スコット・ギャロウェイ著、渡会圭子訳『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』(2018年8月9日東洋経済新報社発行)を読んだ。
宣伝は以下。
GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazonグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)は、この20年ほどで世界のあり方を大きく変えてきた。この激変を予言した著名教授が断言する、次の10年を支配するルールとは。
米国発、22カ国で続々刊行のベストセラーがついに日本上陸!
アマゾン
消費者の自宅に商品を届けるラスト・ワンマイルのインフラに巨額の資金を投入した。これを可能にしたのが、による巧みなストーリーテリングで「地球上最大の店舗」の夢を語り、多くの個人投資家たちは利益でなくビジョンと成長に気前よく投資するのだ。
アマゾンは歴史的低金利で金を借り、並外れて高額な配送コントロール・システムに投資した。ネットショッピングと宅配によって買い物の手間を減らし、小売業の市場を独占。顧客がつけるレビューによって宣伝のコストを減らして流通に専念する。
野菜や肉は店で直接買いたいという消費者が多く、ホールフーズを買収し、配送拠点、返品場所とした。
アマゾンの時価総額は4,329億ドル、ウォルマートは2,276億ドル、ターゲット304億ドル……。小売業界が横ばいのなか、アマゾンの2016年の収益は290億ドルに増加した。アマゾンの必要な従業員数は少ないので7万人分の雇用が破壊されたことになる。
アップル
1999年、スティーブ・ジョブズはアップルに戻るとすぐ派手な店舗アップルストアを出した。時代遅れの戦略と言われた店舗展開はアップルをテクノロジー企業から高級ブランドへ転換させ、製品を高級品へ押し上げた。宗教的な熱狂的なファンをもち、低コストの製品をプレミアム価格で売っている。アップル製品は「イノベーティブな人」が持つとのイメージを確立した。
フェイスブック
普及率と使用率でいえば人類史上もっとも成功している企業だ。世界人口75億人のうち、12億人が毎日フェイスブックとの関わりをもっている。個人が発信している膨大な情報を、フェイスブックは所有しているわけである。
調査会社の調査結果によれば、あなたが「いいね」をつけた150件がわかれば、そのモデルはあなたのことを配偶者より理解できる。300件になれば、あなた自身よりあなたのことを理解できる。
2012年、フェイスブックは、社員13人の写真共有アプリ・インスタグラムを10億ドルで買収した。
フェイクニュースは頭の痛い問題だ。「我々は自分自身で真実の判定者にはなれない」と主張したが、非難は収まらなかった。そこで、ユーザーの通告があれば、判定ソフトにかけて「真偽に疑問あり」というラベルを付けることまでは実施した。
フェイスブックもグーグルも「我々をメディアと呼ばないでくれ。我々はプラットホームだ」と主張している。
グーグル
グーグルの製品はただ一つ、検索エンジンしかない。しかし、シンプルなホームページと、検索は公平で広告主の意向に左右されないという点が支持されている。他の市場にむやみに移行しそうもなく、創業者たちは感じが良い。グーグルのモットーは “Don’t be evil”。
検索は人目につかないところで行われるので、世界中のすべての情報をこっそり集めている。そして、グーグルは現代人の知識の源で、全知全能の神だ。使われるほどに価値を増す。毎日20億人がグーグルを使うことで、日々検索の精度は向上している。
著者の考える次のライバル企業
それぞれ難題を抱えてはいるが、アリババ、テスラ、ウーバー、ウォルマート、マイクロソフト、リンクトレイン(職探しのためのフェイスブック)、エアビーアンドビー(Airbnb ホテル業界のウーバー)他
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
話は分かりやすい。翻訳も読みやすいし、多分原文も明快なのだろう。しかし、400頁を超える大部である必要はない。冗長な部分をそぎ落とす作業を行っていない。例えば、著者が役員をしていたというニューヨークタイムズでの経営陣との論争は、主題とはまったく関係ないのに突然挿入されている。
何となくは感じていたがGAFAの経営法、特徴は明快に書かれていて、面白い。複数個所に出てきて、それぞれ冗長ぎみではあるが。
少数の企業が圧倒的な市場支配力を持っている危険性はこの本を読んで確かに感じられる。4社ともに、目立たないように、控え目な役割に限定しているように見せてはいるのだが。
論拠は明快に見えるが、とくに数字で示されているわけではなく、客観性が欠け、決めつけに過ぎない。リスクの最大点である顧客から得た膨大なデータをGAFAがどう使用しているかについて、はっきりと具体的に指摘していない。
スコット・ギャロウェイ(Scott Galloway)
ニューヨーク大学スターン経営大学院教授。MBAコースでブランド戦略とデジタルマーケティングを教える。
連続起業家(シリアル・アントレプレナー)としてL2、Red Envelope、Prophetなど9つの会社を起業。ニューヨーク・タイムズ、ゲートウェイ・コンピューターなどの役員も歴任。
2012年、クレイトン・クリステンセン、リンダ・グラットンらとともに「世界最高のビジネススクール教授50人」に選出。
Youtubeで毎週公開している動画「Winners & Losers」は数百万回再生を誇るほか、
TED「How Amazon, Apple, Facebook and Google manipulate our emotions(アマゾン、アップル、フェイスブック、グーグルはいかに人間の感情を操るのか)」は200万回以上閲覧された。
渡会圭子(ワタライ ケイコ)
翻訳家。上智大学文学部卒業。
主な訳書に、ロバート・キンセル/マーニー・ペイヴァン『YouTube革命 メディアを変える挑戦者たち』、マイケル・ルイス『かくて行動経済学は生まれり』(以上、文藝春秋)、エーリック・フロム『悪について』(ちくま学芸文庫)などがある。