hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

垣根涼介『極楽征夷大将軍』を読む

2024年01月31日 | 読書2

 

垣根涼介著『極楽征夷大将軍』(2023年5月10日文藝春秋発行)を読んだ。

 

文藝春秋BOOKSの内容紹介

やる気なし
使命感なし
執着なし
なぜこんな人間が天下を獲れてしまったのか?

動乱前夜、北条家の独裁政権が続いて、鎌倉府の信用は地に堕ちていた。
足利直義は、怠惰な兄・尊氏を常に励まし、幕府の粛清から足利家を守ろうとする。やがて後醍醐天皇から北条家討伐の勅命が下り、一族を挙げて反旗を翻した。
一方、足利家の重臣・高師直は倒幕後、朝廷の世が来たことに愕然とする。後醍醐天皇には、武士に政権を委ねるつもりなどなかったのだ。怒り狂う直義と共に、尊氏を抜きにして新生幕府の樹立を画策し始める。

混迷する時代に、尊氏のような意志を欠いた人間が、何度も失脚の窮地に立たされながらも権力の頂点へと登り詰められたのはなぜか?
幕府の祖でありながら、謎に包まれた初代将軍・足利尊氏の秘密を解き明かす歴史群像劇。

 

第169回直木三十五賞受賞作

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)

 

弟や家来に担がれたままの極楽尊氏像は新鮮に感じ、面白かったのだが、P549と大部で冗長で退屈。

 

確かに史実は勝ったり負けたりを繰り返したのだが、作品としては万遍なくではなく、どれかの戦いに的を絞って欲しかった。メリハリが少なく、弟・高国は兄の考えのなさに毎回驚きあきれ続けるくり返しで、同じパターンがしつこい。終盤も、だらだらしないで、天下をとった後できっぱり終わりとした方が良かったのでは。

 

圧倒的少数の側が、少しも意外とは思えない手段で、多数を誇る側を倒す同じような戦いの場面が続く。楠木正成、新田義貞の戦い巧者ぶり、勇猛な武将の活躍が派手な講談並みで少々陳腐。

 

 

 

足利尊氏:足利家の側室の庶子で幼名・又太郎。元服し高氏、後に尊氏。普段は極楽とんぼで、土壇場で図太くなる。後の足利幕府の征夷大将軍。正室は登子(とうし)。二代将軍は息子の義詮(よしあきら)。

足利直義:側室の庶子で幼名・次三郎、兄・又太郎の2歳下。元服し高国、後に直義。頭脳明晰で勉強家。実質的に室町幕府を興す。正室は彰子。

高師直(もろなお)幼名・五郎。足利家の執事。足利幕府の影の立役者。

高師泰(もろやす)師直の弟。武芸に秀でるも政治には疎い。

上杉憲房:上杉家は足利家の郎党。高氏・高国の伯父。長子が憲顕(のりあき)、養子に重能(しげよし)。

細川和氏:倒幕に功あり。阿波守。

赤松円心:後醍醐天皇に嫌われている護良親王に呼応して倒幕に参加し、天皇から冷遇される。

 

後醍醐天皇:鎌倉幕府(執権・北条高塒)を打倒し、建武の新政を行う。元弘の乱で隠岐の島に流されるなどしたが、南朝を興すなど野心家で、不屈の闘志。

護良親王:大塔宮。後醍醐天皇の息子。父と折り合いが悪い。

楠木正成:後醍醐天皇に呼応して倒幕に挙兵。息子・正行とともに戦い巧者。

新田義貞:倒幕に参加。建武の新政の立役者の一人。

北畠親房:後醍醐天皇の側近。長子は顕家。

 

 

垣根涼介(かきね・りょうすけ)

1966年長崎県諫早市生れ。筑波大学卒業。

2000年『午前三時のルースター』でサントリーミステリー大賞と読者賞をダブル受賞。
2004年『ワイルド・ソウル』で、大藪春彦賞、吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞(史上初の3冠)。
2005年、『君たちに明日はない』で山本周五郎賞を受賞。
2016年『室町無頼』で本屋が選ぶ時代小説大賞受賞。
2023年『極楽征夷大将軍』で、第169回直木賞受賞。

他の著書に『ヒート アイランド』『サウダージ』『光秀の定理』『信長の原理』『涅槃』など。

 

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1月の散歩

2024年01月29日 | 散歩

 

角にあるこのお宅、左を見ても、

 

右を見ても、見事なサザンカ。先の方に一輪だけ白色が見えるのは何?

 

ピンクのサザンカも可愛い。

 

燃え上がる炎のサザンカ。

 

これでもかとサザンカ。

 

深紅のピラカンサ。

 

てんこ盛りのピラカンサ。

 

近接撮影して一粒一粒を見ると、私の嫌いなイクラに思えてくる。

 

柚子? レモン?

 

おまけ。2024年1月14日、8時半の冬の富士山。

 

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川上弘美の略歴と既読本リスト

2024年01月28日 | 読書2

 

1958年4月1日東京・杉並区高井戸生まれ。5歳から7歳を米国で過ごす。雙葉中高から、お茶ノ水大学理学部生物学科へ。SF研究会へ所属。
田園調布雙葉中学校に勤務。結婚、その後離婚。俳人でもある。父親は東大生物学教授の山田晃弘。身長176cm。

1994年デビュー作「神様」でパスカル短編文学新人賞、
1996年「蛇を踏む」で芥川賞、
1999年「神様」でドゥマゴ文学賞、紫式部文学賞
2000年「溺レる」で伊藤整文学賞、女流文学賞、
2001年「センセイの鞄」で谷崎潤一郎賞、
2007年『真鶴』で芸術選奨文部科学大臣賞
2015年『水声』で読売文学賞
2016年『大きな鳥にさらわれないよう』で泉鏡花文学賞
2023年『恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ』で第76回野間文芸賞  を受賞

2019年 紫綬褒章受章
2023年 フランス芸術文化勲章オフィシェを受賞。

芥川賞、谷崎潤一郎賞、三島由紀夫賞の選考委員。

その他、『なめらかで熱くて甘苦しくて』『ぼくの死体をよろしくたのむ』『某』『三度目の恋』『夜の公園』『どこから行っても遠い町』『東京日記2 ほかに踊りをしらない。』『これでよろしくて? 』『 東京日記3 ナマズの幸運。 』『 神様2011 』『 此処彼処 』『恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ

 

川上弘美選『精選女性随筆集 第9巻 須賀敦子

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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川上弘美『恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ』を読む

2024年01月27日 | 読書2

 

川上弘美著『恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ』(2023年8月22日講談社発行)を読んだ。

 

講談社BOOKSの内容紹介

あ、また時間に捕まえられる、と思った。
捕まえられるままに、しておいた。

小説家のわたし、離婚と手術を経たアン、そして作詞家のカズ。
カリフォルニアのアパートメンツで子ども時代を過ごした友人たちは、
半世紀ほどの後、東京で再会した。
積み重なった時間、経験、恋の思い出。
それぞれの人生が、あらたに交わり、移ろっていく。

じわり、たゆたうように心に届く大人の愛の物語。

 

第76回 野間文芸賞受賞作品。

 

恋と言うにはあまりにも淡く、あいまいで、おぼつかず、互いの距離をあくまで縮めることがない60代の恋?

 

 

著者・川上さんを思わせる主人公の八色朝見(やいろ・あさみ)は、幼少期をアメリカで過ごした60代の小説家。

冒頭の章では、幼い朝見のアメリカで知り合った子供たちとの思い出が語られる。

 

次章以降では、長じて小説家になった朝見は、アメリカでの近所の遊び友だち、カズアンと東京で再会し、ときどき飲んで語るようになる。
3姉妹の長姉のアン(杏)は日本に住むようになり、朝見とは2か月に一度くらいのペースで会い、気の置けない友となる。

少し名の知られた作詞家になっていたカズ(夏野和樹)とは40年ぶりに東京で出会い、年に2回ほど飲んでいた。そのうち、3人でも会ってお酒を飲むようになった。

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

60代の様々な、個性的な男女の気軽な付き合い、楽しい会話が続く。年寄り、とくに年寄り初心者には「へー、そんなものなのか」と興味を持って読めるだろう。若い人には退屈かも。

川上弘美さんは、こんな変わった人たちと付き合っているのか、との下世話な興味でも読める。誰が??

 

とくに、朝見とカズの、気の置けない友人なのか、淡い恋心を持ったままの付き合いなのか、なんともいえない二人の付き合い方、会話がいろいろ考えさせられ、楽しめる。恋が始まるのだろうかと読み進めていっても、2人の距離はある一定を保ったまま。それでもそばにいると心地よく、会ってはたわいない話をし、互いに心を許していることはわかる。

大人の男女の心地よい距離感を、コロナ禍の社会の中で、ゆったりとした気の置けない会話で描き出す川上さんの文に浸ってしまう。

 

川上弘美の略歴と既読本リスト  (明日UPします)

 

 

帰国子女:英語の単語が日本語の喋り言葉の中にあらわれると、日本式の発音ではなく、急に英語の発音に戻ってしまう。(彼はカメラをかまえ→彼はキャメラをかまえ)

因循(いんじゅん)古い方法にこだわって改めないこと。

アジャパー:伴淳三郎が流行らせた言葉。

三島由紀夫:三島で開かれた、デビュー作「花ざかりの森」が載った雑誌の編集会議で、ペンネームが「三島由紀夫」に決まった。「由紀夫」は、「編集員が東京から三島へ行ったから」という説と、「車窓から見た富士の白雪が美しかった」からという説がある。

 

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1月の花

2024年01月25日 | リタイヤ生活

 

「正月の花」を別に頼んだので、1月の花は1月15日の一回のみ。

10本のガーベラ、2本のキンセンカ、2本のチューリップ、2本のナノハナ。

 

ガーベラは開花しているが、他は咲き始め。しかもお辞儀しているのが気になる。

 

3日後、キンセンカ、チューリップ、菜の花が開花した。水切りしたおかげで、お辞儀姿勢から胸を張るようになった。

 

菜の花

 

チューリップ

 

茎が筒状で中空のガーベラは、水切りが有効。湯上げはもっと効果的だと言うが。

 

7日目の白いガーベラ。

 

ピンク

 

淡い黄色

 

オレンジ

 

濃いピンク&黄

 

8日後、何が消えたかわかるかな?

 

 

 

 

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西荻・鞍馬でランチ

2024年01月24日 | 食べ物

 

12月初めの12時前、西荻駅南の鞍馬に入る。

 

私は、アナゴ蕎麦。

相変わらず蕎麦は旨く、アナゴが丸一匹あげてあるのがうれしい。一番上に巻いてあるのはカリカリなアナゴの骨。

 

海老好きな相方は海老蕎麦。

油が嫌いで、衣をとってしまう相方も、いつもの癖で海老の先っぽを捨てたらだめ!

先っぽまで海老が入っているのだから。

 

 

変わったもの好きな人が、置いてあった蕎麦菓子(¥200)に手を伸ばす。

カリカリに揚げたそば粉菓子。珍しいが、甘いわけでもなく、とくに旨いわけではない。

相方はまったく手をださず、数日後、すべて私の胃に入りました。

 

 

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9回目のBo-peepでランチ

2024年01月23日 | 食べ物

 

吉祥寺東急で買物し、エスカレータで降りる途中、2階テラスで「小さな恐竜展」との案内を見て、覗いてみた。

入口で吠える恐竜。

最初のコーナーでは、何人かの子供が、石膏ボード(?)を崩して必死に発掘していた。「最初に発掘した化石を一つお持ち帰れます。¥1,500」とあった。親も大変だ。

 

 

帰り道に足を延ばして、「カフェBo-peep(ボーピープ)」に寄った。11か月ぶりで前回が8回目


相変わらずお客はいない。小さな店で、いつもきれいに、心地よく整えていて、毎回同じ女性2人で切り回している。

なにより、コーヒーが旨く、料理も美味しく、ちょっと離れた場所にあるのについ寄ってしまう。

Bo-peepはマザーグースの『Little Bo-peep』という唄に出てくる羊飼いの女の子の名前。

場所は、武蔵野市吉祥寺本町1-35-17 吉祥寺ビル1F

 

棚の上にはリアドロ。小さな花を抱えているだけで高くなるのに、この花束は?

 

干支の動物?

 

私が頼んだのは「トルティーヤ ピザ」。

トルティーヤはトウモロコシの粉と小麦粉の米国、メキシコの薄焼きパン。

確かに普通のピザ生地より硬めだった。でも、メチャ美味しい。

 

 

相方は、サンドウィッチ。

 

急いで食べないで、開いた写真を撮ればよかった。

自家製鳥ハムとキャロットラペ。一切れ恵んでいただいたが、これも美味しい。

 

 

今回、私のコーヒーは深煎りにしてみた。確かに濃いが、より深くコーヒーを味わった感じ。

 

カップは、スウェーデン王室御用達のRorstrand(ロールストランド)

 

相方は、ダージリンティー。かっぷはWEDGWOOD(ウエッジウッド)

 

 

 

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西加奈子の略歴と既読本リスト

2024年01月22日 | 読書2

 

西加奈子(にし・かなこ)

1977(昭和52)年、イランのテヘラン生まれ。エジプトのカイロのナイル川に浮かぶ島のザマレクという町に住む。小5で大阪府和泉市に移り大阪で育つ。泉陽高等学校(進学校)から関西大学法学部卒。25歳で小説家を目指し上京。既婚で息子がいる。

2019年12月から語学留学のため、家族と猫と共にカナダに移住。現在は東京在住。

2004年『あおい』でデビュー
2005年『さくら』がベストセラー
2007年『通天閣』が織田作之助賞受賞
2013年『ふくわらい』で河合隼雄物語賞受賞
2015年『サラバ!』で直木賞受賞

その他、『漁港の肉子ちゃん』、『ふる』、『!』、『おまじない』、『白いしるし』、『きいろいゾウ』(映画化)、『しずく』、『窓の魚』、『うつくしい人』、『炎上する君』、『円卓』(映画化)、『夜が明ける』など。

エッセイ、『まにまに』、『くもをさがす

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西加奈子『くもをさがす』

2024年01月21日 | 読書2

 

西加奈子著『くもをさがす』(2023年4月20日河出書房新社発行)を読んだ。

 

河出書房新社特設サイトの内容紹介

カナダでがんになった。
不自由な体、海外のままならない生活、
絶望一歩手前のギリギリの毎日。
「私は弱い。徹底的に弱い」
それでも―――

 

冒頭からp17まで「Web河出」で試し読みできる。

 

語学留学先のカナダで自身に乳がんが見つかってから寛解するまでの8カ月が中心。色々な薬の名前などが出てくる治療の記録だが、日本とは異なる医療環境の中で、看護者、友人からかけられた言葉によって自分の中に生まれた新たな考えの記録でもある。著者初のノンフィクション。

 

西さんは、夫、幼い息子、猫といっしょにカナダ・バンクーバーに渡った。2021年5月、胸にしこりは、ステージ2Bの浸潤性乳管がんと宣告された。を受けてから日記をつけ始めた。ほぼ同時に本作も書き始めていた。抗がん剤治療が始まると、身体の調子が激しく変化し、また良い点もあるのだがカナダの医療体制の不備に不安を持ち、日本ならと思う事も多かった。

 

西さんは、転移や再発の可能性が高い変異遺伝子を持っていることが分かり、手術で右だけでなく両乳房を切除し、迷いもあったが、乳房の再建もしないと決断した。坊主頭には憧れていたのに涙が出て来た。

そして、手術を終えた自分の胸を、美しいと、本当に思った。

 

 

本書は書下ろし

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)

 

がん闘病記が主な話題だが、西さんの本来の明るい性格もあり、厳しい状況の中でも、根元のところではたくましさを失わず、読んでいて励まされる話になっている。

 

カナダの医療の良い面、悪い面の実状が語られ、日本の現状と比較していろいろ考えさせられる。

 

カナダで出会った女性医師の言葉は、関西弁に訳され、違和感があるのだが、明るい雰囲気となっている。

 

 

西加奈子の略歴と既読本リスト

 

おまけ

バンクーバーの公共広告:“Addiction is a medical condition---not a choice. Stop the Stigma.”
(薬物中毒は選択ではなく、精神疾患です。薬物に関する偏見を止めましょう)

つまり、誰でも薬物使用者になる可能性がある。人間は、それがどんな状態であれ、同じ人間として接する、という意志が、バンクーバーには通底しているように思う。

ここまで明快に言われると、「そうなの?」と思ってしまう。

 

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伊坂幸太郎『777』を読む

2024年01月19日 | 読書2

 

 

伊坂幸太郎著『777トリプルセブン』(2023年9月23日KADOKAWA発行)を読んだ。

 

KADOKAWAの内容紹介

そのホテルを訪れたのは、逃走中の不幸な彼女と、不運な殺し屋。そして――

 

累計300万部突破、殺し屋シリーズ書き下ろし最新作
『マリアビートル』から数年後、物騒な奴らは何度でも!

やることなすことツキに見放されている殺し屋・七尾。通称「天道虫」と呼ばれる彼が請け負ったのは、超高級ホテルの一室にプレゼントを届けるという「簡単かつ安全な仕事」のはずだった――。時を同じくして、そのホテルには驚異的な記憶力を備えた女性・紙野結花が身を潜めていた。彼女を狙って、非合法な裏の仕事を生業にする人間たちが集まってくる……。

そのホテルには、物騒な奴らが群れをなす!

 

伊坂幸太郎の『マリアビートル』(2022年公開のブラッド・ピット主演の映画『ブレット・トレイン』の原作)の続編。

 

前作『マリアビートル』でも、東京駅で東北新幹線に乗り込み、指定されたスーツケースを持って次の上野駅で降りるという極めて簡単な仕事だった。運が悪い七尾は、車内で数々の同業者と遭遇し、格闘の末、盛岡まで行く羽目になり、危うく死体の山に加わるところだったのだ。(E2事件)

 

 

「部屋に行って荷物を渡す。それだけだよ。本当に簡単。びっくりするくらい」…」と真莉亜は、通称「天道虫」の七尾に言う。ところが、常に運が悪い方に倒れる男、凄腕の殺し屋・七尾は、ますますどんどん窮地に追い込まれていく。10人ほどの殺し屋が集まってきたホテルで、危険を顧みずに勇敢に戦えば戦うほど、絶望的状況に落ち込んでいく七尾。そしてついに……。

 

 

超高級ホテルの部屋を訪ねた七尾は、誤ってその人物を死なせてしまう。おまけに部屋番号を間違っていて、その男は同業の殺し屋だった。七尾は本来の受取人に品物を渡し、エレベータに乗り、やれやれと思うが、途中止まった階で爆発物専門の同業者と出会う。さらに必殺の吹き矢を扱う六人組の業者(殺し屋)がこのホテルにやって来て、ホテルじゅうが、敵味方入り乱れた戦場になる。

 

本書は書下ろし。

 

 

私の評価としては、★★★★★(五つ星:読むべき、 最大は五つ星)

 

ともかく面白い、笑いながら楽しめる殺し屋小説。伊坂節の軽妙な会話が冴えわたる。徹底的に運の悪い七尾のぼやき、あきらめが笑える。

個性の強い登場人物たちが、まさかと思う意外性あふれる会話を交わし、強烈な殺し合いもユーモアある世界にしてしまう伊坂幸太郎ワールドが展開される。

 

 

伊坂幸太郎の履歴&既読本リスト

 

主な登場人物

蓬実(よもぎ)妻子を事故で亡くし、政治家を辞めて、情報局長官になっている。ヨモピー。秘書は佐藤

モウフとマクラ:片付け業者。二人でシーツを持って敵をぐるぐる巻きにする。顔は平凡、身体は小さい。

乾:業者たちを使って政治家の裏仕事を受ける。犯罪の証拠を残さないため、紙野を使う。解剖マニアの噂あり。

紙野結花:あらゆることが記憶に刻まれて、辛いこともすべて忘れられない。ココに逃してもらうよに依頼。乾に記憶屋として使われている。某データを見るためのパスワードとなる777の質問と答えを記憶している。

ココ:逃し屋で、ハッキングおばちゃん。おそらく60代。

六人組:いずれも毒矢を吹く。アスカと大柄なナラは23歳の女。カマクラは26歳の男。ヘイアンはせっかちな28歳。センゴクは大柄で暴力的な30歳。リーダーのエドは35歳。

高良と奏田(コーラとソーダ)海外で爆発物処理会社を立ち上げて大金持ち。その後、爆発物専門の業者に。

奏田「大活躍のスポーツ選手を見て、この人みたいにはなれないんだなと、落ち込んだことないんですか?」
高良「梅の木が、隣のリンゴの木を気にしてどうするんだよ」「梅は梅になればよい」

 

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ねぼけでランチ

2024年01月18日 | 食べ物

 

「ねぼけてランチ」ではありません。「土佐料理・祢保希(ねぼけ)・新宿店」でランチです。

 

「祢保希」は、西新宿の新宿野村ビル50階にある。(「祢」は、「禰」の簡易字(多分)。神社の神職の禰宜(ねぎ)の「禰」の字。)

 

新宿野村ビル

 

ビルの地下にもレストランがいくつもあるが、49F、50Fには、眺めの良いレストランがある。「祢保希」は両階にある。

 

50Fに展望できる場所があったので、しばらくキョロキョロ。

 

「新宿アイランドタワー」の左手、西南西の方向に富士山が見える。

 

「新宿アイランドタワー」の奥の方が吉祥寺方面のはずだが。

 

青梅街道沿いに聳える「住友不動産新宿グランドタワー」

 

いったい私はどこを見ているのか? 奥の右手が黒くなっているのは雲の影。

 

「祢保希」(ねぼけ)50Fの入口。

 

入り口わきには派手な焼物。

 

案内された席は窓際。

ビルの谷間に、「京王プラザ」と「都庁」が見える。

 

代々木のドコモのビル

 

こちら側には遠く富士山が。

 

拡大すると、かすかに。

 

店内は古民家風。

 

私は「黒潮定食」

右上の貝のような形は、かまぼこ? なんと言ってもカツオのたたきが、通常の2倍の厚さで、旨い。

 

 

相方は「たたき和定食」

かつおが数センチの厚さで、食欲がなくなったとの事。豪快な土佐料理は無理だったか?

 

二人で\4,500と、高い所に上がった割には安上がりで、満腹になった。美味しい人と普通な人が一人ずつ。

(「ず」か「づ」か? 「ず」が基本だが、連濁の場合など「づ」もありうる。「一人ずつ」が基本だが、「一人づつ」)も許容されている。)

 

 

帰りは新宿駅まで風が強いので地下で行こうとしたが、登ったり下りたりした挙句に行き止まりになり、地上に出ると、さっき潜ったところ。結局、ビルが見える地上を歩いて、ようやく駅に着いた。やれやれ。

 

 

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「ゴッホと静物画」を観る

2024年01月17日 | 美術

 

「SOMPO美術館」で1月21日まで開催の「ゴッホと静物画 伝統と革新」を観た。

ゴッホの《ひまわり》がある「東郷青児美術館」は、2020年7月、西新宿の損保ジャパン本社ビル42階から本社ビル敷地内の新たな美術館棟へ移転し、「SOMPO美術館」となっている。

 

 

久しぶりの西新宿。あの末広がりの「損保ジャパン本社ビル」を目当てに行けばわかるはずと新宿駅西口地下のロータリーから都庁方面へ、地下の「中央通り」の動く歩道をスイスイと歩き出し、地上へ出たところが「新宿三井ビル」。この辺りだと周りを見渡すが、あの「損保ジャパン本社ビル」が見当たらず。どうも行き過ぎたらしいと、地図を見て、階段を登って「東通り」を北へ進み、「北通り」との交差点で「損保ジャパン本社ビル」を発見し、新宿駅方面へ戻る。ようやく横断歩道を渡れば「SOMPO美術館」だ。

若い頃はこの辺りは俺の縄張りだったし、そもそも小学校の遠足で淀橋浄水場見学に来たのに、と嘆く。

 

 

この末広がりで、地震が来て上階の窓が割れたらどうなるのか?

 

隣の「SOMPO美術館」。美術館らしい変な建物。

 

看板をパチリ、

パチリ。なんと言っても売り物はゴッホのひまわり。

 

予約時間前に着いたので、2階のミュージアムショップをブラブラ。

 

立体複製画「アルゴグラフ」を「名画の感動を是非ご自宅で!」と売り込んでいた。

 

さすがゴッホのひまわり、¥39,800がなんと249人が買っていた。貴女、いかがですか250人目は!

 

見た目は今一つだが、刺繍(クロスステッチ)も並んでいた。

 

予約時間となり、1階に降りて、ネット予約時にメールで送られてきたスマホのQRコードを見せて入館。どこでもこの予約・入館方法だが、便利なようで、スマホがおかしくなったりしたらと、不安が残る。

 

鑑賞順番は、5階から徐々に降りてくるのだが、年寄りに階段を次々と降りさせるのは酷だ。

 

本展覧会の趣旨

17世紀オランダから20世紀初頭まで、ヨーロッパの静物画の流れの中にゴッホを位置づけ、ゴッホが先人達から何を学び、それをいかに自らの作品に反映させ、さらに次世代の画家たちにどのような影響をあたえたかを探ります。……また本展覧会では「ひまわり」に焦点をあてたコーナーを設け、……

 

出展69点のうち、25点がゴッホの油彩画。

 

 

最初は、1600年~1800年頃の伝統的静物画と、ゴッホの初期の作品。

ゴッホの「コウモリ」

コウモリの剥製なのだが、テーマも色も暗い。

 

 

ゴッホの「野菜と果物のある静物」

 

ゴッホの「鳥の巣」

何で鳥の巣なの? ゴッホは「自然を良く知っている人たち」に売れるのではないか、という希望を持っていたと書いてあったが、「君は売れる物と思うものを描いちゃだめでしょ」って言いたい。

 

 

ドラクロア「花瓶の花」

ゴッホはドラクロアの色彩に感銘を受けたという。気づきがあった?

 

ピサロ「丸太作りの植木鉢と花」

 

ルノアール「アネモネ」。

 

 

暗い絵が多い当時でも、ルノアールは明るく楽しい絵。

 

ゴッホ「青い花瓶にいけた花」。 ようやく鮮やかになりました「」。

 

ゴッホ「バラとシャクヤク」。 全体が明るくなりました「」。

 

肝心の、ゴッホの「ひまわり」と「アイリス」はこの状態で、後ろから眺めるだけ。じっと待つのもいやだし。

SOMPO美術館の「ひまわり」

ゴッホは南フランスのアルルで画家仲間との共同生活を計画し、ポール・ゴーギャンらを招きました。《ひまわり》の連作は1888年8月、ゴーギャンの部屋を飾るために描かれました。出品作品の《ひまわり》は、この時描いた「黄色い背景のひまわり」(ロンドン、ナショナル・ギャラリー蔵)をもとに、1888年11月下旬から12月上旬に描かれたと考えられています。ロンドン版の色彩や構図をそのまま用いた「模写」ですが、筆遣いや色調に微妙な変化を加えています。

 

 

ゴッホ「水差し、柑橘類のある静物」

 

ゴッホ「ヴィーナスのトルソ」

説明にはこうあった。「弟テオに宛てた手紙の中で「僕はパリでは自分の信念から離れて、少なくとも1年間は裸体や石膏像のデッサンの費やすつもりでいる」と語っている。」

ゴッホもデッサン!

 

 

ゴッホ「靴」

「ゴッホは蚤の市で古靴を買い、雨の日にそれを履いて歩き回り、泥だらけになった靴を忠実に写し描いたという。」

相方にそう伝えたら、渋い顔をされた。

 

 

ゴッホ「レモンと籠と瓶」

「この頃ゴッホは、同じ系統の色を使いながらタッチの違いだけで対象を描き分けようとしていた。」

 

 

ゴッホ「皿とタマネギのある静物」

ゴッホがゴーギャンとを口論し、自分の耳を傷つけ、入院し、一時的に退院後まもなく描いた作品。

 

 

ポール・セザンヌ「りんごとナプキン」

どうみてもセザンヌ。

 

 

ポール・ゴーギャン「花束」

娘を亡くし、心臓麻痺を繰り返し、金銭問題を抱え、自殺未遂となった前後の作品。

 

 

この後、隣の新宿野村ビルでランチしたのは明日UP。

 

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青山美智子『リカバリー・カバヒコ』を読む

2024年01月15日 | 読書2

 

青山美智子著『リカバリー・カバヒコ』(2023年9月30日光文社発行)を読んだ。

 

光文社の内容紹介

新築分譲マンション、アドヴァンス・ヒル。近くの日の出公園にある古びたカバの遊具・カバヒコには、自分の治したい部分と同じ部分を触ると回復するという都市伝説がある。人呼んで、”リカバリー・カバヒコ”。
アドヴァンス・ヒルに住まう人々は、それぞれの悩みをカバヒコに打ち明ける。急な成績不振に悩む高校生、ママ友たちに馴染めない元アパレル店員、駅伝が嫌でケガをしたと嘘をついた小学生、ストレスからの不調で休職中の女性、母との関係がこじれたままの雑誌編集長……

 

2024年本屋大賞ノミネート

ハートウォーミングな5話の連作短編集。

 

日の出公園にあるアニマルライドの「リカバリー・カバヒコ」が主人公。愛嬌ある動物の姿で、小さな子供がまたがって、揺らしたりして遊ぶ。もちろん彼は何もしゃべらない。

 

奏斗の頭

公立中学で優等生だった宮原奏斗(かなと)は、アドヴァンス・ヒルの新築マンションに引っ越し、推薦で入った進学校の高校に通うことになった。42人中35位の成績に愕然とし、偶然見かけたカバヒコに慰められる。翌日、同級生の雫田(しずくだ)美冬に「治したいところを触ると回復する」と教えられる。

 

紗羽の口

樋村紗羽は幼稚園児・みずほの母だが、ママ友・明美が苦手。バザー係の話し合いで困ったとき、とっつきにくいと思っていた絹川さんに助けられる。

 

ちはるの耳

憧れだったブライダルプロデゥースの会社で働く26歳の新沢ちはるは、自分の声や呼吸音が頭に反響するようになり休職中だった。成績のよい同僚の澄恵に圧倒されているのだ。カバヒコと、クリーニング店のおばさん・溝端ゆきえに「不安っていうのも立派な想像力だと、あたしは思うね」と慰められるが、さらに‥‥。

 

勇哉の足  小6の駅伝大会の選手に選ばれそうになった勇哉はズルをして、……。

 

和彦の目  出版社に30年勤務の溝端和彦は昔を思い出す。クラスでいじめられていたとき、母がカバヒコがすごい力を持っていると教えてくれたのだった。

 

 

初出:「小説宝石」2022年1・2月合併号~2023年5・6月合併号

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)

 

気楽にスイスイ読めるのは良いのだが、表紙や、各話最初の絵が、青少年向けの漫画チックで、ちょっと敬遠気味。

 

子供の悩みは、当然小さなものだし、ママ友のイジメはグチャグチャした話で、真剣には読めない。まあ、青山さんの小説は、そんな小さな世界のささやかな話なのだ。

 

青山美智子の略歴と既読本リスト

 

 

青山さんへの「リカバリー・カバヒコ」インタビュー

 

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懐かしの喫茶室「ルノアール」

2024年01月14日 | 食べ物

 

井の頭公園を散歩した後、どこかで休もうと、吉祥寺駅南口エスカレータ降りてすぐの2階の喫茶室「ルノアール」を眺めた。いかにも古めかしく、いつも見るだけにしていたが、どうなっているのか入ってみた。

 

エレベータを降りると、いかにも昔の喫茶店。

 

ところが、こんな掲示が。

喫煙目的店? 分煙しているなら、まあいいかと入ってみた。

 

 

店内はいかにもオールドファッション。椅子もふかふかで、懐かしい感じ。

 

私はコーヒー、相方はミルクティー。

 

私のカップ、ソーサーは無色でメーカー不明だったが、相方のは、

検索すると、ジャストぴしゃり。

昭和レトロ・ポップコレクションの「KEN薔薇柄カップ&ソーサー」で中古品¥1,290。

 

トイレを覗くと、なんと懐かしい和式!

潔癖症の人はこちらの方が良いらしいが。膝が悪い人にはどうなのか?

 

ともかく、分煙とはいっても、喫煙室とは壁で仕切られていないようで、わずかであってもタバコ臭く、閉口した。

 

 

なお、調べてみたが、「喫茶室ルノアール」「銀座ルノアール」「Cafe Renoir」などいろいろあってわけがわからず。吉祥寺にはコピス南の元町通りに「Cafe Renoir」の吉祥寺北口店があるらしい。

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1月早朝の井の頭公園

2024年01月13日 | 散歩

 

1月10日(水)9時半の井の頭公園。

花の姿はわずかで、スイセン少々。

 

「段差に注意」の看板。こんなわずかな段差で転ぶ70代のための看板。80代の私は、何もない所で転ぶのだ。エヘン!

 

お日様を向いて咲くサザンカの花。

 

七井橋から見た水草の間にアオサギ。

 

何なのこのモアモアは?

 

池に映る二人と逆さマンション。

 

ボート乗り場も改修が完了し、まもなく再開だ。

 

ちょっとだけの日本庭園に、「冬囲い」/「雪吊」。雪が積もるの? 

 

井之頭弁財天。ようやく10日になって初詣の不心得者。しかも小銭がないからと、お参りのみ。向田邦子さんのお母さんみたいに、お札を間違って入れたので社務所にお釣りを取り返しにいく勇気はない。せめて気持ちだけでもと、お札をお見せするだけにすればよかったのかと呟く無礼者。

 

七井橋から西に見えるマンション。近くで見ると、建設時の景観論争の激しさがしのばれる。

 

ここが、井の頭池の水源の「お茶の水」。現在は汲み上げ。

 

遠くに見えるのは弁天橋。

 

「ごみは持ち帰りましょう」の看板とごみ置き場。

 

中を覗くと、うんざり!

 

この後、入った吉祥寺駅南口すぐの懐かしの「ルノアール」は明日。

 

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