恋愛小説の名手、高樹のぶ子さんが満を持して書いた初の恋愛エッセー集。サブタイトルは「究極の恋愛虎の巻」とある。内容は恋愛のススメだ。
「高樹のぶ子のSIAブログ」に以下のように書いている。
恋愛はうまくいかないのが当たり前で、そんなことにめげて、恋愛忌避に走らないように、との願いがあります。とりわけ、若い人に・・
・・・
これまで50数冊の本を出してきました。
たまにはこんな「恋愛指南本」をだしても、文芸の神様は怒られないのでは・・
けれど、恋愛というフィールドは、人生のほかのフィールドにも通じます。
私の人生哲学?みたいなものも、十二分に含まれています。
つまり何事も・・「極めれば、反転する」
中途半端は、よくない、ということを言いたい一冊です。
内容は当たり前と言えば、当たり前のことが多い。字が大きく、1ページ13行しかないので、エッセンスしか書いてないためにそう感じるのかも。
高樹さんの積極果敢な考え方は確かに正しいと思うのだが。
例えば、以下だ。
恋愛で、背伸びして相手に合わせようとすると、頑張って身体が活性化する。
恋人の好みに合わせることで、自分の世界を広げられる。
男性はうまくいかなかった恋を引きずるが(名前をつけて保存)、女性は全部消去して次に向かう(上書き保存)。
何もしないで傷つかないよりも、何かして失敗しても自分は壊れない力を付ける方が良い。
私がいいなと思っている人物は、男であれ女であれ「思うにまかせぬこと」の悲しみと、それを何んとかしようとするひたむきさを持っています。
とりわけ恋愛においては「思うにまかせぬこと」ばかりです。恋愛のエッセンスは実のところ「思うにまかせぬこと」をどう楽しみ味わうか、なのです。この場合の楽しむは、苦しむの同義語でもありますが。
高樹のぶ子は、1946年山口県生まれ。東京女子大学短期大学部教育学科卒業後、出版社勤務を経て、1980年「その細き道」を「文學界」に発表、創作活動を始める。1984年「光抱く友よ」で芥川賞、1999年「透光の樹」で谷崎潤一郎賞を受賞。著書多数。2001年より芥川賞選考委員。
私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読めば)
恋愛指南というより、人生指南であり、何にでも挑戦しつづける高樹さんの考え方だ。ひねくれものの私は、これほどまで前向きに言われると、「でも、グジュグジュ人知れず悩むのも恋愛のひとつの楽しみ方なんじゃない」と言いたくなる。「片思いこそ恋愛の極意」なんて誰か言っていなかった?
「JB PRESS(日本ビジネスプレス)」で、高樹さんはこう語っている。
この本で伝えたかったのはダメもと精神なんです。・・・うまくいかないのが人生なんですよ。どんな人だってうまくいかないものを抱えている。人生は元々そういうものだと思えば、ダメもと精神で何事にもチャレンジできるじゃないですか。
日本人はとかく枯れるのが好きですよね。・・・でも私はそういうのはしたくない。出家なんてしたくないし、枯れたくない。私は苦しみながら、不全感を抱えながら死んでいけたらいいなと思います。