精で生まれ、性虐待を受けてきた善百合子は、出産を激しく批判する。

「もしあなたが子どもを生んでね、その子どもが生まれてきたことを心の底から後悔したとしたら、あなたはいったいどうするつもりなの」……「どうしてこんな暴力的なことを、みんな笑顔でつづけることができるんだろうって。生まれてきたいなんて一度も思ったこともない存在を、こんな途方もないことに、自分の思いだけで引きずりこむことができるのか、わたしはそれがわからないだけなんだよ」

 

独身の編集者・仙川涼子は、出産なんてそこいらじゅうの女性がやっていることより、あなたはなんとしても小説を書くべきだと迫る。

 

夏子は語る。

「わたしがしようとしていることは、とりかえしのつかないことなのかもしれません。どうなるかもわかりません。でも、わたしは」……「忘れるよりも、間違うことを選ぼうと思います」(p631)

 

上野千鶴子の書評では、「人が人をこの世にあらしめる、この目の眩むような、神をも怖れぬふるまいを、女たちはやってのける。「何もこわくない」と。」(是非、一読ください)

 

私は単純だから、こう考える。

子供は、親が勝手に産んだことを許せない場合もあるだろう。しかし、だからと言って、生まれてなければ許すも許さないもないし、生まれてしまえば、けしからぬと言ってもせん無い話だし、……。

要するに、子どもは「授かり物」だと思う。

参考:私のブログ「女性は母として生まれるが、男性は親になって初めて幼児の可愛さを知る」

このブログ、2006年7月だ。改めて読んで、「女性は母性」とか、単純で、17年間進歩の跡が見られない。

 

 

川上未映子の略歴と既読本リスト 

 

メモ

「父が生きているあいだに本当のことを知って、そのうえで、それでも僕は父に、僕の父はあなたなんだと――僕は父に、そう言いたかったです」(p620)

 

「お金を入れたざるを天井から吊るしているような昔ながらの八百屋があって」(p588)

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荻原浩の略歴と既読本リスト

2023年06月28日 | 読書2

 

荻原浩(おぎわら・ひろし)

1956年大宮市生まれ。成城大学経済学部卒。広告代理店勤務、フリーのコピーライター
1997年「オロロ畑でつかまえて」で第10回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー
2005年「明日の記憶」で第2回本屋大賞と第18回山本周五郎賞受賞。2006年に渡辺謙主演で映画化。
2006年「あの日にドライブ」、2007年「四度目の氷河期」、2008年「愛しの座敷わらし」、2011年「砂の王国」でいずれも直木賞候補。

2014年「二千七百の夏と冬」で第5回山田風太郎賞受賞。
2016年「海の見える理髪店」で直木賞受賞。

その他、『ハードボイルド・エッグ』『神様からひと言』『僕たちの戦争』『さよならバースディ』『あの日にドライブ』『押入れのちよ』『四度目の氷河期』『愛しの座敷わらし』『ちょいな人々』『オイアウエ漂流記』『砂の王国』『月の上の観覧車』『誰にも書ける一冊の本』『幸せになる百通りの方法』『家族写真』『冷蔵庫を抱きしめて』『金魚姫』『ギブ・ミー・ア・チャンス』『それでも空は青い』『ストロベリーライフ』など。

 

 

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荻原浩『それでも空は青い』を読む

2023年06月27日 | 読書2

 

荻原浩著『それでも空は青い』(角川文庫お79-2、2021年11月25日KADOKAWA発行)

 

裏表紙にはこうある。

「うん」「いや」「ああ」しか言わない夫に、ある疑いを抱く妻。7歳年上バツイチの恋人との間にそびえる壁をどうにか飛び越えようと奮闘するバーテンダー。子どもの頃から築きあげてきた協力関係が崩壊の危機を迎える双子。外ではうまく喋れずに、じいちゃんと野球の練習ばかりしている小学生……。
すれ違ったりぶつかったり、わずらわしいことも多いけれど、一緒にいたい人がいる。人づきあいに疲れた心に沁みる7つの物語。

 

「スピードキング」

空がどんなに青くても、日差しが暖かくても、気持ちのいい風が吹いていても、人は死ぬ。……

藤嶋が死んだ?

ガキの頃から野球ばかりやってきた。中学ではエースで4番。県大会ではベスト4まで勝ち上がった。県立の強豪校に入ると、そこに藤嶋がいた。投げても、走っても桁違い。やがて、藤嶋はプロ野球選手になった。

藤嶋の訃報を知った俺は、キャッチボールをしようとアパートへ急ぐ。相手は?

 

「妖精たちの時間」

39歳でバツイチ無職の槙田が同窓会に出席した目的は、当時別世界からやって来た帰国子女だった桜井暎子だ。解散後、彼女が俺を待っていて、バーで並んで話す。「高校の時に、好きな人はいた?」「誰?」「ユウ」

 

「あなたによく似た機械」

夫の拓人はそっけない。話す言葉は「うん」「いや」「ああ」だけ。美純の今日のまともな会話は、冷蔵庫の「ドアが開いています」だった。掃除中に不思議な1本の小さなネジを見つけ、夫へ疑惑を抱く。

 

「僕と彼女と牛男のレシピ」

骨折で入院した28歳のバーテンダーの上林は、35歳の看護師の永峰衿子に恋をした。上林が彼女との結婚をほのめかすと、その度に彼女は天気の話にそらしてしまう。彼女が7歳年上で、バツイチのためだが、一番の理由は、牛男と暮らしているからだ。上林はなんとか壁を打ち崩そうと、オリジナルカクテルを作ってバーテンダー大会に出場することと、ウシオくんと野球をやろうと考える。

 

「君を守るために、」

愛犬のため寝室にセットした見守りカメラに、男の足が映り込んでいた。菜緒は新入社員の杉原くんにパソコンを見て欲しいからと嘘をついて自宅へ一緒に行ってもらう。幽霊が登場し、ストーカー被害も続いて……。

 

「ダブルトラブルギャンブル」

一卵性双生児の仁と礼。そっくりな僕たちは、試験などのとき、得意な方に入れ替わるなどうまくやっていた。礼に好きな子が出来るまでは。

 

「人生はパイナップル」

外でうまくしゃべれない奏太は、ホラ吹きのじいちゃんと仲が良い。中学の時に甲子園に出場したというじいちゃんに、小1なのに硬球でキャッチボールの訓練をさせられ、その後も野球の練習ばかりした。

じいちゃんは、なんのとりえもなかった海の底のハマグリだったぼくに、ひとつだけ胸を張れるものを、他人にいくらでも語れるものをくれた。

野球優先の進学に反対されて迷う僕にじいちゃんは言った。「好きなことが、うまくいくとはかぎらない。でも自分のことは自分で決めろ。そうすれば、失敗しても後悔はしない」

 

解説 中江有里

 

本書は、2018年11月にKADOKAWAより単行本として刊行。

 

 

私の評価としては、★★★★★(五つ星:読むべき、 最大は五つ星)

 

いかにもストーリーテイラーの著者に、「やられてなるか、こん畜生」と思うのだが、しみじみとした話に心が痛くなり、そしてほんのり温かくなる。

 

「スピードキング」:まったく歯が立たなかった藤嶋の死にショックを受け、でも最後まで頑張ったと知って、自分もキャッチボールをしようとした相手はなんと!

 

「僕と彼女と牛男のレシピ」:ぜんぜん反応がなかった牛男が徐々に応えてくれて、それを見て彼女も…。

 

「人生はパイナップル」:戦争体験者のじいさんがいいね! 孫から見るとなにかとずれてると感じる点もあるが、その食い違いもいいね!

何回も失敗しても、何かやってやると年とっても山師根性が治らないで、家族から必死で止められてしまうじいさん。私の親父を思いだして、じ~んとなってしまった。

 

荻原浩(おぎわら・ひろし)

1956年大宮市生まれ。成城大学経済学部卒。広告代理店勤務、フリーのコピーライター
1997年「オロロ畑でつかまえて」で第10回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー
2005年「明日の記憶」で第2回本屋大賞と第18回山本周五郎賞受賞。2006年に渡辺謙主演で映画化。
2006年「あの日にドライブ」、2007年「四度目の氷河期」、2008年「愛しの座敷わらし」、2011年「砂の王国」でいずれも直木賞候補。

2014年「二千七百の夏と冬」で第5回山田風太郎賞受賞。
2016年「海の見える理髪店」で直木賞受賞。

その他、『ハードボイルド・エッグ』『神様からひと言』『僕たちの戦争』『さよならバースディ』『あの日にドライブ』『押入れのちよ』『四度目の氷河期』『愛しの座敷わらし』『ちょいな人々』『オイアウエ漂流記』『砂の王国』『月の上の観覧車』『誰にも書ける一冊の本』『幸せになる百通りの方法』『家族写真』『冷蔵庫を抱きしめて』『金魚姫』『ギブ・ミー・ア・チャンス』、『それでも空は青い』『ストロベリーライフ』など。

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荻原浩『ストロベリーライフ』を読む

2023年06月25日 | 読書2

 

荻原浩著『ストロベリーライフ』(毎日文庫お1-1、2019年11月15日毎日新聞出版発行)を読んだ。

裏表紙にはこうある。

農業なんてかっこ悪いと思っていた――父親が倒れ、やむなく家業の農業を手伝う恵介。両親は知らぬ間にイチゴの栽培にも手を出していた。農家を継ぐ気はないが目の前のイチゴをほうっておくことはできない。一方、東京においてきた「農業反対」の妻との間にミゾができ始め……富士山麓のイチゴ農家を舞台に、これからの農業、家族の姿をみずみずしく描き出す感動作。

 

海の見える理髪店』で直木賞受賞後第一作の長編小説。

 

 

望月恵介はいくつかの賞を受賞した腕に自信のグラフィックデザイナー。フリーになって最初は好調で収入も激増したが、やがて仕事がなかなか入ってこなくなって、悩んでいた。

 

トマト農家を継がないと言って疎遠になっていた父が脳こうそくで倒れ入院したと母から電話が入る。妻・美月と、息子・銀河を連れて病院に駆けつける。命は助かったが、父は半身不随、言語不明瞭で当分リハビリ。

 

働き者の母は腰が悪いのに、頑固に農業を続けそう。ハウスのイチゴをそのままにするわけにもいかず、恵介は妻・美月を気にしながら実家の農業の手伝いをしばらく泊まり込みで手伝う。グラフィックデザイナーの仕事もしながら、東京の家と静岡の実家を行き来し、美月との関係にきしみが入る。

 

イチゴ栽培の奥深さ、経営の困難さの打ちのめされながら、恵介は……。

一方、家にめったに帰ってこなくなった恵介に対し、美月はパートをやめて、実入りの良い手のモデルに復帰する。

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)

 

誰でも考えるとおりの筋書きで、とくに推す点もないので、優れた作品とは言えないが、楽しく読める。

 

イチゴ栽培の細かいポイントまで要領よく説明しているので、変なところに興味を持って読みふけってしまった。

巻末に「あとがきにかえて おいしい苺の見つけ方」が5ページに渡って書いてある。

  • 大きいものを選ぶ
  • カタチは気にしない
  • 鮮やかな緑色で反り返っているヘタ
  • ヘタの下まで赤い
  • いちばん甘いのは先っぽ
  • 少し冷やして食べる
  • 旬の旬は一月

良いストロベリーライフを。

 

幼稚園児・銀河が、昆虫図鑑に夢中で、東京っ子で実物におびえていたのが、昆虫取りに夢中で、突貫小僧(死語?)になるのが、ほほえましい。

 

恵介が作ったCMソングのサビのフレーズ(プロポーズの言葉?)が「いっしょに行こう、この世の涯(はて)まで」。著者は元コピーライターなのに、クサ過ぎない?

 

荻原浩の略歴と既読本リスト

 

登場人物

望月恵介:フリーのグラフィックデザイナー。36歳。父が倒れ実家の農業を手伝う。
望月美月:恵介の妻。かって手専門のパーツモデルをやっていた。実家で農業に励む恵介を留めたい。
望月銀河:恵介と美月の子供。幼稚園児。
父・喜一:恵介の父。静岡でトマトからイチゴ農家へ。脳梗塞で半身不随、言語不明瞭になる。母・絹江は93歳。
母・房代:恵介の母。農業を手伝う。腰が悪いが働き者。

剛子:恵介の8歳上の長姉。望月家の長女。夫は近くの信用金庫勤務の佐野。長男高一の大輝、次男中二拓海。

進子:恵介の次姉。富士山麓に工房を持つ売れないガラス作家。独身。

誠子:恵介の末姉。名古屋在住。夫はIT会社を経営すう雅也。一人娘は七歳の陽菜。

ガス・菅原豪:恵介の中学のいじめられっ子だった同級生。菅原農場の副社長。

 

 

 

 

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辻堂ゆめ『答えは市役所3階に』を読む

2023年06月23日 | 読書2

 

辻堂ゆめ著『答えは市役所3階に 2020心の相談室』(2023年1月30日光文社発行)を読んだ。

 

光文社の内容紹介

「こんなはずじゃなかった」。進路を断たれた高校生、恋人と別れたばかりの青年、ワンオペで初めての育児に励む女性……。市役所に開設された「2020こころの相談室」に持ち込まれたのは、切実な悩みと誰かに気づいてもらいたい想い、そして、誰にも知られたくない秘密。あなたなりの答えを見つけられるよう、二人のカウンセラーが推理します。
明日への一歩のために、私たちは心を映す鏡になればいい。本当も噓も映し出す鏡に。

 

市役所の相談室を訪れた5名の悩みを巡る連作短編集。

 

コロナ禍で苦しんだ人が立倉市役所の「こころの相談室」を訪れ、熟達のカウンセラー晴川さんと、年寄りの正木さんに不満をぶちまける。その後、どうなったかが描かれ、最後は晴川さんが正木さんに謎解きするという構成。

 

相談者は、必ずしも真実を語らない、都合の悪いところは隠し、嘘をつき、自分の不満だけを曝け出す。2人のカウンセラーは巧みに傾聴して、心を解きほぐす。そのうえで晴川さんは、相談後の結果も踏まえて、相談者の嘘を明らかにし、真実を推理する。

 

第一話 白戸ゆり(17)

合唱部の高校3年生のゆりは、シングルマザーの収入では進学は無理で、ブライダル業界へ就職を希望していた。しかし求人はなく、第二希望のホテル業界からも求人は1件だけで、成績抜群の親友の花菜が優先されてしまう。
ゆりは相談室で、合唱部の全国大会が中止になり、求人がなくて将来への希望がないと嘆いた。さらに面会禁止の病院で祖母が亡くなった話で涙が出てしまった。さらに合唱の話をしている途中で感情が暴発し、お守りを投げ捨ててしまった。

彼女は何に怒り、絶望したのか?

第二話 諸田真之介(29

相談室で会社員だと名乗る真之介が、婚約者・愛花にコロナ禍で発熱外来の看護師をしているのは危険だからやめて欲しいと言ったことから別れ話になったと憤慨している。しかし、実は……。

 

第三話 秋吉三千穂(38)

三千穂は38歳での初産。パートナー立ち会う設備が整った病院を選んだのに、健司は仕事が忙しくて来られなくなった。産後も姿を見せない健司はあの女と切れていなかったのだ。不倫相手は……。

 

第四話 大河原昇(46)

コロナでネットカフェが閉まり、建設作業員の大河原は公園に寝泊まりしていうが、誰かが狙っているような気がして金属バットで武装した。結局、大勝負はやめて、寮付の建設作業員になるというが、実は……。

 

第五話 岩西創(19)

予約したが現れない岩西の自宅に相談室から電話を掛けたが、岩西は予約していないという。結局そのまま電話で相談することになる。大学はオンライン講義ばかりで、他の学生との交流もなく、生きるのが面倒になったと語る。高校生なみの小遣いしかよこさない父親に岩西は反発するが、実は……。

 

 

初出:「ジャーロ」80号~84号

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

5人の悩みはすべてコロナ禍によるひずみが原因だが、内容は様々だ。そして、いずれの相談者も懸命に悩みを訴え、二人のカウンセラーの助けを受けてなんらかの形で治まりをみせる。
しかし、その後の二人だけの会話の中で、晴川さんが正木さんに、相談者は真実を語っていないこと、なぜそうなのかと謎解きする。

この謎解きが意外なもので、相談者自身がまったく逆の職業であったりして、驚かされる。推理した根拠は多少強引すぎるが、良しとしよう。

 

「カウンセラーとは、答えを出さないプロなのだ。…ありのままの相談者を受け入れ、そばに寄り添おうとする。」(p100)という態度で相談に乗るのだが、その実、相談者の嘘を冷静に分析していたとは、晴川さんも人が悪い。

 

 

辻堂ゆめの略歴と既読本リスト

 

辻堂さんが、本書新刊エッセイで述べている。

……明確にコロナを作品のテーマに据えたのは本作が初めてである。市役所に設けられた相談室に心の不調を抱えた人々が訪れる、という設定は、コロナ禍で生活を送る中で自然と思いついた。

この三年で、二回の出産を経験した。入院中は家族との面会が一切禁止だった。

 

ファミリーウエディング:出産後に行う、新郎新婦の子どもと一緒に挙げる結婚式で「ファミリー婚」。
「授かり婚」という言葉もあったが、わかりやすく「できちゃった婚」と言うべきだ!

 

 

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夫婦の会話

2023年06月21日 | 個人的記録

 

「冷蔵庫がときどき変な音立ててるのよ」

「えっ、でもあれまだ10年にならないだろう?」

「やあねぇ、とっくに10年過ぎてるわよ」

「そーか~。家電製品って、10年過ぎるとバタバタ壊れるからなあ。うまく設計してるよな。そうすると、次はなんだ、次に古いのは?」

「家具だってもうそろそろなのが多いわよ」

「タンスだ。あなたが結婚したときに持って来たんだから、50年近くになるんだろう? この家でもっとも古くて、次にお役御免はあのタンスだな!」

そうすると、奥方が変な顔して、じ~~と私の顔を見ていました。

「えっ! はい、わかりました」            (もっとも古いのは80歳の私です)

 

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6月(1)の花

2023年06月20日 | リタイヤ生活

 

6月5日に届いた花

 

届いた時は、グラジオラスが少し咲いているだけ。でもユリの蕾11個が咲いた図をイメージする!

 

届いたメモ(最初の写真)には、「グラジオラスの先端の蕾は花が咲かないので、2-3輪分切り取ることで下の花が元気に咲きます」とあり、下の写真のように、ビクビクしながら思い切って上から3輪を切り落とした。

 

2日後、白と黄色のユリが咲き始め、少し華やかに。

 

グラジオラスは既にほぼ満開。

 

白いユリは早や開ききって、あとはしわがよって……。

 

4日後、7輪のユリが咲く。さらにまだ蕾が4つある。

 

む! 真ん中の黄色いユリがいじけてる。

 

花びらとめしべ、おしべがくっついたままなので、離してやったが、いじけたまま。

 

満開のユリを見て、何か変だと思いませんか?

 

大量虐殺写真。

届いたメモに「受粉すると花が役目を終えて急速に萎れてしまいますので、蕾が開いてきたら早めに花粉を取り除きましょう。」とあった。
ティッシュなどでおしべの花粉だけを取り除くのは手が、時間がかかりすぎる。時間はあるけど。花粉はテーブルなどに付くとなかなか取れないので、結局、おしべを全部切り取ってしまった。その成果が、上の写真。

LAリリーの嘆き「子孫繁栄のために必死で精一杯華やかに花を咲かせてきたのに!」が聞こえる。

 

 

アワ。コメの代わりに食べるらしい。「アワおこし」っていうのは聞いたことがあるが。

 

ソリダコ。フラワーアレンジメントの後ろの方で引き立て役のイメージだが、小さな花が全部咲くと、それなりとなる。

 

 

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6月の井の頭公園

2023年06月19日 | 散歩

 

火曜日の10時半、七井橋から池の東を見るもボートはほとんど見えず、緑はいっそう濃くなっていた。

 

池の西のマンションは相変わらずだが、水草が伸び伸び。

 

南側には背の高いハンノキが並ぶ。

 

池の北側から見るとハンノキはまさに屏風。

 

池の北西の地にハンノキ再生の取組を説明した看板がある。

「都内で絶滅のおそれがあるハンノキ林が井の頭公園には残されているが、乾燥化や台風で倒れてしまい、再生計画実行中」とある。

小さな池、水たまりのまわりにハンノキの子供を育成中。

私は絶対反対で、ハンノキ絶滅作戦を遂行したい。

実は私、花粉症で、検査したところ、スギ・アレルギーがもっとも強いが、第二位がハンノキなのだ。医者からも「ハンノキは背が高く、遠くまで花粉が飛びますからね」と言われている。ようやく最近治まりつつあると思ったら、関東では1月から5月末頃まで花粉をばらまくらしい。

 

 

井の頭池の南側は、池のすぐ端を散歩できるようになっている。数年ぶりに歩いてみた。

 

 

 

ところが、ところどころ道がふさがっている。桜の木が老朽化して道を塞いでいるのだ。

 

確かに、桜の木は先端部が水中に没するほど池に傾いて、倒れ込んでいる。

 

ひょうたん橋のたもとの定点観測地点。明るい緑一色。

 

これがひょうたん橋。写真の左にある水門橋との間の小さな池が、ひょうたんの形をしていることからの名前だと思う。

 

井の頭線のガードをくぐり、三角広場へ向かう途中で、木の伐採作業を見かけた。赤丸のところに人がいて、枝下ろしをしていた。
左下に見える井の頭線のガードは「爽健美茶」のTVコマーシャルに登場するもの。

これだけの広さの公園を常にきれいに安全に保っていただきありがとございます。末尾ながらお礼申し上げます。

カナダを旅行したとき、あちらの庭師(Gardener)は非常に尊敬される職業だと聞きました。

 

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柚月裕子『合理的にあり得ない2』を読む

2023年06月17日 | 読書2

 

柚月裕子著『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』(2023年3月27日講談社発行)を読んだ。

 

講談社の簡単すぎる内容紹介

あの美人探偵・上水流涼子が帰ってきた! 頭脳明晰・貴山を助手に、今回も知略と美貌を武器に、難事件をズバッと解決!

 

合理的にあり得ない 上水流涼子の解明』(上水流涼子役は天海祐希で月10(フジテレビ)でドラマ化されている)の続編。

 

 

上水流涼子(かみづる・りょうこ):殺しと傷害以外はどんな依頼も請け負って解決する「上水流エージェンシー」を経営。頭脳明晰、変装の達人、美人。資格を剥奪された元弁護士。空手の黒帯。

貴山伸彦(たかやま・のぶひこ):「上水流エージェンシー」の有能な(秘書・助手・経理)。涼子とコンビを組んで7年。計画を綿密に立てて無駄を省く完璧主義者。東大出のIQ140。イケメン。

丹波:新宿署組織犯罪対策課刑事。暴言を吐く古参刑事で涼子とは腐れ縁。

 

物理的にあり得ない

古谷という男から「関空に着いたある荷物を載せた車が東京へ向かう途中で行方不明だ。探して欲しい」との依頼があった。荷物が何かは言えないというが、手付金100万円、解決したら400万円と言われ、引き受ける。

涼子と貴山は、国際保護動物密輸に関わる人物のリストから浮かんだ大曽我祐介の家に乗り込み……。

 

倫理的にあり得ない

看護師・澤本香奈江から、別れた夫・安生が引き取った9歳の息子・直人を取り戻したいと依頼された。しかし、香奈江の親指の腹には固いタコがあった。直人はどちらを選ぶのか?

 

立場的にあり得ない

上司の娘・大学生1年生の由奈が摂食障害で入院している。丹波は、大学で何があったのか調査を依頼。

 

 

初出:「メフィスト」2017VOL.3、「日刊ゲンダイ」2022年10月4日~2023年2月3日

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)

 

このシリーズは、中高生も楽しめる気楽な作品で、寝転んで読むには最適。

柚月裕子さんも「自分では「いままで発表した小説の中で一番エンターテインメント色が強い作品」だと思っています」と語っていた。

 

著者は、涼子と貴山のキャラ、掛け合いを楽しんで書いているのだろう。読者も仲間になった気分で茶々を入れながら楽しく読める。

事件、謎は、やたら優秀な貴山の働きで、簡単に解明されてしまう。いかにもいい女・上水流涼子(天海祐希のイメージ)は、たいしたことはしていないうちに。

 

 

柚月裕子の略歴&既読本リスト

 

 

メモ

取らぬ狸の皮算用、沖のはまち、飛ぶ鳥の献立

 

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和田秀樹『老人入門』を読む

2023年06月15日 | 読書2

 

和田秀樹著『老人入門 ―いまさら聞けない必須知識20講』(ワニブックス|PLUS|新書361、2022年9月10日ワニブックス発行)を読んだ。

 

ワニブックスによる紹介文

老いに対する正しい知識がないことで、過度に不安になったり、老いが加速したり、結果的に不幸な老い方をしている人が多くいます。
そこで本書では、老年医学の専門家による「これだけは知っておかないともったいない」という必須知識をわかりやすくまとめました。

「老いはゆっくりとしか進まない」
「筋肉は日常生活で維持できる」
「脳の機能は自由時間を楽しめば維持できる」
「認知症は過度に心配しなくていい」
「With病気という考え方で穏やかな老後を迎えられる」
「ほかの高齢者はどういう感情で生活を送っているのか?」
「老いは本来、幸せな時間」
「老いてからの人生はどんなに奔放でもいい」など――。

年齢を重ねるたびに“どんどん楽に、幸せになっていく”老い方の手引きをご紹介します!
老親をもつ世代にもおすすめです。

 

 

身近な老いを見守る経験が減ってきた現代は、どうしても老いに対して悪いイメージだけを持ってしまいがちです。実際にはそんなことはありません。老いはほとんどの義務やノルマから解放される自由な時間をたっぷりと与えてくれます。(p27)

 

老人入門というのは、いつかは受け入れるしかない老いの人生の中に(多くは80代後半)、いかに自分の希望や願いを育てていくかを計画することでもあるのです。(p33)

 

脳の委縮は避けられない。しかし、脳の機能は、神経細胞同士の無数のネットワークの働きを保てば維持される。

例えば、ハイレベルでなくても、おしゃべりでも、自分がワクワクすることが刺激になり、ネットワークが強化され、脳機能は維持される。

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

80歳と立派な老人、立派じゃないけど、である私には、既に実感していたり、聞いていたことがある事実、お勧めが並んでいる。しかし、内容はうなずけることばかりであり、再認識することは有効だろう。

 

ワクワクすることを求め、新たなことに好奇心を持つ。改めてチャレンジしたい。特にコロナで同世代の人との触れ合いが少なくなったままなのをなんとかしないと。先日何回目かのコロナワクチンも打ったし、関係ないけど帯状疱疹ワクチンも打つし、活動的にならねば。

 

本の後半にある、「薬はなるべく飲むな」「健診は有害だ」「車は運転しろ」との和田さんの従来からの主張は、まあ、その本意の部分だけをあくまで参考にとどめておこう。

もう十分長生きしている私は、桐島洋子さんが言っていた「この歳になって、身体に良いからといって、もうまずいものなんて食べたくない」という考えには賛成なのだが。

 

 

和田秀樹の略歴と既読本リスト

 

 

 

以下、メモ。

 

廃用症候群(廃用委縮):筋肉や関節が使わなくなると衰えて日常生活も不自由になる。1週間の入院で下肢の筋肉は20%も委縮する。 → 自由時間を楽しんで動き、身体の機能を維持する。

 

脳というものは、脳細胞が減ってくるので委縮することじたいは避けられない。脳の萎縮と実際の認知機能の低下は必ずしも一致しない。脳の機能は細胞の数ではなく、神経細胞同士の間に張り巡らされた回路、無数のネットワークの働きで維持される。

例えばおしゃべりでも、自分が楽しいことをすれば、頭を使うことになり、ネットワークは強化される。

ハイレベルでなくても、自分がワクワクすることが刺激になる。

 

脳の萎縮は、感情を司る前頭葉から始まるので、老いは意欲を低下させる。初めての体験、ワクワクする楽しいことをして、前頭葉を刺激し、機能低下を防ごう。

 

完全主義を止めて、自分にあまく、おおらかになろう。

 

認知症は老化現象のひとつで病気ではない。80代後半で4割、90歳を超えると6割の人は認知症と診断されてしまう。いずれはボケるとしても、85歳までは逃げ切りたい。90代でもニコニコしていれば周囲は気が付きません。

 

認知症はある日を境に始まるのではなく、長いグレーゾーン(MCI軽度認知障害)があってゆっくりと症状が進む。MCIの段階で悲観的になって周囲への興味も好奇心も失ってしまうと、感情が動かされなくなるので前頭葉の老化が進み、認知症に進む可能背が高まる。

 

高齢者はタンパク質が不足しがちなので、肉を食べる必要がある。

 

高齢者の「うつ」は、もうだめだとかいううつ気分があまり目立つことがなく、「腰が痛い」「便秘が治らない」といった身体的な症状を訴えることが多く、歳だけら仕方ないとなりがちで、認知症を誘発させやすい。

 

 

 

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川上未映子の略歴と既読本リスト

2023年06月14日 | 読書2

 

川上未映子(かわかみ・みえこ)
2007年『わたくし率 イン 歯―、または世界』が芥川賞候補、坪内逍遥大賞奨励賞
2008年『乳と卵』で芥川賞受賞
2009年詩集『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』中原中也賞を受賞
2010年『ヘブン』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、紫式部文学賞受賞、映画「パンドラの匣」でキネマ旬報新人女優賞受賞        
2013年『水瓶』で高見順賞、『愛の夢とか』で谷崎潤一郎賞
2016年『あこがれ』で渡辺淳一文学賞
2019年『夏物語』で毎日出版文化賞受賞

他の著書に、、『 夏の入り口、模様の出口』『人生が用意するもの』『 すべて真夜中の恋人たち』、『黄色い家
川上未映子訊く、村上春樹語る『みみずくは黄昏に飛びたつ』 

夏物語』は40か国以上で刊行が進み(英訳版は『Breasts and Eggs)、『ヘブン』の英訳は2022年国際ブッカー賞最終候補に選出。

エッセイ 『世界クッキー』『安心毛布』『 ぜんぶの後に残るもの』、『きみは赤ちゃん』(川上未映子さんの2014年8月22日のブログ「まんまんちゃん、あん!」がおもろい)、『深く、しっかり息をして』

 

2011年芥川賞作家の阿部和重と共に再婚し、2012年5月末男子出産。

貧乏な環境で育ち、歌手デビューして地方のレコード店回りもしたが売れなかった過去を持つ。

 

 

 

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川上未映子『黄色い家』を読む

2023年06月13日 | 読書2

 

川上未映子著『黄色い家』(2023年2月25日中央公論新社発行)を読んだ。

 

中央公論新社のインタビュー冒頭の内容説明

2020年、20代女性への監禁・傷害の罪で吉川黄美子被告・60歳の初公判が開かれた。その記事を読んだ花は、黄美子との過去を思い、当時一緒だった蘭と会う。今は行方不明の桃子を含め、かつて同居した4人は、警察にいえないことをしていたらしい。物語は1990年代後半にさかのぼり、15歳の花がスナックで働く母の友人・黄美子と出会い、ともに過ごした20歳すぎまでの年月を描いていく。

そのような構成の川上未映子『黄色い家』(中央公論新社)は、非合法な“シノギ”に手を染める内容でエンタテインメント性がありつつ、女性4人の共感と齟齬を細やかにとらえている。本作は、どのように生まれたのか。著者に訊いた。 (円堂都司昭/1月31日取材・構成)  

2024年本屋大賞ノミネート

何も持たずに家を飛び出した15歳の少女が、なんとか生き残り、そして、その後も生活できるようになるため、必死で働く。しかし、火事でそのスナックを失ってしまう。初めて得た自分の“家族”4人を守るために花が選んだ手段は犯罪しかなかった。そして、“家族”はバラバラに。

 

 

物語は、40歳になっていた伊藤花が、偶然ネットで見つけた記事で始まる。傷害、脅迫、逮捕監禁の罪に問われていた女の名前は、かつて花が、数年間を共に暮らした、吉川黄美子だった。

 

話は25年前の東京・東村山に戻る。花は、シングルマザーの母から離れ1人暮らしをするために必死に貯めたアルバイト代・72万円余りを、母親の元彼・トロスケに盗まれる。絶望した花は家出し、偶然出会った母の友人・吉川黄美子と三軒茶屋で暮らし始める。

 

ふたりはスナック「れもん」を始める。そこに、キャバクラで働いていた少女・蘭と、裕福な家庭を飛び出してきた少女・桃子が加わり、4人は一つ屋根の下で家族のように、仲良く暮らすようになる。

 

下の階からの火事で「れもん」が焼失し、収入源を失い、保険証などを持たず、未成年の花は、銀行口座を作ることも、新しい店舗を借りることもできなかった。花は必死に稼ぐ手段を探すが、生活能力に乏しい黄美子は頼りにならず、蘭と桃子はそのままダラダラ過ごすだけだった。

 

花は犯罪に加担することで稼ぐようになり、蘭と桃子も巻き込む。やがて、3人の間にきしみが生じ……。

 

日本語題名は「黄色い家」だが、表紙には英語で “Sisters in Yellow” とある。

初出は「読売新聞」2021年7月24日~2022年10月20日。
四六判:608ページ。13章。

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)

 

「親ガチャ」に外れた家庭に生まれた花は、まともな生活に入り込みたいのだが、その方法がわからない。ただ、金を溜めることしかできなかった。その金を盗まれて、絶望して家出する。バイトでも、スナックでもただただ一生懸命、バタバタと働いてなんとかしようとするが、見通しとか計画は立たない。懸命に働いても、結局負の連鎖になってしまう。


ようやく4人の疑似家族で楽しく暮らし始めるが、状況が悪化すると、犯罪に手を染めるしかなく、さらに花の狭い考えで蘭、桃子を縛るので、“家族”はバラバラになっていく。

 

女性4人のそれぞれの生き方に興味がある人(女性?)は面白く読めるかもしれない。花のあぶない生き方にハラハラしたりして。しかし、おじいさんにこの内容で600頁はキツイ。

 

 

 川上未映子の略歴と既読本リスト 

 

伊藤花:母親・愛はバーで働くが、金の管理ができない。

吉川黄美子:先の事など考えることができない。左右を覚えられず、右手に墨を入れられた。母親は刑務所。

加藤蘭:キャパクラで働くが稼ぎが悪い。

玉森桃子:親は金持ち。美人の妹にいじめられる。居場所がない。

琴美:黄美子の親友。美人のキャパクラ嬢。

安映水(アン・ヨンス):黄美子の友人。36歳。在日韓国人。兄は雨俊(うじゅん)。

ヴィヴィアン:カード詐欺の元締め。

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SAISONNIER セゾニエ でランチ

2023年06月11日 | 食べ物

 

学園都市・国立市の桜やイチョウの並木のある大学通りと、学園通りの交差点にある「フレンチレストランSAISONNIER」 でランチした。

(写真はパンフレットからお借りしました) 

フランス語のSAISONはが英語のSeasonなのだろうから、季節という意味なのだろう。

何か月も前から予約した方が良いという人気レストラン。

 

15名ほどの会食なので、メニュはいつものランチと違うかもしれない。

 

最初の一皿

 

パン(4人分)

 

 

ノルウェイサーモンの瞬間燻製

 

グリーンピースのスープ

 

青じそとあんずのグラニテ(シャーベット状の氷菓)

 

スズキのポワレ、フキノトウのバルサミコソース

 

ルバーブ( Rhubarb)のタルト、ヨーグルトのシャーベット

 

コーヒーと、右は食べてしまったオレンジのプリン。

名札の名前は消しました。

 

緑に囲まれた落ち着いた外観、ゆったりして洒落た店内、親切な店員さん、そして、見た目も、味も良く、食べやすい料理。さすが、人気の予約が取れない店だ。

 

帰りは国立駅に出た。国立市のシンボルだった赤い三角屋根の「旧国立駅舎」が再建されていて、中に入りながらポケットからスイカを(交通系ICカードです)取り出すと、そこは展示室・観光案内場・休憩スペースで、駅は通り抜けた向こう側の別の建物だった。

 

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6月(1)の散歩

2023年06月10日 | 散歩

 

少し濃いめの黄色い花、ヒペリカムだ。

 

明るい黄色い花がけっこういろいろなところで目立つ。ヒペリカムの名を知ると、そこらじゅうにヒペリカムが登場する。

 

花が散ると、

真ん中から赤い実が出てくる。(私のブログ20221011より)

 

緑の実となる種類もある。(私のブログ20211122

 

ひょろっとまっすぐ突っ立ったバラ。

八重の白いバラ

 

葉を覆い隠すほどの花、ヒマラヤヤマボウシ(常緑ヤマボウシ)だ。

4つの花びらがくっきり。

 

6月はなんといってもアジサイの季節。

昔はアジサイと言えば、青いアジサイと、ガクアジサイくらいしか見当たらなかったが、今は種類が豊富だ。

 

ピンクのアジサイ

 

青いアジサイ

 

真っ白いアジサイもなかなか良い

 

少し薄緑色から白に変わるアジサイもある。

 

ガクアジサイも様々だ。

周りのガクが白

 

ガクも青

 

濃い青

 

よく見ると、どれも違って、どれも良い。

 

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一色さゆり『神の値段』を読む

2023年06月09日 | 読書2

 

一色さゆり著『神の値段』(宝島社文庫Cい-13-1、2017年1月25日宝島社発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

マスコミはおろか関係者すら姿を知らない現代芸術家、川田無名。ある日、唯一無名の正体を知り、世界中で評価される彼の作品を発表してきた画廊経営者の唯子が何者かに殺されてしまう。犯人もわからず、無名の居所も知らない唯子のアシスタントの佐和子は、六億円を超えるとされる無名の傑作を守れるのか――。美術市場の光と影を描く、『このミス』大賞受賞のアート・サスペンスの新機軸。

 

昭和40年以降メディアにも決して姿を見せず、生死すらはっきりと明かされていなかった世界的コンセプチュアル・アーティスト・河原温の訃報を聞いたことから着想を得て執筆された

 

 

謎の世界的巨匠美術家・川田無名を売り出したギャラリーのオーナー永井唯子に誘われて勤務する田中佐和子が主人公。無名は唯子とアトリエ統括の土門以外の誰にも姿を見せず、死んでいるとの噂もある。

ある日、無名が1959年と若かった時に制作した巨大な作品がギャラリーに運び込まれる。オークションに出品されれば10億円は下らないと思われる作品だった。唯子はこの作品がここにあることは、誰にも口外しないように佐和子らに命ずる。パーティーで佐和子は、唯子の夫・佐伯に初めて会う。

唯子は品川にある倉庫で倒れているのが発見され、病院で息を引き取った。佐伯が、唯子が抱えていた仕事は当面佐和子が引き継いて欲しいという。佐和子は後輩・松井とともに、唯子が倒れていた倉庫へ行き、すべての作品はなくなっていないことを確認したが、位置は変わっていた。

相続者となった佐伯は1959年の作品を、唯子と長い付き合いがあったワン・ラディという従来多くの作品を買ってもっている有名コレクターに売ることにする。刑事が無名を重要参考人として捜査しているが行方は不明のままだ。師戸に呼ばれて、佐和子と佐伯が、深夜にアトリエへ行くと、無名からのメールに記された数字とアルファベットを解読することにより、これまで作品を制作してきたという。

 

 

一色さゆり(いっしき・さゆり)

1988年、京都府生まれ。東京藝術大学芸術学科卒業ののち、香港中文大学大学院美術研究科修了。

第14回『このミステリーがすごい!』大賞・大賞を受賞し、『神の値段』(宝島社)にて2016年にデビュー。

他、『嘘をつく器 死の曜変天目』『骨董探偵 馬酔木泉(あしびいずみ)の事件ファイル』『絵に隠された記憶 熊沢アート心療所の謎解きカルテ』

 

 

田中佐和子:唯子のアシスタントになって3年目。

川田無名(かわた・むめい):インクアートの美術家。1939年生まれ。惟子と土門以外には顔を知られていない。死んでいるとの噂もある。

永井唯子(ながい・ゆいこ):ギャラリーのオーナー。無名と親しく売り出した。佐和子の上司。美女。

佐伯章介:唯子の別居中の夫。フィナンシャル・アドバイザー。

土門正男:アトリエを統括するディレクター。無名を知っている。

松井:佐和子の後輩。ゲイ。昨年パリの美大を卒業。

師戸(もろと):作品制作を行う最ベテラン職人。

:ベテランの輸送業者。

真里子:唯子に反感を持つ別のギャラリーのオーナー。

ジョシュア:ニューヨークのギャラリスト。唯子と共に無名を売り出していた。

ワン・ラディ:コレクター。中国人の大金持ち。

沼田:コレクター。

唐木田一郎(からきだ・いちろう):無名のことをよく知る弁護士。

金谷:若い女性刑事。

丸橋:50代後半の刑事。

 

 

アートのマーケットには二つある。

  • プライマリー・マーケット:現存する作家から新作を直接預かり、売り出し方を考え、代理として売る。提携ギャラリーに委託することはある。仕入れ値を支払う相手は作家本人。
  • セカンダリー・マーケット:二次であれ三次であれ、作品を転売する。作家からではなく、別のコレクターや画廊から仕入れて転売するので、仕入れ値は作家には支払われない。骨董品やオールドマスターの市場であるが、現存作家の作品を扱いながら、作家と直接仕事をしない場合もある。

 

 

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