hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

村岡恵理編『花子とアンへの道』を読む

2014年07月31日 | 読書2

村岡恵理編『花子とアンへの道 本が好き、仕事が好き、ひとが好き』(2014年3月新潮社発行)を読んだ。

赤毛のアンの翻訳者・村岡花子の、決して順調ではなかった生涯を、本人はもとより、書いた本、付き合った人、愛した小物など多面的に豊富な写真と文で紹介している。

著書の一部なのだが、48冊の表紙の写真がずらりと並ぶ。アンシリーズ22冊はじめ、子供向けの翻訳本が多いが、女性に向けた本もある。旦那さんから送られた大部の例のウェブスター第三版の写真もある。

プリンス・エドワード島の写真で有名な吉村和敏さんの写真に、「赤毛のアン」のことばが添えられている。14ページのあまりにも美しい写真に、夢見るアンの言葉。「木々が眠りながらお話しているのを、聞いてごらんなさい。・・・きっとすてきな夢を見ているにちがいないわ」「マイラ。紫水晶って、おとなしいすみれたちの魂だと思わない?」
夢見る頃を過ぎた元乙女たちは、ウン十年前に一っ跳びするだろう。

若き村岡さんも語る。「恋は男子の生活の一部、女子の全部はこれなのですもの! 若い私のこの胸は信じられない人には任せまい。・・・然しここに万古不滅の悲哀が有る、曰く理想と現実とは伴わぬと、理想を得ずはオールド・ミス!」(雑記帳より)

“Anne of Green Gables”の日本語題名を村岡花子は、例えば「窓に倚る少女」「夢見る少女」と考えていた。出版社の社長から「赤毛のアン」との話があったが、花子は「絶対にいやです」と断った。しかし、大学生の娘みどりは「ダンゼン『赤毛のアン』がいい、「窓に倚る少女」なんておかしい」と言い、花子は若い人の感覚にまかせ、社長に訂正の電話を入れた。・・・花子のしなやかで明るい性質を物語る話だ。


私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

豊富な写真を見るだけでも楽しめる。貴重な写真も多い。
花子の子供の頃の話はほとんどないが、NHKの番組にはまっている人は必見だ。

花子の「赤毛のアン」は子供を意識しているからだろう、かなり意訳や、省略がなされている。大人向けで難解な表現もある原文に忠実な翻訳は、松本侑子「赤毛のアン」(集英社文庫、2000年5月発行)にある。


村岡恵理(むらおか・えり)
1967(昭和42)年生れ。成城大学文芸学部卒業。村岡花子の義理の娘(実の姪)・みどりの娘
祖母・村岡花子の著作物や蔵書、資料を、翻訳家の姉・村岡美枝と共に保存し、1991(平成3)年より、その書斎を「赤毛のアン記念館・村岡花子文庫」として、愛読者や研究者に公開している(不定期・予約制)。


私がアンの家を訪ねた記録は以下。
赤毛のアンの家」「モンゴメリーの墓など」「モンゴメリー生家など

ケベック、プリンス・エドワード島など「カナダ東部への旅全体



目次
花子さんって、どんな人?
生涯、翻訳家/トレードマークは和服姿/ヒューマニズム精神あふれるクリスチャン/仕事も家庭も愛したひと

よみがえる胸の高鳴り 『赤毛のアン』珠玉のことば集……写真・吉村和敏

つよく、やさしく、しなやかに 波乱に満ちた夢中の人生……文・村岡恵理
ミッション・スクールで大いに学ぶ 1893―1913
甲府の英語教師、青春を謳歌する 1914―1918
出会い、別れ、喜びも悲しみも強さに変えて 1919―1931
戦火を乗り越え、命がけの翻訳 1932―1951
『赤毛のアン』誕生! ペンと共に生きた75年 1952―1968

掌中の宝物

彼女たちとの出会い 村岡花子の交友関係……文・村岡恵理

没我で奏でた名演奏 翻訳家としての村岡花子……文・村岡恵理

村岡花子略年譜

梨木香歩 アン・シャーリーの孤独・村岡花子の孤独
佐佐木幸綱 短歌と出合う
森まゆみ 村岡花子の時代
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CAFE FREDY でランチ

2014年07月29日 | 食べ物
吉祥寺東急 3FにあるCAFE FREDYでランチ。

一月にフルーツティーがご好評で、再度の来店が御下命されていた店だ。
ながらくお待たせいたしました。




頼んだのは、ズッキーニとトマトのグラタン。
単独で1100円、飲み物付きで1500円(多分)。



お味は、ごく普通においしい。
TVカメラが回っていれば、「う~ん、おいしい~!!」というところ。

飲み物はフルーツガーデン。



中味はまさにフルーツガーデン。
こちらは、本当においしく、お勧め。



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香山リカ『ソーシャルメディアの何が気持ち悪いのか』を読む

2014年07月27日 | 読書2
香山リカ著『ソーシャルメディアの何が気持ち悪いのか』(朝日新書464、2014年6月朝日新聞出版発行)を読んだ。

宣伝は、
ツイッター、フェイスブック、LINE……。今やSNSは生活に深く浸透しているが、それに息苦しさを感じている人も多い。ネット上でのつながり、賞賛やその反対にある悪意や炎上。SNSへの違和感の正体と、SNSが変えつつある人間について鋭く迫る。


序章
・・・「絆」が強調され、「つながり」のメディアが生まれれば生まれるほど、他者の気持ちをいっさい慮らず、「私がこう言ったり行動したら、他の人たちはどう思うか」という想像ができない人たちがふえているようなのだ。
・・・診察室に来る人の多くは濃密すぎる人との関係や家族からの過剰な介入、支配がストレスとなってうつ病や摂食障害を発症させるのだ。

こんな調子で、1章では、SNSがストレス解消どころか新たなストレスになっていると、報道事件、診察例をあげて説明する。
2章では、ネットでは匿名性や、自分で自分をだまし易いため、より過激になりやすい、といった話が続く。

後半は、ネットでぼろ糞に言われることが多い著者が、思い切りネトウヨ(ネット右翼)批判する。
ネトウヨは情報の入手先が極端に限れれていて思い込みが強くなる。

2チャンネルで10年前に多く流れた句(?)
イラク人質 叩いた僕は 自分で自分を 監禁中
他人に説教 している僕は 自動車教習 一回怒られ 不登校
ネットじゃ強気で 威張る僕 面接とかでは いつもオドオド

SNSは日本人をどう変えるか?
「感動した」「いいね!」が感染症のように広がる社会。
文章はどんどん圧縮されて短くなり、
さらには言葉ではなく、スタンプや画像でやり取りをする。
果たしてSNSでつながることで、
コミュニケーションが深まっていると言えるのか?
それとも私たちは何かをなくしつつあるのか?

文章だけでなく、思考もスカスカになっていく
「新譜を購入」と書いて、感想を書かない。(つんく♂)
エッセイストの酒井順子氏は、「みっちり世代とスカスカ世代」というタイトルのエッセイで、・・・「紙に書く世代」はどうしても・・・「みっちり書きたくなる」。・・・「ネット世代」は、かえって文字をみっちり詰めたら読みにくくなってしまいます。だからこその改行につぐ改行、行間は空け放題、ということなのでしょう。


私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

いつもの香山流の本で、話題の事件などを交えながら、SNSという新しい話題を簡単に読めるように書いている。ほぼ同世代の(20歳ほど離れてはいるが)私としては特に異論はないのだが、びっくりするような話もない。若い人の行動をざっと俯瞰するには適当な本だ。

このブログもみっちり。どうしても書き過ぎてしまう。しかし、もともとより多くの人に読んでもらおうという気はなく、主目的が自分のメモとして書いているので、なるべく情報を多くと、書き過ぎてしまう。確かに文字が多いと見にくいし、私自身、後から必要があって、著者名や署名で検索しても、丁寧に一字一句読みはしない。
でも、短く分かりやすくし、写真など入れて閲覧数を上げても、何の意味があるのだろうか。そもそも、「〇〇なう」と写真だけのブログを見ても伝えたいものがないのだなと思うだけだ。
ともかく、自分のやりたいようにするのが一番だ。ということで、今後も文章はみっちり。ときどきの日記(レストランなどの記録)はほぼ写真だけであっさり。


それにしても、安倍首相に「香山氏(?)は論外」と決めつけられた恨みは大きく、この本でも安倍さんは香山さんにボロクソに言われている。内容について私には異論はないが、半分は個人的恨み(?)なのに、そんなもの読まされるのはたまらん

悪乗りして言うと、安倍晴明という陰陽師がいたが、安倍首相の先祖の一つにあたるらしい。
平成22年(2010年)には、安倍氏と関わりがあるとされる安倍晋三が「第90代内閣総理大臣 安倍晋三」名義で石塔を寄進している。(安倍清明が修行したという安倍文殊院に関するウィキペディア情報)
晴明は1005年に亡くなり、「私は1000年後にまたこの世に蘇る」と言ったということで、2005年安倍晴明、一千年期の祭典が行われた。2005年と言えば、安倍晋三氏が第3次小泉改造内閣で内閣官房長官として初入閣した年だ。これって怨念??


香山リカ(かやま・りか)
1960年北海道生まれ。東京医科大学卒。精神科医。立教大学現代心理学部映像身体学科教授。
学生時代から雑誌などに寄稿。その後も、臨床経験を生かして、新聞、雑誌などの各メディアで、社会批評、文化批評、書評など幅広く活躍。本名中塚尚子で、パートナーはプロレスジャーナリストの斎藤文彦らしい。
『おとなの男の心理学』『<雅子さま>はあなたと一緒に泣いている』『雅子さまと新型うつ』『女はみんな『うつ』になる』『精神科医ですがわりと人間が苦手です』『親子という病』『弱い自分を好きになる本』『いまどきの常識』『しがみつかない生き方』『だましだまし生きるのも悪くない』『人生の法則』『できることを少しずつ』『若者のホンネ』『新型出生前診断と「命の選択」』
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西荻駅そばの「手打ちそば雲龍」

2014年07月23日 | 食べ物
西荻窪駅から東女方面へ数分、「手打ちそば雲龍」でランチ。

午後2時頃だったので、売り切れ閉店と思いきや、滑り込みセーフ。

要望のあった「えび」と「穴子」を一緒にしましたと張り紙があった「エビ穴子天」2200円なりを注文。



そばも腰はあるが、固すぎず、ボリュームもあって、ご機嫌。
久しぶりの穴子も美味。しかも長い!



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東田直樹『自閉症の僕が飛び跳ねる理由』を読む

2014年07月22日 | 読書2

東田直樹著『自閉症の僕が飛び跳ねる理由 会話のできない中学生がつづる内なる心』(2007年2月(株)エスコアール出版部発行)を読んだ。

著者は、全く会話ができず、跳びはねたり,急に大声を出したりする“平均的な”自閉症の子供だ。そんな著者がパソコンで自分の気持ちを表現している。
コミュニケーションできるタイプの自閉症の人がその内面を綴ったものはあるが、音声での言葉を持たない自閉症の人が内面を綴っているものは少ないという。

自閉症について良く知らない人の質問に答える形で書かれている。

僕は、今でも、人と会話ができません。声を出して本を読んだり、歌ったりはできるのですが、人と話をしようとすると言葉が消えてしまうのです。必死の思いで、1~2単語は口に出せることもありますが、その言葉さえも、自分の思いとは逆の意味の場合も多いのです。(まえがき)


筆談とは何ですか?
自分の力で人とコミュニケーションをするためにと、お母さんが文字盤を考えてくれました。文字を書くこととは違い、指すことで言葉を伝えられる文字盤は、話そうとすると消えてしまう僕の言葉をつなぎとめておく、きっかけになってくれました。
ひとりで文字盤を指せるようになるまで、何度も挫折を繰り返しました。それでも続けてこられたのは、人として生きていくためには、自分の意志を人に伝えることが何より大切だと思ったからです。


大きな声はなぜ出るのですか?
人に迷惑をかけていることは、分かっています。・・・僕も静かにしたいのです。けれども、僕たちは口を閉じるとか、静かにするとか言われても、そのやり方が分からないのです。


どうして質問された言葉を繰り返すのですか?
僕らは質問を繰り返すことによって、相手の言っていることを場面として思い起こそうとするのです。言われたことは意味としては理解しているのですが、場面として頭に浮かばないと答えられません。


声をかけられても無視するのはなぜですか?
・・・僕が悲しいのは、すぐ側にいる人が、僕に声をかけてくれた時も気がつかないことです。・・・声だけで人の気配を感じたり、自分に問いかけられている言葉だと理解することは、とても難しいのです。声をかける前に名前を呼んでもらって、僕が気づいてから話しかけてもらえると助かります。


最後に著者の創作童話が掲載されている。

この本では中学生だった作者が、その後、高校生になって続編『続・自閉症の僕が跳びはねる理由―会話のできない高校生がたどる心の軌跡』を出版している。


私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

会話がまったくできない自閉症の人の思いを書いた貴重な本だ。
質問に答える形なので、読みやすい。しかし、内容は私の自閉症への偏見を打壊すものだった。

外見からは想像できない知的な内容で、身体が思いとは別の行動をとってしまうという困難に立ち向かう人の雄々しささえ感じる。極端な例だが、車いすに乗って微動だにしないホーキンス博士の頭の中で、高度な計算がなされているようなもので、外見、発する言葉からは想像できない思いがあるようだ。

身体がというか、脳が思いとは別の命令を下し、迷惑をかけているのが分かっているのに、どうしても奇声をあげてしまったりするという。思っていることが口に出ず、違う言葉を発してしまう。これは一体どういうことか。確かに本人には辛いことだろう。
ただし、本人の感じ方は人により異なり、自閉症といっても様々なようだ。


東田直樹(ひがしだ・なおき)
1992年、8月生まれ
千葉県出身。作家。会話のできない重度の自閉症。パソコンおよび文字盤ポインティングにより、援助なしでのコミュニケーションが可能。
小学校5年生までは授業中も母に付き添われて、普通学級に在籍。
小学校6年生から中学3年生までは、養護学校で学ぶ。その後、2011年3月アットマーク国際高等学校(通信制)卒業。
第4回・第5回「グリム童話賞」中学生以下の部大賞などを受賞。
以上経歴は、著者のホームページより 
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林真理子『フェイバリット・ワン』を読む

2014年07月20日 | 読書2


林真理子著『フェイバリット・ワン』(2014年3月集英社発行)を読んだ。

夏帆(なつほ)23歳は、専門学校卒業後、アパレルメーカーに就職したが、先端のデザインには程遠い仕事だった。専門学校から付き合っている恋人・譲一がいながら、会社のエリート坂本さんとも付き合っている。

ごく普通の女性・夏帆は、誘われた合コンで出会った売れないお笑い芸人の智行とも付き合うようになり、さらに大人のカメラマンとの恋(?)、そして自分のブランドを立ち上げ・・・。
もっとレベルの高い人と恋愛を、もっと高級な服のデザインをしたい。「ふつうの女の子」から、「特別な女の子」への階段を上りはじめる。

初出:「MORE」2011年1月号~2013年10月号


私の評価としては、★★(二つ星:読めば)(最大は五つ星)

飛ばし読みしました。

ごく普通な女性が成り上がる話で、林さんは、「そう、これは小説版“野心のすすめ"なんです」と語っているらしいが、主人公は満足することがないだけで、努力のあとがまったく見えない。あまりにもオバカで自分勝手でついていけない。

そこそこ可愛いが、とくに美女ではなく、服のセンスが良いと自分では思っている若い女性が主人公なので、女性向け雑誌MORE読むような女性が感情移入できるのだろう。二人の男性と同時に付き合っていれば、多少でもやましい気持ちがあると思うのだが、相手の方が完全に私を満足させないのが悪いと思っている節がある。若い女性って、こんなの??
70歳過ぎたおじいさんにはバカバカしくて。無理!無理!

林さんの小説の多くが、芸能界や、贅沢な生活が描写されていて、ミーハー心を刺激する。ここでもモデルや、アパレル界、お笑い芸人が登場し、華やかな世界の裏側が、といってもちょっとだけ、描かれる。実際は、競争が厳しいだけ、豊かな才能や、冷酷な戦略があると想像するのだが、描かれている世界は軽すぎる。


さんざんなこと言ったわりには、林さんを良く読んでいるじゃないと言われそう。はい、私、古希過ぎのミーハーです。

林真理子の略歴と既読本リスト

 

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「ful.cafe」でランチ

2014年07月19日 | 食べ物


吉祥寺通りから中道通りに入り、150mほど行った右側にマリオンワンビルがあり。





そのB1



ful丼(サラダ&スープ付き)
豆腐ときのこの味噌バター丼   700円





ロコモコ(サラダ、スープ&ドリンク付き)
ハンバーグに目玉焼きをのせた定番のロコモコ 960円



味はまあまあだが、ちょっと豪華さ0で、惨めかも。店内には貸本コーナーなどもあり、なにやら「ナウい」雰囲気。年寄りの来る店ではないかも。

メニュー



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ウッドベリーでランチ

2014年07月17日 | 食べ物
「ウッドベリー」でランチした。



売り物は、自分の店で作っている生フローズンヨーグルトとある。

ランチセットで一人842円と安い。

齢と共に少食になる私と、もともと少食の相方。これで十分。





パンが嫌いなベーグルなので、もう来ないかも。

本店は吉祥寺駅南口にあるが、私たちの入ったのは吉祥寺図書館の隣
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三浦しをん『神去なあなあ日常』を読む

2014年07月15日 | 読書2


三浦しをん著『神去(かむさり)なあなあ日常』(徳間文庫2012年9月)を読んだ。

本屋大賞で第4位になり、2012年に続編『神去なあなあ夜話』が刊行され、発行部数はシリーズ累計で35万部を超えるというヒット作だ。2010年にラジオドラマ化、2014年に映画化された。

神去村(かむさりむら)は三重県中西部、奈良との県境近くにある山奥の村で、「なあなあ」とは、「ゆっくり行こう」「まあ落ち着け」というニュアンスだ。(これら方言は著者の創作)

高校を出たら適当にフリーターでもやろうと思っていた平野勇気は、卒業式終了後に担任から就職先を決めておいたと言われ、母親からは行かなければこっぱずかしい詩を友達に暴露すると脅され、仕事内容も分からないまま、すぐ帰ってくればいいやと、三重県の神去村へとやってくる。

就職先は中村林業株式会社。現場での過酷な山仕事、ヒルやダニとの戦いに、脱出を試みるも失敗。雄大な自然、立ち向かう男たちに勇気は次第に魅了され、この地の留まろうと決意する。そこに、神去小学校の美人教師・直紀に一目ぼれ、かるくあしらわれても、諦めずにオズオズとアプローチする。

頑張るんだ、俺。「ハマの種馬」と呼ばれた男の、自信を取り戻せ。呼ばれたことないけど。



やがて、神去村で行われる神事オオヤマヅミが行われる。今年は48年に一度の巨大な大木を麓まで落とす危険な行事であり、勇気も・・・。

初出:『本とも』にて2007年7月号から2008年7月号まで連載され、加筆修正の後、2009年に徳間書店より刊行された。2009年5月徳間書店より刊行


私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

林業が小説になるとは思わなかった。私は、若い頃、山の大きな木を切り倒すボランティアをやったことがあるので、木の切り倒し方など細かい描写も面白かったが、一般の人はどうなのだろうか。
今までにないテーマだが、地味で、軽やかさのない話を、けっこうおもしろい作品に仕上げているところはさすが筆力抜群の三浦しをん。『舟を編む』と同じと言えば同じパターンだ。

フリーター希望のチャラオが、大自然の中で徐々に山の男に変わっていく過程が見事に描かれる。



三浦しをんの略歴と既読本リスト


平野勇気(ひらの・ゆうき)

主人公。神奈川県の高校卒業式終了後に担任から就職先を指定され、仕事内容が解らぬまま、山奥の神去村へやって来る。

飯田与喜(いいだ・よき)

勇気がお世話になる家の主人。山仕事に従事する中村班のエース。通称、ヨキ。勇気を指導する。

飯田みき(いいだ・みき)

ヨキの妻。エキゾチックな美人。実家は神去村唯一の商店「中村商店」。ヨキの一途。

飯田繁(いいだ・しげ)

ヨキの祖母。

ノコ

飯田家の飼い犬。

中村清一(なかむら・せいいち)

中村林業株式会社社長。30代だが、広大な山林を持ち、村の林業を率いる「おやかたさん」。息子は山太(さんた)。

中村祐子(なかむら・ゆうこ)

清一の妻。美人。神去にある祖父母の家には夏休みなどに来ていたが、東京で生まれ育つ。大学で清一と出会い、結婚した。

田辺巌(たなべ・いわお)、小山三郎(こやま・さぶろう)

神去地区に住む、中村班のメンバー。

直紀(なおき)

祐子の妹。はねっかえりの美女。



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西原理恵子『サイバラの部屋』を読む

2014年07月13日 | 読書2


西原理恵子著『サイバラの部屋』(新潮文庫さ-66-4、2016年1月発行)を読んだ。

裏表紙にはこうある。
ようこそ、何でもアリの部屋へ──。よしもとばななやともさかりえを相手に、なぜだか近所のオカン談義。重松清と成り上がり人生を振り返る。リリー・フランキーにはライバル意識むき出し。出所したてのホリエモンとはダイエット話に花を咲かせる。大胆にもやなせたかし先生のポジションを狙う……。野望も下ネタも人情も一緒くた! 読めば不思議と元気になれる、盛りだくさんの対話集。


よしもとばなな
西原:私は、33歳で最初の子どもを産んで、いま8歳の男の子と6歳の娘を育てているんですが、ばななさんの方は?
よしもと:30代の最後に滑り込むみたいに出産して、息子はいま3歳ですね。
・・・
西原:ヤツらは動物的エネルギーにあふれていて、気に入ったことは100万回繰り返すからね。・・・夏は水に漬けると弱るよ~。・・・よ~く陽に当てるのもコツでございます。その後、焼ソバとかオニギリなど炭水化物をたっぷりと。寝しなにダメ押しとして、タル~い、つまんない本を朗読すれば、途端に、カターンといっちゃうから。「ザマァみあがれ」というくらいよく寝ますよ。


ともさかりえ
西原:男は女の話を100%聞いていない! それは幼いころから脈々と続いていることだったんだって、息子を通して初めて気づいたわけです。例えば、息子に怒るわけですよ。すごく反省しているので「なんでお母さんが怒っているかわかっている?」と聞くじゃないですか、その答えが「え~っと???」って。・・・自分が好きだった人に泣きながら夜通し抗議したことが全部無駄だったんですよ。


堀江貴文
西原:でも今回のテーマは「リバウンド」なんだよね。政治やビジネスがテーマでなくて、リバウンド! さすが『女性自身』。


みうらじゅん
みうら:しゃべりすぎると面白い人だとは言われるけど、それ以上はないんだよね。


リリー・フランキー
西原:(岩井)志麻子ちゃんといつも言ってるよ。「なんかさ、男ってさ、小説家になったとたんにモテない? 何で女はダメなんだよ。けっ」って。
・・・
サイバラのひとこと:最近は俳優としての活躍もめざましくて、どんどん男前路線に行ってるよね。でも私に言わせれば、「温水洋一」枠だけど。



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

どうしようもなく下品だけど、徹底していて、笑える。
絵が下手な自分はどんなマンガにすべきか、など自分の位置づけをしっかり考えているし、何にでも体当たりだ。とんでもない不幸も笑い飛ばそうとしっかり努力している。
どんな対談相手とも、あけすけに語り合い、笑をとる。おもろい。


目次
第一章 作家たちとのガチンコ対談編
養老孟司(虫との正しいつき合い方)
よしもとばなな(子どもは予測不能な生き物である)
重松清(「お父さんの気持ちがわかる、小六のガキ」なんて)
姜尚中(母が教えてくれた“トラウマ”)
柳美里(「書く」ことを手放さなければ、生きていける)


第二章 異業種上等! 雑食対談編
ともさかりえ(女の人生、波瀾万丈)
深津絵里(「女ともだち」ってなんだろう)
荻原博子(稼ぐに追いつく貧乏なし!)
堀江貴文(身も心も“脱リバウンド”)


第三章 漫画家たちとのライバル対談編
みうらじゅん(カルマは急に止まれない)
リリー・フランキー(爆笑・ド新人時代)
伊藤理佐(ベテランかあさんともうすぐかあさん)
やなせたかし(作者が面白いから作品は面白い)



西原理恵子(さいばら・りえこ)
1964年、高知県生れ。武蔵野美術大学卒。
同校在学中の1988年、週刊ヤングサンデー『ちくろ幼稚園』でデビュー。
1997年『ぼくんち』で文藝春秋漫画賞受賞
2005年『上京ものがたり』『毎日かあさん』で手塚治虫文化賞短編賞受賞。
『女の子ものがたり』『はれた日は学校をやすんで』『いけちゃんとぼく』『この世でいちばん大事な「カネ」の話』『パーマネント野ばら』『生きる悪知恵』
その他、『佐野洋子対談集 人生の基本』


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白岩玄『R30の欲望スイッチ』を読む

2014年07月10日 | 読書2

白岩玄著『R30の欲望スイッチ 欲しがらない若者の、本当の欲望』(2014年4月(株)宣伝会議発行)を読んだ。

今の世の中で若者に人気のあるものが、なぜ支持されているかを解析している。ただ、多くの解析本が作り手・送り手の魅力を解析しているのに対して、この本は受け手の側がなにを求めているかという観点で書いている。(まえがきより)

バブル崩壊後の経済低迷時代に育った30歳世代の若者は、「欲望のない世代」と言われる。 小説「野ブタ。をプロデュース」の30歳の著者は、「若い人たちに欲望がないのではなく、欲望の質が上の世代とは変わってきただけ」と指摘する。

アイドル
嵐のメンバーは五人とも「欠けているものが見えやすい」ところがある。キャラ分けがはっきりしているので、一人一人に足りないものが透けて見える。そのことが、大人が恋をしたり好意を持つ上で重要なことなのだ。

SNS
フェイスブックは世の中にあるもので一番近いのは「写真つき手紙」や「絵はがき」、あるいは「年賀状」なのだろう。・・・疲れた体で仕事から帰ってきて家の郵便受けを開けたときに、友達からの手紙や絵はがきが入っていたらちょっと嬉しい。

スポーツ
プロ野球の人気低迷について  プロ野球を見ていて感じるのは、日本の近代の会社の形がそのまま残っているように見えることだ。経営陣は不透明だし、監督やコーチ陣はユニフォームを野暮ったく着ていて・・・

マンガ
『ワンピース』はテンポのいいマンガなのでスラスラ読めてしまうのだが、・・・作者がいかにキャラクターを大事にしているかがよくわかる。・・・『ワンピース』の魅力はキャラクターの色の強さにあると言ったが、・・・メインのキャラクターだけでなく、出てくる登場人物すべてに共通している。

ドラマ
何らかの特徴を大げさにして上で繰り返させ、「この人はこういう人なんだ」というイメージを塗り重ねると存在感は強くなる。・・・そのため年配の人は人物がマンガっぽいと感じるのだが、若い人にとっては抵抗がない。・・・むしろ・・・いくらでも感情移入してしまう。

婚活
男の側が結婚に乗り気でない理由ははっきりしていて、男の人は付き合うときはストライクゾーンが広いのだが、結婚となると「選り好み」をする。・・・結婚で相手を間違えると大きな損をすることになる。・・・相手を一生養っていかなければいけない・・・
女の人は「付き合う前に選り好みをする」ことが多い。・・・信用できる・・・相手でなければ付き合わない。だから女の人は付き合う時点で損の問題が解決されていることが多い。


AKB48、半沢直樹、ONE PIECE、ミスチル、ワールドカップ……。ヒットの裏には、ヒットするモノ・コトに対する受け手の欲望・願望、共通する「ツボ」が存在する。若者の心を動かしている理由を分解し、ヒットの構造を説明する。

AKBヒットの裏に潜む受け手の「幻想」と「なりたい願望」、SNS普及の裏に見え隠れする受け手の「見栄」と「依存」……欲望のない世代の本当の欲望に迫る。

 取り上げられているジャンルは9つ。「アイドル編」ではジャニーズ、「SNS編」ではフェイスブック、「アニメ編」ではジブリなど、誰もが知っている“ヒット商品”が分析対象だ。
各章のラストには、取り上げたジャンルと関連した短編が付き、最終章は書き下ろしの小説となっている。


私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

若者の新しい流行現象と、なぜ流行るのかをざっと知って、もはや縁がなくなってしまった世界の雰囲気だけでも味わおうと思って読んでみた。

取り上げている流行商品・サービスについてはだいたいのことは知っているつもりだが、なぜ、シラケ世代の若者が熱中するのかはこの本の最後まで読んでも判然としなかった。個々にはなるほどと思う指摘もあるのだが、同年代といっても、ヒットの原因を解析的に理解しているわけではなさそうだ。


白岩玄(しらいわ・げん)
1983年、京都市生まれ。高校卒業後、イギリスに留学。大阪デザイナー専門学校グラフィックデザイン学科卒業。2004年『野ブタ。をプロデュース』で第41回文藝賞を受賞し、芥川賞候補になり、デビュー
著書に『空に唄う』『愛について』。
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ガルシア・マルケス『ぼくはスピーチをするために来たのではありません』を読む

2014年07月03日 | 読書2

ガブリエル・ガルシア・マルケス著、木村榮一訳『ぼくはスピーチをするために来たのではありません』(2014年4月新潮社発行)を読んだ。

1944年、17歳で卒業生への送別の辞から、2007年、80歳で「百年の孤独」出版40年記念の会まで、スピーチを「人間が窮地におちいる中でもっとも恐ろしいもの」というガブリエル・ガルシア=マルケスの全講演22篇をまとめたもの。

テーマは、文学、独裁者、ジャーナリズム、祖国・ラテンアメリカなどの厳しい現状を語りかけている。いろいろな数字を挙げて具体的に指摘していることが多い。

表題の「ぼくはスピーチをするために来たのではありません」は、高等学校の卒業式の送辞の中の一節で、エピソードや金言を並べたスピーチでなく、友情と辛い別れの瞬間を共有したいと語っている。これを表題にするくらい、若い時から一貫してスピーチ嫌いだったようだ。

1970年の講演では、「壇上に上がらなくてすむように、病気のなろうと努力し、喉を掻ききってもらえるかもと理髪店に行き失敗し、ワイシャツ一枚でどこでも出入りできるヴェネズエラにいることを忘れてスーツもネクタイもしないで来たのに、今こうして壇上にいる」とスピーチを始めている。

1982年のノーベル文学賞授賞式でのスピーチ「ラテンアメリカの孤独」が圧倒的だ。まず、ラテンアメリカの抱える桁外れの実情が語られる。戦争が5回あり、クーデターが16回起こり、2千万人が2歳にならずに亡くなり、弾圧で行方不明が12万人・・・と続く。ラテンアメリカは、ヨーロッパの洗練、知性とは異次元の状態にある。それでも生命は死を超えてしたたかに生き延びてきた。ロンドンだって、最初の城壁を築くのに300年、最初の司教が生まれるまでさらに300年かかっている。

訳者・木村榮一氏の30頁を超える「訳者あとがき」は、マルケスの幼少期からの生涯が要領良くまとめられている。


私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

マルケスのファンには必読の本だろう。なにしろ彼の肉声?が聞けるのだから。「百年の孤独」を読んでいる途中挫折して捨ててしまった私でも、ラテンアメリカ、コロンビアの絶望的状況にもなんとか希望を燃やし、自分の生活苦(タイプライター用紙が買えず、590枚の原稿を送る郵便代金が払えなかった)の中でも、くじけず奮闘する熱きマルケスの姿には胸打たれた。


G・ガルシア=マルケス(Marquez, Gabriel Garcia)
1927年コロンビア生まれ。ボゴタ大学法学部中退。自由派の新聞「エル・エスペクタドル」の記者となり、1955年初めてヨーロッパを訪れ、ジュネーブ、ローマ、パリと各地を転々とする。
1955年処女作『落葉』を出版。1959 年、カストロ政権の機関紙の編集に携わる。
1967年『百年の孤独』を発表、空前のベストセラーとなる。
以後『族長の秋』(1975年)、『予告された殺人の記録』(1981年)、『コレラの時代の愛』(1985年)、『迷宮の将軍』(1989年)、『十二の遍歴の物語』(1992年)、『愛その他の悪霊について』(1994年)などを刊行。
1982年度ノーベル文学賞を受賞。2014年死去。

木村榮一
1943年大阪府生まれ。
神戸市外国語大学イスパニア語科卒後、助教授・教授。2005年2011年まで学長。
ラテンアメリカ文学の多数の訳書、魚釣りエッセイがある。

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