荻野(おぎの)アンナ著「働くアンナの一人っ子介護」2009年1月グラフ社発行を読んだ。
「嫁入り前」の働く一人っ子・荻野アンナが、自己流の介護三原則で、父94歳、母85歳、2人とも要介護4の介護ジャングルを乗り切ってきた実体験記。
アンナさんは、長年のパートナーの闘病を支え、見送ったあと、高齢の日本語を話せない米国人父親、さらに画家で自立心の強い母親の介護を、病院や、ケアマネージャーなどの助けを得ながらとはいえ、たった一人で仕事をしながら続けている。
アンナさんによる、介護の三原則は、「失敗は許されない」「失敗したら後悔しない」「とっとと気分転換する」だそうで、完璧にやるぞと思ってもいろいろあって成功率は7割、後悔を溜め込まないで、少しでも心身のバランスを回復することが必要だと考える。介護者が「すべてを捧げたわよ」と思っていると気づいた相手にとっては重過ぎるし、捧げた方も抜け殻になってしまう。
アンナさんは30代から40代にかけてうつ病になった。52歳のアンナさんと、39歳のアンナさんとの仮想対話している記述があるが、過ぎてみれば、年を経てみれば、より離れた立場からみれば、楽になることが良く解る。
75歳以上はもう小児科と同じだと医者の世界では言われているようだ。わかりやすく説明が必要だが、大人として敬意を持って接する必要がある。
米国人の父親に病状説明するときに、医者の正統派英語での説明よりも、アンナさんの「悪いの、食道。口と胃の間。わかった?」という簡潔・大声の植民地英語の方が伝わるという。
今の80代と90代は頑張り屋で、ケアを受けることを申し訳ないと思い、抵抗もある。世代が下がるとケアへの抵抗が減り、権利意識が強くなる。今は「言いたいことは言わせてもらうね」が主流。しかし、中には、ヘルパーを家政婦と勘違いし「奥さまとお呼び」と迫った人がいたという。
著者は、1956年横浜生まれ。父はフランス系米国人、母は画家。慶應義塾大学文学部フランス文学科教授。1991年「背負い水」で第105回芥川賞、2001年「ホラ吹きアンリの冒険」で第53回讀賣文学賞受賞。
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)
90台の超わがまま、頑固な父親が、3 回死にかけては回復するなど厳しい話を、極めて明るく語り、介護の「手抜き」指南など、介護する人が読めば、ほっとする本だ。
以下、蛇足で、「『英語 ジョークの教科書』を読む」のつづきのジョークを若干。
What’s the best thing about being over seventy ?
No more calls from life insurance salesmen.
70歳をこえるといちばんいいことはなにか? 生命保険の外交員から一切の勧誘がなくなることである。
(確かに。あらほどうるさかった保険のおばちゃんの姿を見なくなって久しい)
丸山孝男「英語 ジョークの教科書」2002年3月、大修館書店発行より。