hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

吉田隆『中国人はなぜうるさいのか』を読む

2012年03月31日 | 読書2
吉田隆著『中国人はなぜうるさいのか』2011年11月、講談社発行、を読んだ。

中国人はうるさくしゃべり、マナー悪く、謝ることもない。それは一般的に事実か、そうだとすれば何故かを調べた本だ。
立場は冷静、中立で、日本在住の中国人や関係者にヒアリングし、当事者の言い分や日本人の苦言を収集している。たとえば、中国人が40%以上を占める埼玉県川口市の団地では、中国人たちは朝から晩まで大声で騒ぐ。立小便や、大便までするという。650の中国人世帯中、自治会費を払っているのは1軒のみ。

著者は騒がしさの背景を「すべてにおいて「勝つ」ことが大切な中国人にとって「大きな声」は重要なアイテムなのだ」と語る。その他、古くからの慣習や、面子を重んじる気質、拝金主義思想、共産党独裁などから説明しようしている。 



吉田隆(よしだ・たかし)
1956年生まれ。1979年からハンガリー国立エトヴェシュ・ロラーンド大学に国費留学。社会主義政策を学びチェコや東ドイツなど東欧諸国を回り社会主義の問題点を朝日新聞に寄稿。帰国後出版社勤務。その後、講談社『FRIDAY』記者として、中国人妻殺人事件や中国人との結婚問題を取材。中国人ネットワークを生かして中国の社会問題や李登輝台湾総統問題についても執筆。



私の評価としては、★★(二つ星:読めば)(最大は五つ星)

本書は特に差別的な立場では書かれておらず、大方の日本人が、大部分の中国人について感じていることを列挙している。しかし、既に感じていることを改めてくどくど述べられても読み飛ばすだけだ。

海外でインド人街を作ることが多いインド人を、私はうるさく感じることはないが、中国人の集団はうるさいと感じことが多い。中国語が発音上うるさく感じるためもあるだろうが、中国人街の乱雑ぶり、公徳心、公共心のなさには正直うんざりする。
本書ではその原因を、「激しい争い社会では大きな声が必須」などとしているが、従来から言われてきたことで本当にそれだけかと疑問を持ち、結局、国民性で片付けるほかなくなってしまっている。国際化の波のなかで今後中国人が洗練されることを期待するしかない。

中国の高圧的外交策には私も日本人の一人としていかがなものかと思う。しかし、独裁体制故にこそ、反日教育された国民に配慮せざるを得ない面も多いのだと思う。日本としては、その身勝手ぶりを国際社会に上手に効果的に訴え、結局損になることを知らしめる必要がある。



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井上荒野『キャベツ炒めに捧ぐ』を読む

2012年03月29日 | 読書2
井上荒野著『キャベツ炒めに捧ぐ』2011年9月角川春樹事務所発行、を読んだ。

東京私鉄沿線の各駅停車駅のささやかな商店街の中の4軒長屋の一軒に「ここ家」がある。素性の良い米で炊いたご飯に、おいしい総菜。「ここ家」は3人のアラ還のおばさんが切り回す惣菜屋だ。

オーナーの江子は61歳、小柄でもっちりと太っていて、派手なプリントの服をよく着る。いつも上機嫌で何かというと豪快に笑うが、友だちとダンナが恋仲になり、離婚した。
麻津子は60歳。真っ黒な短髪で地味な服装。いつも不機嫌で、辛口。しかし、ずっと想いつづけている幼ななじみの年下の彼がいる。
最年長だが新入りの郁子は、幼い子どもを亡くし、最近ダンナにも死に別れた。

3人の過去、現在の人生が、ふきのとう、豆ごはん、あさりフライ、キャベツ炒めなど旬の食材を使用した惣菜とともに語られる。



井上荒野(いのうえあれの)
東京生まれ。成蹊大学文学部卒。
1989年「わたしのヌレエフ」でフェミナ賞
2004年『潤一』で島清恋愛文学賞
2008年『切羽へ』で直木賞を受賞
その他、『ひどい感じ 父・井上光晴』



私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

江子はいつもハイテンションのカラ元気。でも未練たらしくつい元旦那に電話する。
麻津子は気が強いが、幼馴染の好きだった男が離婚して・・・。うおおーんって泣く麻津子が可愛い。
郁子は2歳で息子が死んだのを夫のせいにして、口にはださなかったが、死んだ夫のことを恨んでいた。しかし、写真を見ると、・・・。

ともかく純情なアラ還暦の女性達が可愛い(実物は見たくないけど)。

料理には興味がないが、「がんもどき」を、西の方では「ひろうす」(飛竜頭)と言うとは知らなかった。本当? がんもは、がんもでしょう!



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酒井順子『女も、不況?』を読む

2012年03月27日 | 読書2

酒井順子著『女も、不況?』講談社文庫さ-66、2012年1月講談社発行、を読んだ。

「週刊現代」連載の「その人、独身?」をまとめた4冊目の本の文庫化。「負け犬」が「アラフォー」になって全56編のエッセイになった。

2つだけご紹介。

帰国時の現地空港において、出発ゲートに土産物の袋をたくさん持った日本人がたむろしているのを見た瞬間、どこかホッとするものです。が、同時にどこか嫌―な気持ちにも、なるのでした。
それまでは西洋人に囲まれて、下手をすれば自分も金髪なのではないかくらいの気分でいるのです。が、ゲートに集う我が同胞を見れば、自分が黒髪のアジアっ子であることがよーくわかる。
確かにこのあたり、共感します。他にもいくつか「そうね」と思う所はあるのだが、週刊誌連載物なので、内容は種種雑多でまとまりや、インパクトはない。


2005年の国勢調査によると、35歳~39歳の女性の既婚率は72.6%、40歳~44歳で78.0%。
一方、酒井さんの卒業した年度(多分1984年)の立教女学院の卒業生の既婚率が文中に出てきて、グラフにすると以下となる。



40歳過ぎても未婚の人が40%とは、さすが、酒井さんが胸張って負け犬と言えるだけのことはある。でも、立教女学院って頭の良いお嬢様学校と思っていたが、こんなに上昇志向の人がいるわけ?

初出:週刊現代2007年12月~2009年1月に連載。2009年3月講談社より刊行。



私の評価としては、★★(二つ星:読めば)(最大は五つ星)

すらすら読めるし、抵抗感はなく、ところどころ共感も呼ぶのだが、本として一冊にまとめるほどのものではない。


酒井順子の略歴と既読本リスト



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桜はまだまだ、井の頭公園

2012年03月26日 | 行楽
といっても、3月13日の話だ。

井の頭公園駅のコンクリートの崖にいたずら書きが。今も相合傘なんて書く人がいるんだ! 片思いの人かな? アベック(古っ)かな?



どの樹木にも番号が付いているのに初めて気がついた。何回か調査しているのだろう。



井の頭池のボートにやけに太った女性が乗っていると思ったら、赤ちゃんを抱いていた。



春前に木々もお化粧。



今日は3月13日火曜日、七井橋も人がまばら。桜が咲くとこの橋も渋滞となるのだが。



昨年の花見は4月7日、一昨年は4月6日、その前は4月5日でいずれもほぼ満開だった。今年は少し遅くなるのだろうか。ちなみに、池の周囲には約400本の桜があるという。

建設当時は景観を破壊すると激しい反対運動があったマンションも長年見続けると風景に馴染んでいるように思えてしまう。



今はこんなに静かな池も、



花見時にはこんなになる。(2009年4月5日)



池のボートも乗る人はいない。



一匹だけまつ毛がなく、眉がりりしいオスがいたのだが見当たらない。こんなスワンが(2010年10月)。



「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」というのだが、ボート乗り場の前の桜、痛々しい。



普段気が付かなかったが、橋のたもとに碑が立っていた。井の頭恩賜公園は三鷹市に属すること(駅は武蔵野市の吉祥寺駅なのだが)、「井の頭」の名付け親は三代将軍徳川家光と伝えられていること、井の頭池には湧水口がかって7箇所あったことから「七井の池」とも呼ばれていて、そこから「七井橋」と名付けられたことなどが書かれている。



駅に向かう途中、「少女」の像を発見。






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三浦しをん『舟を編む』を読む

2012年03月25日 | 読書2

三浦しをん著『舟を編む』2011年9月光文社発行、を読んだ。

サンデーらいぶらりぃ」での角田光代のこの本への書評にこうある。

文楽、林業、社史編纂室と、三浦しをんという作家はよくよく不思議な設定で小説を書くなあと、以前から思っていた。不思議というのは、興味のある人はいるだろうけれど、そんなに多いとは思えない、ある種の地味な世界、という意味合い。エッセイならまだわかるが、小説なのだ。
・・・ 
 会社人生を辞書に捧げてきた荒木は、定年間近、自分の後継者を見つける。変人と噂される馬締光也。彼が辞書編集部に異動して、辞書『大海渡』の編纂が続行される。馬締とほかの個性あふれる社員たちとのやりとりに笑い、馬締の不器用な恋ににやにやしつつ、言葉について考えさせられ、辞書というものがどのように作られるのか、はじめて知る。なんて地味なんだろうと思っていた辞書作りが、何か、目の離せないスポーツ競技のようにも思えてくるのである。そして企画から出版までに、なんと十三年もの月日が費やされる。



主人公の馬締は「まじめ」と読む。文字通り真面目一徹な変人で、言葉に敏感な若者だ。先輩のチャラ男西岡、会社人生を辞書に捧げてきた荒木、食事中も用例採集カードを手放さない辞書の鬼松本先生と魅力的な人々が囲む。

題名は「辞書は言葉という大海原を航海するための船」という考えから。

初出:「CLASSY」2009年11月号~2011年7月号



私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

辞書を作ること自体は、なんといっても地味な仕事の連続なので、一般受はしないのではと四つ星にした。しかし、登場する人物はいずれも個性的で、いつもの三浦作品のように多少漫画的だが、人々のキャラ、動きは魅力的に書けている。

私は似たような編集仕事の手伝いをしてはじめて、恐ろしいほど地道で非効率的作業の積み重ねによって辞典、事典は作られていることを知った。
報われないそんな仕事に情熱を燃やす人がいてはじめて我々はそんな本を今は手にできているのだ。そして、広範であるが、確実性の乏しいネット情報と違って、辞典、事典などの書籍制作には、校正というもっとも非効率な作業の積み重ねをする文化が継承されていて、それにより、知的文化の基礎が今はからくも守られているのだということを知ってもらいたい。その意味では五つ星にしたいのだが。

馬締は再校を戻す日になって、正字ではない字体が混入していることを発見する夢を見てうなされる。その話を聞いて、新人が「せいじ(正字)ってなんですか」と聞く。「基本的には、『康煕字典』に基づいた正規の字体のことです。」と彼は答える。
このあたりも、事典類の編集の仕事を目にするまでは、そんなことで大変な労力を使っているとは想像しなかった。

三浦しをんの略歴と既読本リスト





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お彼岸はお墓参り

2012年03月24日 | 行楽

はや一週間前、お彼岸の中日に墓参り。

墓参りというと毎年の決まり文句

お寺の入口は急坂だ。子どもの頃は「すごい坂」で、大人になって「なんてことない坂」になり、今、年取って、「けっこうきつい坂」になった。


昨年の写真



この坂道、2002年石畳のスロープに改修される前は、写真左側に残っているが、84段の石段だった。

 

もう一つの決まり文句

荘厳な景観だいなしにする元麻布ヒルズ


今年の写真



調べてみると、2011年秋2010年夏2009年秋2007年冬に墓参りのブログがある。
いずれも版で押したように同じ事を書いている。

麻布十番での昼飯は金目鯛を求めて「魚可津」が多いので、今回は「やさい家めい」。今年正月に「表参道ヒルズで夕飯」で行った店だ。



地下に降りるとけっこう広い。



テーブルには楊枝のハリネズミと食べるラー油が。



注文は本日の定食とコーヒー。
けっこう味が強い「ゴロゴロ野菜と鶏のカラアゲ黒酢あん」と



薄味でけっこうな「揚げ出し豆腐お野菜五目あん」と



たっぷりのコーヒーで



各1,000円と200円なり。ランチは安い。

麻布十番大通りを地下鉄駅へ歩いて行くと、いくつか店が変わっている。「豆源」の向かいの「麻布かりんと」、昨年は無かったと思ったが?



「永坂更科」は相変わらす一杯の人。休日はちょっと入る気になれない。



墓参りは行楽の一つと思うのだが、久しぶりの人ごみにくたびれて、真っ直ぐ帰宅。


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東野圭吾『黒笑小説』を読む

2012年03月22日 | 読書2

東野圭吾著『黒笑小説』集英社文庫ひ15-8、2008年4月集英社発行、を読んだ。

『毒笑小説』『怪笑小説』に続くブラックユーモア・シリーズの三作目で、13編の短編小説集。

「もうひとつの助走」
作家である寒川心五郎は、長く書いているが売れず、受賞歴もない。こんどこそと受賞の報を編集者達と待つ。寒川は内心とは別に否定的なことを言う。編集者達は信じていると言うが、内心、無理だ、過去の人だと思っている。

「線香花火」
新人賞を受賞した熱海圭介は強気になり、夢は限りなく膨らみ、周囲に対し作家きどりになる。期待されていない彼がさっそく書いた受賞後第一作はそのまま・・・。

「過去の人」
受賞パーティに前回受賞者として招待された熱海圭介は、自信満々で奇抜な服装で出席するが、もはや・・・。全国で新人賞は一年に400ほどあるという。

「選考会」
寒川は新人賞の選考委員に選ばれ有頂天になるが、出版社にはおそろしいたくらみが。

その他、あらゆる女性が巨乳に見える「巨乳妄想症候群」、売れていたインポテンツになる新薬が急に売れなくなる「インポグラ」、空気中の見えないチリやホコリが見えるようになる「みえすぎ」、もてる薬ともてない度の対決「モテモテ・スプレー」など。

奥田英朗の解説が面白い。

東野さんは「キャリアは20年だが、14年間は売れなかった」と言っている。『秘密』がベストセラーになるや、編集者たちは取って返して揉み手をして「東野詣で」をするようになった。
奥田さんは語る。
編集者が情熱を注ぐのは賞を獲れそうな新人と売れる作家に対してだけである。あとは見事に放っておかれる。「お仕事」と割り切った編集者に原稿を渡すのはつらいものだ。東野圭吾は、そういう時期を経験している。

・・・同業者として笑いながらも胸を締め付けられるのは、文壇を俎上に載せた・・・四編である。・・・幾度も登場する売れない作家・寒川心五郎先生は、明日の東野圭吾か奥田英朗かもしれない。



初出:2005年4月集英社より刊行



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

冒頭の4作は、皮肉がきつく、東野さんの恨みがこもっていて面白い。しかし、その後の9作は星新一のショートショートのように、ワンポイントのアイデアだけで、短編として評価しがたい。これじゃ、編集者に苦心作をダンボール箱に捨てられるのも無理ない(??)。



東野圭吾の履歴&既読本リスト

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東野圭吾『あの頃ぼくらはアホでした』を読む

2012年03月20日 | 読書2

東野圭吾著『あの頃ぼくらはアホでした』集英社文庫ひ15-2、1998年5月集英社発行、を読んだ。

東野圭吾が大阪で過ごした小学生から大学生までの失敗談をつづった自伝的なエッセイ集で著者のエッセイ第1弾。

元怪獣少年で映画監督になりたかった東野さんと、新生「ガメラ」の金子修介監督との付属の対談は、怪獣映画の話が延々。

初出:1995年3月、集英社から単行本として刊行



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

流行したものにすぐ飛びつき、とんでもないことばかりやり、女の子、いやアノコトで頭がいっぱいになる若さ丸出しの彼らの愛すべきアホさ加減満載だ。なにしろ万引きまでやらかすのだから。東野さんのファンであっても、まず、女性にはウケないだろうし、多くの男性も呆れるだろう。しかし、これほど極端ではなかっただろうが、「そうそう」と懐かしさでしみじみとなるところも多い。

読む人よりも、書く人のほうが楽しんでいるような本だ。



東野圭吾の履歴&既読本リスト






高校1年のときのデートで彼女を遊園地に誘った。入場してジェットコースターに乗ったら、もう電車賃しか残っていなかった。予期せぬことに、彼女に「レストランで何かたべよう」と言われて、ガーンとなり、自分の持ち金を白状し、彼女におごってもらった。以後、彼女は大阪の男女のデートらしいといえば言えるのだが「今日はいくら持っているの?」とデート前に聞いてくるようになった。
(私も、北海道直送毛ガニの看板に惹かれて付き合っていた女性と入ったのは良いが、お勘定のところで金が足りなくなり、彼女に払ってもらったことがある。ちらっと見た財布にはお札が一杯だった。)

東野さんは似非(えせ)理系人間だという。大阪府立大学の電気工学科の2年になって専門科目が増えてから顔が引きつり始めた。例えば、マクスウェルの方程式などの電磁気学はチンプンカンプンだった。
(私も唯一落とした単位が電磁気学だ。可しかもらえないことがわかって、もう一度しっかり理解しようとわざと落としたのだ。東野さんとは異なり私は、最後の方で出てくるマクスウェルの方程式を知ってから電磁気学の全体が見えたような気がした。なにしろこの方程式は電磁気学の基礎方程式なのだから。)

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佐々木紀彦『米国製エリートは本当にすごいのか?』を読む

2012年03月18日 | 読書2
佐々木紀彦著『米国製エリートは本当にすごいのか?』2011年7月東洋経済新報社発行、を読んだ。

日本人は平均的な人材レベルは高いのに、上に行くほどダメになるのは、まともなエリート育成の仕組みがないからではないか。東洋経済新報社の若手記者が、スタンフォード大学院への留学経験をもとにその疑問に答えようとした。
実際には、米国エリートが強い理由のいくつかに加え、留学時の日常生活、各国からの留学生の様子、大学院の授業実態に加え、日米+中韓の社会論、英語学習のコツなどを語っている。

米国製エリートは、既に聞いているように、知的筋肉のトレーニングにあるようだ。
課題図書を読ませる膨大な知識のインプット量(学部4年間で難しい本を最低480冊)
入学初日から専門書や資料を高速で読み、時間を効率的に使う習慣が叩きこまれる。
価値観の違う各国エリート達との高度な知の議論

一方では、授業、テストの内容の簡単さ、学生の質問のレベルの低さなど、過大評価も指摘している。



佐々木紀彦
1979年北九州市生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒。東洋経済新報社の記者。
2007年9月休職しスタンフォードの大学院へ。修士号を取得(国際政治経済専攻)。
2009年7月復職し、編集部に所属。



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

ハーバードでMBAを採った人間の多くがベンチャーに挑戦し、大企業の敏腕エンジニアがベンチャーに転職するのも、いつでも1000万円以上稼げる仕事に戻れるからだ。
(私も、優秀な人は会社を自由に選べ、会社は能力の低い人を簡単に首にできる、そんな流動的な労働市場にこそ日本に必要だと思う。企業から見れば、不況になれば首にできるから必要なときにはいつでも正社員にすることができる。もっとも不景気な現状では、首になった年長者などに対する再教育、社会福祉の充実が前提だが)

不景気の影響を受けないのは弁護士だ。ハーバード、イェール、スタンフォードのロースクールを卒業すると、初任給は約1280万円になる。しかし、労働時間は一日18時間にもなるうえ、金持ち以外はロースクール3年間の授業料約1600万円の借金を抱えて苦しい。

著者の以下の主張にはまったく賛成だ。
米国には、2008年時点で既に「なぜ大量破壊兵器が存在するという誤った情報がまかり通ったか」「なぜ占領政策はうまくいかなかったのか」などを検証するアカデミズム、ジャーナリスムの研究や記事が溢れていて、大学でも議論が盛んに行われていた。
日本の大学でも、「なぜ日本は第二次世界大戦に負けたか」「大蔵省はなぜバブルの処理に失敗したのか」などを徹底討論する必要がある。




第1章 米国の一流大学は本当にすごいのか?
第2章 世界から集うエリート学生の生態
第3章 経済・ビジネス - 資本主義への愛と妄信
第4章 歴史 - 歴史が浅いからこそ、歴史にこだわる
第5章 国際政治・インテリジェンス - 世界一視野の広い引きこもり
第6章 日本人エリートの未来

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幸田真音『CC : カーボンコピー』を読む

2012年03月16日 | 読書2
幸田真音著『CC : カーボンコピー』中央文庫こ53-3、2012年1月中央公論新社発行、を読んだ。

元旦那が社長である広告代理店で働く優秀で頑張屋なアカウント・エグゼクティヴ山里香純41歳は、数年前顧客で恋人関係にあった年下の研吾と再会する。彼の生命保険会社の保険金不払い問題のお詫び広告プロジェクト入札に参加するが、・・・。

初出:読売新聞ウエブサイト「yorimo」で連載され、2008年11月中央公論新社より刊行



私の評価としては、★★(二つ星:読めば)(最大は五つ星)

簡単に読める。小説を読みなれている人なら、これから何が起きるか、誰が犯人かなど容易にわかってしまう。美人で有能なヒロインは、頑張ればなんでも実現できてしまい、働く女性のガラスの天井などないかのようだ。広告業界の実態、裏話などにも新味はない。



幸田真音(こうだ・まいん)
1951年生まれ。米国系銀行や証券会社で外国債券セールスなどを務める。
1995年『小説ヘッジファンド』で作家デビュー
2000年『曰本国債』(上下)がベストセラー
その他、『代行返上』、『バイアウト』など



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角田光代、上田義彦『口紅のとき』を読む

2012年03月14日 | 読書2

著者角田光代、写真上田義彦『口紅のとき』2011年1月、求龍堂発行、を読んだ。

角田さんによる6歳、12、18、29、38、47、65、79歳の口紅にまつわる話と、あとがきがわりのちいさなドラマ、上田さんの子供、少女、妻、母などが口紅を塗っている7枚の写真よりなる。101ページの薄い本だ。

私は六歳だった。私の世界は好きなことときらいなことだけで成り立っていた。好きなこと。父のタカイタカイ。祖母のひざまくら。・・・


と始まり、ひとつだけどちらにも分類できないこととして、母が鏡台の前に座ることが挙げられている。一緒にお出かけだと思うが、同時に何か知らない人のような気がするのだ。

亡くなった祖母に口紅を塗っている父を見た12歳。別れるだろう恋人に口紅をもらって初めてつけた18歳。
結婚式へのゴタゴタを経て式前に口紅をつける29歳。
口紅をたまにつける姿を娘に見られて6歳の頃を思い出す38歳。
プレゼントした口紅を17歳の娘がそっとつけるのをこっそり見た47歳。
病室のあの人のためにいろいろな色の口紅を塗る65歳。
施設の食堂で口紅を塗ってもらい、鏡に順番に映る昔の自分を見る79歳。
そして、口紅は角田さんにはとくべつだというちいさなドラマ。



上田義彦
1957年兵庫県生まれ。サントリー、資生堂、無印良品などをクライアントに持つ写真家。国内外の賞を受賞。作家としても自身の家族を撮った『at Home』などで活躍。妻は桐島かれん。この本に掲載されている写真の一枚は、かれんさんで、もう一枚はかれんさんの子供かも(桐島洋子さんそっくりなので)。

角田光代の略歴と既読本リスト


私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

なにしろ101ページの本で簡単に読める。そして角田さんの手練の技を垣間見られる。充分楽しむことはできないが。

上田さんの写真も含めて、もう少しボリュームが欲しい。


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小川洋子『人質の朗読会』を読む

2012年03月12日 | 読書2
小川洋子著『人質の朗読会』2011年2月中央公論新社発行、を読んだ。

地球の裏側の遺跡を訪れた日本人ツアー客7名、添乗員、運転手が反政府ゲリラに拉致され、怪我をした運転手が助けを求めて来る。百日以上経過後、軍と警察が誘拐現場に強行突入し、犯人全員5名、特殊部隊2名、人質8名は全員死亡する。
その後、誘拐現場に仕掛けられていた録音テープが公開される。テープには8人が書いた話を朗読する声が残っていた。

このように強烈に始まる物語だが、以降は8名の人質の本事件には無関係なのんびりした昔の思い出話と特殊部隊隊員が子供の頃に会った日本人の思い出話なのだ。
長い人質生活の中で犯人グループとの間にコミュニケーションも生まれ、徐々に命の危険を感じる恐怖は薄れていったらしい。朗読の合間、彼らは実によく笑っている。


初出:「中央公論」2008年9月~2010年9月号に年4回掲載



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

被害者と犯人が時間、場所を共有すると互いに依存関係になるというストックホルム症候群というのがあるそうだが、この小説は、厳しく始まり、あとは事件と無関係で互いに独立な、のんびりした話が並ぶ構成には拍子抜けだ。

話の多くは、いつもの小川さんのちょっと奇妙でほんわかした話だ。それはそれで面白いのだが。



小川洋子は、1962年岡山県生れ。
早稲田大学第一文学部卒。1984年倉敷市の川崎医大秘書室勤務、1986年結婚、退社。
1988年『揚羽蝶が壊れる時』で海燕新人文学賞
1991年『妊娠カレンダー』で芥川賞
『博士の愛した数式』で読売文学賞、本屋大賞、2006年に映画化
2004年『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞
2006年『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞
その他、『カラーひよことコーヒー豆』、『原稿零枚日記』『妄想気分』など。
海外で翻訳された作品も多く、『薬指の標本』はフランスで映画化。
2009年現在、芥川賞、太宰治賞、三島由紀夫賞選考委員。


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いぬがいるお店

2012年03月10日 | 日記
吉祥寺に1月17日に開店した「カフェ&ダイニング BUD’s Kitchen」に入って見た。



場所は、駅から末広通りを前進座方向へ7分ほど。入ると、人懐っこい犬がお迎えしてくれる。



けっこう大きな犬だが、吠えないし、ご主人のいうことを良く聞く。お店は贅沢に広々として、道路側はガラスが一杯でのんびり通る人を眺められる。サーフボードがあってハワイにでも来たような雰囲気だ。



ここは、犬も一緒に入れるカフェで、レストランなのだ。犬連れのお客さんが2組ほど。
0422-24-6095(火曜日休み)

ワンちゃん、テーブルを潜ってなんとか足元にする寄ろうとしてご主人に怒られた。



ランチは、美味しく、お腹いっぱいになった・





とうとう、別室に入れられたBUDくん。



帰りの際には、きちんと出口まで送りにきてくれた。BUDくんは営業部長として修行中なのだそうだ。

実は、私は犬を飼ったことがなく、子供の頃、「よだれを垂らした狂犬が来る」とさんざん脅かせれたせいで、犬が怖くて、ついつい堅くなってしまうのだが、BUDくんには平気だった。

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『最後の恋』を読む

2012年03月08日 | 読書2

阿川佐和子、井上荒野、大島真寿美、島本理生、乃南アサ、森絵都、村山由佳著『最後の恋 Premium つまり、自分史上最高の恋。』新潮文庫 あ-49-4、2011年12月新潮社発行、を読んだ。7人の女性作家が激しい恋の始めとその後を描いた短篇集。

甘い記憶」大島真寿実
高校生のとき、たががはずれたように抱き合ってばかりの好きな人がいた。別れてしまい泣いて泣いていたら、彼の祖母が言う。「あんたさんも狂いやすい質(たち)とみえる」この先も狂って地獄を見るに違いない。しかし、地獄は案外耐えられる。甘美な記憶が一つあれば。」

ブーツ」井上荒野
ロック仲間のひとりがやめて旅館の婿になるという。「そのブーツ、ふみつけられたいほどかっちょいいよ」という男に、「あとでやってあげるわよ」と言い返す。

ヨハネスブルグのマフィア」森絵都
40歳を前にしてもみくちゃにされた男と別れて10年。職場の同僚と結婚して、偶然あの場所でまた彼に会う。

森で待つ」阿川佐和子
夫が出ていったまま長く森で暮らす老女の家に、2番目の妻を名乗る若い女性が現れる。

ときめき」島本理生
崖から勇敢にも飛び込む青年を海はやさしく包みこみ、月は冷静に語る。

TUNAMI」村山由佳
大地震により4時間かけて帰宅した女性は、TVで信じられないほど悲惨な津波の様子に圧倒される。しかし、彼女の目下の心配は、17年一緒だった猫の容態が最悪なことだ。そんなときにやってきたのは、この猫を一緒に拾ったモト彼だった。そして彼女は、私がいなければ生きていけない相手の方を選ぶ。

それは秘密の」乃南アサ
政治家である彼は台風の激しい雨の中、車を運転していて、トンネルの出口で前方の道路が崩れ去っていることに気づく。トンネルの中にも土砂崩れがあって路線バスが埋もれていた。生きていた女性を救出し、そのトンネルの中で、二人は一夜を明かす。閉じ込められた状況での政治家と普通の主婦の心の触れ合い。

初出:「yomyom」vol.14,14,21,18,18,21,15



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

激しい恋そのものより、去った後の話が多い。恋は落ちるものであって、書くものではないということか。現在の恋より、過去の恋の方が心に沁みて書くに値するらしい。
かって我を忘れた恋は、すっかり消えてしまったわけではなく、心の底にくすぶっている。しかし、かっての恋が再び燃え上がることを、その上に積み重なった日々が、苦しく美しかった記憶として抑えこんでしまう。そんな恋の短篇集でした。



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お屋敷中のお屋敷

2012年03月06日 | 日記
吉祥寺南町3丁目にはお屋敷が多い。以前、このブログの「吉祥寺のお屋敷めぐり」でいくつかのお屋敷を紹介した。

なかで、「昔昔、紀文の社長宅だったところが、時代の変遷を経て、すでに昔のことなのだが、コンビニなどの会長宅になった。隣のアパートからの目隠しの生垣が高くて立派。」とご紹介したことのあるS邸を再度訪れた。



そして、隣のアパートからの目隠しの生垣も建材。



この屋敷は間口も広いが奥行きもありそうだ。このブロックの反対側へ行くと、同じS氏の名札が。近所で掃除していたおばさんに聞いたら、S氏の息子の医者の家だという。親子で1ブロックを突き抜けていたのだ。



しかし、これで驚いていけない。手前の広~い敷地が工事中で、マンション禁止地区で、こんな広いところに一体なにが建つのかと思ったら、さきほどのおばさんの話だと、S氏の跡を継ぐ息子の家だという。こんな広い家に住んで、よく恥ずかしくないものだ。私なら御免被る??









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