hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

花のある生活

2014年06月30日 | リタイヤ生活

年金暮らしで、年一度程度の海外旅行以外の外は、ごく慎ましい生活を送っている。

月一度くらいのペースで遊びに来る孫と近くの公園に行ったり、美術館に行く程度で、普段はTVで映画や、ボクシング、テニスの中継を見るか、図書館で借りた本を読むか、天気の良い日は散歩する という平凡な毎日だ。

日常の贅沢といえば、たまに外食することぐらいで、マンション住まいになってからは、花壇もないし、プランターも面倒で、潤いがない。

そこで、月2回、隔週で花が届くサービスに申し込んだ。家まで届けてくれるので面倒がない。月1640円で、花のある生活になる。たまたま郵便受けに入っていた花の宅配ピュアフラワーに申し込んだ。

昨年12月の開始1回目(だけ)は、豪華なバラ。



1月の1回目は、ガーベラ、カスミソウなど。





カスミソウだけになったころ、2回目の、バラ、デンファレ、ドラセナ(葉)が届いた。



2月の1回目は、チューリップ、スイートピー、ラナンキュラス、ソリダコ



3月の1回目は、アルストロメリア、スナップ、桃。写真では良く見えないが、桃が可憐だ。



4月の1回目は、オリエンタルリリー、カラー、スターチス。
ユリは咲きそろうと見事だった。しかし、注意書きに、ユリの花粉は咲き始めに取ってしまうと良いとあったが、うまくは取れず、ポロポロ落ちて困った。



4月の2回目は、ガーベラ、デルフィニウム、ソリダスター





6月の1回目は、シャクヤク、アルケミラモリス、ソリダコ



さすが、花はシャクヤク、豪華ではかない。短くてはかないから余計美しい。お年頃の女の子のように。



毎回、こんな紙が付いてくる。



6月の2回目は、オリエンタルリリー、ヒメアスター、ドラセナ





こう並べてみると、必ず写真を撮っているようでいて、抜けだらけだ。

写真は、届けられた日か、翌日に撮ったものだが、ユリなどが咲きそろったときは豪華だ。寒い季節は2週間ギリギリ持ったが、今は痛むのが早い。

最近はいろいろな花が開発、輸入されるからだろう、複雑な花の名前が多い。

部屋にはいくつか造花も飾ってあるのだが、変化がないので、いつの間にか目につかなくなってしまっている。

生きた花の場合は、蕾が開き、咲き誇り、枯れて、また新しい花がやって来る。どんな花がやってくるか、楽しみでもあるし、いつも新鮮だ。

花のある生活には、変化と潤いがある。



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久坂部羊『嗤う名医』を読む

2014年06月21日 | 読書2


久坂部羊著『嗤う名医』(2014年2月集英社発行)を読んだ。

嫁の介護に不満を持つ老人、豊胸手術に失敗した女、患者の甘えを一切許さない天才的外科医、頭蓋骨に魅せられた男、抱え込んだストレスをプレイで解消する患者に優しい名医、嘘が見えるという内科医。現役医師による可笑しくて怖いミステリー。

「寝たきりの殺意」
寝たきり老人・守山は、介護する息子の嫁に不満だらけだ。しかし、彼は正気のときと認知症が混じるレビー小体型認知症になっており、混乱の中で、妄想が突っ走る。

「シリコン」
子どものころから不運が連続する柘植夕子(つげゆうこ)。コンプレックスを克服するため豊胸手術を受けるが、豊かになった胸は次第に・・・。そして、メスさばきは神業的という名医にかかるのだが・・・。

「至高の名医」
至高の名医にあげられている外科医の清河は、治療に全身全霊をかけているので、同僚医師にも患者にも常に厳しく接する。2年前胃がんの手術を、その後、勝手に自分で大丈夫だと判断し、診察に来なくなった患者がどこの病院でも手遅れだといわれてやって来る。調べてみると前回手術後に・・・。そして、清河は人間が丸くなった。

「愛ドクロ」
顔の外見などどうでもよく、原山良人(はらやまよしと)にとっては、頭蓋骨の美しさにしか美を感じない。真知を妻にしたのも頭蓋骨の美しさに惚れたのだ。幼い少女の頭蓋骨に惹きつけられて頭を撫でて痴漢として捕まる。そんな原山の行き着く先は・・・。

「名医の微笑」
42歳ながら、抜群の技術と集中力を誇る名医・矢崎逸郎は、心臓カテーテル手術で高速ドリルを巧みに扱い、プラークを削る。矢崎医師は変態プレイでストレスを解消していたが・・・

「嘘はキライ」
医師の水島道彦は、嘘を言っている人の後頭部に黄緑色の狼煙が見える。黒瀬ハルカと高校卒業二十周年の同窓会に出席するが、見栄の張り合いする同級生たちのあちこちから黄緑色の狼煙が上がる。同級生に頼まれて、彼は出身大学の教授の後釜争いに巻き込まれことになる。


私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

医師に掛かる厳しいストレスは実感として感じ取られる。医療現場での経験を反映しているとは思うが、設定が極端な場合が多く、作り物感がぬぐえない。微妙な感情や、雰囲気をもたらす情景描写はほとんどなく、小説技術としては劣る。


久坂部羊(くさかべ・よう)の略歴と既読本リスト

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マリー・ローランサン展を見る

2014年06月18日 | 美術

「三鷹市美術ギャラリー」で4月12日(土)~6月22日(日)まで
行われている「マリー・ローランサン展」を見に行った。

いつも会期末ギリギリに行くので、このブログに書くころにはほとんど会期が残っていないことが多い。

パリ生まれのマリー・ローランサン(1883-1956)は、
つかの間の爛熟した平和のひととき、「狂乱の1920年代」の
パリで有名になった女性画家の先駆者だ。
パステルカラーの簡潔で優雅な色使いで、夢見る乙女を
淡く柔らかく描き、日本でも、特に女性に人気だ。






本展では、初期の自画像から始まり、独自の作風を確立後の
優雅な女性像を中心に約70点を展示している。
数としては、デッサン(リトグラフ)など小品が多いが、
ため息がでそうな色使いの少女像も並ぶ。


私は今回初めて知ったが、、長野県茅野市の蓼科湖畔の
マリー・ローランサン美術館は、観光客減少のため2011年
9月30日閉館したそうだ。問題もあったようだが、作品に罪はない。
残念!
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椰月美智子『未来の手紙』を読む

2014年06月17日 | 読書2

椰月美智子著『未来の手紙』(2014年4月光文社発行)を読んだ。

BOOK WITH YOU「小学生高学年から」という子供向けの本だ。

五年生になってぼくはいじめられるようになった。ぼくは未来のことだけを考えることにした。今のぼくから未来のぼくへ手紙を出す。未来のぼくはいつだってたのしそうだ。友達もたくさんいて、夢もかなう。二十通の手紙は、毎年ぼくの元へ届けられ、そして、ぼくは三十三歳になった。ある日、もう来るはずのない「未来の手紙」が届く。それは、悪夢の手紙だった―。


「しいちゃん」
のりえ12歳の母は32歳。近くに住むその母しいちゃんは51歳と若い祖母。
しいちゃんいわく「あの子がやったことのなかで唯一感心したのは、大学生のときに子供をつくったことだけよ。あんな真面目で四角四面な子が、やるときゃやるじゃないのって思ったわよ。たいしたものだわ」とのこと。・・・お母さんはこの話を聞くと、頭から湯気を出して怒り出し、このときばかりは「あの不良ばばあ」と、・・・

悪口は伝染し、いじめにつながる。悔しい思いはノートに書く。

「忘れない夏」
両親が引きこもりになりそうな姉貴を心配して、突然、引越すと言い出す。中2のヤマトは転校すると友達に忘れられてしまうことを心配する。優勝を狙える野球のバッテリーも分解だ。

「未来の息子」
コックリさんのおまじないをしていた中2の理子の前に、突然、未来の息子だと名乗る親指くらいの小さなおじさん現れる。73年後から来たという。

「未来の手紙」
イジメに負けそうになった小5の瑠衣斗(るいと)は、楽しい未来の中学生の自分に手紙を出し、受け取り、読んで、励まされていた。やがて、33歳になった彼に突然、悪の手紙が届く。

「月島さんちのフミちゃん」
小1の時に事故で両親を亡くしたフミコ(中3)は、二卵性双生児の姉、兄と暮らしている。姉の瑛子は頭の後ろに口ができたと騒ぐし、兄のカンちゃんはかっこよいのにオネエ言葉だ。

「イモリのしっぽ」
幸野(こうの、中3)は、は、ホルマリン漬けを見たとたん、思わず生物部に入部してしまった。やがて、部長になり、3年になったので、2年の矢守くんに部長を譲った。コリドラス?好きな二人の話が弾む。コリドラスはナマズの仲間で成魚でも5センチにしかならない。

初出:2004年~2013年に双葉社、偕成社、光村図書出版から刊行


私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

「小学生高学年から」という本は、子供帰りしているとはいえ、私には付いて行きにくかった。謎めいた「未来の手紙」というタイトルに惹かれたのだが、今一つピンとこなかった。いじめについても、この本では軽くふれているだけで、心理状態を突っ込んではいない。
楽しく読めて、明日へつながる話が多いので、中学生には良いかも。


椰月美智子(やづき・みちこ)
1970年神奈川県生まれ。
2002年「十二歳」で講談社児童文学新人賞を受賞しデビュー。
2007年の「しずかな日々」で野間児童文学賞、坪田譲二文学賞を受賞
2009年『るり姉』『ガミガミ女とスーダラ男
「WEB本の雑誌」「作家の読書道」「第102回:椰月美智子さん」(写真あり)は、藤原ていの『流れる星は生きている』を感動した小説にあげていたが、その理由が、自身は幼い二人の子を連れてスーパーへ買い物に行くだけで、クタクタなのに、満州から3人も子供を連れて帰るなんて考えられないというもの。
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Bistro Petit ビストロプティ でディナー

2014年06月16日 | 食べ物
西荻窪駅南口から数分、Bistro Petit ビストロプティへ行った。



まったくアルコールを飲めず、ごく少食な二人は、恐縮しながら、メニューを丁寧に説明し、提案してくれる店員さん?に感謝。

まず、パン。豚の何とかを塗る。



前菜



右は冷製スープ(ビシソワーズ?)、手前がイサキのマリネ、時計回りにノルウェーサーモン、リンゴの〇〇の上のカモ、チーズ、人参で、真ん中に野菜のテリーヌ

極旨。

メインに、お勧めのフォアグラは南仏で食べ過ぎて、パスし、魚介類の包み焼きを二人でシェアー。





色々な温野菜が入っていて、ご機嫌。

ウーロン茶を加えて、二人で6080円は安くて美味しい。

facebookでのこの店の宣伝


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久しぶりの富士山

2014年06月15日 | 日記
昨日、6月14日(土)、朝、ベランダから富士山が見えた。
この時期とても珍しい。雨が続いた後で晴れたからだろう。
といっても、ご覧のようにうっすらなのだが。





おまけに写真の出来も悪いのだが、まあ、一応縁起物なので。

Google mapで調べると、ここから約110km、歩いて26時間と出た。勿論、歩かないし、山道をスタスタ歩けませんが。

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永井義男『剣術修行の旅日記』を読む

2014年06月14日 | 読書2

永井義男著『剣術修行の旅日記 佐賀藩・葉隠武士の「諸国廻歴日録」を読む』(朝日選書906、2013年8月朝日新聞出版発行)を読んだ。

裏表紙にはこうある。
佐賀藩士、牟田文之助は23歳で鉄人流という二刀流の免許皆伝を授けられた剣士である。嘉永六年(1853)、24歳の文之助は藩から許可を得て、2年間にわたる武者修行の旅に出て、「諸国廻歴日録」という克明な日記を残す。この日記を読むと、命がけの武者修行というイメージが覆される。
文之助は各地の藩校道場にこころよく受け入れられて思う存分稽古をし、稽古後にはその地の藩士と酒を酌み交わし、名所旧跡や温泉にも案内される。「修行人宿」と呼ばれる旅籠屋に頼めば、町の道場への稽古願いの取り次ぎもしてくれる──。まるで、現在の運動部の遠征合宿のようだ。
江戸はもちろん、北は秋田から南は九州まで現在の31都府県を踏破した日記から江戸末期の世界がいきいきと蘇る。千葉周作の玄武館、斎藤弥九郎の練兵館、桃井春蔵の士学館など、有名道場に対する文之助の評価も必読。



この本は、牟田高惇(たかあつ)(本書では通称の文之助)が残した日記(『諸国廻歴日録』)をもとに、著者がおおまかなテーマごとにまとめなおした武者修行の実状を描いたノンフィクションだ。

「武者修行」の一般的イメージは、一か八かの他流試合を挑み、徹底的に打ちのめして、道場の恨みをかうといったものだろうが、実際は全く違う。
藩に伺い、許可を得て、武者修行すると、各藩の城下の「修行人宿」に無料で宿泊できる。手順を踏んで道場に手合わせを申し入れ、日時を決める。試合も実際は稽古であって、勝敗は決めず、手合わせをする。各地の他流派の剣術家と交流し、その後も酒を酌み交わしたりする。他藩の修行者と一緒に旅をするなど、厳しい修行というより、楽しそうな留学といった趣だ。また、江戸後期には藩の壁も低くなっていたことがわかる。

文之助は、多くの道場について自己評価だが「格別の者はいない」と書いていて、優れた剣術家だったようだ。また、人に好かれる人柄のようで、歓待を受け飲み過ぎたり、旅立ちには多くの人が見送りにきたり、武者修行の中で親しい友人を得たりしている。


私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

なにしろ日記が元なので、「どこの何々道場で試合して、その後・・・」という記述が続くので、一般の人には退屈だろう。しかし、剣術、流派、武者修行へ興味がある人には★★★★(四つ星:お勧め)だ。

武者修行の意外な実態がわかり、若者が他国を旅し、他藩の若者と剣術を通して交流する。江戸時代のロードムービーの趣がある。牟田文之助のおおらかな人柄もあって、藩を超えた若者同士の心からの付き合いが生まれる。やがて、藩を超越して討幕の動きが進む時代を予感させる。
しかし、愛すべき牟田文之助が、明治維新後、士族の反乱「佐賀の乱」に参加し、敗れて懲役刑となり、「出獄後の生活は不明」というのが、悲しい。


現代剣術では、すり足で板の間を素早く進み、飛び込んで竹刀の先端で相手を打つことが多い。しかし、江戸後期の剣術は、竹刀や防具は現代とほぼ同じなようだが、道場の多くは土間やむしろで、しっかり足を踏みしめて、力を込めて相手を打ち込むという、真剣の斬り合いに近いものだった。文之助も一部道場の現代剣法に近いやり方を軽蔑して非難している。

当時は、言葉の地域差が現代より非常に大きかったが、武家同士はほぼ共通の武家言葉で話すので意志疎通できた。しかし、文之助も、荷物持ちの人足とは会話が成り立たずお手上げになったりしている。


永井義男(ながい・よしお)
1949年福岡県生まれ。東京外国語大学卒。作家、評論家。時代小説のほか、江戸時代に関する評論の類も多い。
中国古典の翻訳や著述をしていたが、
1997年『算学奇人伝』で開高健賞受賞、作家となる。
ながい・よしお 49年生まれ。作家。97年『算学奇人伝』で開高健賞。

牟田高惇(通称、文之助)
1830(天保元年)11月24日(1831年1月7日(文政13年11月24日))生まれ、18904(明治23)年12月8日61歳で病没。

220p
江戸到着以来、文之助は鍋島家の菩提寺である麻布の賢崇寺(けんそうじ)にはしばしば参詣していたが、五日、賢崇寺に別れの挨拶に出向いたところ、馳走になった。その席で文之助は借金を申し込み、二斤を借りた。斤はおそらく金のことで、つまり二両であろう。
賢崇寺の僧侶は馳走をした上、金まで貸したことになる。こうした厚遇を受けるのも文之助の人柄ゆえであろうか。(安政2年4月5日)


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『直木賞受賞エッセイ集成』を読む

2014年06月11日 | 読書2


文藝春秋編『直木賞受賞エッセイ集成』(2014年4月文藝春秋発行)を読んだ。

第124回の直木賞受賞者・重松清氏、山本文緒氏から第150回朝井まかて氏、姫野カオルコ氏までの36名の受賞エッセイをまとめた一冊。
多くのエッセイは、幼少期の思い出、読書体験、キャリアの結節点、創作にかける情熱を記している。

山本文緒「愛憎のイナズマ
どうして私は小説を書く「変な人」になってしまったのだろうと今でも不思議に思う。・・・私は人間の心の動きを愛している。それを文字で表現し続けたい。

山本一力「もうひとつの『あかね空』」(しみじみとなる。人情家には他人の人情が集まる。)

朱川湊人「あのカバンの意味を探して
H美さんは、何日かの欠席をはさみながら、とびとびに登校していた。来れば必ず、パンパンに膨れた学生カバンを持っていた。何でも、いつでも先生や同級生に教えてもらえるように、すべての教科書やノートを持ってきているらしかった。・・・彼女が亡くなったのは中学二年の秋・・・パンパンに膨らんだカバン――それはムダなことだったのだろうか。・・・
力の限り、がんばるしかないだろう。書き続けていれば、いつかH美さんのカバンの意味が、わかる時が来るかもしれない。

姫野カオルコ「原稿用紙に書く前
高校生の頃、ぽうっとなる対象は柴田錬三郎と野坂昭如だった。カオルコさんは、野坂昭如について吉行淳之介に直接電話をかけて相談した。吉行淳之介は、ふむふみなるほど、と聞いてくれ、そのうち、定期的に電話で雑談するようになった。(そんなことあるの? あったのだ。)

初出:『オール讀物』の直木賞掲載号のエッセイ(加筆訂正あり)、あるいはロングインタビュー。奥田英朗氏は書き下ろし。


私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

四つ星を付けたいのエッセイも多いが、なにしろ36もあれば、中には・・・。

子供の頃からガンガン読書していた人が多いが、本にはまったく縁がなかったが、青年期に読書家の友達に啓発されて遅れた分だけやたら読書するようになった人もいる。小学生の頃からお話を作って友達に話していた人も多い。

デビュー前に大変苦労した人、デビューはあっけなかったが、その後長い間絶望的状態だった人がほとんどだ。それでも、しぶとく書きつづけていた人が受賞している。数百(?)の新人賞があり、それぞれに千を超える応募があると聞いたような気がする。現代では、小説を読む人より、書きたい人が多いようだ。いや違う、書きたいのだはなく、作家と呼ばれたい人が多いのだ。

登場人物のキャラクターをきっちり決めておく作家、あらかじめプロットを何枚も用意する作家など書き方は様々だ。
奥田英朗は、ほぼ白紙でパソコンに向かいとりあえず出だしを書き出す。途中で整合性がなくなり前に戻って書き直したり、伏線を加えたりする。陶酔型でなく覚醒型で、容易に物語には入っていけない。


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ベルンハルト・シュリンク『夏の嘘』を読む

2014年06月08日 | 読書2

ベルンハルト・シュリンク著松永美穂訳『夏の嘘』(新潮クレスト・ブック2013年2月新潮社発行)

裏表紙にはこうある。
シーズンオフのリゾート地で出会った男女。人里離れた場所に住む人気女性作家とのその夫。連れ立って音楽フェスティバルに出かける父と息子。死を意識し始めた老女と、かつての恋人―。ふとしたはずみに小さな嘘が明らかになるとき、秘められた思いがあふれ出し、人と人との関係ががらりと様相を変える。ベストセラー『朗読者』の著者による10年ぶりの短篇集



「シーズンオフ」:慎ましい男が季節外れの避暑地で出会った女は富豪だった。

「バーデンバーデンの夜」:ドイツの劇作家には、オランダ住む恋人がいた。旅先のホテルのベッドで別の女性と背を向けて寝た男は、その事を・・・

「森のなかの家」:デビューしたもののその後が続かない作家と、最近評価が上がる妻の作家。妻の文学賞受賞が現実見を帯びて・・・。

「真夜中の他人」:機内で隣り合わせ、身の上を語り続ける男の話は、奇妙で、どこまでが・・・。

「最後の夏」:末期癌になり誰にも密かな覚悟を語らず、家族と楽しもうとする老大学教授に、妻や家族は・・・。

「リューゲン島のヨハン・セバスティアン・バッハ」:長く疎遠だった父を理解し、こだわりを超えようと数々の質問をする息子。父は・・・。

「南への旅」:若いときに振られたことにこだわる老婦人と、真実を語るかつての恋人。


私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

著者の過去の作品はナチ時代など戦争の影が常にあったが、本作品は現代の米国が主な舞台で、「嘘」(嘘、誤解、言わなかったこと、行き違いなど)により、家族などに生じた亀裂がテーマになっている。

小さなすれ違いが日常生活の中で広がっていく。話も人物も知的ではあるが、ごく普通で、特に大きな出来事があるわけでもなく、他愛ないエピソードを積み重ねて、人生の不確かさ、自分への不安を浮かび上がらせていく。

主人公がドイツ人男性で、恋人はアメリカ人、両者とも国際間を移動する職業が多い。著者の新しい環境を反映しているのだろう。

あとがきで、訳者は、「なんて優柔不断な男性が多いのだろう!」と嘆いているし、「最後の夏」で夫の秘密を知ったとたんに妻がとる行動にも、日本では考えられないと、驚いている。まったく同感である。

タイトルの「嘘」という字がなぜか旧字(多分。少なくとも機種依存文字だ)になっている。私が利用している図書館のデータは文字化けしてしまっている。今どきなぜ旧字を使うのだろうか?


ベルンハルト・シュリンク Bernhard Schlink
1944年ドイツ生れ。ボン大学、フンボルト大学などで教べんをとる。
現在、ベルリンおよびニューヨーク在住。
ミステリーを3冊出版後、
1993年『ゼルプの欺瞞』がドイツ・ミステリー大賞を受賞
1995年『朗読者』(2003年6月新潮社発行)が39か国で翻訳されるベストセラーに
他に、『帰郷者』『週末』

松永美穂
1958年愛知県生れ。早稲田大学教授。
東京大学、ハンブルク大学などでドイツ文学を学ぶ。
『朗読者』の翻訳で毎日出版文化賞特別賞を受賞。
訳書に『車輪の下で』『黙祷の時間』『幽霊コレクター』
著書に『誤解でございます』


「シーズンオフ」
ドイツ人のリチャードが、シーズンオフのリゾート地でアメリカ人のスーザンとレストランで出会い恋に落ちる。短い時を彼女の家でともに過ごす。彼は決して豊かではないオーケストラのフルート奏者で、ニューヨークの安アパートでの生活になじんでいる。愛してしまった彼女との新しい生活に入るか、気の置けない元の生活に戻るか?

「バーデンバーデンの夜」
フランクフルトに住む劇作家には、7年前に知り合ったアムステルダムに住む恋人アンがいる。いまきちんと共同生活の形をとっておらず、互いの家を訪問したり、片方の出張先に出かけて逢ったりしていた。
彼は、自作の戯曲の初演の日に、テレーゼを連れてバーデンバーデンに行き、ホテルのベッドで互いに背を向けて眠る。やがてアンが尋ねる「バーデンバーデンには誰と行ってたの?」。

「森のなかの家」
ドイツからアメリカにやってきた作家の夫と、アメリカン人作家の妻が、半年前に落ち着いて執筆できる森の中の家に引っ越してくる。
彼の評価が下がる一方なのに、彼女の作品は売れ、評価が高くなる。このまま静かな生活を望む夫は、妻が全米図書賞を受賞し、森から出てゆくことを恐れ・・・。

「真夜中の他人」
フランクフルトまでの飛行機の中、深夜に語り続ける隣りの男の不思議な話しはこうだった。男と美しい恋人はクエートの外交官補の招待を受けるが、恋人は誘拐されてしまう。ヨーロッパ女性の人身売買とハーレムが存在するというが、男の話は、さらに・・・。

「最後の夏」
老大学教授は末期のガンを患っている。安楽死を決意して、最後を家族と別荘で楽しもうと思う。決意を知ってしまった妻は・・・。

「リューゲン島のヨハン・セバスティアン・バッハ」
父ときちんと話したことがない息子は、父と父の好きなバッハ・フェスティバルに行く。しかし、父はバッハを語るが、心の中は見せない。

「南への旅」
施設で暮らし、生きる希望を無くしつつある老婦人は、孫娘に、自分が大学生だった町に行ってみたいと頼む。町で昔自分を捨てた恋人に会うことになるが、事実は・・・。(以下、数行ネタバレで白字)
彼女は、親の決めた裕福な男を夫に選び、貧しい学生を捨てたのに、結局不幸だった結婚生活を他人のせいにして、都合よく事実を曲げて思い込んでいたとわかる。


「なぜ世界はこんなにも静かで、夕闇に包まれるとこんなにも懐かしく優美なのか」マティアス・クラウディス(ドイツの詩人1740~1815)
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内館牧子『女盛りは意地悪盛り』を読む

2014年06月05日 | 読書2


内館牧子著『女盛りは意地悪盛り』(幻冬舎文庫2014年4月発行)を読んだ。

裏表紙にはこうある。
エレベーターで挨拶できない男をこき下ろし、動物園の臭いを気にする母親にガツンとやり、「心は顔の悪い女が磨くものだ」と言い放つ。そんな著者は、自由と平等を錦の御旗とした時代を顧みて何を思ったか。時に膝を打ち、時にクスリと笑わせる、著者本人も思わず怯む、直球勝負のエッセイ五十編。あなたの男盛り、女盛りを豊かにする一冊!


ご存じ、相撲に夢中で横綱審議委員として朝青龍にガンを付け、脚本家として活躍しながら仙台に移り住んでまで「大相撲の宗教学的考察」をテーマとして東北大の修士課程で学ぶ内館さん。小林旭ファンで、氷川きよしファン、新刊のタイトルは「食べるのが好き、飲むのも好き、料理は嫌い」、「本当の私はすっごく気が弱くて、思いやりがある」という内館さん。エッセイのテーマは「この内館さん」でそれ以外の何物でもない。

初出:「週刊朝日」2004年2月20日号~2005年6月3日号「暖簾にひじ鉄」を改題した文庫オリジナル版


私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

パラパラ眺めて止めるつもりが、ついつい最後まで読んでしまった。このブログを書くのに、もう一度、付箋を付けた箇所を中心にパラパラ読み返したのだが、二度目はおもろくない。あははと笑って終わる本だ。

あくまで強気で押し通すキャラクターが面白かった。町でちょっとしたトラブルに巻き込まれても、内館さんにかかると、常に相手は常識外れのとんでもない奴で、自分は被害者という口ぶり。居る居る、こういう人。

要所要所に朝青龍ネタを入れて笑いを誘う内館さん。ちゃっかり強敵を利用し尽くして内館さんの打っちゃり勝ち。あの悪役も形無しだ。だから女性は恐ろしい。


内館牧子(うちだて・まきこ)
1948年秋田県生まれ。武蔵野美術大学卒業。三菱重工勤務後、脚本家。東北大学大学院修士課程修了。
身長168cm。
1993年第一回橋田賞
2011年モンテカルロ・テレビ祭で三冠を受賞。
2000年より女性初の横綱審議委員会審議委員に就任、2010年に任期満了退任。
2011年4月東日本大震災復興構想会議委員に就任

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江国香織『抱擁、あるいはライスには塩を 上下』を読む

2014年06月03日 | 読書2

江国香織著『抱擁、あるいはライスには塩を 上下』(集英社文庫、2014年1月発行)を読んだ。

東京・神谷町にある大きな洋館に暮らす柳島家。3世代、約50年にわたる浮世離れした、風変りな大家族の歴史を描く。

子供4人、2人は父か母が違う。祖母はロシア人。小中高へは行かず自宅学習。金持ち一家が優雅で独自の価値観を持つ生活をし、呪縛がきついが、常識から自由でもある愛のあり方へ挑戦する。

柳島一族や、かかわる人々が入れ替わり、それぞれ一人称で23章を語る構成であり、時代順がバラバラで、1960年から2006年の間を行ったり来たりする。
4年にわたり女性誌『SPUR』に連載された文庫本上下で600頁を超える大作。

ロシアの血を引く一家は、折に触れ抱擁を交わすとともに「かわいそうなアレクセイエフ」「みじめなニジンスキー」とある種の合言葉を交わして他とは異なる家族としての絆を確認してきた。
また、別の合言葉、大人になって好きなことができるようになったという意味の「ライスには塩を」は自由万歳を表す。
野崎歓氏の解説によれば、「抱擁、あるいはライスには塩を」というタイトルは、一家の信条「愛、あるいは自由」を表しているという。
「不倫」だの「三角関係」だのといった捉え方を、いかにもデリケートさを欠いた、心貧しいものと思わせてしまうところがこの一家にはある。


初出:「SPUR」2005年3月号~2009年6月号、2010年11月集英社より刊行


私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

時代から孤立し、あたかも現代日本の中で小さな独立国家のように振る舞う裕福な一家。男は東大、女はお茶の水という有能な家族の歴史を、時代、場所、語り手を変えて描き重ねている。個性豊かな家族が、優雅で豊かな暮らしをする中で、それぞれに問題、秘密を抱えて生きる。
魅力的で憧れを呼ぶ貴族的生活、頑固に想いを貫く生き様。これらを多相的に見事に描き切っている。文章もわかりやすく、良く雰囲気を醸し出している。

しかし、話は面白いのだが、章ごとに語り手が変わり、しかも時間順がでたらめ(?)なので、話が分かりにくい。謎、秘密をたどりながら読むミステリー的要素もあるのだが、なんとなく先が読めてしまい、ミステリーとしては中途半端。


祖父・柳島竹次郎:呉服問屋から貿易会社を作り、さらに財をなす、
祖母・絹:ロシア革命の亡命貴族で竹次郎の妻、
母・菊乃:長女、23歳で家出し8年後に帰ってきて、幼馴染の豊彦と結婚。
父・豊彦:会社の番頭役・新沢の息子で、菊乃の入り婿となり、今は会社の社長。
叔母・百合:繊細で出戻り。
叔父・桐之輔:各国を放浪し、自由気ままに過ごす。甥姪を可愛がる。会社で専務

長女・望(のぞみ):岸部明彦と菊乃の子供、中国へ留学し、薬剤師となり、外国に住む。
長男・光一:大柄でハーフ顔、大学で涼子と恋人になる。
次女・陸子:大学へ進学しなかったが、小説家になる。
次男・卯月:豊彦と麻美の子で、柳島家に引き取られる。
麻美:竹次郎の秘書で、豊彦の愛人で、卯月の母



江國香織(えくに・かおり)小説家、児童文学作家、翻訳家、詩人。
1964年東京生まれ。父はエッセイストの江國滋。
目白学園女子短大卒。アテネ・フランセを経て、デラウェア大学に留学。
1987年「草之丞の話」で小さな童話大賞
1989年「409ラドクリフ」でフェミナ賞受賞。
1992年「こうばしい日々」で産経児童出版文化賞、坪田譲治文学賞、「きらきらひかる」で紫式部文学賞
1999年「ぼくの小鳥ちゃん」で路傍の石文学賞
2002年「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」で山本周五郎賞
2004年本書「号泣する準備はできていた」で直木賞
2007年「がらくた」で島清(しませ)恋愛文学賞
2010年『真昼なのに昏い部屋』で中央公論文芸賞
2012年『犬とハモニカ』で川端康成文学賞 を受賞。
その他、『ウエハースの椅子』『金平糖の降るところ
約25冊の長編小説、10冊のエッセイ本、12冊の短編集、12冊の絵本、4冊の詩集、約75冊の童話を翻訳
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