hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

原田マハ『美しき愚かものたちのタブロー』を読む

2019年11月30日 | 読書2

原田マハ著『美しき愚かものたちのタブロー』(2019年5月30日文藝春秋発行)を読んだ。

 

文藝春秋の宣伝文句は以下。

日本に美術館を創りたい。
ただ、その夢ひとつのために生涯を懸けた不世出の実業家・松方幸次郎。

日本人のほとんどが本物の西洋絵画を見たことのない時代に、ロンドンとパリで絵画を買い集めた松方は、実はそもそもは「審美眼」を持ち合わせない男だった。
絵画収集の道先案内人となった美術史家の卵・田代との出会い、クロード・モネとの親交、何よりゴッホやルノアールといった近代美術の傑作の数々によって美に目覚めていく松方だが、戦争へと突き進む日本国内では経済が悪化、破産の憂き目に晒される。道半ばで帰国した松方に代わって、戦火が迫るフランスに単身残り、絵画の疎開を果たしたのは謎多き元軍人の日置だったが、日本の敗戦とともにコレクションはフランス政府に接収されてしまう。だが、講和に向けて多忙を極める首相・吉田茂の元に、コレクション返還の可能性につながる一報が入り――。

 

第161回直木賞候補作。

 

松方幸次郎は、日本に西洋美術の美術館を作ろうとして、わずか10年ほどで豪快に約3千点もの絵画を買い集めた。当時まだ評価がさだまっていなかった印象派、後期印象派の作品を中心に選んだのは新進美術史家・田代雄一(実名は矢代幸雄)だった。戦争中、このコレクションを、松方の命を受け、その後音信不通となってもただ一人で苦労して保存し、ナチスから守ったのは日置釭三郎だった。戦後、フランスに没収された松方コレクションを日本に返還させる困難な交渉を吉田茂首相が進め、田代が成し遂げた。

これら4名の「美しき愚かものたち」の努力で、今、松方コレクションは国立西洋美術館にあり、私たちに感動を与えてくれる。

 

タイトルの由来

つい二、三十年前までは「タブローのなんたるかを知らぬ愚かものたちの落書き」などと批評家に手厳しく揶揄された画家たち――マネ、モネ、ルノワール、ピサロ、シニャック、ドガ、」セザンヌ、ゴッホ、ゴーギャン、スーラなどを、…(p133)

 

田代雄一:東京帝大で西洋美術史を学び、イタリア・フィレンツェへ留学中、松方に従って蒐集に協力。。後に日本を代表する美術史家となり、吉田茂からの依頼で返還交渉にあたる。

雨宮辰之助:返還交渉に田代と同行。文部省の役人。

松方幸次郎:父は明治期の首相・松方正義。米・エール大で博士号。川崎造船の初代社長。後、金融不安で社長を辞め、衆議院議員となり、戦後公職追放された。

豪快な買い方の例:松方は田代と共にジヴェルニーのモネの自宅を訪れ、飾ってある中から18点を買いたいと望んだ。結局モネは「君はそんなに私の作品が好きなのか」と言って快諾したという。

吉田茂:5度総理大臣になる。松方とは旧知。サンフランシスコ講和会議でフランスの外相に松方コレクションの返還を打診した。

成瀬正一:田代の東京帝大の同窓生。フランス語が流暢。ロマン・ロランの研究者。父は十五銀行頭取。

日置釭三郎:日本海軍の技術士兼飛行機操縦士だったが、松方により飛行機製造技術を学ぶためにパリに送られた。戦時中、「松方コレクション」を守る任務を託された。

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

史実としては感動的だし、印象派好きな私は入れ込むと思ったのだが、語り口がどこぞやの社長さんの偉人伝風で、のり切れなかった。この作品で直木賞は無理。マハさんなら、もっと軽妙に、楽し気に語ってくれると思ったに……。

 

挿入される小話も、千利休が秀吉を朝茶に招いたとき咲き乱れる朝顔をすべて切り落とし、床の間に1輪だけにしたといった、どこにでもある話しか出てこない。MoMAのキュレーターだった(?)人ならもっとびっくりする話があるのではと期待していたのに。

 

 

原田マハ (公式サイト「naked Maha」より) 

1962年小平市生まれ。兄は原田宗典。

1985年関西学院大学文学部卒。専門学校卒。

1986年NYへ留学

1988年「マリムラ美術館」(現在は閉館)に就職

1990年結婚。伊藤忠商事に中途入社

1993年「森美術館」の構想策定のチーフコンサルタント

1994年早稲田大学第二文学部の美術史科入学、学芸員の資格を取得。1996年卒業。

2000年ニューヨーク近代美術館(MoMA)と森美術館が提携関係を結ぶ。人的交流の一環で、MoMAに派遣され、6か月間のニューヨーク駐在。

わが人生のキーワードは「度胸と直感」だとわかった。

2005年『カフーを待ちわびて』で日本ラブストーリー大賞受賞

2012年『楽園のカンヴァス』で山本周五郎賞受賞

2017年『リーチ先生』で新田次郎文学賞受賞

その他、『本日は、お日柄もよく』、『キネマの神様』、『たゆたえども沈まず』、『常設展示室』、『ロマンシエ』、『ゴッホのあしあと』、『フーテンのマハ』、『スイート・ホーム』、『美しき愚かものたちのタブロー』など。

 

 

馥郁(ふくいく)とした香りの:かぐわしい

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烏骨鶏(うこっけい)の卵

2019年11月28日 | 食べ物

 

烏骨鶏という鶏の品種がある。烏骨とは黒い骨の意味で、皮膚、内臓、骨が黒色で、羽毛は白と黒がある。

小さな鶏で、卵も小さい。右が通常の卵(赤玉)。

 

 通常は1個500円ほどで極めて高い卵だ。

懐に余裕のあるとき、何回が買って食べたことがある。値段ほどではないが、段違いにうまい。

 

何を血迷ったか、烏骨鶏の卵、4個入りを今回売っていたので思わず買ってしまった。

値段を唱えながら生卵で食べると、美味しかった。

食べ治めかな?

 

 

 

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果実園リーベルでランチ

2019年11月26日 | 食べ物

 

東急吉祥寺3階「武蔵野マルシェ」の「果実園リーベル」でランチした。今回で3回目

11時28分、モーニングサービスへ滑り込み入店。

 

 

私は本日のセレクトパンケーキでパイナップルを選択。

 

写真ではよく見えないが生クリームはたっぷり。

 

相方は、11月のぶどうサンド。

 

サンドはあまりにもたっぷりで、2個半私に回ってきた。

 

いずれもフリードリンク付きで880円とお安く、コスパ良好。

 

 

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佐々木譲『警官の紋章』を読む

2019年11月24日 | 読書2

佐々木譲著『警官の紋章』(ハルキ文庫さ9-4、2010年5月18日角川春樹事務所発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

北海道警察は、洞爺湖サミットのための特別警備結団式を一週間後に控えていた。そのさなか、勤務中の警官が拳銃を所持したまま失踪。津久井卓は、その警官の追跡を命じられた。一方、過去の覚醒剤密輸入おとり捜査に疑惑を抱き、一人捜査を続ける佐伯宏一。そして結団式に出席する大臣の担当SPとなった小島百合。それぞれがお互いの任務のために、式典会場に向かうのだが…。『笑う警官』『警察庁から来た男』に続く、北海道警察シリーズ第三弾、待望の文庫化。 (解説・細谷正充)

 

ショッキングな場面で始まる。翌日公判で証言の予定の男が警察学校同期の友人に電話をかけ、公判には出ないと告げ、踏切内に車を止め、「やめろ!」と叫ぶ友を無視し、衝撃音を残し、自殺する。

大通署生活安全課の小島百合は女性のストーカーが別事件の婦女暴行犯であると判明し、女性を警護していたが、襲っていた犯人に小島は発砲し、犯人を確保。警備部警護課へ出向となり上野大臣の警護に選ばれる。

 

北見署地域課の日比野伸也の父親・一樹は踏切で自殺。父と警察学校の同期の宮木から父の墓前で真相を聞き、復讐のため、勤務中に制服姿・拳銃所持のまま姿をくらます。ライフル盗難事件も起こり、優良な警官・日比野はテロを起こそうとしているか、津久井は彼を追う。

 

シリーズ初めの「笑う警官」での郡司事件で、盗難車密輸と麻薬事件は道警のやらせだったのか、個人の暴走だったのか。密輸事件捜査を途中で外された佐伯は大した仕事もない中、解決済とされた事件をしつこく追及する。

 

二つの事件と上野麻里子大臣へのテロ予告が絡み合い、時はまさに洞爺湖サミットの直前、混乱は広がる。

 

主要人物

佐伯宏一:大通署刑事課。年齢40代。女性警官殺しの捜査責任を問われ、部下は、新宮昌樹一人だけ。つまらない仕事だけやらされる。

小島百合:年齢32歳前後。警備部警護課で上野大臣の警護に就く。

津久井卓:警察学校教官。かって女性警官殺害容疑で射殺命令を受けた。本部警務部に臨時異動し、洞爺湖サミット特別シフトで失踪した日比野巡査を捜索。

 

北海道警

日比野伸也:北見署地域課。堅物警官だった父親・一樹は自殺。一樹とは警察学校の同期の宮木から真相を聞いて復讐のため、勤務中に制服姿・拳銃所持のまま姿をくらます。

長谷川哲夫:警務一課主任。内部監察のベテラン。津久井と共に失踪した日比野を探す。

奥野康夫:道警本部長。

磯島浩一:警備部長。洞爺湖サミットが決まった時に警察庁から異動。

後藤淳平:警務部長。郡司事件の後、警察庁から送り込まれ、不祥事撲滅の陣頭指揮を執る。

須藤:道警本部銃器薬物対策課長。おとり捜査の特捜班の一員だった。

 

他県警他

服部:愛知県警刑事部捜査三課。佐伯が2年前に担当した四輪駆動車密輸事件を再捜査している。

酒井勇樹:警視庁警護課。上野大臣担当班のSP。相棒は成田亜由美

上野麻里子:サミット担当特命大臣。元ニュースキャスター。

加茂俊治:佐伯が釧路署の時の署長。定年退職後、実家のリンゴ農家。

五十嵐基:前道警本部長。現在は内閣情報官。

前島博信:盗難車のランドクルーザーを密輸出していた。北朝鮮による覚醒剤密輸事件で警察・検察に協力。

大島繁:地元の新聞社の記者。覚醒剤密輸事件を取材していた。

小松雄作:札幌の新聞社の記者。郡司事件を取材していた。

 

 

佐々木譲(ささき・じょう)
1950年札幌生まれ。

『鉄騎兵、跳んだ』でオール讀物新人賞、

『エトロフ発緊急電』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞、

『廃墟に乞う』で直木賞を受賞

他、『ベルリン飛行指令』、『ストックホルムの密使』、『愚か者の盟約』、『鷲と虎』、『屈折率』、『天下城』、『制服捜査』、『警官の血』、『北帰行』など。

 

本書は2008年12月単行本として刊行。

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

3つの謎を引っ張ったまま話は話が進むので読まされてしまう。キャラが強そうな佐伯と津久井がそれほど活躍しないので未読の「笑う警官」の方が面白いのではと思ってしまう。

道警シリーズ最初の「笑う警官」を先に読むべきだ。過去を知らなくても筋道は追えるが、やたらと○○は殺されたとか自殺したとか出てくると、気になる。それほど活躍しない佐伯や、かって射殺命令を受けた津久井への著者の思い入れにもついて行けない。

 

3つ事件があるせいもあり、登場人物が多すぎて、読むのに苦労する。

 

「警官の紋章を胸に刻んだ者と、警察官僚とのちがいがはっきりする。法のまっすぐな執行官たろうとする者と、法を超越しようとする人間との資質の差が明らかになる。」(p417)

ノンキャリアとキャリアの差はこれだけ? 両方ともに良き人はいるし、悪しき人もいる。単純にキャリアが悪の権化と書きすぎる。

 

「慄然(りつぜん)とした」

 

 

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「自家製うどん 武吉志」でランチ

2019年11月22日 | 食べ物

アトレ吉祥寺東館1F、というより昔ならガード下といった雰囲気の「武吉志(たけよし)」でランチした。

狭い店内は居酒屋風で、うどんのファースト風の手軽な店。入口左手で食券を買う。

 

 売り物らしい肉うどんは避けて、以下(名前忘れた)を注文。

 

 

海老好きの相方は海老2本入り。

 

 

どこかに讃岐うどんと書いてあった。汁は関西風の薄い色。

昔、関西の人が東京のうどん汁は真っ黒でどぶみたい、食欲が起きないと嘆いていた。

逆に私には、かつおだし?は味は良いがなんだか頼りない。

 

価格はいずれも1000円以下だったが、忘れた。

 

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ハン・ガン『すべての、白いものたちの』を読む

2019年11月20日 | 読書2

ハン・ガン著『すべての、白いものたちの』(2018年12月20日河出書房新社発行)を読んだ。

 

宣伝文句は以下。

チョゴリ、白菜、産着、骨……砕かれた残骸が、白く輝いていた――現代韓国最大の女性作家による最高傑作。崩壊の世紀を進む私たちの、残酷で偉大ないのちの物語。

 

訳者の斎藤真理子さんの解説によると、(Web河出)、

原タイトルは、表紙に印刷されたハングル一字と同じで、直訳では「白い」という連体活用形。「白い〇」「白い△」と、何を修飾するかは読者にゆだねられ、どんな言葉をそのあとに置いても白くしてしまう装置と見ることもできる、という。

 

また、私に文学の基礎知識はないが、この小説は散文詩と呼ぶべきではないだろうかと思った。とくに第二章「彼女」では、各節(?)は見開きの右に白紙、左に数行の文が次々40以上続く。

しかし、訳者によれば、小説だという。

『すべての、白いものたちの』は、装置であり回廊であり、読むというよりその中を歩く本であり、通過する本なのだと思う。その意味でこの本は、きわめて詩に似ているけれども、小説である。読む人自身が完成させる小説なのである。

 

 「好書好日」での都甲幸治の書評より 

人里離れた家で、女は一人で子を産む。助けを呼ぶこともできず、「しなないでおねがい」という祈りも虚しく、やがて娘は息を引き取る。真っ白な産着は、そのまま白装束となる。
 今や現代韓国文学を代表する存在であるハン・ガンは、そうした不在の物語のただ中で育った。もし姉が生きていたら、私はこの世にいなかったのだろうか。そして彼女は自分の魂と体を明け渡して、姉をこの世に呼び込む。
   略

 断片的な文章や写真を集めたこの本は、死者を悼み、死者とともに生きることを巡って書かれている。

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

私は詩というものが好きでない。筋道がないので訳が分からず、全体の雰囲気はなんとなく感じられるのだが、急に話が飛んだりして入り込めない。詩といえば、ときに、スマホに録音した荻原朔太郎の詩の風間杜夫の朗読を聞きながら寝るくらいのものだ。

この本を読んでいると、雪降る街と、赤ん坊で亡くなった姉のイメージが繰り返され、日常生活の匂いは全くせずに、静かで心地よい孤独が漂っている。確かにこれも優れた一つの作品なのだろうと思えてくる。

  

ハン・ガン(韓江)の略歴と既読本リスト

 

 


斎藤真理子
1960年、新潟市生まれ。明治大学文学部史学地理学科考古学専攻卒業。

1980年より韓国語を学び、1991~92年、韓国の延世大学語学堂へ留学。

2015年、パク・ミンギュ『カステラ』(ヒョン・ジェフンとの共訳、2014年、クレイン)で第1回日本翻訳大賞受賞

 

 

以下、ネタバレで白字(訳者の斎藤真理子さんによる(Web河出))

著者の教えに基づいて解釈するなら、1章は現実であるが、2章は、「私」から彼女へと生の譲渡が成就した段階なので、現世であって現世でない。そこでは姉が「私」を生きている、または「私」が姉によって再び生きられている、ともいえる。そして3章では再び叙述の主体が「私」の目に戻る。姉と自分の生が両立することは不可能であると悟った「私」は、ソウルへ戻って、姉に惜別の挨拶を送る儀式を行う。母に贈る衣裳を焼くことが儀式である。そして「私」は、彼女が吐き出した息を思いきり胸に吸い込みながら、再びこの生を生きていくことを誓う。

訳者は、これらは作者の意図であっても、読者を限定する可能性があることから、訳者あとがきには書かなかったという。私も、確かにその通りだと思った。

 

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ハン・ガン『菜食主義者』を読む

2019年11月18日 | 読書2

ハン・ガン(韓江)著、きむ・ふな訳『菜食主義者』(クオン2011年5月25日発行)を読んだ。

 

ブックカフェCHEKCCORIと出版社クオンのオンライン書店 より

 

「新しい韓国文学シリーズ」第1作としてお届けするのは、韓国で最も権威ある文学賞といわれている李箱(イ・サン)文学賞を受賞した女性作家、ハン・ガンの『菜食主義者』。韓国国内では、「これまでハン・ガンが一貫して描いてきた欲望、死、存在論などの問題が、この作品に凝縮され、見事に開花した」と高い評価を得た、ハン・ガンの代表作です。

 ごく平凡な女だったはずの妻・ヨンヘが、ある日突然、肉食を拒否し、日に日にやせ細っていく姿を見つめる夫(「菜食主義者」)、妻の妹・ヨンヘを芸術的・性的対象として狂おしいほど求め、あるイメージの虜となってゆく姉の夫(「蒙古斑」)、変わり果てた妹、家を去った夫、幼い息子……脆くも崩れ始めた日常の中で、もがきながら進もうとする姉・インへ(「木の花火」)―
 3人の目を通して語られる連作小説集。

 

2016年ブッカー国際賞を受賞。

 

「菜食主義者」

特別な魅力や、短所もなく、無難な性格が気楽だったので結婚し、可もなく不可もなく暮らしをしていた妻・ヨンへが、ある朝、パジャマ姿で冷蔵庫の中の肉類をゴミ袋に詰め込んでいた。妻は突然肉を食べなった。理由を聞いてもただ、「夢を見たの」と言うだけだった。

字体を変えて彼女の夢―森の中の納屋で血だらけになって肉を食らったーが語られる。

 

妻は卵も牛乳も捨て、夫とのコミュニケーションも無くなっていく。ほとんど寝ていないらしく異常に痩せていった。会社幹部との会食の席で妻は出席者に気味悪がれてしまう。帰宅すると妻が上半身裸でジャガイモの皮をむいていた。ヨンへの父母、姉夫婦、弟夫婦が、義姉のマンションに集まった。義姉は化粧品店を経営し、義兄は芸術家だった。家族皆から強く言われるが妻は肉を食べない。ベトナム戦での活躍が自慢の父が激高し……。

「蒙古斑」

芸術家である義兄は、妻がヨンへは20歳まで蒙古斑が残っていたと言うのを聞いた時、女性の臀部から青い花が開く場面が衝撃のように思い浮かんだ。結局離婚して独り住まいのヨンへをアパートに訪ねた。彼女は全裸だった。彼はかねて望んでいた依頼をする。

「同じようなビデオ作業だ。長くはかからないと思う。ただ……服を脱がなければならないんだけど」

 

「木の花火」

入院したヨンへを姉・インが訪ねる。

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

「菜食主義者」は★★★★★(五つ星)で、「蒙古斑」は★★☆☆☆(二つ星)、「木の花」は★★★★☆(四つ星)。

 

突然肉を食べられなくなったヨンへを囲む家族の話はカフカの変身を思わせる話で、シュールで、家族それぞれのヨンへへの対応の差が面白い。父親だけが異様に熱くなっていて、姉はかわいそうと思い、夫も含め他は冷たく他人事だ。濃密であろう韓国の家族の中で、一人だけ手の届かない世界に閉じこもってしまったヨンへ。

 

「蒙古斑」で、芸術家としてのめり込んでいく義兄の話には、私は乗り難い。人体に描かれた咲く花があやしく美しいのは解らないでもないが、きわもので読者をそそるのは俗物の私には受け入れがたく、低級だと思ってしまう。

 

「木の花」は、子ども時代から面倒を見てきた妹になんとか手を差し出そうとする姉の、ただ一人といってもよいやさしさに温かくなる。

「著者あとがき」に、この小説を書いていたときのメモ書きが紹介されていた。

慰めや情け容赦もなく、引き裂かれたまま最後まで、目を見開いて底まで降りていきたかった。

もうここからは、違う方向に進みたい。

そして、「そのとき心に決めたように、私はもう違う方向へと進んでいます。違うやり方で進んでいる今、慰めもなく目を見開き、底まで降りていったこの小説のことを思い出します。」と書いている。

 

 

ハン・ガン(韓江)の略歴と既読本リスト

 

 

 

訳者: きむ ふな

韓国生まれ。
韓国の誠信女子大学、同大学院を卒業し、専修大学日本文学科で博士号を取得。

現在は日韓の文学作品の紹介と翻訳に携わっている。

翻訳書に、津島佑子・申京淑の往復書簡『山のある家、井戸のある家』(集英社)、孔枝泳『愛のあとにくるもの』(幻冬舎)、 李垠『 美術館の鼠』(講談社)など。

著書に『在日朝鮮人女性文学論』(作品社)がある。

 

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「ゆきすきのくに」でランチ

2019年11月16日 | 食べ物

 

西荻窪駅北口のバス通りを西に、東京女子大方向へ約3分、西荻神楽ビル1Fの「ゆきすきのくに」でランチした。  

 


店内は、シンプルな自然な作りなのだが、伊勢神宮の写真が貼ってあったり、神棚があったり、日の丸が見当たらないが、ちょっと異質なものが……。そもそも、「ゆきすきのくに」という店名は何?と不安。

 

2019年11月14日、新天皇によって行われた宮中祭祀・大嘗祭が行われた。このために作られた大嘗宮において、東の神事が行われる祭場が悠紀殿(ゆきでん)で、西が主基殿(すきでん)だった。

店名はここからきているらしい。美しいホームページに書かれていることが難しすぎてよくわからないが、民俗情報工学家の井戸理恵子氏による日本の古来からつたわる伝統文化を大切にするオーガニック・カフェらしい。

 

私が頼んだのは「薬膳カレー 大山鶏チキン」ぬか漬、ピクルス、ヨーグルトペースト付き

 

量的には少なめだが、味は結構で、何か手が込んでいる感じがした。

光の関係で真上から写真を撮ったのだが、旨さが伝わらない写真になってしまった。

 

相方は「デリプレート(一口デリ12種類)ごはん、スープ、ぬか漬け、一口デザート付き。

ビーガン対応可と追記があった。

 

味はいたくお気に入りの様子。固かった切り干し大根だけが私に回ってきた。

 

二人とも未発酵なグリーンのルイボスティー付き。ノンカフェインで体によさそう。

 

 

二人合わせて3600円少々。

相方はご機嫌だし、近くに来た時には寄りたい店だ。

 

 

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桐野夏生の略歴と既読本リスト

2019年11月14日 | 読書2

桐野夏生(きりの・なつお)

1951年金沢市生れ。成蹊大学卒。
1993年『顔に降りかかる雨』で江戸川乱歩賞
1998年『OUT』で日本推理作家協会賞
1999年『柔らかな頬』で直木賞
2003年『グロテスク』で泉鏡花文学賞
2004年『残虐記』で柴田錬三郎賞
2005年『魂萌え!』で婦人公論文芸賞
2008年『東京島』で谷崎潤一郎賞
2009年『女神記』で紫式部文学賞
2010年『ナニカアル』で島清恋愛文学賞、2011年同作で読売文学賞 を受賞。
2015年紫綬褒章受章

その他、『ハピネス』、『夜また夜の深い夜』、『奴隷小説』、『だから荒野』、『抱く女』、『路上のX』、『とめどなく囁く』。

村野ミロシリーズは、第1作の『顔に降りかかる雨』、『天使に見捨てられた夜』、『水の眠り灰の夢』、『ローズガーデン』、『ダーク』

野原野枝実(のばら のえみ)の名で少女小説、レディースコミック原作を手がけていた。

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桐野夏生『とめどなく囁く』を読む

2019年11月12日 | 読書2

 

桐野夏生著『とめどなく囁く』(2019年3月25日幻冬舎発行)を読んだ。

 

幻冬舎の宣伝文句は以下。

一番近くにいるのに
誰よりも遠い。
海釣りに出たまま、二度と帰らなかった夫。
8年後、その姿が目撃される。そして、無言電話。
夫は生きていたのか。

塩崎早樹は、相模湾を望む超高級分譲地「母衣山庭園住宅」の
瀟洒な邸宅で、歳の離れた資産家の夫と暮らす。前妻を突然の病気で、
前夫を海難事故で、互いに配偶者を亡くした者同士の再婚生活には、
悔恨と愛情が入り混じる。そんなある日、早樹の携帯が鳴った。
もう縁遠くなったはずの、前夫の母親からだった。
自分がやったことは
ブーメランのように自分に返ってくる。

 

逗子の母衣山(ほろやま)庭園住宅に住み恵まれた再婚をした早樹にも悩みはある。

 

夫・克典の長男・智典46歳は会社を継いでいて、妻は同い年41歳の優子。長女・亜矢44歳は歯科医と結婚して神戸に住む。問題は次女・真矢41歳で、独身。前妻・美佐子と仲が良かった真矢は父親と不仲で式にも出席せず、ブログに克典早樹の悪口を書きまくっている。

 

前夫・加野庸介は三浦半島で海釣りに一人で出かけ帰らなかった。7年後死亡認定され、早樹は付き合っていた克典と結婚した。元義母・加野菊美がある日、「近所のスーパーで庸介を見た」と言い出す。埼玉の実家の父も、庸介に似た人物を目撃していた。どこかで庸介は生きているのか? そうであったら?

 高校からの親友で弁護士の美波に相談し、庸介の釣り仲間(同じ大学の小山田潤、丹呉陽一郎、釣り雑誌の編集者・佐藤幹太)に連絡を取ると、早樹の知らなかった夫の姿がちらちらとする。

 

72歳の克典と、41歳の早樹の暮らしは豊かなものであったが、歳の差もあり、穏やかな引退生活を同じように要求されている柔らかな束縛を感じることがあった。

あるできごと以降、塩崎家が結束し、早樹はひとり外れそうな雰囲気になる。

 

本書は東京新聞など4紙朝刊に2017年8月1日~2018年9月30日まで連載。

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

新聞小説だからなのか、徐々に深みにはまっていくように書いている点は著者の筆力なのだろう。しかし、展開が遅く、じれったい。にもかかわらず結局、445頁を読まされている自分にも腹が立つ。

 

なぞ自体は想定内に収まっているので意外性はなかった。早樹がなぜそんなにイライラするのか、今一つぴんと来ない。失踪前の夫婦仲が良くなかったのなら、そんなに「何故突然に!」と悩むことないのにと思ってしまう。

 

 

桐野夏生(きりの・なつお)の略歴と既読本リスト

 

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伊坂幸太郎『クジラアタマの王様』を読む

2019年11月10日 | 読書2

 

伊坂幸太郎著『クジラアタマの王様』(2019年7月5日NHK出版発行)を読んだ。

 

特設ページ」にはこうある。

製菓会社に寄せられた一本のクレーム電話。広報部員・岸はその事後対応をすればよい…はずだった。訪ねてきた男の存在によって、岸の日常は思いもよらない事態へと一気に加速していく――。

不可思議な感覚、人々の集まる広場、巨獣、投げる矢、動かない鳥。

打ち勝つべき現実とは、いったい何か。

巧みな仕掛けが張り巡らされた、ノンストップ活劇エンターテインメント!

 

主人公のは製菓会社の広報担当。マシュマロの新製品のCMに今人気の小沢ヒジリが出てくれるように栩木係長(とちぎ)が交渉したが事務所に断られる。しかし、なんと小沢がTVで「休みの日はお菓子食べてますよ。マシュマロで包まれた、あれ」「最近、夢中なんですよ」と言ったので、菓子が急に売れ始めた。

しかし、マシュマロに画鋲が入っていたというクレーム電話への担当者対応がまずく、さらにベテランの牧場課長や岸の心配をよそに、変な自信を持つ広報部長が会見で記者たちの怒りを買い、ネットで叩かれるなど大混乱になった。しかし、クレームは……。

 

クレーマーの夫である都議会議員の池野内から岸へ「ハシビロコウ」の写真付きのメールがあり、会うと、「あの、夢を見ませんか?」と聞かれた。製菓会社員の、人気アイドルの小沢、都議会議員の池野内の3人が出会い、現実の世界で共に闘う。昔、3人は金沢のホテル火災現場にいたことがあったとわかる。

 

3人は現実世界と同時に夢の中で兵士として巨大な化け物と闘が展開される。この夢の中のファンタジー的闘いは文章と、川口澄子によるコミックで描かれる。

コミックは3頁ほどのものがざっと15カ所位文章中に挿入される。文章とコミックの関係は、現実(文章)でトラブルが起きた時、夢の中(コミック)で闘って負けると現実のトラブルが拡大してしまうというという関係がある。

 

イベントが開かれた埋立地が、橋が壊されて隔離され、サーカスの猛獣が逃げ出して大勢に危機が迫る。

 

15年後、岸は女子高生・加凛の父親、池野内は厚生労働大臣、栩木は社長になっていた。そして、池野内に疑惑が……。いざ、最後の決戦へ。

 

タイトルの「クジラアタマの王様」とは前半3人のボスとなる「ハシビロコウ」の学名のラテン語の意味。

  

本作は書き下ろし。

  

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

いつも文句なしに面白い伊坂作品の中では凡庸レベル。

ファンタジーと漫画が好きでない私には、夢の中では両者が登場するのがマイナスになる。「小説丸」で伊坂さんは

「小説で殴り合いやカーチェイスを書いても、絶対に映画や漫画で観たほうが迫力がありますよね。なので、小説の中にコミックを入れれば、活き活きさせられるんじゃないかと思ったんです。」と語っているが。

 

「スマホ」の代わりに「パスカ」という言葉が使われているがなぜ?

  

伊坂幸太郎の履歴&既読本リスト

 

 

魘されて(うなされて)

一世風靡(いっせいふうび)

 

「お節介なんです。帝王切開で生まれてきましたし」

お節介と切開の駄洒落?

 

 

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2019年10月の花

2019年11月08日 | リタイヤ生活

10月12日に届いた花

まだユリは蕾で、11ある。

 

3日経つと、ユリは、4輪+半輪咲いた。まだまだ楽しみがある。



この奇妙な「石化エニシダ」

「石化」とは、通常先端にある成長点が複数個所に現れる奇形のことらしい。奇妙な形から生け花で便利に使われる・


17日にはほぼ7輪。


10月25日の届いた花


3日経過しても、これ以降もバラの大きさはあまり変わず、これで満開らしい。


この時期、散歩していると、かぐわしい匂いにキョロキョロする。

キンモクセイだ。






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大島真寿美『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』を読む

2019年11月06日 | 読書2

 

大島真寿美著『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』(2019年3月10日文藝春秋発行)を読んだ。

 

「文藝春秋BOOKS」の作品紹介 

第161回直木賞受賞作。
選考委員激賞!
虚構と現実が反転する恐ろしさまで描き切った傑作! ──桐野夏生氏
いくつもの人生が渦を巻き、響き合って、小説宇宙を作り上げている。──髙村薫氏
虚実の渦を作り出した、もう一人の近松がいた──

「妹背山婦女庭訓」や「本朝廿四孝」などを生んだ人形浄瑠璃作者、近松半二の生涯を描いた比類なき名作!

江戸時代、芝居小屋が立ち並ぶ大坂・道頓堀。
大阪の儒学者・穂積以貫の次男として生まれた成章(のちの半二)。
末楽しみな賢い子供だったが、浄瑠璃好きの父に手をひかれて、竹本座に通い出してから、浄瑠璃の魅力に取り付かれる。
父からもらった近松門左衛門の硯に導かれるように物書きの世界に入ったが、弟弟子に先を越され、人形遣いからは何度も書き直しをさせられ、それでも書かずにはおられなかった……。
著者の長年のテーマ「物語はどこから生まれてくるのか」が、義太夫の如き「語り」にのって、見事に結晶した奇蹟の芸術小説。

筆の先から墨がしたたる。
やがて、わしが文字になって溶けていく──

 

 

人形浄瑠璃作者・近松半二の生涯を描く。

穂積成章(後の半二)は父に連れられて幼い頃から大阪の道頓堀で浄瑠璃を見て、浄瑠璃作者への道を進む。

歌舞伎に人気を奪われ、竹本座の危機の中、苦労の末、「妹背山婦女庭訓」を生み出し、大当たりをとる。しかし、浄瑠璃衰退の波は留まることなく、歌舞伎の「伊賀越道中双六」から作った操浄瑠璃「伊賀越乗掛合羽」を拵えなおしたのが、半二の最後の作品になった。それも途中で亡くなっのだが、娘おきみが書き継いでくれた。

  

人形浄瑠璃文楽:古くは操(あやつり)人形、操浄瑠璃と呼ばれ、のち人形浄瑠璃と呼ばれる。竹本義太夫の義太夫節と近松門左衛門の作品により、人形浄瑠璃は大人気を得て全盛期を迎え、竹本座が創設されました。この後豊竹座をはじめいくつかの人形浄瑠璃座が盛衰を繰り返し、幕末、淡路の植村文楽軒が大阪ではじめた一座が最も有力で中心的な存在となり、やがて「文楽」が人形浄瑠璃の代名詞となり今日に至っています。(文楽協会HPより)

当時の浄瑠璃は現在のワイドショーの役目も果たすことがあった。例えば殺人事件、色恋沙汰が起こると、ニュースが広がる前に、すかさず事件をもとにした台本を作り、浄瑠璃が演じられ、話題を、人を集めたという。

  

歌舞伎と浄瑠璃:互いに競い合うが、お互いの台本を書き直して演じ合ったりする。歌舞伎は台本にかかわらず、役者が舞台を自分で作り上げる傾向がある。客も、脚本より、役者の魅力を見に来る。

 

婦女庭訓:親が子に教えるべきことを集めた庭訓。その中でも、おなごに教えることを集めた婦女庭訓。

 

 

半二:穂積成章(なりあき)。近松の半人前と近松半二を名乗る。

以貫:穂積以貫(いかん)。半二の父。妻は絹。儒学者で私塾を開く。浄瑠璃狂い。

文三郎:吉田文三郎。竹本座の人形遣いの名人、親玉。竹田近江から独立を目論む。

出雲:二代目武田出雲。千前軒。竹本座の座本で作者。

近江:武田近江。からくり芝居竹田座の座本で、出雲の後を継ぎ竹本座の座本になる。

並木千柳:並木宗輔。竹本座の浄瑠璃作者。

松洛:竹本座の作者部屋の重鎮。

泉屋正三:並木正三。歌舞伎の狂言作者から浄瑠璃へ。半二より5歳下。芝居茶屋・和泉屋の倅・久太郎。

治蔵:宇蔵の兄。出雲の手伝いから、竹本座を出て並木正三の弟子へ。

宇蔵:治蔵の弟。吉田一門で人形遣いの修業。

獏:半二の弟子

 

初出:「オール読物」2018年1月号~11月号

 

 

大島真寿美(おおしま・ますみ)

1962年、愛知県生まれ。

1992年「春の手品師」で文學界新人賞を受賞しデビュー。

2012年『ピエタ』で第9回本屋大賞第3位。

2014年『あなたの本当の人生は』直木賞候補

その他、『チョコリエッタ』(映画化)、『紅色天気雨』(NHKドラマ化)、『ビターシュガー』(NHKドラマ化)、『戦友の恋』、『ゼラニウムの庭』、『ツタよ、ツタ』、『モモコとうさぎ』など著書多数。

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

半二の生みの苦労や、吉田文三郎の独立への挫折など苦しい場面も多いのだが、半二がのんきで明るい性格なので、浄瑠璃の知識はなくとも、楽しく読めた。

 

物語を紡ぎだす苦しみ、面白味が全体のテーマで、それはよく書けているのだが、浄瑠璃というものがどうゆうものなのか、何が魅力なのかということはほとんど語られない点が物足りない。

 

 

 

獏の台詞「松洛はん、今年で齢七十七やったか、いや、八やったか。そこまでいかはると、人てのは、ひょいと、なにかを超えていかはるんやろか、風呂上りみたいに、えらいさっぱりしてはんのや。…」(p293)

おおそれながら私、今年、齢七十七になるんですが? どうしましょう!

 

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道尾秀介の略歴と既読本リスト

2019年11月04日 | 読書2

 

道尾秀介(みちお・しゅうすけ)

1975年生まれ。
2004年、『背の眼』でホラーサスペンス大賞特別賞受賞しデビュー。
2005年『向日葵の咲かない夏』はオリコンによる「2009年最も売れた文庫本」。
2007年『シャドウ』で本格ミステリ大賞受賞。
2009年『カラスの親指』で日本推理作家協会賞受賞、直木賞候補。
2009年『鬼の跫音』は直木賞候補。
2009年『球体の蛇
2010年『龍神の雨』で大藪春彦賞受賞。『プロムナード』、『光媒の花』で山本周五郎賞受賞。『月の恋人
2011年『月と蟹』で直木賞受賞。
2012年『ノエル a story of stories 
2018年『透明カメレオン』『風神の手
2019年『いけない』『カエルの小指
2021年『雷神

その他、『片眼の猿』、『水の柩』、『光』、『笑うハーレキン』、『鏡の花』、『獏の檻』、『スタフstaph』、『サーモン・キャッチャー the Nove』、『満月の泥枕』、『スケルトン・キー』『N』など

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道尾秀介『いけない』を読む

2019年11月02日 | 読書2

 

道尾秀介著『いけない』(2019年7月10日文藝春秋発行)を読んだ。

 

文藝春秋の宣伝文句(オーバー)  

騙されては、いけない。けれど絶対、あなたも騙される。
『向日葵の咲かない夏』の原点に回帰しつつ、驚愕度・完成度を大幅更新する衝撃のミステリー!
途中略
どの章にも、最後の1ページを捲ると物語ががらりと変貌するトリックが……!
ラストページの後に再読すると物語に隠された〝本当の真相〟が浮かび上がる超絶技巧。
さらに終章「街の平和を信じてはいけない」を読み終えると、これまでの物語すべてがが絡み合い、さらなる〝真実〟に辿り着く大仕掛けが待ち受ける。
「ここ分かった!?」と読み終えたら感想戦したくなること必至の、体験型ミステリー小説。

 

架空の街、蝦蟇倉(がまくら)市で起こった3件の事件と、全ての事件が絡まり最終章へ繋がっていくエピローグ。各章ごとに主人公が変わり、単独短編としても読める連作短編。

 

第1章「弓投げの崖を見てはいけない」
自殺の名所「弓投げの崖」(ゆ・みなげのがけ)付近のトンネルで、車を走らせていた安見邦夫は急に動き出した車を避けようとして壁に激突。3人のうち運転していた男はひき逃げをもくろみ、まだ息のある邦夫の顔面を何度もハンドルにたたきつけた。 「男の顔は邦夫がこの世で見た最後のものとなった。」

妻・弓子の所には、死者がよみがえらせるという地元の宗教団体「十王還命会」の宮下志穂がしつこく訪れる。

一方、この事件の担当は蝦蟇倉署の隈倉竹梨弓子は言う「『ナオヤ……』と夫は、病室のベッドの上で、繰り返し、必死でそう口を動かしていました。何度も……」。 しかし、隈倉が逮捕を誓った1時間ほど前にすでの憎むべき男は現場で死んでいたのだ。

当日助手席に乗っていた森野雅也が見つかり、警察で話を聞かれた。後部座席にいた弟の浩之は「(梶原)尚人さんを殺したのは絶対あの男のカミさんだ」と言って出かけて行った。 「だって現場の近くのアパートに住んでるじゃないか」。 彼ら3人は新聞など読まなかった。

最後に誰かが車に跳ねられる。森野雅也か、安見邦夫か、隈島か?

この章はすでにアンソロジー「蝦蟇倉市事件1」に掲載されている。

第2章その話を聞かせてはいけない」
中国から来た(カー)少年が見た文具店での殺人は幻か? 

第3章「絵の謎に気づいてはいけない」
「十王還命会」の支部に顔を出さない宮下志穂のマンションを支部長の守谷巧が訪ね、管理会社の中川徹に鍵を持ってきてもらい、彼女が死んでいるのを発見した。妻を亡くしている竹梨は、新米刑事の水元と捜査を続けていた。

第4章「街の平和を信じてはいけない」

私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読むの?)(最大は五つ星)

 

一回スイスイと読んだだけでは謎が謎のままだった。自分の乱暴な読み方をさておいて、著者の説明不足だと決めつけた。

「週刊読者人ウェブ」のこの作品に関するインタビューで道尾さんはこう言っている。

前に玄侑宗久さんと話していた際、こんなことを言われました。「道尾さんは読者を信頼しすぎじゃないか。一行で物語をひっくり返してしまうと、意味が分からない人もいるのではないか」。

どうしても謎解きしたい人は、「Soneyu Blog」をご覧あれ。

各章の最後の写真が大きなヒントになっているなんて、思いもしなかった。

 

第2章は他章とのつながりがよくわからないし、幻想じみた話が続くし、子どもが主人公なので、他の章のトーンが異なり違和感がある。

 

 

道尾秀介の略歴と既読本リスト

 

 

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