林真理子著『中島ハルコはまだ懲りていない!』(2016年7月10日文藝春秋発行)を読んだ。
「中島ハルコの恋愛相談室」に続く第二弾で、短編10編。
文藝春秋の宣伝文句は以下。
天上天下唯我独尊! 日本一、傍若無人な女社長、中島ハルコがパワーアップして帰ってきた! 今回持ちこまれる相談事も、医者の息子の進路問題、歌舞伎役者の浮気、相続問題とさまざま。その一方で、自分もドロボーに入られたり、五十女を脱がせたり、美魔女と争ったり、韓国では骨董屋の親父とバトル! 一方、ハルコに振り回されつつ、いつももめごとに巻き込まれるフードライターのいづみは、心許せる男性、熊咲と知り合いながらも結婚に踏み切れず、年上の既婚者に目が行ってしまう……。批判、炎上、なんのその。ハルコのズバリとした物言いに、皆が納得してしまう、痛快なコメディシリーズ第2弾。
中島ハルコ名古屋生まれの53歳独身。30名ほどの会社の経営者で、趣味は宝石集め、好きな食べ物は河豚。自分勝手な振る舞いでかかわる人を振り回す。相談事には、相談者の本心をズバ、ズバ突いて、真意、裏事情をえぐり出す。
「離婚に反対する」
五反田の豪邸地帯の池田山に居を構える丸山家でのお茶会の後で、ハルコは娘礼子から離婚の相談を持ちかけられる。礼子は夫と16年も別居しており、夫の浮気相手には子供がいて、来年小学校に入るので離婚を迫られている。
ハルコは「ルールを犯した人間には、ちゃんとペナルティを課すべきなんですよ。」と離婚に反対する。ハルコは名門小学校には両親が揃わないと入学できないから今離婚を迫るのだという。
「梨園の妻を諭す」
「・・・女がね、離婚しようかしら、どうしようかしら、ってあれこれ人に相談している間はまで別れることは出来ないの。女が決心する時は、黙ってすべてやるわよ。・・・」
「私ね、子どものために離婚を思いとどまります、っていう女は嫌いなのよ。本当はまで夫のことがすきなんです、っていう女がすきなの。・・・」
「五十女を脱がす」
「あ、すみません。またオヤジ発言が出ちゃって」
「ま、いいわよ、そのくらい。女も三十過ぎりゃ、だんだん言うことにヒゲがはえてくるんだから」
初出:「オール読物」2014年8,9,10,12月号、2015年1,2,8,10,12月号、2016年2月号
私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)
会話が中心で話がするみ、解りやすく、スイスイ読める。最後にハルコさんの決めつけが決まる水戸黄門スタイルの展開で安心できる。
ハルコの意見に異論があっても、ともかく爽快。真理子節に乗って楽しく読める。アクが強い真理子さんに反感持つ人は乗れないだろうが、もともとそんな人は読まないだろう。
ハルコといづみのコンビが良くできている。常識があり、他人を気にするのに、ハルコに対してはズバズバ突っ込みを入れるいづみを、ハルコは気に入って付き合っている。
「でも意外ですよ、ハルコさんが歌舞伎好きだったとは。お茶やっているって聞いた時以来の驚きです」
「何言ってんのよ。歌舞伎に茶の湯、こういう伝統文化にたけてる私だから、こんなにエレガントなんじゃないの」
「だから意外なんですよ。茶の湯の美意識って、ハルコさんのパーソナリティにまるで生かされていませんからね」
読み進めるに従い、ハルコさんと真理子さんの区別がつかなくなってくる。
それにしても、登場する美人はすべてハルコさんにコテンパンにやられてしまう。なぜか美人に厳しい真理子さんでした。
目次
「ハルコ、縁談を取り持つ」
「ハルコ、離婚に反対する」
「ハルコ、母親を慰める」
「ハルコ、梨園の妻を諭す」
「ハルコ、韓国人に檄を飛ばす」
「ハルコ、美魔女に出会う」
「ハルコ、相続について語る」
「ハルコ、不倫の謎を解く」
「ハルコ、五十女を脱がす」
「ハルコ、いづみの背中を押す」